秋山醤(鉄鍋のジャン)

登録日:2012/03/16(金) 18:53:11
更新日:2024/04/11 Thu 12:00:01
所要時間:約 56 分で読めます








料理は“勝負”だ!

誰にも負けないうまい物を作る――
それこそが料理人の心掛けであるはずだ



鉄鍋のジャン!』及びその続編『鉄鍋のジャン!R』の主人公。
「料理は勝負」を信念とする。


【概要】

外見は小柄で痩躯、鷹のような鋭い目付きをした、全身から殺気立った凶悪な雰囲気を醸し出した坊主頭の少年。*1
かつて「中華の覇王」と呼ばれた秋山階一郎の孫であり、幼少の頃から中華の真髄を徹底的に叩き込まれていた。
背中にはその時の鍛練の証として夥しい量の傷痕がある。誇りでもあり、裸を覗かれた時でも股間より先に背中を隠す。
美味い料理を作るためならばいかなる努力も惜しまず、料理の基礎である鍋振りや腕力トレーニング、皿洗いにいたるまで怠ることは決して無い。
だがそれ以外は基本的に痩せぎすの体型であり、第二回大会の特別審査員である栄養学の権威・ケペルからは「痩せすぎだ。もっと栄養を摂ったほうがいい」というツッコミと共に大量の栄養剤を渡された。
また、中華以外にも仏蘭西(フランス)料理などの調理技法にも精通しており、普通では入手がまず出来ないような食材(後述の血燕やイワタケなど)も入手でき、なおかつ使いこなせる技量の持ち主。*2
『R』にて「十三龍」の料理人アリーに「珍しい素材に頼ったハリボテ料理人」とイヤミを言われたが、珍しい食材を持ってても使いこなせるかは全くの別なのである。

祖父であり師でもある階一郎の死後、銀座にある日本の中華料理店の頂点「五番町飯店」で働くことになる。

なお、女装すると結構美人である。すぐ化けの皮が剥がれるけど。


【性格】

このように料理の腕を磨くために努力を欠かさず奇抜な調理法を得意とするといわれると正統派な料理漫画の主人公だと思ってしまうだろう。
しかしこの秋山醤、他の料理漫画だったら間違いなく悪役になっているほどに極悪非道な性格なのだ。

例を挙げると
  • 初登場時は閉店時間になった五番町に入り込みチャーハンを注文、出てきたチャーハンに粗を見つけるや厨房に乗り込み料理人を罵倒&挑発しながらチャーハンをゴミ箱へ
  • マジックマッシュルーム入りのスープで審査員をトリップさせ、採点を操作する
  • 相手の料理の欠点を突いて不味く感じるようにする
  • 朝鮮人参とナツメグの組み合わせで血糖値を下げて体を動けなくする
  • 食べると熱々のゼラチンで口が焼け爛れる春巻
  • 笑いながら跳ねる豚の首を送られた腹いせに相手そっくりの生首爆弾(脳みそに見立てた中身の具も含めて食べられる)を直接配達
  • スプリンクラーを作動させて他人の料理を水浸しにする
行動は完全に悪役の所業。

外観も外観で
  • 四白眼に鋭い目つき
  • 犬歯は牙の様に尖っている
  • デフォルトでカカカ笑い
  • 思ったことははっきり言うし、敬語は全く使わない。いつだって喧嘩上等
とまるでチンピラ悪魔のような雰囲気で描かれている。

そのため他の料理人どころか料理大会の審査員や観客にまで嫌われている。曰く、「秋山にも程がある」
ジャン本人もそれを煽るように攻撃的な言動を繰り返すため始末に負えない。
全観客を敵に回して帰れコールされている中、逆にイキイキと鍋をふるうシーンすらあった。これはジャンの「勝負できればよく観客のことは気にしない」という哲学からの行動である。

……と作中で説明されているが、五番街vs蜃気楼編にてCMで悪魔の化身扱いされるネガキャンをされたことに対し、それを見たジャンは嬉々として「大魔王様のお出ましだぜ」と笑い飛ばし*3、大会出場時には(小此木の作った)ド派手な悪魔のコスチュームを身に着け、観客席の上に立ち高笑いをしつつ「地獄に落とされたいか」とさも自分が本物の悪魔のようにパフォーマンスをする辺り、実際はジャンの趣味なだけであることも考えられる。
性格が災いして審議拒否されたり、ゴミを客から投げられたり、指の骨を折られたり、その後の料理対決でもう片方の腕を折られたりされる事*4さえしばしばあった。

ちなみに、5回ほど料理大会や勝負の番組に出ているが、勝つために手段を択ばない割に、成績は存在自体が有耶無耶になったビッグ大谷杯優勝くらいしか結果が残せていない。
初めての大会も
  • 審査員の大谷がジャンに煽られたせいでブチ切れて暴行したペナルティで退場→腹いせに0点評価(このせいで準優勝)→キレたジャンにぶん殴られる→他の審査員「まあ、しょうがない」「おあいこ」
……などという有様。
残りは
  • 大会オーナーがジャンの対戦相手の凶行にブチ切れて終了
  • 大量のハエやトンボやゲンゴロウが会場を飛び回り、ブチキレたダチョウ達が大暴れする事態になって終了
  • 霧子が(瀕死寸前の)ジャンをぶん殴って終了
……といった感じである。
一応、優勝扱いのビッグ大谷杯は、ダブルKOをやらかした筍&沢田、出落ちの見本市みたいな十三龍、ジャンに褒められるも一回戦落ちの藤田、と微妙な敵が多く、決勝戦の強敵相手でも割と余裕の勝利となっている。

とまぁ上記の通り勝つためなら手段を選ばない凶悪な性格の持ち主だが、そんな彼にも人間らしい面はある。
同僚である小此木タカオに対しては一緒にキャンプに行ったり丁寧に料理を教えたりする*5など親友といってもよい間柄。
バイクの免許を持っている為、休日ではよく小此木とツーリングしたりする事も。*6
同じく同僚である五番町霧子が野菜の飾り切りで悩んでいた時(仲が険悪になる前だが)は本当の親切心から飾り切りを教えてやろうかと言っていた*7他、霧子が風邪をひいたときには風邪に効くデザートを作ってあげるなど、全くの冷血漢というわけではない。(作った理由は「明日の試合で負けた時の言い訳にしてもらいたくないから(要約)」と言ったがために霧子を怒らせたけど)
孤独な幼少期を送ってきた故に、優しさを素直に表現できないタイプなのだろう。

また料理自体には常に真摯であり、時間と手間のかかる地味な料理でも全く手を抜かず全力で調理する。
失敗した時はいつもの強気な態度からは信じられないほどに動揺して自傷するレベルで物に当たりまくり、涙を流しさえした。

ついでに言うと、あくまでも勝つために手段を選ばないだけなので、勝負抜きなら凶悪な面は滅多に出さない。
大会の司会とカメラマンが勝手に寸胴に近づいて火傷を負いそうになった時*8は、身を挺してかばった上に水道水を全身に浴びながらも「気にするな」と言い放っている。この漫画の他の外道料理人だったら確実にキレている。
挙句にこのカメラマン、その寸胴で調理中だったラー油を勝手に味見*9とかやらかしているのだが、「味のことはまだ秘密だZE☆」みたいな内緒顔でやっぱり咎めなかった。ぶっちゃけ殴られても仕方ないのに。
もっとも、前の大会で審査員が気になる食材をつまみ食いをしようとした際は、その指目掛けて包丁を振り下ろしているので、あくまで勝負そのものに無関係な人限定な模様。

ただし日本有数の名店五番町飯店の正規料理人にもかかわらずヘボい料理を作る望月には先輩であってもボロクソに罵倒するが、よく聞いてみると「何がダメなのか」を明確に指摘して罵倒しているので相手に聞く気と改善する気があれば改善して成長できる「指導」になっている。
後に対戦した湯水スグルに対しても、根本が素人である故か、ジャンにしては(罵倒混じりではあるものの)結構言葉を選んだ「指導」になっていた。
それに対してダチョウステーキ店のオーナーに至っては、「所詮は脱サラの素人ステーキ」と馬鹿にする言葉は使うが、まだ料理人として未熟なためか罵倒は控えめにしており(打算があったとはいえ)詳しく解説しつつステーキの調理法を丁寧に教えている。
その上で「(焼き時間は肉の厚みや質でも変わってくるから)それは自分で考えろ」「反復練習も大事だ」と説いていた。
小此木に対してもそうだが、「見て覚えろ」「盗め」が常識の料理業界において、基礎からここまできっちり教えてあげるのは相当珍しいタイプである。
教え方も上手く、小此木・オーナー共にすぐに上達している。*10
このように、意外と指導者・教師に向いている側面があり、一時期は五番町飯店の料理長の座を狙った事もあったが、ジャンがトップになった五番町飯店の未来は案外明るかったかもしれない。
……現役従業員なんて「日本一の中華料理店」の座にあぐらをかいて料理の研鑽を全然しなかったり、見習いの小此木にただ殴るだけで一切の指導をしなかった有様だったし。*11
祖父の遺言で、自分と同等かそれ以上の料理人がゴロゴロいると信じて訪れた五番町飯店の当時のレベルの低さに、ジャンの失望は計り知れなかっただろう。
そんなジャンは大半の従業員からも疫病神扱いされていたが、ジャンが来てから客足は減るどころかむしろ増えている。
ジャンの怖いもの見たさもあるだろうが、ジャンの刺激により五番町飯店の料理レベルが今以上に上がったからに他ならないだろう。

そもそもの悪事にもある程度は分別があり、長期にわたって身体に害が起きえる行為(物理攻撃など)は行わない。むしろ進んで救命活動に関わるくらいには倫理観がある。
やってることも相当な知識や観察眼を必要とするため、決して楽な方法ではない。
ただそれは、高度な技術を使って比較的安全な手段でものすごく不愉快にさせてくるってことであり、これで嫌うなって方が無理あるわけだが。
本人的には「相手のハナを明かしたい」とのことなので、敢えて不利な立場になり、逆転勝利を収められる状況を作るために悪事をやっている節もある。
つまり、悪事だけで勝てるならそれはそれでよし、それを乗り越えられる腕前の強敵ならば自身の実力で完全勝利したいってことである。
どこのボスキャラだよ。

ただし、ジャンがこのような性格になってしまったのは、半分以上は祖父・階一郎の責任である。
元々のジャンは、時折両親がいない事を侮辱された時や、暴力教師に反発してキレた時はあった*12ものの、基本的には穏やかで礼儀正しい少年であり、階一郎から虐待同然のスパルタ料理教育をされていた際も、素直に従っていた。
それでも「秋山の料理」への誇りは小学生時点で完成されてはいた模様。祖父や物心付く前に失った両親との「繋がり」が料理しかないので、それで負ける事は許されないと思っていたのだろう。

だがある日、長年患っていた癌に舌まで侵されてしまった事で、味覚を失ってしまった階一郎は絶望し、薬を取りに行かせる面目でジャンを町に行かせた後に焼身自殺
これを止められなかった事で、当時15歳だったジャンの心は大いに歪んでしまう。

「癌と戦おうもせず負けた」祖父への反発から、小学生の時から抱き始めていた「どんな手を使ってでも必ず勝つ」心情に完全にシフトしてしまった。
「負け犬がー!!」と祖父を罵りながらも、ジャンのその目には大粒の涙が溢れていた……。


◆R頂上決戦



『良い料理人』は確かに良い料理を作る事ができるさ。

だが、“悪い料理人は何でもできる”んだぜ!

覚えておけ!カカカカカーーーーーッ

20歳。
そんなジャンもRでは人間としても成長し、少しだけ丸くなった。祖母の店でしごかれたのだろう。
「料理は勝負」の基本的なスタンスこそは変わってはいないが、「旨い料理は心に響くんだよ」と、霧子の「心の料理」の信念も若干ながら受け継いでいる節もある。

また、(前科がアレなのですごい警戒されたが)反則的な行為は一切やらなくなっており、常にテーマと使える食材を最大限に生かす料理を作って真っ当に勝利している。
あまりの毒気のなさに、敵キャラに嫌味まで言われた。

憎まれ口と嫌がらせ行為は相変わらずだが、比較的まとも。まあ、十三龍へは下記の恨みもあったせいか死体蹴りは容赦なかったが。

何者かに奪われた祖父から続く大事な研究ノート「秋山ノオト」の行方を追い、五番町飯店を離れて半年間単身渡米していたが、エリザの勧誘を断ったせいでトラックで轢かれて殺されかけ、そのリベンジの為にビッグ大谷杯に参加した。*13

本編とRの空白期においては霧子とは色々あったようだが、この時点でははっきりと明らかにはされなかった。
ただ、「性格は最悪だけど腕は信用してる」と言われており、相棒と言っても良い間柄にはなっているようだ。
と言うか、この時点でほとんど熟年夫婦。
せっかく佐藤田から取り返した「秋山ノオト」を霧子にパクられた際はそのでかい胸に隠されたのだが、「取れねぇだろ」と速攻で強奪を諦めている。
ちなみに、戻った後も前でも月給12万円でこき使われていたらしい。
祖父の保険金はあったであろうとは言え……ひっでぇ。
……尤も、自分の給料を語る際はいつもの笑顔だったので、あまり気にしてない可能性も。そもそも金銭や名声に拘るタイプじゃないし、どこぞの漫画家に通ずるものがある。
案外将来は霧子に尻に敷かれるタイプかもしれない……。

ちなみに、当初は髪を昔みたいに伸ばして、少年マンガの主人公らしくなったイケメン度もアップしていたのだが、気絶してる間にジャン限界オタクの小此木に勝手に刈られてしまい、坊主頭に逆戻りにされてしまった。
※本人の許可無しの散髪はれっきとした犯罪です。良い子のみんなはマネしないでね!


◆2nd

更におそらく15年程度先を描いた「2nd」では、彼と霧子との間にできた息子が登場している。

息子もまた名前が「醤(ジャン)」(以下、ジャンJr.)であるが、霧子がヤンデレ化しているっぽいのでおそらく彼女が名付けたと思われる。
彼自身は五番町飯店を離れて海外で料理長として腕を奮っているが、何があったのか霧子から恨みを抱かれているらしく、そのことで息子のジャンJr.には打倒を目指されている。
やっぱり相当霧子の尻に敷かれてたんじゃ……。


なお、子供に親と同じ名前を付けるのは戸籍法では問題ないが、実際にやると拒否されることが多い。「紛らわしい」というまっとうな拒否理由なので仕方ないが。



■作った料理

料理に関する技術・知識・執念は半端ではなく、彼の繰り出す常識外れの料理は「秋山の魔法」と称される。
例え材料と完成品が解っていても容易に再現できないものも多く、なかには自分の命が危険になるものさえある。
幾つか例を挙げると
  • カワハギの肝と調味料を一定の量で混ぜたものに白レバーを漬け込む(ちょっとでも分量を間違えると思わず吐き出す程不味くなる)
  • 空中に浮かび上がらせた餃子の皮と餡を高速で"にぎる"(『空想科学漫画読本4』によれば0.007秒で1個握っている)
  • 冷凍庫の中で無数のもやし一本一本に注射器でフカヒレと鮫のすり身を注入
  • 低温設定ながら加熱中のオーブンレンジに手を突っ込んで微妙な温度を体感して調理
などがある。
「毒料理」「キワモノ料理」というイメージが先行しがちなジャンであるが、意外にも作る料理は中華料理の基本を忠実に突き詰めたものが多い。
例えば、ウロコを取らずにアマダイを調理してウロコごと食べさせるという奇抜な料理を作った事があるが、日本料理にはウロコを食べさせる「鱗焼き」等の技法が実在しており、作中の描写はジャンが高い調理技術・知識を持っている事の証明となっている。
キワモノみたいな料理を作ることも多いのは確かだが、それと同じくらいに真っ当な料理だって作っている。

なお、2023年11月から開催されたジビエ料理店「米とサーカス」のコラボ企画で、コスト面から多少のアレンジはされたものの数点が再現されている。

◆無印


●五番町飯店編

  • 豆腐と干し貝柱の炒飯
作中で醤が最初に披露した料理で、米と干し貝柱の出汁を染み込ませた豆腐を使った炒飯。
二つのフライパンでジャッグルして豆腐の多すぎる水分を飛ばすことで「豆腐と炒飯」という有り得ない組み合わせを実現し、パリッとした揚げ豆腐の食感と干し貝柱の旨味が楽しめる海鮮風炒飯に仕上がっている。ダシに使った干し貝柱はスープとなり無駄も無い。
確かな腕前あって初めて作れる炒飯であり、ジャン曰く「ここまでやるのが「料理」」。


  • 芹菜爆肝(チンツァイバオカン)(豚レバーとセロリの強火炒め)
五番町飯店で働き出した時の夜のまかないで作った料理。
豚レバーを牛乳に漬け込んで臭み抜きをし、ウォッカを使って大火力でセロリと一緒に炒めた料理。
臭み抜きに牛乳を使ったことで、成熟した豚の内臓の濃厚な風味はそのままに、まろやかな深みを出した一品。

昼のまかないを作った霧子の間違い*14と、臭み抜きの方法を教えてやる為に作った料理だったのだが、霧子は教えてくれた事への礼の一言も言わず、「あたしのを食べた後だから美味いと感じるだけの料理」とよりにもよって逆ギレ
この時点では(言い方こそは上から目線だったが)本当に親切心から教えてやったつもりだったジャンは霧子の態度に頭に来てしまいキレ返して口ゲンカに発展。
ジャンと霧子の痴話喧嘩因縁が幕を開ける事になった。

なお、後にサメ肉料理の課題で霧子は牛乳でサメ肉の臭み抜きをしており、この件から何も学ばなかったという訳では無い事がうかがえる。


  • 羊の脳みそ入り茶碗蒸し
大谷日堂との初遭遇で作った料理。
卵とガラスープ、エバミルクに加え、軽く茹でて裏ごしした羊の脳みそを混ぜて蒸す。
仕上げに清湯スープを1cm張り、香草のタイムと香菜(シャンツァイ)*15を上に乗せて完成。
茶碗蒸しの出来は言わずもかな完璧。加えて茶碗蒸し内に仕込んだ羊の脳みそが豊かなコクを与えている。

脳みそを茶碗蒸しの隠し味として扱う常識外れの発想から、大谷も料理のタネを見抜けず、あまりの旨さに我を忘れてあっという間に完食するという赤っ恥を晒し、以後大谷とジャンの因縁が幕を開ける。

弥一から鍋を任されたジャンが作った宴会用の料理。そして同時に大失敗作
50人前という大量の料理を作るにあたって「5人前が10倍になっただけ」と考え、鶏ガラスープを10倍入れてしまったのが失敗の原因。
味見をした結果、自分の思い通りになっていなかったことに気が付き何とか調整しようとするが最早どうにもならず、しびれを切らした弥一が味見して「バカヤロウ! こんな寝ぼけた味のモノを客に出す気か お前の舌は飾り物か ええ!?」とジャンを叱責した。
ここまで高慢ちきだったジャンはその鼻っ柱をへし折られることとなり、一人密かに涙。他従業員もここぞとばかりに「いい気味だ」と溜飲を下げていた。
しかしその後、慰めに来た小此木の言葉で「大量の野菜を炒める時には大量の水が出るから鶏ガラスープは少なくすべきだった」ということに気が付き、失敗を克服したのだった。高慢ちきなのは変わらないけどね。


  • 母子焗鵪鶉(ムズジュイアンチュン)(ウズラと老鶏の富貴鶏*16
小此木との連休のキャンプで作ったアウトドア料理。

食材探しの際に捕まえたウズラ数羽と山菜、冷凍食品のお赤飯を小此木が捕まえた巨大な老鶏*17の腹の中に詰めて、富貴鶏の要領で土の中で蒸し焼いた料理。

ウズラとお赤飯いっぱいに老鶏のダシがたっぷり染み込み、山菜が爽やかに後味を引き立ててる。
まさに狙ってはできないアウトドアだからこその料理。
霧子ともこういう経験してれば、多少は関係が良くなってたんじゃないかなぁ……。


  • 竹葉牛柳(ツーイエニューリュー)(牛ヒレ肉の竹の葉包み焼き)
尾藤リュウジとの「XO醤対決」で作った料理。
端的に言えば中華風シャリアピンステーキ。
肉の旨味を増幅させる赤小玉ねぎを炒めたものをブレンドした肉用オリジナルXO醬をソースとして用いている。*18

竹の葉で包んでオーブン焼きしており、竹の葉と玉ねぎの香りで食欲を高め、下処理の段階で牛ヒレ肉を玉ねぎのすりおろしに漬けることで極上の柔らかさを実現した料理。意外と作り方自体はシンプル。

極上のXO醤を使った「だけ」の尾藤に対し、素材に合ったXO醤を使いこなした差でジャンの圧勝となった。

ちなみにシャリアピンステーキとは、玉ねぎのみじん切りに漬け込んだ牛ヒレ肉のステーキの事。
1936年に日本に来日したシャリアピンというオペラ歌手が、滞在先の帝国ホテルで「入れ歯の具合が悪いので柔らかいステーキを食べさせてほしい」とリクエストして誕生したと言われている。
意外かもしれないが日本オリジナル料理である。



●第1回全日本若手中華料理人選手権編

  • 2種のキノコのスープ
予選の「スープ料理」の課題で製作した料理。ジャンの公式戦での初料理と言える。
モエギタケの一種とフウセンタケの一種を独自のバランスで煮込んだスープ。
普通に美味しいスープだったのだが……

実はこの2つのキノコを独自の配合で組み合わせることでマジックマッシュルームのように幻覚興奮成分が発生する
そのため、一度飲むと中毒症状で病みつきになり、スープを飲みたくて堪らなくなる上にトリップした結果まともな思考すらできなくなる。
これにより審査員を狂わせて圧勝とも言える成績を叩き出したが、結果として会場の観客や審査員、参加者から壮絶なヘイトを買い、「毒料理人」のレッテルを貼られてしまった*19残当。まだ16の少年にそこまでボロクソに言う観客のモラルも最低だが……。

ちなみに、連載当時はマジックマッシュルームは合法であったが、今ではもちろんアウトである。


  • 太極鍋巴(タイヂイクオパー)おこげの二色あんかけ太極盛り)
本選1回戦・対沢田における「牛肉」の課題で作った料理。
ゼラチンたっぷりの牛すね肉を醤油・酒・豆板醤で煮込んだ餡と、アスパラ・ニンジン・セロリ・椎茸が入った塩味の餡。
2種類の餡かけを太極の形になるようにおこげにかけたシンプルな一品。

おこげのパリッとした食感と牛すね肉のこってりとしたゼラチンが良く合っており、さらにそれを塩味の野菜餡かけが爽やかに引き立てる。
肉と野菜の餡かけの旨みがおこげを揚げた香ばしい油と組み合わさって絶妙な風味を生み出した料理。

「ありふれた材料でも知恵と工夫で料理は美味くなる」という中華の真髄を体現した料理であり、審査員からの評価は高かった。
終わってみればフィレ・サーロイン等の極上部位を使用し、さらに上記のキノコスープの件を事前のマイクパフォーマンスで非難して会場全体を味方につけた沢田の圧倒的有利を覆し、168対32というとんでもない差*20を付けて圧勝。
予選とは打って変わった正攻法で沢田をねじ伏せたのは、キノコスープの件で霧子にブン殴られたのが響いたのかもしれない。「勝てないもの(食材)を使って勝つ」というのはいかにもジャンのスタイルらしいけど。
この逆張り意識溢れる反骨心剥き出しのスタンスは以後も度々続き、ジャンの料理の代名詞になっていった。


  • 鳳胎粉締(フォンタイフェンスー)(若鶏の春雨あん詰め煮)
「鶏料理」というお題で作った料理。
袋抜きして下味を付けた若鶏丸ごと1匹に春雨のあんを詰めて蒸し、醤油を塗って乾かした後若鶏をキツネ色になるまで揚げ、湯で余分な油を洗い落としたら更に1時間煮込んで仕上げた、手間暇かかった料理。
蒸して、揚げて、煮て……とジャンの地味ながらも丁寧かつ的確な調理技術の積み重ねが光る一品。

対戦相手の河原の料理と出来はほぼ互角だったが、河原がジャンの口車に乗せられたせいで味を台無しにする大きなヘマを犯した*21結果勝利を収めた。
ただし、このヘマをしてなくとも河原の料理は高級食材が自己主張し合ってる微妙な状態になっていた(それがヘマのせいでバランスが完全に崩れてしまった)との事であり、総合的な出来でどの道ジャンの勝利であったと思われる。


  • 密棗园肉燉蓮藕(マッチュウインゴッタンリンガウ)(蓮根、ナツメ、龍眼の蒸しスープ)
「蓮根料理」という課題で作った料理。
上記の3食材をザラメと蜂蜜を敷いた品鍋(ヒンコウ)*22を蒸し器で2時間近く蒸した甘いスープ。広東料理の「糖水(タンスイ)」にあたる料理。
清々しいさっぱりとした甘さに、爽やかな喉ごしの良さ、蓮根のホクホクとした歯ざわりやナツメ、龍眼のほのかな甘みが楽しめる一品。

しかしその実態は多くの試食をした審査員に極上の満腹感を与え、更に相手の大前の料理が「冷めると脂っこくなり極端に不味くなる」という欠点を突いて、時間をかけてこの料理を食べた後に相手の料理を食べると、胃腸の弱い者なら嘔吐するほど激しく胃もたれさせるという悪意の塊みたいなスープ。

ただし、先行して出した事に関してはどちらが先に出すかを事前に決められてた訳でもなく、大前がやたら盛り付け等に手間取ってたのでこれ幸いと先に出しただけ。
後攻であったとしてもこれまでの試食で純粋に満腹が近い+直前が重い料理と言う状況になった審査員を甘いデザートのようなスープで癒す形になっていたので、圧勝は無理にせよジャンの勝利は揺るぎなかったと思われる。

だがこの料理に加え、負けても仲間に暖かく迎え入れられた大前を負け犬扱いして追い討ちの罵声を浴びせるという終了後の外道な振舞い*23によって、それまでは比較的健全(かなぁ?)なライバル関係だったジャンと霧子の関係はマイナスにまで冷え込んでしまい、約二年もの間険悪な関係が続いてしまった。
色んな意味でターニングポイントとなった料理である。
霧子とはよく中国で仲直り出来たもんである。

ちなみに別の料理漫画にて酷似した戦法を使用した人物がいるが、言うまでもなく悪役であり、手口もジャン以上に悪質である。*24


  • 川貝蒸梨(ツヮンベツォンリ)(蒸し梨のデザート)
上記の蓮根勝負後での揉め事でキリコにも風邪を引かせたことへの詫びで作った料理。
解熱効果のある梨の中心をくり抜いて、咳止めの効能がある川貝母(センバイモ)と気管を癒す効能がある氷砂糖を入れて蒸したシンプルなデザート。暖かいドクダミ茶もセット。
「おまえが決勝戦で負けてもカゼを口実にしてほしくないだけ」とは本人の談。


  • 刀削麺(ダオシャオミェン)
決勝戦前半戦の「麺料理」の課題で作った料理。ジャンのオリジナルではなく実在する料理である。
連載当時は日本では出す店はほとんどなかったが、現在ではだいぶ店も多くなった。アキバでも食べられるぞ!
うどんときしめんの中間に近い、中国を代表する麺料理のひとつで、小麦粉と水だけで作った生地をステンレスの棒に巻きつけ専用の刃で削り出していくことで完成する。
麺の断面は厚いところと薄いところがある独特な形になり、厚い部分はコシが強く薄い部分ではタレやスープが程よく絡まり、塩もかんすい*25も使わないため小麦粉の甘さと旨味を最大限に楽しめる。
シンプル故に難易度はかなり高く、階一郎もこれを作るコツをジャンに教えた際は折檻抜きだった上、「体で覚えるしかないんだ」「ワシが殴っても教えることはできん技」とぶっちゃけたほど。
麺の削り出しにおいても、「周囲を囲むように鍋を配置してグルグル回転しながら高速で麺を削って綺麗に鍋目掛けて麺を飛ばす」という曲芸じみたインパクト抜群の手法を用いた。

曲芸同然の麺の削り出しながら生地の練り具合、削られた麺の太さと長さの均一性、コシの強さは当然の如く完璧。
タレは鶏とカニとエビの塩味の海鮮あん、醤油味の豚のあん、甜麺醤の味噌あんの三種類を用意したが、特にジャンのオススメの食べ方は山西省の黒酢だけを掛けた刀削麺で、黒酢はジャン曰く「秋山秘伝の百年(ビンテージ)もの」
黒酢によって純粋に小麦粉の旨味だけを存分に楽しむことができ、その深いコクとまろやかな酸味と芳醇な香りは一人の在日中国人の老審査員は故郷の光景を思い出して感動の涙を流したほど。

味そのものは絶賛され、一般審査員からは好評だったが「麺料理=小麦粉料理で、勝負は小麦の粉の味を最大限活かすもの」と解釈を間違えてしまい、オリジナルの麺料理を求めていた特別審査員達からは、「独創性がない」「今まで誰かが作っていた料理を一番うまく作っただけ」とボロカスに言われ、誰にも点を入れてもらえなかった。
なおこの低評価、大谷は一切関係無いジャンのミスに過ぎない。点が出るまで大谷は焦っていたし、ジャンが解釈違いで低評価になることは部外者の弥一も看破していたところである。
中華料理には存在しない「デザート」とセットで出題された時点で、本人の創造性が問われていると理解していなければならなかったのである。
でもせめて感動してたおじいさんぐらいは点入れてやれよ……
ちなみに、1年後でもジャンはこの結果に納得行ってない模様。

なお、別の料理漫画でもある登場人物が麺料理の課題で似たように解釈を間違えた結果、敗退している。*26


  • 鴿子型酥皮包戯蛋(ゴオズリエンスウピイパウヘイタン)(鳩型パイケース入りビックリ卵)
決勝戦後半戦の「デザート」の課題で作った料理。
前述の刀削麺で「技術のみで独創性が無い」の評価にブチ切れてシャワールームも自分の身体も血まみれボロボロになるまで暴れた末の閃きで作った、鳩の生き血を使った超前衛的デザート。

大量の乳鴿(ルウゴウ)(若鳩)から搾った新鮮な生き血に生クリーム、砂糖、コーンスターチ、薔薇の香りのする玫瑰露酒(メイクイルーチュウ)を加えて鳩の卵の殻に入れて蒸し上げて固め、コーンスターチを衣にして揚げる。
最後に揚がったモノにココナッツパウダー抹茶真珠粉*27血燕(シェイェン)*28をまぶして完成。
完成した物は鳩の形をした蓋付きのパイケースに入れられ、視覚的な期待値と楽しみを倍増させる。

材料の血が新鮮な為生臭さも一切なく、グミキャンディーのようなクニュクニュとした食感、ルビーのように半透明で紅く美しい断面、薔薇と血の複雑な香り、舌をとろかすまろやかな甘さと鮮烈な血の味を味わうことができる。
「素材を見ても作り方を見ても味が予測できない料理こそが最高」というジャンのコンセプト通り、審査員達をして「口では言い表せない未知の旨さ」「麺料理の失敗を補っても余りある」と言わしめた逸品。
血のデザートという弥一でも初耳の料理は、いくら過程が進んで完成した段階になっても味の予想がつかず、会場の注目と意識は全てジャンに向けられ、他二人はいたたまれない雰囲気の中で料理をすることとなった。
しかも、ただでさえモラルの悪いクソ観客が一時期暴徒化しかけた上、大会終了後はどんな味なのか知りたくて仕方がない観客たちが野良の鳩を捕まえようと躍起になる事態に。

ちなみに、血の味はきちんとするとの事だが、実際の所基本的な甘みの正体は生クリームと砂糖だけに過ぎない。
他にも特段珍しいものは真珠の粉と血燕ぐらいである。
それがハトの血と組み合わさるだけで大谷にモノローグで「深紅の薔薇の何とも言えない血の香り」「舌をとろかす高貴な甘さ」「これをなんと言えばええんや!?」「これこそ一生涯出会うことのなかった味」と言葉を失わせ(同時にそれを作ったのがよりにもよってジャンだったことから「ヤツは悪魔や!」と驚愕させ)、公の場で審査員としてまともに評論できなくさせたのだから、ジャンの調味料配合が神業であったとしか言えないだろう。


●VS蟇目編、五番町飯店品評会編

  • 柚子橙香肉(チャウチィチャンヒョンヨッ)(ユズとオレンジ風味のシメジ入り酢豚)
蟇目との初対決で「酢豚」の課題で右手の指を折られながらも作った料理。
糖醋(タンツウ)(甘酢ソース)に果汁100%のオレンジジュースとユズのジャムを使い、ピーマンとシメジを具にして仕上げた酢豚。
ちなみにユズのジャムは、楊がユズのシャーベットを作ろうとしたものを失敬して貰って砂糖を加えたもの。
楊「ひどい〜(´;ω;`)ブワッ」ジャン「また作れよ」
シメジと隠し味にユズを使った事で、日本人の口によく合う酢豚となった。

対戦相手の蟇目との勝負は引き分けだったが、ジャンが余計に挑発した為に、左腕まで折られてしまった。色んな意味で相手が悪い。

そして実はこの酢豚は、蟇目が中国に修行に出る前に新メニュー候補で作ったものと偶然まるっきり同じものだった。*29
ただしその頃の蟇目は「ユズには牛肉の方がよく合う」として豚肉でなく牛肉を使っていたらしい。
当時は中華料理にユズは早すぎる事と、酢豚ではなく酢牛になってしまうとの事で不採用となった。


  • 秋山式蔘鶏湯(サンゲタン)
蟇目との対決で、自分の腕を二度も折った蟇目に報復する為披露した一品。
見た目は普通の参鶏湯だが、実は朝鮮人参とナツメグを独自の配合で組み合わせてスープに大量に仕込んだ料理で、飲むと意識はハイのまま血糖値が急激に低下しぶっ倒れるという毒膳料理。
蟇目をして「どんな割合で混ぜればそうなるのかわからん」とまで言わしめたキワモノ。

なお蟇目側も、阿片(麻薬)の原料であるケシの実の中でも特に強力なモノ*30を隠し味に使った四川麻婆豆腐という劇中でも(後の五行の五行膳並に)トップクラスに倫理的にアウトオブアウトな毒膳料理を振舞った*31ことで両者共に昏倒し、勝負はドローとなった。

ちなみに、ぶっ倒れた蟇目に対して「一晩そこで寝てろ!カゼ引くなよ」と捨て台詞を残している。優しいんだか優しくないんだか……実際マジで動けなくてぶっ倒れてたわけだが。


事実上の「春巻対決」となった五番町飯店の新メニューの候補選びで発表。
ゼラチン質たっぷりのアヒルの水かきと鶏のトサカをレモングラス、ネギ、生姜と一緒に滷水で煮込んで冷やし固めたものを条切りにし、ミントを中心とした多くの香草と一緒に巻いて揚げた春巻。
熱せられて溶けたゼラチンが漏れないように普通の皮の内側に京都産の生湯葉で二重に巻いてある。
独創的で複雑な中身に反して、外見は一般的な春巻と大差ない。

最大の特徴は二重の皮に包まれた熱々のゼラチンスープ
平凡な見た目に騙されて皮を噛みしめた者は口が焼け爛れるほどに煮えたぎったゼラチンスープでヤケドしてのたうち回るハメになる。
このゼラチンスープは噛んだと同時に飲み込んで、喉で味わうのが正解。イメージ的には小籠包の春巻バージョンと考えれば分かりやすいだろう。
ベトナム料理から発想を得た料理で、体全体でのどと胃を下っていくゼラチンの熱を、口の中に残った滷水(ルウスイ)*32の味が染み込んだ水かきとトサカの食感と味わいを楽しめる料理。
加えて一緒に巻かれた香草の風味が鳥臭さを消し、フレッシュで爽やかな後味を与えてくれる。
独創性の極みと言えるこの春巻には睦十も興奮。意地になって3個いっぺんに放り込んだこともあり、あまりの灼熱感で「おはだけ」まで披露してしまった。
この料理漫画は『食戟のソーマ』ではありません。

ただし、皮を二重に巻くことから包む手間も二倍、おまけに少しでも皮を巻くのに失敗すると中のスープを閉じ込められず即台無しとなる、かなり難しい春巻。
睦十曰く「(霧子同様)春巻を超えた春巻」
店のメニューとして試採用された際には続々来る注文にこたえるために(ササミを叩いて皮にする手間が大変な)霧子共々必死になって作り続けることになってしまった。
だが、キワモノに近いとは言え、客からのウケはなかなか良かったようである。
なお、霧子からは「ヤケドするだけだ」と食べもしないで酷評された。楊と小此木はちゃんと食べたのに……


●VS五行道士編

  • 生首爆弾
五番町飯店に踊る豚の頭*33で喧嘩を売ってきた五行と大谷に報復する為にプレゼントした二人そっくりな生首。
中には爆弾が仕掛けられており、紐を引っ張ると爆発して脳ミソが飛び出すという凄惨なもの。
そのスプラッタな光景でパーティー会場を阿鼻叫喚の地獄絵図にした……

……のだが、その実態は生首を象ったお饅頭。
今で言うところのスライムまんなどのキャラまんじゅうのようなもの。まんじゅうこわい。
澄麺皮(ドンミンビィ)*34という半透明な皮で生首を作り、中には蓮の実のあんこである蓮茸(リィヨン)を脳ミソっぽく仕上げた一品。
その中にパーティー用のクラッカーを仕込んで脳ミソあんこを飛び出すようにした。
コンセプト的には和菓子に近く、和と中華のコラボ饅頭とも言えなくもない。

味も絶品で五行は(おそらく見てくれも含めて)「うまいもんだ」と絶賛していたが、ブチギレた大谷は一口も食べずに踏み潰していた。
※気持ちは分からなくもないが食べ物を粗末にしてはいけません。(そもそも喧嘩を売ったのは大谷が先)

ジャンはあくまで個人で喧嘩を買ったのだが、パーティーを台無しにされた大谷とテレビ局側が腹いせ同然に勝手に五番町飯店と結びつけ、五番町飯店と蜃気楼の対立を決定的にした。


  • 苡砂猪肚(イスアヅウドウ)(豚の胃袋の薏苡仁煮)/大蒜肚条(ターサンドウチャオ)(豚の胃袋のニンニク炒め)
「胃に効く料理」という課題で作った料理。
1品目は豚の胃袋にもち米や薬効のある薏苡仁*35、砂仁を詰めてスープで煮込んだもの。2品目は豚の胃袋をニンニクで炒めたシンプルな料理。
2種類の料理を作り効能を変え胃に効く幅を広めるのが狙いだったが、五行の「過剰に香りを演出した仏跳牆」の前に敗れた。


  • 発汗鼓粥(ファハンチーヅォ)
「涼を呼ぶ料理」という課題で作った料理。
発汗作用や発汗促進作用のある淡豆鼓・葱・生姜、解熱剤の葛根・生石膏といった発汗作用や解熱作用のある食材・生薬を大量にぶち込んで作った薬膳粥。
食べることで汗が流れるように溢れ出し、やがて脱水症状で体温が奪われ急激に凍えるようになってしまう毒膳ギリギリの料理。

試合上はもちろんジャンの負けとなったが、五行の行動に不審を抱いたジャンが、五行の料理を見抜いた上でワザと出した。
これによってジャンも五行の「本性」に気付き始める事になった。


  • 秋山式補髄湯(ブースイタン)(スッポンと豚の脊髄のスープ)
第3戦「スタミナ料理」の課題で作った料理。
スッポン1匹丸ごとと豚の脊椎を煮込んだスープ。
柔らかくプリプリとした食感を持つスッポン肉の高い滋養強壮効果、トロリとした豚の脊椎の蕩けるような舌触りと極上のコラーゲンが食べた者に活力を与えてくれる。
2種の濃厚な食材を用いながらも、上等なコンソメを彷彿とさせる上品な味わいとなっている。

……が、此処までは普通の補髄湯。
秋山が作った場合、五行の裏をかくため調理時間終了後にこっそり塩を入れているのが最大の特色。そのため丁度良い塩加減がプラスされた。
本来、中華料理の補髄湯には塩を入れずに作るため五行は動揺。
更に五行の料理が非常に甘い料理だったため密かに入れた塩の作用で「五行の料理が逆に甘すぎて食べられなくなる」という結果を生み勝利を収めた。
ただし、五行が中華のセオリーに縛られ過ぎた事も勝因の一つであり、塩を入れたところで健康には何も問題はない。
実際、和食のスッポン鍋では普通に塩を入れる。皆さんはスッポン料理の店で塩の有無で下手なケチは入れないように。


  • 長寿回春(チョンソホイシュン)(大ヤモリとサソリと龍の涙の珍品づくし)
第4戦「不老長寿」というお題で作った料理。
大ヤモリの肉とサソリをメインに、粉末にした黒サイの角、岩茸*36、赤と白のエシャロット、金針花*37、ヤモリの酒、の骨の酒、恐竜の化石の酒……といった貴重な奇品珍品食材をふんだんに使った料理。
大ヤモリの肉は油通ししたあと豆豉炒めにされ、サソリは塩茹でして乾燥させたものを油でカラッと揚げている。
選んだ食材はどれも豊富な栄養や滋養強壮効果がある*38が、目玉は1g1万円以上にもなる超希少品「龍の涙」*39を全て使い切る勢いで削る大量投入した点。

「食べる者の欲望を昂らせ生きる気力を与える」がコンセプト。
まずは珍品奇品の数々で注目を引き、次に食材が持つ薬効をフル活用させることで食べた者に身体機能を大幅に活性化させ、鼻から血がボタボタと吹き出し、肌や血管が脈打ち、横綱が四股を踏めば会場全体を揺らせる程の暴力的活性効果を持つ。
味でも地鶏のような弾力ある食感と噛めば噛むほど旨味の出る大ヤモリの肉、岩茸のプリッとした食感やシャキシャキした紅白のエシャロット、塩味で味付けされた軽いスナック菓子のような食感のサソリの素揚げ*40が美味さを引き立たせる。

……ただし「不老長寿の秘宝」を謳った目玉食材「龍の涙」の正体は鯨の胆石、すなわちカルシウムの塊に過ぎない。
超貴重品なのは確かだが胆石ということもありイメージは劣悪。
五行に正体をバラされ(審査員たちも途端に手の平返しで気持ち悪がり)危うく敗退しかけたが、五行の方はあまりにも人間の尊厳を冒涜した料理を作ったので審査員全員から反感を買い、総合的判断で「生きる欲望(希望)を湧き起こす」料理であるジャンの勝利となった。

ちなみに、「龍の涙」は架空の食材ではなく、龍涎香(りゅうぜんこう)*41という名称で実在する薬理作用を持つ食材である。
盗まれた睦十がキレるのもごもっともだが、厳重に保管してあったであろうブツをどうやって盗んだのだろう……。あと効能に関してはプラシーボ効果だと思う。


  • 南海漁村(ナンホイルウソン)(大シャコ貝とドリアンのオーブン焼き)
「天国に一番近い料理」という課題で作った最終戦の料理。
大シャコ貝の身を、ドリアン・パパイヤ・金糸瓜・各種香辛料・ヤシの実の酒等を混ぜ合わせた特製ペーストで包んで一緒にシャコ貝の殻に入れてオーブンで焼き上げた料理。
火を通すことによってシャコ貝の旨味と歯応えは倍加し、絶妙な火加減で焼いたことでほんのり甘くふくよかな味わいの快感すらある食感に。
ドリアンペーストに混ぜた青いパパイヤと金糸瓜はシャリシャリとした程よく固い食感を有し、ペーストに塩をよく効かせたことで逆にシャコ貝の甘さが引き立っている。
ドリアンの悪臭もペーストを作る過程で丁寧に下処理することで心地よいフルーティーな南国の香りに変化させ、甘味も倍増している。
盛り付けでも上の貝殻を蓋代わりすることで演出面を強化しつつ、よく香りを楽しめるように仕上げた。

一応、酒との相性が致命的に悪いドリアンを使用していながら味付けのためにヤシの実の酒も使っているので、アルコールが確実に飛ぶのに必要な加熱時間と料理として一番美味しくなる加熱時間のバランス取りが難しいのと、アルコールが飛んでもドリアンの成分は臭い以外そのままなので酒を飲みながら食べるのもNG、という弱点がある*42
五行の料理と出来自体は全くの互角だったが、「ホテル・ミラージュ」の社長の横槍やドリアンとアルコールの相性で審査員の一人を病院送りにされた事で危うく敗退しかけたが、五行の鍋の秘密*43を白日の下に晒した事で社長はマジギレ+五行は暴走+案の定のクソ観客が暴徒化した為番組は大混乱。
とりあえず小此木がドサクサに紛れて社長以外の審査員の点数をジャンに入れた為、4:1で形式上はジャンの勝利となった。


●VSスグル編

  • 春節淡雪(ツンチェタンシェ)(ニューバージョン広東風カニ玉秋山オリジナル)
スグルとの料理勝負で作った料理。
広東省版芙蓉蟹の中でも卵白だけで作るタイプのものに、裏ごししたグリーンピースを混ぜた一品。
白と緑が大理石の模様のように混じり、カニ肉の赤が見え隠れする美しいビジュアル。
卵白の軽い仕上がりの味にグリーンピースの青々とした風味が調和した、非常に食べやすく、そして食べた者に雪解けからの春を感じさせる美しい料理である。
韻を踏んだ料理名といい四季を想起させる味わいといい、ジャンにしては珍しく詩的な美意識に溢れた一品。

ちなみに、料理中にスグルが白絞油と魚油をスリ替えるというかなり外道な妨害行為をしている*44が、ジャンはそれに気付いた上で、敢えて気付かないフリしてこの料理を完成させた。


  • 烤乳猪(カオルウチュウ)(子豚の炭火丸焼き)
スグルとの料理勝負2戦目「子豚(の丸焼き)料理」の課題で作った料理。飛び入りで参加した中国人観光客が審査員となった。
実在する伝統的な広東料理の1つで、捌いた後刺股に刺した子豚を細心の注意を払いつつじっくり焼き上げて作る、シンプルながら難度の高い料理。
じっくり丁寧に完璧に焼き上げられたことで、クッキーのように皮が口の中でパリパリサクサクと砕けた後脆く儚かなく溶けてゆく極上の食感……中国人が好む三大食感の一つ(ツォエイ)*45を楽しめる。
付け合わせにグラニュー糖、マンゴーを練り合わせた甜麺醤、リンゴ味のソース、オリジナルの梅の醬を用意することで色々な味変を付けて食べることが可能。
スグルの「五穀全猪(子豚の五穀詰め丸揚げ)」に比べるとオリジナリティーこそは低いものの、「秋山の烤乳猪は中国でも滅多に食べれない最高のもの」と称賛された。

一見すると皮の「脆」に加えて同じく中国の三大食感(ヌオ)(モチモチ食感)を詰め物によって表したスグルの料理には不利なように思えるが
スグルの料理には以下の重大な欠点があり、実際は最初から勝負にすらなっていなかった。*46
  • スグルの子豚の皮は「脆」になっておらず、(スウ)*47の状態だった。「酥」も旨い食感なのだが、ジャンの皮と比べると数段食感が劣る。「脆」は炉でじっくり焼き上げない限り出せない食感であり、揚げただけでは出せない
  • そもそも子豚の丸焼きは皮を味わう料理であり、いくら「糯」の食感を出せていようが詰め物は評価の対象にならない

ジャンはスグルが上記の欠点に気づいていない≒技量はあっても根本的には素人でしかないことを突き付けた上で完勝。
日頃ジャンと対立する霧子もスグルの自滅を予期しており、「素人なんだからこれにこりて勝負なんかにこだわらず楽しく料理を作ってればいいのよ!」と追い討ちを浴びせている。ひっでぇ。
なお五番町の料理人は三大食感を聞いたことさえない素人未満ばかりである模様。楊「(勉強してやあんたら…)」

あとちなみに、中国三大食感の最後のひとつは(ホウ)
あんかけや麻婆豆腐などのトロトロなめらか食感の事である。


  • 竜肝鳳珍(ロンコンホウチン)
スグルとの料理勝負3戦目「肝料理」の課題で作った料理。
スグルの最高級フォアグラに対し、あえてそれ以下の材料で対抗するために作った。
牛乳で余分な臭みを消した白レバー*48を、裏ごしし各種調味料を加えたカワハギの肝のペーストにマリネの要領で漬けこんでカワハギの肝の味わいと風味をプラス。
さらにサンドイッチの如く白レバーを豚の背脂で挟みオーブンで焼き上げることで脂肪分を補っている。

フォアグラより脂肪分が少ない分フォアグラ以上にレバーの力強く濃厚なコクが強調されており、嫌味な匂いもなくフォアグラと互角の香り、フォアグラ以上のコッテリした味わい、レバー特有のムッチリモッタリとした食べ応えのある食感が特徴。
名古屋コーチンの老鶏丸ごと1匹を煮込んだ濃厚スープを赤酢で割って作った特製ソースとの相性も抜群。
ちなみに、白レバーに漬け込むペーストのレシピは非常に繊細で、少しでも間違うと一気に不味くなるかなりのキワモノ料理。
フォアグラ以下の食材をフォアグラ以上の味に昇華させた点だけでなく、「レシピを聞いたとしてもジャン以外には作れない」というオリジナリティを評価されて勝利を果たした。
なお審査員のフランス人からは「フォアドボライユ ポワレ エーグル トゥ ジャン(鶏レバーのポワレ、赤ワイン酢ソース、シェフ・ジャン風)」という料理名で賞賛された。ジャン「……長い」


  • 如意胡羊鍋(ニョイコヤンウォー)(子羊の煮込み)
スグルの付き人である刈衣花梨との初戦「子羊」の課題で作った料理。ざっくりまとめれば中華風ビーフシチュー。子羊だからラムシチューと言うべきか。
子羊の肩肉の臭みを取った後はネギ・ショウガ・玉ネギを炒めて腐乳を入れてコクを追加し、肉と戻した乾燥イチジクを赤ワインと鶏スープでじっくり丁寧に煮込んで完成。
濃厚な味ながらしつこさはなく、癖のある食材同士を掛け合わせていながらも、味を重ねてマイルドに仕上げることで日本人好みの味に変えられている。
ただしジャンクフードの理論を応用して脳内麻薬エンドルフィンを大量分泌させ、後を引くやめられない旨さを生み出した刈衣花梨の料理の前に敗北を喫した。
でも事実上の2対1ってのは流石に手段選ばなさ過ぎなんじゃないかなぁ、スグル……?


  • 清蒸鯛魚(チンツエンティアオユイ)(クロダイの蒸し物)
スグルの付き人である刈衣花梨へのリベンジで「魚の蒸し料理」の課題で作った料理。
セイロで雌のクロダイを蒸しただけのシンプルな料理だが、骨に近いところはミディアム、外側の火の通ったところはふんわりジューシーという2種類の食感になるよう蒸された香港における最高のレベルの蒸し方となっている。

僅かに生が残る蒸し方によって旬のクロダイの旨味が身の外に流れることはなく、ふっくらした肉の味わいと甘みを感じる旨さを最大限に楽しめる。
そしてクロダイのオスの成熟した白子に老酒と生抽で味を整えたタレを使うことで、雄雌両方のクロダイに旨みを味わえる。
ただし一見すると生焼けに見えてしまうレベルで日本ではこの蒸し方は馴染みが全くなく、香港人の食通向けの料理に近い。


●第2回全日本若手中華料理人選手権編

  • 紫雲全鴨(スウンチェンヤアー)
実質第2回大会の前哨戦となった大谷の番組で、「鴨料理」の課題で作った料理。
鴨丸ごと一羽の旨味が詰まった血のスープとコシの強いシンプルな手打ち麺を組み合わせた鴨南蛮そっくりの見た目の料理。
具は鴨肉のローストと塩コショウして和えたニラ。
鴨の骨から絞り出した大量の血に少量の熱いスープを注ぎ、そこにナンプラー、熱々のネギ油、茹でて裏ごしした鴨の脳味噌のペーストを混ぜて、すりゴマのようなコクと濃厚さと奥深い旨味を生み出している。
鴨の脳は個性の強すぎる各食材を一体化させ纏め上げる効果もある。
そして素っ気ないほどにシンプルな太麺が濃厚すぎる程のスープを最後まで美味しく食べさせてくれる一品。


  • 上湯炒飯(ショントンツァオファン)(スープがけチャーハン)
第2回大会予選「指定された米で日本人の口に合う炒飯」という課題で製作。
水分量の少ない古々米をセイロで蒸して水分を補った上で炒飯にし、金華ハムを加えた極上の上湯スープをかけたお茶漬けみたいな炒飯。
なお調理の段階で周りの調理台のガス管を潰してガスを自身の元にのみ集中させることで得た超大火力で思いっきり炒めているのが最大の特徴。
下手すれば米が黒焦げになるどころかジャンすら火傷しかねないほどの爆炎で余分な水分と油を吹き飛ばして米1粒1粒をパリッと仕上げたため、スープにつけてもスープに油が浮かず、米もふやけないままずっとパラパラしているのも特徴で、サラサラと胃もたれせずあっさり食べられる。

ただし調理の過程で発生した大火力によりスプリンクラーが作動し大量の水が降り注ぐよう計算しただけでなく、上湯炒飯自体が非常にさっぱりとしているため下手な腕の選手が普通に作った油まみれの炒飯では胃もたれして不味く感じてしまい食べられなくなってしまう。
スプリンクラーによる水で他選手の炒飯を台無しにし、仮にスプリンクラーを乗り越えても今度は上湯炒飯以降の炒飯が不味く感じてしまうという2重の罠が仕込まれた悪意ある炒飯。
ただし、ジャンのブロックの一部の料理人が、「チャーハンなんて誰が作っても同じ」「たかがチャーハン」とかつての望月みたいな不真面目かつ料理を冒涜するような発言をしていた為、それに対する報復的な意味合いもあった*49と思われる。
しかし逆に、この炒飯の罠をクリア出来た料理人こそが予選通過資格があると言え、多すぎる参加者への「ふるい落とし」としても作用した意味では、結果としてはかえって都合が良かったと言えたかもしれない。*50


  • 白汁石鯛鍋(パッチャセッテゥホゥ)(イシダイの豆乳スープ石焼き鍋)
一回戦「豆腐料理」の課題で作った料理。
焼いた石を土鍋に入れた石焼き鍋で、花火のような爆音がなるインパクト抜群の鍋。
スープは豆乳と上湯スープで作られており鍋のメイン食材はイシダイ。
脂ののったイシダイに合うさっぱりとした味、石鯛の身もしまって美味しさがあり、豆腐も石鯛の旨味が染み込んでいる。

ここまでだと、審査員に「石鯛の魚料理」と判断され超低得点になってしまったが、この料理の真髄は鍋が熱せられた石によりで煮詰まることでイシダイと豆乳の旨味と香りが濃縮され濃厚になったスープと、鍋の〆として投入された豆腐で作ったソーメン。
豆腐ソーメンには梅が練り込まれることでさっぱり感も加わり、煮詰まった鍋の極上の香りが食欲をそそらせる一品。
〆のソーメンを豆腐ソーメンだと気付かず、ひと口食べるどころか箸を付けさえしなかった大谷に半ば扇動される形で試食拒否され、一時期は低得点を付けられた*51が、その誤解が解けた後は大谷以外は即前言撤回し、豆腐料理として認められたこともあって打って変わって高得点となった。

ちなみに、現在では豆腐ソーメンは商品化し、コンビニでも販売されている。


  • 北京平安水餃子(ベイヂンピンアンスイジャオズ)(大根入り水ギョーザのジャン風かざり)
第二回戦「制限時間60分以内+審査員合計55人分の餃子」の課題で作った料理。
通常サイズの水餃子の上に小指大の揚げ餃子を盛り付け、香菜とタレを掛けた2つの餃子からなる一品。
陸一族の「にぎり」を進化・発展させた「秋山醬式ギョーザ包み改」の圧倒的なインパクトに加え、盛り付けもテンポよく豪快でパフォーマンス性も高い。

具は2つとも肉に大根おろしとカレイの干物の粉末を混ぜた物を使用。
水餃子のツルツルとした食感と揚げ餃子の香ばしい食感の2種類を味わうことができ、掛けられたタレが食感に新たなアクセントを加えている。
味の面でもカレイの干物の粉末が香りと旨味を高め、大根おろしのジアスターゼが胃もたれを防ぎながらさっぱりした味わいをプラスしつつ肉の甘味を強化し柔らかなものに変えた。
大根おろしのせいで下手をすればサッパリしすぎている水餃子も、揚げ餃子の油の重厚感が加わることで皿の満足度を強化している。


  • 飲めるラー油/ラー油炒飯
三回戦「21世紀の新しいオリジナル調味料」の課題で作った調味料。
唐辛子本来の旨味と香りがたっぷりと詰まった特製ラー油。
辛さを補う一味唐辛子の辣粉と韓国産の最高級キムチ用唐辛子の辣粉をブレンドして使う事で、普通のラー油にはない桁違いの旨味と深い香りがある。勿論底に溜まった唐辛子の粉も旨い。
油も白絞油に陳皮・八角・花椒・桂皮で香りを付けたものを使用し、唐辛子の粉は水ではなく桂花陳酒*52で練るなど手が込んでいる。
飲むと素晴らしい香りが鼻を抜けて口一杯に脂の旨味が広がり、そして最後に喉の奥に程よい辛味が残る。
下記の炒飯以外でも炒め物はもちろん和え物、つけダレなども格別に美味しくなると断言された万能調味料である。

『ラー油炒飯』は上記のラー油を米が真っ赤になるまでドバドバ大量に中華鍋にぶち込んで炒めたシロモノ。
具は溶き卵、レタス、大根の醬油漬けと極めてシンプル。
見た目は米のひと粒ひと粒がルビーのように美しく、一口食べれば辛さを越える旨味と素晴らしい香りが口の中いっぱいに真っ先に広がる辛口炒飯であり、具醤油漬けの大根の漬物が味を引き締めているので油のくどさも一切ない。
特別審査員のミケロッティ本郷にして「世界中の人間に受け入れられる」と言わしめたシンプル・イズ・ベストな逸品。

ただし、調理中は飲めるラー油だと言わなかったため、真っ赤に仕上がっていくおそらく激辛であろう炒飯に審査員は恐々とし、また大谷扇動で試食拒否された。またかお前は。
だがネタばらしして食べた途端、即落ち二コマの如くその美味しさに夢中になり、何度もおかわりをねだって絶賛した。(大谷も意地を張って点は入れなかったが夢中になって食べていた。しかも微妙に隠れながら。)
対戦相手の陸顔王があまりにも高級食材であるネズミハタに頼り過ぎたという弱点を突き、大谷を敵に回してるというハンデがありながらも圧勝してみせた。
なお、黄蘭青の極辛透明ラー油との対決では、「調味料の味そのもの」では黄の勝ちだが、「調味料としての万能さ」はジャンの勝ちと言え、実質的には引き分けである。

この飲めるラー油に限りなく近いものが、現在我々のよく知る「食べるラー油」である。
食品メーカーの桃屋から「食べるラー油」が発売されたとき、この炒飯を再現しようとした人も多いと思われる(基本的には同じなので、量があれば充分再現可能)。
「食べるラー油」が大ヒットし、今では定番化して広く愛される調味料になった事を考えると、ジャン(とおやまけいこ氏)は先見の明があったと言えるだろう。
その気になれば、これの特許でジャンは莫大な利益を得られたかもしれない。

ちなみにこの飲めるラー油の元ネタは監修のおやまけいこ氏が六本木にあった四川料理の店でオーナーシェフから教えてもらったもので、文庫版にレシピが掲載されている。
腕に自信のある方はお試しあれ。レシピの分量は業務分量なので注意。


  • 油爆海鮫(サメの丸ごと一匹揚げびっくりもやしのあんかけ)
準決勝「サメ肉料理」の課題で作った料理。
生きた鮫を丸ごと一匹揚げて、たけのこシイタケニンジン・大量のもやしなどの野菜を混ぜた黒酢風味のあんをかけた特大料理。簡単に言うと鯉の丸揚げ甘酢餡かけの鮫バージョン。
生きたまま揚げたため鮫特有のアンモニア臭は全く無く、水分も程よく蒸発して食感も良くなっている。
そしてあんかけに使われているもやしには一本一本味を含ませたフカヒレ、そして注射器で鮫肉のすり身が入れられており味と食感がそれぞれ二重で増幅されている。
調理法こそ豪快かつ尋常で無いほど過酷だが、実際の所特段珍しい食材は一切使っていない。

パリッと香ばしく揚がった鮫肉、野菜たっぷりでのど越しの良い醤油と黒酢のあん、野菜と一緒に混ぜられたプルプルとした魚唇(サメの唇)、何よりフカヒレ入りもやし、すり身入りもやしの2種類による「味と食感にダブル二重食感」が合わさった驚愕の一品。サメ一匹乗るほどの巨大皿もすごい。
この二重構造もやしは、油で揚げたもやしのシャキシャキ感を軸とし、フカヒレ入りの方で奥深い味わいと食感を増幅し、すり身入りの方でやさしい味わいと食感を倍増させる効果がある。
そして黒酢の風味は全体の料理の味を引き締める効果がある。

その出来は、あの黄をして「この料理をおかわりしない人間はこの世にいない」とまで言わしめ、*53
  • 豪快かつダイナミックでスケールの大きい料理(ケペル)
  • 「美」と「醜」は表裏一体。グロテスクな美しさがある(ミケロッティ)
  • 本来ならば100点満点を付けてもいいぐらいの完璧な料理(崔会長)
……と、特別審査員からも絶賛されたが、その為に会場の色んなものを壊しまくってしまった*54為、特別審査員からは1点ずつ、計5点だけ減点された。*55
とは言え、あの大谷でさえも試食拒否せず、(ケペルから「神の舌は裏切るなよ」と耳打ちされたこともあり)自分の舌を裏切れずに正当に点数を入れたという事で、この料理の凄まじさが分かるだろう。

ちなみに、ジャンはこの料理を作るにあたり
  • 水槽の中で元気に泳いでいた鮫を、自ら水槽にダイブして中から水槽外へと蹴り飛ばすってどんな筋力をしているんだ
  • 会場の中を縦横無尽に駆け回り、料理の為の道具をDIYで作り出す
  • 気の遠くなるほどに細かいもやしの仕込み作業を極寒の冷凍庫の中で防寒着もなしで行う(その為ジャンは危うく凍死しかけた*56
  • 自分に油がかかるのもお構い無しで鮫を油のプールで生きたまま揚げる
  • 丸々一匹の鮫の丸揚げにあんをかけてもっと重くなっている料理にもかかわらず料理を審査員の机まで一人で運ぶ(見ていた審査員が「ちょっと大丈夫!?」「誰かに手伝って貰った方が……」と本気で心配していた)
……などなどのリアクション芸人の如く体を張ったムチャクチャな調理をした結果、審査後に体力が尽きてブッ倒れた。残当。
だが、そのムチャクチャながらも真剣に料理に取り組む姿勢は、今までジャンを一方的に敵視し続けたクソ観客も彼の事を見直し始め、あの大谷もこの料理以降、『審査員の立場で正々堂々戦うあと決勝の秋山の料理もちょっと食べてみたいという姿勢になり、心境の変化が訪れ始めた。

なお余談だが、「もやしにすり身を仕込む」という技法は、ジャンオリジナルでなく、なんと宮廷料理に実在する技法である。*57
スゴいね中華料理。


  • 義大莉而鳥苗鳥肉(21世紀の生き残りをかけたダチョウ肉のカルパッチョ)
無印におけるジャン最後の料理で、決勝戦「21世紀の中華料理」+「ダチョウ肉料理」の課題で作った料理。
「21世紀は食糧難(サバイバル)の時代になる」というコンセプトで作った21世紀のためのダチョウ料理。
簡単に言えば昆虫食+ダチョウ肉の中華風カルパッチョ。
「食糧危機の時代に手に入る食材」として食用ミミズ・ゲンゴロウ・トンボが、野菜ではモロヘイヤ・アルファルファ・クロレラがトッピングとして使われている。
そしてダチョウ肉は「魔法の箱」と呼ぶ道具に吊るし放置することで自動的にサシが追加され、本来ダチョウ肉ではあり得ない霜降り肉のような見た目になった。

しかし単なる嫌がらせのゲテモノ料理などでは決してなく、ミミズや昆虫達は泥取りや羽根取りなど丁寧な下処理をしっかりして油で揚げることで視覚的なマイナスイメージを消しつつ、シャリシャリと小気味いいクリスピーな食感に。
中でもミミズは豊富なコラーゲンにより鶏肉の煎餅と例えられる旨みを持つ。
メインのダチョウ肉は餅のようにムッチリと吸い付き尚且つ弾力あるマットな肉質を生かすために生で調理。
サシの入ったダチョウ肉は肉本来の繊細な味わいを損なうことなく「ミルクのよう」「マグロの大トロ」「チーズ以上にクリーミー」と評されるほど上品かつミルキーな甘さを持つ濃厚な深い味の霜降り肉に変貌し、噛めば噛むほど味が出るほどにダチョウ肉そのものの旨味をアップさせている。
生で調理したので火を通すよりもずっとしっとりと柔らかいという利点も有していた。
新鮮な野菜の小気味よいパリパリ食感は嫌らしくなりかねないほど濃厚すぎる生肉の生臭さを上手く消してサッパリ感を出すのに一役買っており、中華料理を意識した豆板醤と黒酢のドレッシングで味がよりピリッと引き締められている。
栄養面においても、高タンパク低カロリーのダチョウ肉、栄養満点なモロヘイヤ・アルファルファ・クロレラ、アミノ酸の塊の食用ミミズ、食物繊維やビタミン等の栄養素豊富なトンボ・ゲンゴロウという、「食糧難」の時代にはとても有難い料理であると言える。
ジャン自ら「たとえ21世紀が暗黒の時代でも オレはウマイものを探し出して料理してやるぜッッッ」とまで豪語したほど。

霧子も黄も、料理の出来こそは素晴らしいものの、どちらもテーマ食材である「ダチョウ肉」を活かしきれたか微妙なラインだったのに対し、「唯一、肉に味わいを加えるのではなく肉の旨味そのものをアップさせた」という点も含めて審査員からも大絶賛された逸品。
その衝撃的な反響は、特別審査員に食われるより前に少しでも多く食おうと一般審査員がなだれ込んで肉を奪い合い貪り食うほどであった。


◆R頂上決戦


●ビッグ大谷杯→ビッグ秋山杯編

  • 軟膀蟹包子(丸ごとソフトシェルクラブ入り中華まんじゅう)
Rの序章で、中国の特級調理師相手に無理矢理口にねじ込んで振舞った料理。
中に上海ガニのソフトシェルクラブ*60の唐揚げが丸ごと入ってる豪華な中華まん。
中華まん生地のフワフワ感とソフトシェルクラブの唐揚げのカリカリ感のダブル食感に加え、五香粉でカニの生臭さも綺麗に消しており、隠し味として混ぜたカレー粉が食欲を刺激する逸品。


  • 超力招来担々麺
Rの予選「担々麵料理」で披露したチン珍料理。出された時の見た目は、でかいトウガラシが乗った汁なし担々麺。
『R』の頃には劇物料理人の評判が広まっていたため、実食フェイズの前に検査フェイズが発生した。残当。
唐辛子はカード・チリ*61という珍しい代物で、これを手で粉々にしてまぶして食するというもの。
坦々麺本体は普通の小麦粉の麺と、ゼラチンとお酢、醤油と黒ゴマを混ぜて麺状にしたものの2種類で構成されており、口の中で坦々麺が完成する。
また、油はゴマ油を中心に数種類の油をブレンドし、滋養強壮効果のある複数の食材が漬け込まれたオリジナル。インドのマッサージであるアーユル・ヴェーダのセサミオイルを料理に取り入れたらしい。

味は程よいピリ辛でもちろん絶品だが、何よりその栄養効果は抜群で、体がハッスルしすぎてたちまち鼻血が噴出した。そのせいで、「また毒物か」とか言われてしまったが、まあ仕方ない
さらにはプラスチックの丈夫なボードを握力で粉砕し、一部の審査員の股間は直径が2ケタ近いと言うレベルに超進化を遂げた。
あんなギャグマンガでもお目にかかれないほど壮絶な勃起は、多分早々忘れられない。


  • 荷葉糟蛋鶏塊(龍崗鶏とハトの卵のハスの葉包み・幻の糟蛋風味)
鶏卵から魚卵、爬虫類にいたるまで古今東西のありとあらゆる種類が準備された卵を使って料理を作る一回戦「卵料理」で作った料理。
広東省の地鶏・龍崗鶏(ロンコンカイ)の肉とハトの卵をハスの葉で包んで蒸し、仕上げに葉を開いて熱した油をかけた一品。
それだけならオーソドックスな中華料理だが、味付けに糟蛋(ザオダン)という卵食品を多く使ったことで濃厚な香りと味を付けた極上の料理となった。
その美味は、海千山千の審査員達(あの大谷でさえ)も、一時期審査を忘れて陶酔してしまった程。

この糟蛋は簡単に言えばアヒルの卵の粕漬けみたいなもので、四川省に伝わる実在する伝統技法。
アヒルの卵を加工して作るものだが、あまりに作り方が難しすぎて(後述)後継者がほとんどいなくなってしまい、幻の一品となってしまっている。
そのためジャンですら準備されている卵の中にあるのを見つけたときは驚愕し、審査員の一人だった大谷日堂も食べたのが50年ぶりで中々思い出せなかった。*62


(怪我で失神しそうなので)割り込んだのを違反扱いされて試食前から大谷に失格にされそうになったが、佐藤田の横槍で審査を受けられる事になり、終わってみれば残った選手間どころか一回戦中最高得点で残った料理人を蹴散らして勝ち残れた。*63


  • 頂瓜原味球節鰕
実質的にエビチリ対決となった二回戦「エビ料理」で作ったクルマエビのエビチリ。
一見すると殻付きなのに味付けに肝心の頭がなく食べづらいだけの中途半端な料理に見えるが、実はエビのすり身をつくって殻に詰めなおして揚げた一品。
エビのプリプリした食感は失われているものの、クワイや豚の背油で味を補強したすり身とエビ油を使ったソース、揚げた殻の香ばしさによってエビの旨味を存分に楽しめる。
さらに300尾のクルマエビから抽出したエビ油とエビミソを使うことで、普通ならあり得ない程に味が凝縮された一品となった。

観戦していた弥一には「秀逸なエビチリ」と褒められながらも、同時に「いったいいくらかかるんだ、店では出せんぞあんなの」とも評されている。


  • 原澳地香灼金草牛(超熟グラスフェッドの熱々スープがけ ワイルドオーストラリアの香り仕立て)
決勝戦「オージービーフを使った牛肉料理」で披露した料理。
牧草で育ったグラスフェッドの半身肉に果物のペーストを塗った上で加熱した炉の余熱で温め、超熟成状態にしたものを使用。
肉の3分の2を炉でミディアムレアに調理してそのうち中心の一番良い部分のみを切り分け、残り3分の1で出汁を取った熱々のスープを肉にかけて食べる。
日本人好みではないグラスフェッドが非常に食べやすくなっていて、一口食べるごとに肉本来の旨味に魅入られていく。
実は隠し味としてグレートビクトリア砂漠の岩塩やオーストラリア開拓時代のパン風に焼いた餅を使用しており、ペーストに使った果物もオーストラリア産。
料理全体でオーストラリアを感じさせる一品に仕上がっている。

最終的には牛肉料理としては他の決勝戦メンバーと同じ満点レベルであったが、「オージービーフ」という課題においては抜きんでているという責任者裁定が下って優勝となった。


  • 玉龍雪山喧賭肉(秋山流岩石酢豚ガツの詰めもの丸ごと揚げ)
「酢豚」の課題で作った料理。

名前の通り、豚の胃袋(ガツ)に肉と野菜を詰めて揚げた酢豚で見た目は岩石の塊のようであり、それを切り分けてあんをかけて食べる。
ガツは丁寧にした処理したうえで揚げる前に煮込んでおり、臭みもなくガツの食感も味わえる。
味の決め手としてあんに使用した酢はジャンの祖父階一郎秘伝の黒酢であり、そこに隠し味としてチョコレートを加えることでガツに合うビターさをプラスしている。

ガツ詰め酢豚というアイデアは元はジャンの父親が残したものであり、それをジャンが形にしたうえで独自の工夫も加え祖父の黒酢も使用したという、秋山家三代の歴史の一品。


  • 水盥雷神龍(ウツボと龍瓜の辛味煮タライ盛り)
「水料理」の課題で作った料理の一品目。
ウツボの水煮をトウガラシや山椒で激辛に味付けした四川料理。
超軟水で煮込んだことで弾力やクセがあるウツボが非常に柔らかく食べやすくなっている。
また、スープではなくあえて水のみ、それも抽出力の高い超軟水で煮込んだことからウツボのダシが煮汁によく出ており、激辛かつウツボ本来のうまみが引き出されながらもスッキリとした味わいに仕上がっている。


  • いろいろ野菜と姿クラゲの和えもの
「水料理」の課題で作った料理の二品目。
野菜とクラゲを和えたものだけでなくクラゲのカサを器と見立てて野菜を盛り込んだ物も用意されており、さまざまな食感が楽しめる激辛の一品目の後もあって非常に食べやすい料理。

この料理の水料理としての特徴は和えダレを適度に水で割って口当たりよくしているところなのだが、使用した水はなんとただの水道水
日本の水道水は世界一安全でおいしいとはいえ、対戦相手が徹底的に水に気を配っていた中で蛇口をひねっただけの水を使用したというのは審査員や観客の度肝を抜いた。
『R』に入ってから態度はともかく、料理自体は割と真っ当に作っていたジャンが久々に見せた人を食った料理ではあるが、小難しい理屈なしに水で薄めるだけという原始的で単純ではあるが効果的な水の使い方は審査員にも高く評価された。
また、上記の通り相手である佐藤田十三が徹底的に水を管理して作った料理のカウンターであり、それがただの水で割っただけという事実は勝負慣れしてない佐藤田のメンタルに多大なダメージを与えた。


●五番町飯店復帰編

  • 本場の皮付きモモ肉の回鍋肉(仮)
五番町飯店に復帰したジャンが最初に作った料理。
店で出している日本人向けのオーソドックスな回鍋肉とは異なる、本場四川で愛されている回鍋肉。
茹でた皮付きの豚モモ肉を反り返るほど炒めてから甜麺醤を入れ、さらに肉から出た脂で葉ニンニクを炒め合わせただけのシンプルな一皿。
しっかりと炒められた豚肉はうま味が凝縮しており噛めば噛むほど豚肉の味が引き出される状態で、葉ニンニクには豚肉から出た甘い脂が絡まって格別な味となっている。

試食した李は「日本人にはまだ早すぎる」と前置きしつつ「本場の回鍋肉を知った上でうちのを作るという意識が大切」と述べ、五番町弥一もまた「料理は変化するものだが、ルーツを知らずに変化させ続けてしまうと全く別な料理になってしまう」と、元となった料理を知る重要性を述べている。


  • 九龍飄香回鍋肉(無限大の風味をまとった駱駝(ラクダ)の瘤の回鍋肉)
ジャン曰く「地球的拡大解釈」
回鍋肉というのが「ゆでた肉をもう一度鍋に戻して調理したもの」という意味であることから、「肉でさえあれば何でもいい」という解釈から生まれた。
脂身の塊である駱駝の瘤と年代物の四川のからし菜の漬物という癖の強い食材同士を合わせている。
更に味付けとして駱駝の瘤専用のオリジナル醤を作成して混ぜ、隠し味にマジックスパイスウォーター(香辛料の煮出し汁)をオリジナル醤に入れて味を引き締めている。
伝統的な歴史ある数多の調味料を合わせた一品。
複雑怪奇な奥深さと、料理を飲み込むたびに優しい香りを感じられる絶妙な旨さを持つ料理。


  • 沙沙稜稜蟹皇烤魚翅(サクサクの春巻の皮の器に仕込んだフカヒレのカニの餡かけ仕立て~中華の覇王風~)
「1皿1000円のフカヒレ料理」というお題で作った料理。
「1皿1000円」への回答として1皿1レンゲ盛りに仕上げてある。
春巻の皮の中に金華ハム、椎茸、フカヒレを挟んで盛りカゴを作り、カゴの中には金華ハムベースのスープをくどくならないギリギリのラインまで煮詰めた餡とカニの卵を盛り、レンゲの底にはシャキシャキとしたもやしが仕込んである。

一口頬張れば餡のかかった場所とかかっていないパリパリした皮の2つの触感を味わえ、そして次に春巻の皮の中の具材が顔を出し、次にカゴの中にある餡が顔を出し、最後にもやしのシャキシャキ感で締めくくる。
即ちフルコース料理を1レンゲにまとめた驚きの料理。
絶妙な温度調整が必須となるため制作には低温火傷を負ってまで素手でレンゲを持ってオーブンに手を突っ込み盛りカゴを調理していた。
他の面々が普通の料理を1レンゲ分に調整したもので結局1000円分では満足に至らないものだったのに対して、こちらは1000円で満足できる品となっており、料理勝負はジャンの勝利となった。



ハハハーッ よっしゃこれでOK!
やっぱ ちゃんと追記・修正(ケリ)はつけておかないとねー

なにやってんだよ小此木………

ハハハ――ッ もう行こうよ ジャン
これで終わりだ キミの項目の勝ちィ――!!

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最終更新:2024年04月11日 12:00

*1 ちなみに坊主頭は祖父・階一郎の死後に丸めたものであり、それまでは普通の髪型をしていた。

*2 まだ当時16歳のジャンにそこまでのコネクションがあるとは思えない為、これらの食材は階一郎が遺産として遺してくれていたものと思われる。

*3 普段ジャンが笑うときは口は笑いつつも目つきは鋭いが、この時のジャンは珍しく目も笑っている。

*4 尤も、折った相手は傲岸不遜で他料理人に暴力を振るうのに躊躇がない蟇目なので、挑発に対する報復として明らかにはやり過ぎである。

*5 この時はべた褒めされた嬉しさから、言われるよりも早くお代わりを出している

*6 どちらも年齢は16歳なので初心者ライダーのはず。

*7 後に霧子が自分の力で飾り切りをマスターした時は、「流石だぜ」と言わんばかりの嬉しそうなドヤ顔を見せている。

*8 すでに作り終わっており、火も止めてあったため撮影のために近づいたのだが、良いラー油を完成させた場合に発生する『ゲップ』により内容物が噴出したため。

*9 カメラにかかってしまったラー油をぬぐった際についでに舐めた。

*10 特にオーナーは、閑古鳥が鳴いてた店がたった2、3日で客足がかなり戻ってきている。素質もあったのだろう。この分ならジャンの言った通り近い将来「ダチョウ通り」でメインを張れそうである。

*11 主に望月のことだが。ベテランの柏原さんはまだマシな方であったが、当時は霧子ですら「技は盗むもの」と全く教えようとしなかった。後でこっそりヒントを出すつもりでいたようだが……

*12 しかもこの教師、家庭科の授業でジャンが授業内容よりも高レベルな料理を作ったと言うだけで暴行するような、今なら懲戒免職&逮捕モノのクソ教師である。

*13 なお、当初は大谷とエリザが共謀して自分を殺そうとしたと誤解していたが、大谷がエリザの要求を突っぱねたのを見て、その誤解は改めている。

*14 霧子は臭みがないという理由で子牛の胃を使ったが、成熟してない牛や豚の内臓は、臭みがない分味もない。かつ、霧子はかなり面倒な方法で臭み抜きをしていた。

*15 コリアンダー。タイ語で言うところのパクチーのこと。

*16 別名こじき鶏。ニワトリを泥で覆い固めて土の中で蒸し焼いた料理。調理道具をろくに買えない物乞い(こじき)が作っていたが、時の皇帝に気に入られて莫大な財を授けられた事からこの名が付いたと言われている。

*17 養鶏場から逃げて野生化してデカくなった

*18 ちなみにジャンは肉用の他にも、魚介用と野菜用のXO醤も作っている。ちょっと気になる所である。

*19 霧子も「こんなの「料理」じゃない! 「毒」だ!!」と激怒して殴った程。そのまま失格扱いになっててもおかしくない展開だったが沢田のパフォーマンスで幸か不幸か本選進出となった。

*20 ジャンが大谷をうまいこと解説役として利用したのもあり、沢田の料理は「高級食材を使った、旨くて当然のごちそう」でしかないと判断された。

*21 仕上げのあんに味見もせずに余計なひと手間を加えてしまった

*22 ふた付きのスープを盛る器。

*23 一応、言葉こそアレだが「周囲に甘やかされてないで独立して修行しろ」と言ってるようにも見える。が、そんなに大前が嫌いだったのだろうか……。

*24 「上海ガニ料理」の課題で、先攻して審査員に超高濃度のカニスープを飲ませて、後攻のカニ料理の味を分からなくさせた。しかも直前に色仕掛けで審査員を惑わして先攻を決めさせたので、たまたま先攻を取れたに近いジャン以上に悪質である。

*25 ラーメンの麺によく入れられる、アルカリ塩の事。

*26 「否麺(麺であって、麺にあらぬ)料理を作れ」という課題で、主人公含めた他の挑戦者が小麦粉以外の食材を使って麺料理を作ったのに、その人物だけ従来通り小麦粉を使い、形を変えただけの麺料理を作ってしまった。

*27 アコヤガイの真珠質を粉にしたもの。れっきとした漢方薬である。

*28 燕の巣の中でも最高級の赤い燕の巣。燕の巣を作るアナツバメの唾液に血が混じったもの…と言われていたが現在はその説は否定されており、たまたまミネラルや鉄分が他のものより豊富な燕の巣が、時間と共に赤く変色したもの、という説が現在有力。恐らくは上記の通り、階一郎が遺してくれていた品なのだろう。

*29 年長者の柏原が思い出したことにより発覚。当の蟇目はまるで記憶になかったらしく、特に気にしていなかった。

*30 一般に食材として出回っているケシの実は成熟すれば麻薬成分は含まれないが、コレは蟇目曰く成熟しても麻薬成分が消えない、中国奥地で違法栽培されていたという激ヤバな代物

*31 蟇目はこの料理でジャンを麻薬漬けにして従えるつもりだった。まさに外道。

*32 水に砂糖、醬油、八角などの各種香辛料を入れて作った調味液。

*33 豚の頭のローストに振動ボールと笑い袋を仕込んだもの。ちなみに豚の頭のロースト自体は美味しくいただきました。

*34 片栗粉とラードと浮き粉を熱湯で混ぜたもの。それに色粉を混ぜて色を付けた。

*35 ヨクイニン。ハトムギが原料の漢方薬。

*36 断崖絶壁にしか育たない茸。茸とあるが、実は地衣類というコケの一種である。

*37 ワスレグサ、カンゾウとも言う。生薬として使われる。

*38 サイの角に関しては当該項目参照。

*39 ちなみにこの「龍の涙」はこれも階一郎が遺した品……ではなく、睦十オーナーの会長室からこっそり借りた品。従業員「ドロボーだよそれ!」

*40 サソリの毒は血中に入ると危険だが、食べて胃液を通して吸収されると薬になるとのこと。実際の食用サソリも毒針を抜くなどの加工・熱処理はしてある。

*41 英名・アンバーグリス。主に香料として使用される。『こちら葛飾区亀有公園前派出所』196巻でもネタにされている。なお、中でもマッコウクジラの龍涎香が最高級品。

*42 実際、ドリアンとアルコールの相性の悪さを土壇場で思い出したジャンは被害を最小限に抑えたものの、後者を対戦相手に突かれてピンチになった

*43 ハクビシンの肉に加え、「ホテル・ミラージュ」の社長の犬を殺して肉にして入れていた

*44 その後ジャンもリベンジでスグルの卵に砂糖をぶちまけたが、それはアッサリバレた。

*45 イメージは上記のようにクッキーや、メロンパンの表面の生地の食感と考えて頂ければわかりやすい。

*46 2回目の試食を迎えた時の審査員のテンションにも明らかな差がある

*47 揚げ物の衣や春巻の皮などのバリバリザクザク食感。イメージ的にはせんべいやポテトチップスのそれである。

*48 鶏の天然脂肪肝。レア物だが本来はフォアグラより味も品格も劣る。

*49 もちろん、巻き添えになった真っ当な料理人にとってはたまったものじゃないが。

*50 事実、スグル、ザザビー、黄蘭青の強豪三人はジャンの罠を掻い潜って本戦進出している。

*51 そして調子に乗った大谷に頭を踏みにじられた。まさに外道。ぶっちゃけ提出した料理を食わない時点で審査員失格である……。

*52 キンモクセイの香りの酒

*53 本人が「食感」も重視した料理を作る事もあって完成度の高さを把握しやすかったのだと思われる

*54 陳列棚を壊したり、ドームの金網を切ったり、油が飛ぶ可能性を承知でサメを生きたまま揚げたり。

*55 ちなみに一般審査員50人からは全員支持され50点満点。逆に一部の一般審査員から支持されず5点減点された黄の料理とは対照的である。

*56 あと睦十はどういう料理か想像出来ない腹いせに「覚せい剤でもやっておったんじゃないかあの山ザルめ」と危ない発言をした。

*57 豚肉のすり身を使った「豆芽塞肉」という料理。西太后の大好物のひとつだったとの事。

*58 皮肉にも、かつて大前に自分が行った「先行で時間をかけることで時間が経つとマズくなる料理に勝つ」という手が、図らずも自身に返ってきたことになる。

*59 しかも今度の理由は「ゲテモノだから」というワガママにも程がある理由である。お前正々堂々勝負したかったんじゃないのか。これには流石の崔会長も「いい加減にせんか!」とキレた。

*60 脱皮したてで殻が柔らかいカニ

*61 ヨーグルトに漬けて発酵・乾燥させた唐辛子。

*62 佐藤田も「誰にも知らせず『気付けばラッキー大当たり』程度のお遊びのつもりで入れた」との事。もちろん糟蛋を知ってて見つけられても使いこなせるかは全くの別だが。一回戦の面子ではジャン以外では強いて言うならブルーぐらいしか使えなかったかもしれない。

*63 ただし、大谷以外の審査員は全員ジャンの料理に興味津々だった為、仮に佐藤田の横槍がなくとも、彼らの猛反対で大谷の目論見は失敗していた可能性が高い。