白金(からくりサーカス)

登録日 :2011/05/31(火) 19:14:13
更新日 : 2016/08/31 Wed 09:52:25
所要時間 :約 5 分で読めます




からくりサーカスの登場人物。
名前の読みは「ばいじん」

1758年、中国の奥地の小さな村に生まれる。
白一族は非常に卓越した技術を持つ傀儡戯(人形使い)として知られ、彼もからくり人形繰りを学んで育った。
幼少期はひ弱でいじめられっ子だったが、いつも助けてくれ、色んなことを教えてくれる兄の銀にとても懐いていた。

その兄と「人形の動きをもっと人に近づけたい」の夢を語り合ううちに、その夢の実現へ向けて煉丹術(生命を更に延ばすことを求める薬学)を学ぶうちに、西暦1200年頃に錬金術師によって自分で話し考える自動人形が作られたことを知り、錬金術を学ぶ為に、シルクロードを渡り遥か遠くの百塔の町プラハにたどり着き、そこでとある錬金術師の元に弟子入りする。
幸い師匠は本物の錬金術師だった為、彼はよく学び簡単なホムンクルスを作り出すまでになる。

この時期の彼は堅苦しく勉強一筋の兄に比べると、いくらか砕けた気さくな性格をしている。

そうして暮らしていく中、生活費を稼ぐ為に薬を売っている時に貧しいリンゴ売りの娘フランシーヌと出会う。
彼女の朗らかな笑顔、自分の難しい話にも退屈な顔をせず付き合ってくれる優しさにやがて惹かれていくようになる。

しかしカーニバルの後、銀が錬金術を自分の為ではなく貧しい人の為に使うべきではないかと言い出したことから、兄もフランシーヌに惹かれていることを知る。

「ねえ…兄さん、フランシーヌは僕が最初に好きになったんじゃないか…」
「それを…横から…とるなんて…ダメだよ…兄さん…」

それでも兄を嫌いになりたくないの思いから、大切なのはどちらが先に好きになったかではなくフランシーヌの気持ちであることに思い至り、教会で心を静めていた時、兄とフランシーヌがお互いに結ばれるところを目にしてしまう。
その時、彼は壊れた。



あんなに…あんなに…あんなに幸せそうなフランシーヌを見ることになるなら、
神父よ、僕のために祈ってくれ。僕はもう――笑わない。


そして彼はフランシーヌを奪いプラハを立ち去る。
当然フランシーヌは嫌がるが、その度に彼女に暴力を振るっては、自分の元から去らないでくれとすがりつくダメ人間全開。

そしてフランシーヌの生まれ故郷であるキュベロンのクローグ村に移り住むうちに、やがて2人の間の溝はさらに深いものになる。
彼はフランシーヌの目を見ることにができなくなり、部屋に閉じこもり錬金術に没頭する。
それでも彼女を見捨てたわけではなく、病気にかかって村人に隔離(と言う名の牢獄送り)された時は彼女の為に万物の霊薬「生命の水」を作っていた。

そんな中、兄の銀が屋敷を訪れる。
しかし殆ど狂っている彼は兄とまともな会話が成り立たないほど壊れていたが、それでも、彼は兄に救いを求めていた。
しかし兄弟の溝は埋まることはなかった。

彼が必死の思いで賢者の石を作り上げた時、フランシーヌは既に自ら監禁されていた小屋に火を放って死んだ後だった。

「フ…フランシーヌは………一度も僕を愛してくれなかった…」
「に…兄さんは…僕の欲しいもの全部を……はじめから…手に入れてたんだ…」

「……違うさ…」
「なぜ彼女が、おまえから逃げようとしなかったと思う?」
「フランシーヌの心は、確かにおまえにも注がれていたんだ」
「金、おまえが…気づかなかっただけだ…」

そして別れた兄弟は二度と会うことはなかった。


生きがいを失い、クローグ村に残った金は新たな目標を見つける。
カーニバルが好きだったフランシーヌを狭い小屋に押し込め、罪人のように鎖をつけ、火をかけて焼き殺した村人への復讐である。
(実際にはフランシーヌは自殺だったし、当時の村人は老人になっていたのだが)

彼はフランシーヌの代わりとしてフランシーヌの遺髪を使いフランシーヌ人形を作り上げ、未完成だった最古の四人を道化として完成させ、クローグ村を襲撃する。
子供達の首をはねてジャグリングのボールにし、人々をかき集めて玉乗りの玉にし、人々をつなぎ合わせて綱渡りの綱にし、村人が逃げ込んだ教会を焼き払い、血の惨劇を繰り広げ、そして生き残った村人達をゾナハ病にした。



おまえらは23年前フランシーヌから笑いを奪った。
カーニバルを奪った。
いのちを奪った。

そのつけを今、支払うがいい。

おまえ達が今かかったゾナハ病は、他人を笑わせないと自分が死ぬ病気だ。
さあ、このフランシーヌを笑わせてみろ。みんなフランシーヌのための道化になるのさ。


こうして1日でクローグ村は滅んだ。

しかし彼は満足することはなかった。
なぜならここまでしてもフランシーヌ人形は笑わなかったのだ。
笑顔が印象的だったフランシーヌの再現を目指した彼に、これは致命的な欠陥だった。
逆上した彼はフランシーヌ人形の首を絞めて機能停止させ、クローグ村を立ち去った。
人形と共に生きる為に不死の霊薬「生命の水」を飲んだのに、今後どう生きればいいのか迷いを浮かべながら。

そして放浪を繰り返し、彼は52年ぶりに生まれ故郷の中国に帰ってくる。
故郷を見て思い残すこともなくなった彼は、死ぬ為に全てを溶かす生命の水を作り、今までの思い出を書き連ねた本を投げ捨てた。

彼の一生は、全て誰かに助けを求め通しの人生だった。
卓越した錬金術の技という大きな力を持ちながらも、常に兄に、フランシーヌに、フランシーヌ人形に、救いを求めているだけの哀れでちっぽけで幼稚なままの人間だった。


フランシーヌ、この地上にはもう君はいない…
僕は君のところに行くことにするよ。
君の住まうどこか別の地へ…
僕は旅をするよ。

これにて、僕の懺悔をしるした本を終わろう、
白金。









思いついた、
終わりではない、
「生命の水」がある限り。
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