登録日:2009/12/30 Wed 12:23:55
更新日:2024/04/04 Thu 00:44:03
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「どく」 または 「ぶす」
  • 体に害を為すもの。またはトリカブト*1そのもの。
  • 転じて、周囲に害悪を及ぼすもの。特に放っておいてもその悪性が広まっていってしまうこと。
    悪口雑言を言い放つ事を「毒を吐く」という形容も有る。某毒蝮おじいさんとか笑点紫の着物の腹黒い噺家とか。

〈概要〉


植物や両爬類や虫などの小動物が、天敵に食べられないように蓄えたりする毒は総じて、赤い等変な色や形、模様をして警告を促すことが多い。
速効性で注入してすぐ弱体化を図るものや遅効性で気づかない内に進行するもの、内蔵器官等にダメージを与え死に至るもの、一部器官のみに作用しその働きを奪うものなど様々。迂闊にキノコ食べると死亡フラグ

また、自分で毒を作る能力はないフグのようにプランクトンなどの毒を自分の体に蓄積する動物や、蛇やクモ等の場合は攻撃手段としても用いる動物もいる。
前者は天敵への威嚇、後者は対象をスムーズに捕食するため。

ほかにも対象を眠らせたり神経を麻痺させ、痛みを感じないようにする「麻酔」もあるがその原理は未だによく分かってないらしい

「毒にも薬にもならない」「薬も過ぎれば毒となる」といった諺の通り、薬と毒の差は量でしかない
有名なヒ素は人体にとって必須(もちろん極微量)で、地球上最強「ボツリヌス菌毒素」も痙攣の治療や美容形成に、トリカブトも漢方に使われたりする。


適正量で用いれば薬、過剰量で用いれば毒。


そんな便利で危険な毒を我ら人間も太古の昔から殆どは害を為す方向性に用いてきた。

〈用途〉

物により効果に差異はあれど、およそ「毒」に大別されるものを全て含めれば、地球上最も多くの命を奪ってきた武器と言える。
ソースはARMS、及びキングダム。
いつ現れるかわからない、動きが素早く仕留めることが困難な獲物をも簡単に仕留められるのだから使わない手はない。害獣・害虫の駆除に通り道に毒餌を用いることもあった。ただし駆除対象以外が服毒する(人間を含む)リスクもある。
なお「食べる肉に毒を使うってどうなのよ」と思うかもしれないが、狩猟用には獲物を食しても問題ないよう、特に厳選された特殊な毒が用いられている。経口摂取では無害であったり、刺さった後に周囲の肉を抉って捨てれば残りは問題なかったり、加熱調理することで無毒化できたり…。こうした毒は獲物を素早く無力化できるよう即効性もあり、吹き矢等で使われる事から「矢毒」とも呼ばれる。


だが人間は罪深い生き物。相手は獣に留まらない。

軽い攻撃で敵に大ダメージを与えられる毒は、いつの時代も軍隊にとって魅力的である。
たとえば、かすっただけでも効果のある毒矢やの先端に塗る。大掛かりな手口は「川や井戸に毒を流しこむ」パターン。
後者は人間だけでなく軍馬にも有効だが、どうやって自軍に被害のないように運び、敵に吸収させるか。

技術が進んだ第一次世界大戦ではドイツで空気中に毒物を散布する毒ガスという方法が発明される。
毒ガスが初めて大規模な攻撃が行われたベルギー・『イーペルの戦い』の記録によれば塹壕の向こうから黄緑色の雲が迫って来たとか…想像するだけでも恐ろしい光景である。
塹壕にこもる敵兵を皆殺しにする逆転の一手として両軍が投入、兵士の悲惨な健康被害を目の当たりにする。
戦争をスポーツ視しているくせに欧州人は激しい拒絶反応を示し、戦後の国際会議で毒ガスはタブーとなった。

ちなみに、この毒ガスの開発の全権を握っていた化学者、フリッツ・ハーバー(1868−1934)は実は空中の窒素を取り出すハーバー・ボッシュ法を生み出し、人工肥料を生み出すきっかけを作って人類を飢餓の危機から救っていた人物でもある。
だが、このハーバー・ボッシュ法により生み出す硝酸アンモニウムは火薬の原料でもあった。
さらに悪い事にハーバーは根っからの愛国者ゆえに、自らの技術を戦争に使われる事は何のためらいも無かった。
こうして彼は軍の化学研究部門を担うようになり、毒ガス開発を行う事になった。
この事が原因で、妻のクララはハーバーを止めようとしたが最期は拳銃による自殺で息を引き取ってしまった……。

各国で研究・生産・備蓄はされているものの、毒を戦争で投入するのは政治的に損という結論に落ち着いている*2

量を確保するにはある程度大きなプラントが必要なのでなかなか難しいが、少量ならテロリストが暗殺に使うことも多い。
無味無色無臭のものなら、気づかない内に体内を毒に侵せる。
方法としては、毒を塗った短剣や矢、等で注入するか、「毒を盛る」と言う独特のワードのごとく*3配膳前の食物に毒物を混入するか。
昔の王族等はこれを防ぐ為に毒味役を用意していた。これが後のソムリエ。

この服毒は非力な人間でも使える殺害手段であるため、他殺・自殺を問わず用いられる。ただし現実には飲むだけですぐ死ぬほどの強力な毒というものは存在しない。
現代でもミステリーやサスペンスの常套手段。毒になる物質を一般人が簡単には入手できないようになっているから、入手経路の特定は謎解き・捜査でも重要となる(ただし全く問わない作品もある)。だが話がややこしくなったり、未知の毒物で解決するのはあまり評価されないので扱うのは難しい。



〈対処法〉

毒に侵された場合、創作物では「解毒薬」を飲んで簡単に治療してしまうことが多いが、現実では毒の種類がはっきりわからないと対処のしようがない

自然毒であれば、病院にはその地域の動植物に対応した治療薬が用意されていることがある。
まず現地の病院へ行き、その動植物の名前を話して治療を受けるのが最善策と言える*4

そもそも毒の中には治療法が確立されていないものも少なくないため、最初から毒を避けるに越したことはないのだ…






〈創作物での扱い〉

創作物ではたまに「あらゆる毒が効かない(効き難い)」というキャラクターが登場するが、
これが実現した場合、「あらゆる治療薬も効かない(効き難い)」ことを意味する。

だもんで、居たとしても完全な長所だとは言い難い。肉体が硬過ぎて注射針やメスが折れて治療不可能、なんてのより更に扱い難い。
実際その手のキャラで薬が使えないという展開になったモノも存在する。やはり短所もあるのだ。
まぁ、中には「不利益な毒は効かないけど有益な薬効は受け付ける」的な大変ごつg...便利な選別をしてくれるパターンもあるが。

ゲーム等では、毒は状態異常の代名詞である。
大抵紫色緑色の、特に泡や霧、ドクロマーク等がエフェクトやアイコンに表示されることが多い。
時間経過や、ターンごとに減っていく体力は、それだけでなく焦燥感も煽る。解毒できるとしても、それに行動を費やすことにもなる。
また、戦闘とフィールド移動が別なゲームでは、戦闘が終了しても、フィールドでも時間経過や一定距離を移動するごとにダメージを受けることも。
毒沼なんかは、歩くだけでダメージだったり、毒にかかったりしてしまう。

毒の効果は大抵じわじわとダメージを与えるもので、時間経過による、固定ダメージや体力の割合に対するダメージが多い。
このバランスは微妙なものであり、少し間違うとすぐバランスブレイカーとなったり、逆にまったく無視しても構わないようなものともなる。
特に放っておいても自然回復するような作品では、効果時間やダメージ量が少ないと空気。

他にも毒を持つ物は毒に対する耐性があるものもある。
(ポケットモンスターでは基本的にどくタイプは“どく状態”にならない等)

〈代表的な毒〉

・シアン化カリウム

またの名を『青酸カリ』。ミステリー作品ではお馴染みの猛毒である。極めて毒性の高い物質であるが、工業用薬品としても優れている。あと昆虫標本とか。
有名なアーモンド臭はこいつを飲んで死んだ人間の口(正確には胃袋)から漂う臭いであるが、収穫前のアーモンドの臭いであるため注意。
あんな香ばしいアーモンドの臭いではない。
ミステリやサスペンス作品では毒殺に使用される代表的な毒物であるが、実際には強烈な臭気と苦味を発するため飲み込むことは困難であり、
気付かずに食べてしまって中毒死という可能性はかなり低く殺人の手段としては確実性に欠ける。
ただし現実で紅茶に混入させて殺害に使用した例はある。
ちなみに胃酸と反応して毒性を発揮するシロモノなので無酸症の人にはあんまり効かない。ラスプーチンがなかなか死ななかったのはこれが原因のひとつと言われている。

・モルヒネ

ケシの実から採取されるアルカロイド。
言わずもがな、麻薬の一種。麻酔作用・鎮痛作用に優れる為医療の現場では重宝される。
なお、これをさらに化学処理することでヘロインができる。

・ヒスタミン

ハチやドクガ類の毒の主成分。生物にはありふれた物質だが、毒として過剰に摂取すれば痒みや皮膚炎を引き起こす。
また、この物質が原因の食中毒も確認されている(ヒスタミン食中毒)。

・カンタリジン

ハンミョウやカミキリモドキ類の甲虫の体液に含まれる有毒物質。
口に入った場合は青酸カリ以上に危険であるが、どちらかと言えば皮膚に付着することで起きる皮膚炎の方を警戒したい。

・ホスホリパーゼA2

タンパク質分解酵素の一つであり、生物にはありふれた物質であるが、過剰に摂取すれば肉や皮膚など体内の組織を破壊する出血毒となる。
ヘビ毒やオニヒトデの毒の主成分。

テトロドトキシン

またの名をフグ毒。
極めて高分子かつ危険な物質であり、古来から現在に至るまで数多くの人間を殺してきた。詳細は当該項目参照。

・アコニチン

冒頭でも述べたトリカブトの主成分。
この植物は全部位が強力な毒で、矢毒としても用いられた。
詳細はトリカブト(植物)を参照。

・ソラニン

皆さんご存じジャガイモの毒。
ソラニン自体はジャガイモ全体に存在するが、皮部分に特に多く含まれる。ただ危険な物質ではあるが毒性は弱く死ぬことは殆どない。
……が、ジャガイモの芽の部分だけを大量に摂取して死亡した例もあるとか……やはり量か……。

・アマニタトキシン

ドクツルタケやその類縁に含まれる物質であり、これらの食中毒を引き起こす元凶。
下痢嘔吐に始まり脱水症状や肝・腎機能障害を起こす危険な猛毒。取りあえず白いキノコは食べない方がいい。

・イボテン酸

ベニテングタケ等テングタケ科の一部に含まれる有毒物質。腹痛や視力障害を引き起こすが、皮肉なことにそれ以上にものすげえ旨味成分
毒も致命的という訳ではないので、有毒と知りつつ食べる人は後を絶たない。

・ウルシオール

ウルシの樹液から取れる物質。漆器に使う漆の材料であり、あのウルシかぶれの原因である。
強い刺激性を持ち、敏感な人はウルシに近づいただけでもかぶれることがある。
ウルシ科の他の植物(マンゴーなど)にも同様の成分を持つものがある。
ミステリーやサスペンスではこれを体中に塗り捲って相手を殺す…なんて事件の例も。恐ろしすぎる。

・コニイン

あまり聞き覚えがない名前だろうがドクニンジンに含まれる毒、つまりかのソクラテスを殺した毒である。
中枢神経に作用する痙攣毒であり、運動神経麻痺や呼吸困難を発生させる。

・マイトトキシン

現在までに確認されている海に生息する生物が持つ毒の中で最強の猛毒。
尋常ではないほど組成式が複雑な高分子物質であり、長らく科学者を悩ませて来た。

・ボツリヌストキシン

嫌気性細菌であるボツリヌス菌が生み出す、現在までに確認されているあらゆる毒の中で最強の猛毒。
1kgかそこらで地球上の人間を皆殺しにできる程強力な毒(ただ致死量の数百倍を摂取して生存していたケースもある)。
一時化学兵器として研究もされていた。

・ポロニウム210

強力な放射性物質。
紙一枚で存在を隠せるほどガンマ線が少ないが、人体に入ればあっさり多臓器不全を引き起こすほどのアルファ線を出す
という政治がらみの暗殺に非常に都合のいい物質で、コレで暗殺されたと考えられる事件が複数起きている。
ただし、入手には原子力実験規模のプロジェクトが必要。

APTX4869

近年存在が明らかになった物質。恐らく人工的に作られた毒物。
服用した場合、細keN1dpデータが破損しています。

う○こ

殺人用に刃物や罠に塗る毒。調達が非常にお手軽。
刺さった場合、破傷風菌などの感染源となる大変危険な毒物。
江戸時代の牢屋では、標的の囚人の食事に混ぜて危害を与えることがあったという。

〈余談〉

人間の味覚の一つである苦味は、毒を判別するために発達した物である。


英語で毒を表す単語にはいくつかの種類がある。
poison(ポイズン)
「毒」「毒物」を指す一般的な単語。
toxin(トキシン)
毒素。生物に由来する毒性の高い物質。
フグ毒「テトロドトキシン」や、ボツリヌス毒素「ボツリヌストキシン」などが有名。
venom(ヴェノム)
毒液。ヘビやハチ、サソリ等が分泌し、主に牙や毒針などを介して注入される。
生物由来という点は同じだが、toxinが成分そのものを指すのに対し、こちらはその伝達方法に主眼を置いた言葉と言える。



俺はもう毒で助からん、あとはこの項目の追記・修正を…。

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最終更新:2024年04月04日 00:44

*1 トリカブトの薬名である「附子」がそのまま「毒」の字の読み(転じて、毒物の代名詞)として広まったと考えられる

*2 放射線は毒物に見えないからOKのようだ。

*3 茶匙などでこんもり「盛る」という形で毒を混入させていた事の形用からお茶など食品に毒を混入させる事を指す

*4 分からない場合は特徴をできるだけ詳しく説明すること