この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO

登録日:2010/03/31(水) 18:08:02
更新日:2024/04/15 Mon 19:09:31
所要時間:約 6 分で読めます




■概要

elfより発売された18禁PCゲーム。
エロゲ界にSFという新しいジャンルを組み込ませた偉大な作品。

シナリオを手掛けたのはEVE burst errorで名高い菅野ひろゆき。
内容は、無数に存在すると言われる並列世界を渡り歩き、主人公の父母が残した謎を解くというもの。

SFアドベンチャーゲームの金字塔を打ち立てた作品で、SFによく使われる並行世界をテーマにしているが、他にも大学の講義レベルの物理、数学、哲学、歴史、宗教といった要素も含んだ特殊な世界観、A.D.M.S(アダムス)と呼ばれる従来のゲームにはない斬新かつ特殊なシステムから非常に高い評価を受けている。
しかし、予備知識無しで全てを一度に理解するのは困難なので注意しよう。


PC-98時代のエロゲの話題では欠かす事のできないゲームで、現在でもエロゲ界に留まらず、ゲーム界屈指の神ゲーとして名高い不朽の名作。
因みに、カニバリズム近親相姦等にも手を出している勇気のあるゲームでもある。
後に新規シナリオを収録した追加ディスクが発売された。

なお原作者の菅野ひろゆきは、本来ならゲーム全編に渡ってA.D.M.Sシステムを使った構成にしたかったにも関わらず、納期の都合で物語後半の舞台となる異世界編を、通常のADVと同様のシステムにせざるを得なくなってしまった事で、本作を「駄作」などと自虐していた。
だがユーザーから非常に高い評価を受けた事で、自信を取り戻したそうである。


移植版としてセガサターン版とWindows版、PS4版とPSVita版、Switch版、Steam版がある。
Windows版以外の移植は、追加ディスクのシナリオが異世界編に組み込まれている。
またPS4版とPSVita版は初回限定特典として、PC-98版をダウンロード出来るプロダクトコードが同梱されている。
ただしPC-98版は家庭用への移植という事もあってさすがに完全移植ではなく、18禁シーンの削除など、現在の倫理基準に則った修正が加えられている。

メディアミックス展開に漫画・小説・アダルトアニメ等がある。
ただしアダルトアニメは30分×4話という異様なまでの尺の短さ故なのか、原作から大幅にシナリオの変更が行われ、ほとんど別物と化してしまっている。
また原作と違いほとんどバッドエンドと言ってもいい終わり方になっている事から、ユーザーからの評価は正直言ってかなり低い。 

TVアニメ化もされており、2019年4月から10月まで放送。全26話。Blue-ray最終巻に後日談を描いた26.5話が収録。
A.D.M.Sシステムがアニメ化しづらい事もあってか、大筋自体はゲームと同じだが細かい所で結構な差異がある。
また地上波での放送という事を考慮してか、原作にあったHシーンはほぼ全てカットされている。
ちなみに年代は1995年と、大元のPC-98版の発売時期とほぼ同じとなっている。


■あらすじ

境町学園に通う主人公・有馬たくやは幼い頃に母を亡くし、残る父親も2か月前に事故に巻き込まれ他界した。
しかしある時、死んだと思われていた父親から自宅に小包が届く。小包の中にはガラス玉のようなものがいくつかはめ込まれた謎の装置と共に、「今夜10時にこの装置を持って剣ノ岬に行け」という手紙が入っていた。

訳が分からないまま手紙の通りに剣ノ岬に赴くと、謎の少女が倒れているのを見つけるが、その少女はたくやを見て僅かに微笑むと虚空へと消えてしまう。その代わりに義母・亜由美を連れて境町学園の学園長・龍蔵寺が現れ、たくやに銃を向けてその装置を渡せと迫る。
龍蔵寺に装置を奪われようとしたその瞬間、突然激しい地震が起こると共に、3人とも光に包まれて意識を失ってしまう。

そのまま岬に倒れていたのを目を覚ましたたくやは、龍蔵寺がいなくなっているのに装置が手元にあること、そしてその装置が不思議な点滅をしている事に気づく。
おぼろげながらに装置の能力を理解し始めたたくやは、その装置を完全な姿に戻すべく、そしてそれを使って手紙に記されていた父・広大の本当の目的に迫るべく動き始める。


■システム

「Auto Diverge Mapping System(オート分岐マッピング・システム)」通称「A.D.M.S(アダムス)」が本作の最大の特徴。
これは複数あるシナリオの分岐ルートを線として表示したもので、一度通ったシナリオルートはマップ上に線が表示される。
分岐のあるシナリオというだけであれば様々なアドベンチャーゲームでよく見られる要素ではあるが、本作ではそれを視覚的に表現したチャート表を物理的なマップとして使うことに意義がある。

プロローグで主人公が受け取った装置「リフレクター・デバイス」がそれを可能にするものであり、装置に付属する宝玉を使用すると、その宝玉がそのルートのその時点の時間に固定されて目印として残る。
時間軸の流れに対して位置が固定される、つまり後に続く時間に移動しなくなるため、使用された宝玉は主人公視点では消えて無くなったように見える。
ゲームシステム的にはこうやって宝玉を配置することを「宝玉セーブ」と呼び、デバイスの力によってその時点の時間軸にタイムワープする事ができる。

そしてこの宝玉ワープを使用する事により、単に前後の時間軸に移動するだけでなく、別の平行世界(メタ的に言えば別のシナリオルート)へと直接移動することができるのが本作ひいては「A.D.M.S」の最大の特徴。
例えるなら「Aというキャラを見殺しにすることで手に入るアイテムを入手し、それを『Aを見殺しにせず助けて生存したルート』の平行世界へと持ち帰る」という行為が可能。
これにより更なる別の分岐に派生する事ができる他、バッドエンドを迎えてしまうルートに入ってもそこから戻ってくる事ができる。

デバイスには宝玉をはめ込む穴が8つ空いているのに対し、ゲームスタート時点では宝玉は2個しか存在せず、様々な平行世界の時間軸に散らばってしまっている。
上記の通り初期状態ではどのようなルート分岐がありどう平行世界が分岐していくのかは明示されていないが、宝玉が落ちている場所はマップに最初から表示されている。
当面のゲームの目的は、この散らばってしまった宝玉を全て集めるのが目的となる。
ゲームを進めるほどルート分岐マップが埋まっていき複数のポイントを行き来する必要に迫られるが、宝玉を回収するほど同時に宝玉セーブできる数が増える。

忘れがちな要素だが、宝玉を用いた平行世界テレポートはリフレクターデバイスの機能を用いたものであるのでリフレクターデバイスが機能不全に陥れば使用不可になる。
これは終盤の特殊イベント的なシーンだが、
「自分が使ってきた能力はシステム的に保証されたものではなく、持ち物の機能だったのだ」
とプレイヤーに再認識させるという効果も持っていた。

■キャラクター


◆現代編

本作の主人公。「歩くリビドー」と称される下ネタ大好きなマザコン。
しかし、頭の切れる一面を見せる事も多い。

  • 有馬広大
たくやの父親。
年齢は不明だが、作中のたくやの
「20近くも年下の女(亜由美)と結婚しやがって」
というセリフから、46歳前後だと推測される。
歴史学者で、2ヶ月前の事故で行方不明となり、1ヶ月前に死亡認定を受けた。
エロゲ主人公の父の宿命か、やたらモテている。

  • 有馬亜由美
広大の後妻であり、たくやの義母。26歳。
ジオ・テクニクスの主任を務めている。

たくやに対しては常に笑顔を見せており、ほとんど怒る事は無いのだが、
結城を助ける為とはいえ、たくやが数人の不良を相手に大喧嘩をして大怪我をした際は、
本気でたくやの事を心配して怒鳴り散らしている。

亜由美自身はたくやの事を母親として構ってやりたいのだが、主任という立場故に仕事がかなり忙しく、
夕食を出前で取らせる事が多いなど、たくやに対して母親らしい事がまるで出来ていない事を気にしている。
それでもたくや本人は自分が亜由美に養って貰っているという事もあり、不貞腐れる事無く亜由美の立場に理解を示し、

「亜由美さんの手料理も捨てがたいけど、出前も悪くないからね。」
「あまり無理はしないでくれよ。」

と気遣っている。

  • 波多乃神奈
境町学園3年生。たくやのクラスにやってきた転校生。
物静かで神秘的な雰囲気を匂わせており、また作中におけるキーパーソンの1人でもある。

  • 島津澪
境町学園3年生。たくやの同級生で市長の娘のお嬢様。ツンデレ。
たくやに恋心を抱いているのだが、素直になれない性格故に、中々本心を告げられないでいる。

  • 一条美月
境町学園の非常勤講師で、龍蔵寺の秘書も務める。
年齢は不明だが亜由美より年下らしい。
たくやと半ばセックスフレンドのような関係になっていたのだが、濡れ場を澪に目撃されてしまい、
美月の仕事が忙しくなってきたという事もあり、現在は疎遠になってしまっている。

  • 朝倉香織
報道番組の「ニュース・プレゼン」のナレーションを務める女性。
年齢は不明だが20代前半らしい。

  • 武田絵里子
境町学園の保険医で、たくやのクラスの担任。目隠れボディコン。

  • 結城正勝
境町学園の2年生。17歳。
剣道部に所属しており、たくやが剣道部に所属していた頃からの後輩である。
強くなりたいという理由から剣道部に入ったらしいのだが、たくやによるとその目的は全く果たせていないらしい。

以前、数人の不良に絡まれ虐められていた所を、駆けつけて来たたくやに身体を張って助けて貰った事があり、
それ以降たくやの事を「オヤビン」と呼び、心酔している。
澪に好意を抱いていおり、彼女に必死にアプローチを掛け続けているのだが、
澪自身がたくやに恋心を抱いているという事もあり、本人からは「いい人」という程度にしか扱われていない。

  • 龍蔵寺幸三
境町学園の理事長。広大とは大学時代からの親友。
プロローグにおいてリフレクター・デバイスを手に入れたたくやに、何故か銃を向けるのだが…。

  • 龍蔵寺梅
幸三の母親。
重度の痴呆症らしく、幸三が言うには自分の事を息子と認識してくれていないらしい。

  • 豊富
ジオ・テクニクスに務める青年で、亜由美の部下。
優秀な人物らしく、亜由美からは信頼を寄せられているのだが…。

  • 北条
興信所に務める中年の男性。
ある人物からの依頼で広大の足取りを追っている。



◆異世界編

  • セーレス
異世界でたくやが最初に出会った少女。
デラ=グラントの危機を救う巫女として選ばれ、帝都の神殿で暮らしていたのだが、
何故か帝都から遠く離れた*1ボーダー付近で、
デラ=グラントに迷い込んだたくやと遭遇。
後にたくやに惹かれ結婚。たくやとの間に長女ユーノを儲ける。

  • ユーノ
たくやとセーレスとの子供で、このゲームのメインヒロインにして最大のキーパーソン。

  • クンクン
ノガルドという生物で、ユーノのペット。
行き倒れていた所をたくやとユーノに救助され、そのままペットになった。
子供はトカゲを大きくしたような姿をしていて、大人になると人に似た姿になる。*2
ちなみに食用。
異世界編では二度たくやの窮地を救う事になるが…

  • アイリア
帝都で神帝に仕える騎士を務めていた女性。現在はボーダー付近で1人暮らしをしている。
凄腕の剣士だが病に侵されており、余命は僅からしい。

  • アマンダ
神帝に反抗するレジスタンス組織のリーダーを務める女性。
一人称が「俺」であるなど男勝りな性格。


余談だが、本家・Wikipediaのこの項目が異常なまでに力が入っていて、ライター本人が建てたのではとまで言われる程。



【リメイク】
2015年、MAGES.の手によりフルリメイクが発表され、何度も発売延期になったものの、2017年3月にPS4とPSVitaで無事に発売された。2019年にはSwitch版とSteam版も発売。
プロデューサー浅田誠、キャラクターデザイン凪良、音楽志倉千代丸。
18禁などの一部シーンには修正が入っているものの、大まかなシナリオの流れはセガサターン版準拠である。
グラフィックもキャラデザが変更されはしたものの、CGの内容や構図などはリメイク前の物を引き継いでいる。
その為、フルリメイクではあるものの、完全新規と言えるものは新作紹介を兼ねた極小シナリオのおまけDLCくらいである。

追記・修正はリフレクター・デバイスで並行世界を渡りながらお願いします。

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最終更新:2024年04月15日 19:09

*1 アイリアが言うには徒歩で1週間以上かかるとの事

*2 というより、羽の生えた裸の人間そのもの。SS版から角や尻尾などドラゴンっぽい要素が追加されている。