アポロ計画

登録日:2009/06/07(日) 20:12:30
更新日:2024/03/25 Mon 16:23:12
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We choose to go to the moon.(我々は月へ行く。)

We choose to go to the moon in this decade and do the other things,(我々は今後10年のうちに何を置いても月へ行く。)
not because they are easy, but because they are hard.(簡単なことだからではなく、困難だからこそ挑むのだ。)


えぇっー! 僕らの生まれてくるずっと前にはもう、アポロ11号は月に行ったって言うのかい?(MASUO・SAN)



アポロ計画

1960年代にアメリカ合衆国が国家の威信をかけて、月に人類を送り込もうとした計画の事である。



当時のアメリカの宇宙開発は、ソビエト連邦にかなり遅れをとっていた。
何しろ、人工衛星も有人宇宙飛行も、女性宇宙飛行士も月面無人着陸さえも『初めて』は皆ソ連に持っていかれてしまい、
「アメリカの宇宙開発はソ連のパクり」だとか「宇宙に人類を送り込めたのは、ソビエト社会主義のおかげ」だとか、
「ジェミニ計画は、ボストークのパクり」だとか、散々に言われていたのである。


ソビエトロシアでは宇宙が人類を送り込む!

フルボッコである


当時の冷戦構造の中、国家の技術の粋を集めて為される宇宙開発にて"敵対国"のソ連に遅れをとっていること。
これはアメリカにとって看過して良いことではなかった。

と、いうか、
「宇宙開発技術=ロケット開発=核ミサイル技術」
である。

自由主義の守護者として国家威信的にもだったが、それ以上に安全保障上でも大変な問題だったのだ。


そこでアメリカはこの事態を打破しようと、ソ連がまだ手を付けていない「月」に着目した。
つまり、これまでの宇宙開発は地球軌道の周りについてのものだけであったが、
月という地球以外の天体に『人類』つまり「アメリカ人」が初めて上陸すれば、ソ連に一矢報いる事ができると考えたのである。
だが、ぐずぐずしていると、また先を越されてしまうのも事実。

そのため、ケネディ大統領は「1960年代の終わりまでに人類を月に送り込む」と、計画がまだ始まってもいないのに先に発表した。
従来ソ連は計画が成功した後に宇宙開発を発表していたというか、失敗したら発表せず隠蔽していたのだがことを考えると、
この発表は「月面上陸はもう成功したようなものだ」というメッセージともとれる。

こうして、彼のアポロ計画が始動した。

「ソ連より先に」という時間制限の中、人類を月に送り込むという空前絶後の所業を行うのだから、
計画は慎重かつスピーディーに進められ、実機体を用いた訓練も盛んに行われた。


だがここで悲劇が起きた。
4番目の計画である「アポロサターン204」で使用されるはずだったアポロ着陸船の訓練中に火災事故が起き、
グリソム船長以下三名の宇宙飛行士が焼死してしまった*1のである。

この尊い犠牲を無駄にしないため、焼失した司令船に「アポロ1号*2」と名前を付けたのに合わせて「アポロサターン204」も同名に改名し、2、3号を欠番にした。
なお、1号に改名された204以前のアポロサターンの内、203と202が非公式に「アポロ2号」「アポロ3号」と呼ばれていることも付記しておく。

そして4~6号を無人で、7~10号を有人*3で試験飛行をさせた後、
遂に1969年7月20日、アポロ11号を載せたサターン5型ロケットは月を目指して打ち上げられた。
そして月面に着陸した月着陸船からアームストロング船長の左足が月面に『小さな一歩』を踏み出したとき、人類史上の『大きな一歩』が成し遂げられたのである。
その様子は地球に生中継され、多くの人々を感動させたのだった。

この生中継の舞台裏として、着陸時にちょうど月がアメリカの裏側になってしまい、
オーストラリアの小さな田舎町パークスにある天文台に中継の成否を託さなければならなくなったという話がある。
これは「月のひつじ(原題:THE DISH)」という映画にもなり、知る人ぞ知るエピソードとなっている。

またある新聞社は、
「1920年の本誌でゴダートのロケット理論で月に行くのは実現不可能って書いてしまいましたが、ここに御詫び申し上げます。」という謝罪記事を載せた。


だが一方で月にはかぐや姫どころかうさぎ一羽居なかった事がアポロ11号により証明され竹取物語が古典文学からSFに格下げされた挙げ句、
世界中で月見の風習が1969年以降年々廃れていき団子屋と月餅屋が悲鳴をあげた。

そして月はチーズでできていない事を証明し、世界中のウォレスは絶望した。


一方日本のお菓子メーカーから、アポロの帰還カプセルをかたどった*4が発売されて、大人気となった。

1970年の大阪万博では、アメリカ館に月の石が展示され、毎日長蛇の列ができた。

しかし、1号の悲劇以外でも計画にはトラブルの影が付きまとった。
12号は計画自体は大成功に終わったものの、大気圏突破時に落雷が直撃、一時的に船内が停電するアクシデントが発生。
1970年4月11日に打ち上げが実行された13号に至っては宇宙空間で大事故に見舞われ、乗船メンバーは全員無事に帰還できたが計画は結果的に失敗に終わっている。*5

特に13号が遭った事故は宇宙開発史において語り草となっており、
13号の船長が共著という形でこの時の体験を描いたノンフィクション「ロストムーン」を発表。

後年、この著書を原作とした大ヒット映画「アポロ13」も公開され、
更に製作総指揮兼主演のトム・ハンクスはアポロ計画そのものを題材としたドキュメンタリー「人類、月に立つ」も制作している。
当然13号のことにも触れられているが、映画と内容が被るのを避けるため、
映画では触れられなかった「13号の事故を中継するニュースキャスターの苦労譚」となっていた。



アポロ計画は月着陸船を運用し始めた9号から、司令船と月着陸船にそれぞれ愛称がつけられた。
ミッション名 司令船 月着陸船
アポロ9号 ガムドロップ スパイダー
アポロ10号 チャーリー・ブラウン スヌーピー
アポロ11号 コロンビア イーグル
アポロ12号 ヤンキー・クリッパー イントレピッド
アポロ13号 オデッセイ アクエリアス
アポロ14号 キティーホーク アンタレス
アポロ15号 エンデバー ファルコン
アポロ16号 キャスパー オリオン
アポロ17号 アメリカ チャレンジャー

また、月を目指すアポロ計画の一端ではないが、アポロ17号の後に最後のアポロ宇宙船となるアポロ18号が打ち上げられている。
これはアポロ・ソユーズドッキング計画の一端であり、打ち上げたアポロ宇宙船(司令船+機械船)を宇宙空間でソユーズ19号とドッキングをさせている。
将来的な宇宙開発を見据えたもので、宇宙空間で宇宙船同士を接続して、双方を行き来するという実験が行われた。


なお、よく「アポロ11号の月面着陸は捏造である」という噂があるが、いくらソ連に牽制する為と言え、捏造するメリットは全くない。
「捏造し、世界を欺き続けられるだけの予算があれば、月に行くぐらい安いものである」などという話もある。
それに、日本の月探査船「かぐや」がアポロ計画の痕跡を発見している。


よく根拠に出される例の番組はエイプリルフール用の番組である。
それ以前にも捏造説を主張する者はおり、組織的に主張を行ったのはキリスト教原理主義団体「Flat Earth Society」が初と言われている。
米国外にも捏造説が広まった現在では、捏造説は宗教や反米イデオロギー、科学への懐疑等、様々な要素が絡み合った存在となっている。
そのため、かぐやの成果も「日本は親米であり、アメリカに不利な発表をするとは考えにくい」と無視・疑問視する声が生じている。

また、2002年には捏造説支持者のバート・シブレルがアポロ11号クルーの一人であったバズ・オルドリンに殴られるという事件が発生している。
シブレルが聖書を突きつけ、「聖書に手を置いて『私は月に行った』と誓ってみろ」と詰め寄ったところ、オルドリンは彼を一発殴って逃げたのだという。
捜査を行ったLA市警は、「事件を捉えたカメラの映像を見る限り、シブレルは執拗に度を超えた挑発を行っており、オルドリンに非は一切ない」と判断している。
しかし、本当に月に行ったのであれば、逃げる必要はどこにもなかったはずだが…?(逃げたのはおそらく暴行でしょっ引かれる危険性に気付いたからだと思われる)





この噂が有名になる以前は、「アポロのクルー達は、宇宙人との遭遇等、発表されたもの以上に重要な発見をしている」という噂もあり、
日本の陰謀論業界ではむしろこちらが主流であった。
当然ながら捏造説とは相いれない存在であるため、この説の支持者は捏造説批判に回っている。
先のオルドリンも本人役で出演している『トランスフォーマー ダークサイド・ムーン』等、宇宙人を題材にした作品の下敷きにされることも多い。
東方儚月抄』でも、「アポロ計画の真意は別のところにあった」という形でこの説に軽く触れている。


ちなみに、アポロ11号に搭載されていた、コンピューターの性能は現代のデジタル時計程度しかなく、ファミコン以下だった。

これは高性能よりも信頼性重視で「枯れた技術」が好まれたためであるが(バグなんかが少しでもあれば致命傷に近いし、単純であれば何かあっても現場で対応できる)、
家庭用ゲーム機以下の性能のコンピューターで月に行ったなんて事を考えると、捏造説が生まれても仕方ない気がする。

ファミコンすげー。


後、実は18,19,20号も計画、製造されていたのだが、残念ながら予算の問題で没に終わっている*6
こちらも捏造説否定の材料として使用されている。

というか、捏造するなら何度も行ったり13号のような事故を演出するのはもちろん着陸船の下半分などの物品を残していったエピソードを公開するメリットは全くない。もし捏造ならそれらの物品がないことは調査すれば容易に露見する。それでも後に撮られた着陸地点の写真を笑い飛ばしてる輩もいるが
かぐやは上記の理由で疑う者もいたが、その後中国の月探査機もやはりアポロを撮影して来た。中国はむしろ対立しているので、証拠を取ってやる義理などないばかりか何なら否定側に回った上で「我々が最初にやる」と主張することもできたであろうに撮影して来たということになる*7
あと、捏造したとしてその後半世紀以上も関係者全員の口を封じて周囲を騙し続けるのは不可能に思える*8し、何よりやらせのためだけにロケットや宇宙船の開発(もしくはそのふり)とその後の工作をする金があるなら本当にやった方がはるかに有意義。ついでに言えば国家事業なので財源は税金である。

アポロ捏造説は陰謀論の中でも有名なもので、これを扱った書籍やサイトなども多数存在している。
単なる嘘番組がいつの間にか陰謀論の根拠となってしまった経緯、主張を悉く論破されているのにそれでも陰謀論を信じ続ける人の心理など、陰謀論が蔓延る理由を考えるのにはうってつけの教材となっているので、興味のある方は調べてみてはいかがだろうか。
陰謀論のページも参照のこと。


追記・修正は月にロマンを求める方お願いします。

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最終更新:2024年03月25日 16:23

*1 配線がショートして船内に充填されていた純粋酸素のせいで一気に広がってしまった。しかもBLOCK1型司令船のハッチには欠陥がありすぐに開けられなかった。

*2 正式名称はAS204なのだが最初の有人ミッションだったため、メンバーがミッションパッチに勝手に「APOLLO 1」と書いていた。これが事故を受けて後付けで正式なものになった。

*3 7号から司令船が1号の反省を反映したBLOCK2と呼ばれる改良型になった。

*4 ただし商標自体は66年に取得している。

*5 13号の打ち上げどころか10号の訓練中に起きた作業ミスをきっかけにして機械船の酸素タンク内部の配線がむき出しになっており、中の液体酸素を気化・攪拌しようとした際にショートして引火、タンクごと吹き飛んでしまった。乗員は帰還まで着陸船の酸素でしのぎ切り、成功した失敗とも言われている。

*6 使われなかった機体の大部分は各地で展示されている。ただし試作機と混ぜて展示されているものもあってどこかちぐはぐなのはご愛敬。

*7 そのため、捏造説は「実際は米中関係は良好であり、対立は表向きだけのものである」という別の陰謀論と関連付けられることがある

*8 そもそも月へ向かう宇宙船や通信内容は西側東側プロアマ問わず多くの人々が追跡、傍受している。彼らは全て騙されていたのか、それともすべてやらせに加担していたとでもいうのだろうか。