アマゴワクチン(マキバオー)

登録日:2011/09/22(木) 22:19:14
更新日:2024/01/02 Tue 07:29:25
所要時間:約 4 分で読めます




アマゴワクチンとは、『みどりのマキバオー』に登場する競走馬である。
モデルは「シャドーロールの怪物」こと三冠馬ナリタブライアン

◆プロフィール

父:ホラフキー
母:メリークリスマス
母父:カツラダヨー
毛色:栗毛
所属:立原厩舎
主戦騎手:山中馬之介
生涯成績:14戦7勝

主な勝ち鞍
菊花賞
天皇賞(春)

◆概要

父は伝説的名馬の初年度産駒であり、長距離戦線で活躍したステイヤー。
母はクラシック2冠馬*1ピーターⅡをターフに送り出した名繁殖。
アマゴワクチンはピーターⅡの全弟*2にあたる。
トレードマークの白いシャドーロールは、兄ピーターⅡが果たせなかった三冠の夢と共に受け継いだもの。
ミドリマキバオー、カスケードと何度もぶつかっている3強の1頭であり、「三冠相続人」「不屈の闘将」「ペースのマジシャン」の異名で呼ばれている。
馬名は戦国大名の尼子氏とライバルであるカスケードの名前がコンピューターウィルスであることに由来。

◆レーススタイル

豊富なスタミナと出足の速さを武器に、レース序盤から先頭を切る事が多い。
スピード自体は勿論それなりにあるのだが、他の一流馬と比較するとそこまで突出したものではなく、
マキバオーやカスケード、そしてモデル元のナリタブライアンのように「切れる脚」で勝負するタイプではなかった。
どちらかと言えば、所謂「ジリ脚(そこそこのスピードを長く出せる)」タイプである。
しかしワクチンには「ペースのマジシャン」と言われるほどの巧みな駆け引きの技術があり、相手の心理を突いて
スタミナを浪費させる策略に長けていた。
皐月賞、菊花賞ではこれを存分に振るい、レースを有利に進めることに成功している。
ちなみに現実世界においても、セイウンスカイがまさにこのワクチンのような戦略で菊花賞を当時のレコードで圧勝している。

◆性格

基本的に冷静な性格。
そのためWC編ではトゥーカッターと共に日本の精神的支柱と言われた。
しかし、その根底にあるのは競馬に対する熱い想いであり、実は意外と熱血漢。
レースでは基本冷静に振る舞いながらも、要所要所で熱くなるシーンが見られた。

◆作中の活躍

デビューからしばらくはひ弱さが目立ち、3戦して未勝利。偉大なる兄ピーターⅡの比較対象にもならない愚弟であった。
しかしその兄はカスケードとのマッチレースによって脚を壊し、菊花賞に挑むことなく引退が決まる。
兄の代わりになど到底なりえない自らの弱さを嘆くも、ピーターⅡはワクチンこそが本当に期待されている存在なのだと教える。
「競馬は1人でやるものではなく、厩舎の人や騎手、応援してくれる人達の夢を背負って走るものだ」と諭されたことで、
彼の才能は一気に開花した。

そこから2連勝し、GⅠ朝日杯3歳Sに出走。
この時から兄譲りの白いシャドーロール*3を着用し始める。
レースでは偉大なる兄を超える競走馬になるべく奮闘するも、次元の違う末脚で追い込んできたカスケードに敗北し2着。
この結果を受け、兄ではなくカスケードを超えることを目標として走ることを決める。
なお、このレースでマキバオーは3着。
これによってマキバオー・カスケード・ワクチンの3強体制が確立し、マキバオーの第二のライバルとしての地位を不動のものとした。

明けて4歳。
年明け緒戦の共同通信杯で伏兵モーリアローの罠にはまり、片前足を骨折。
春のクラシックを断念せざるを得ない状況に追い込まれる。
しかし極限の減量によって脚の負担を減らし、なんとか皐月賞への出走を実現させた。

皐月賞では脚の不安を補うべくスローペースでの逃げを敢行。
かつて兄が得意としており、後に彼の代名詞ともなる「ペースのマジシャン」としての策を初めて振るう。
しかし骨折の影響は大きく、騎手の懇願もあって直線でレースを諦め後退。
大敗を喫するとともに、ダービーへの出走も断念する。

骨折が癒えた夏、マキバオーたちとの差を埋めるべく函館記念に出走。
見事な大逃げで並み居る古馬たちを打ち破り勝利を飾る。
兄が骨折し、三冠の夢が断たれたレースで復活の凱歌を上げた。

そして秋。
「三冠相続人」の名のもとに、偉大なる兄がただ1つ取れなかった最後のクラシック・菊花賞に挑む。
レースでは「ペースのマジシャン」としての策を存分に振るい、他馬を圧倒。
サトミアマゾン、マキバオーらを打ち破り、三冠の達成を1年越しで成し遂げた。*4
この時の「兄の悲運と春の不運を乗り越えて白いシャドーロールが今三冠を達成!」は今に至るまで語り継がれる至高の名実況。
これによって彼の2つ名は「三冠相続人」から「不屈の闘将」となる。

有馬記念では2着に入ったものの、ぶっちゃけ空気。
まああのレースはカスケードとマキバオーのためにあるようなモンだし仕方ない。

ドバイWC編では作中最大の狂気とも言われる4000Mの第2Rに出場。
トゥーカッターの漢な行動により支えられ、世界の誇るステイヤー勢に対し猛追を仕掛ける。
しかし世界の壁は厚く、4着に終わってしまった。
この時のワクチンの「あいつはあいつ自身の分を走り抜いた…後はオレ自身の分だけよ!!」は名言。
というかこの辺は名言のオンパレード。

ワクチン、トゥーカッター共にこのレースで力を使い果たし、WC編ではこれ以降登場せず。
そして自力でドバイまでたどり着いたベアナックルが変わりにメンバー入りすることに…

日本に戻った後は有馬記念3着、春の天皇賞1着、そして秋の天皇賞では2着。
チート王ことブリッツと接戦を繰り広げ、世代レベルの高さを証明した。

そのあと7歳まで走り抜き、屈腱炎を発症して引退。種牡馬となる。
種牡馬入りにあたっては一口1000万円のシンジケートが組まれた。



が、続編の『たいようのマキバオー』ではなんと産駒が登場しておらず、種牡馬としての評価は芳しくないと思われる。
種牡馬としての最大の壁は同一の血統で皐月賞とダービーを制した兄ピーターⅡであろう。
作中ではピーターⅡ産駒のキングアナコンダが「ペースのマジシャン」を受け継ぎ、ダート路線で活躍している。

+ ……とか思っていたら
『たいようのマキバオーW』11巻130話(時系列は2009年夏)にて、旅行中の競馬ファンの若者の口から
さらっと「ここにアマゴワクチンの墓ってのがあるけど・・・(ガイドブックらしきものを見ながら)」という爆弾発言が……

享年は不明だが「みどりのマキバオー」当時からの逆算で最も長く生きていたとしたら13歳前後。同期のカスケードが種牡馬としてまだまだ現役、マキバオーも日本を離れ後進の育成にと精力的に活動しているのにこんなところまで元ネタとなったと思われる馬の軌跡をそっくり辿ってしまった。つくづく運の無い馬である。

しかも、どうやらその若者たちの会話からしてアマゴワクチンはマキバオーやカスケードより知名度も興味も大分劣る模様。
クラシック三冠のひとつである菊花賞を制し、病気と繁殖入りのためカスケードが、ドバイWCでの故障でマキバオーが相次いで戦線を退く中、天皇賞を制するなど3強の一角として最後まで第一線で走り続けたにも関わらずである。
確かに当時劇中ではカスケードの娘が芝の頂点に君臨し、マキバオーの名を継ぎ容姿もそっくりな甥がアイドル人気を博したり海外で勝利したり何かと話題になるので(この場面の直後若者達も友の墓参り後の彼を目撃している)、若い競馬ファンが知っているのも当然といえば当然なのだが……
恐らく、現役時代を知らないファンの間では「目立った産駒を残せていない数いる平凡な種牡馬のうちの一頭」と思われていれば良い方、悪ければ「種牡馬入りしたらダメになった名馬の典型」という凋落のイメージが先行して評価を落としてしまったのかもしれない。
このような流れは、ラムタラをモデルにしたとされるドバイWC編最大のライバルであったエルサレムも同様の道を辿っており、最終的に海外へ再輸出されている。

結局若者たちはカスケードグッズの購入を優先したためにワクチンの墓そのものが劇中に登場することはなかった。一方で別の名馬の墓参りに大勢のファンが訪れる様子が描写された。

描写は非常に短いながら「たいようのマキバオー」で顕著に描かれている競馬界の負の側面、シビアさを特に強烈に表現されたと言えるだろう。


◆余談

アマゴワクチンという名前の馬は実在している。
2010年生まれの競走馬。
父エアジハード、母サンセットポニー、母父としてダンスインザダークがいる。
兵庫県の園田競馬場に所属し、地方レースにて活躍していた。
通算成績は158戦16勝。
オッズパークのマスコットキャラクターとして駆けつけたミドリマキバオーと対面したこともあった。
2020年10月1日に地方競馬登録を抹消され引退した。

(冥ω殿)「がんばれ!ワクチン!!カッターの分まで追記するんだ!!」

「バカ言うなよ…」

「トゥーカッターの分なんてねえんだよ…あいつはあいつ自身の分を追記し終えた…後はオレ自身の修正だけよ!!」

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最終更新:2024年01月02日 07:29

*1 皐月賞と日本ダービーを勝利した。

*2 兄馬と父も母も同一であるという意。通常、競馬では母馬が同じなら兄弟扱いとなる。

*3 下方向の視界を制限する馬具の一種。自分の影を怖がる馬などに効果があるとされる。

*4 ただし本人はマキバオーに勝った事については「距離適性の差が出ただけ」と語っている。