新井赤空

登録日:2011/11/12(土) 07:48:05
更新日:2024/01/03 Wed 14:56:47
所要時間:約 6 分で読めます





抜刀斎。刀を捨てるなんて、あまりにも虫がよすぎるぜ。
お前の人斬りという罪を忘れない為に、そして苦しんでる人を助けるために
一生剣とともに生きろ


新井(あらい)赤空(しゃっくう)
漫画『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』に登場人物。
CV:加藤忠可 演:中村達也

幕末に活躍した刀工。
維新志士達の依頼で「斬れる刀」でなく「殺せる刀」を追求し、従来の刀の型に捕らわれない様々な形の「奇剣」を開発していた。
剣客の間にも名が通っており、抜刀斎時代の緋村剣心とも面識があった。
この事や後述の再筆の設定から抜刀斎の刀も赤空作であった可能性が高く、普通の刀も打っていたと思われる。

物語スタート時点では既に死去しており、作中で剣心の回想シーンで僅かに姿が垣間見えるのみ(時期は「8年前」とされており、時代設定に従うと没年は1870年(明治3年)となる)。
一方で彼の制作した刀剣類は主人公である剣心をはじめとした幾人かの剣客の愛刀として本編に登場している。


生前は「俺が作った刀が時代を作る」と言う信念の下で刀を作り続けていたが、あまりにも殺傷力の高い刀ばかりを作っていたため、息子である青空からは「人を殺しておいて何が時代を作るだ」と非難されることになった。
当人もそういった非難を受けながら刀を打つことは止めなかったが、逆刃刀・真打の刀身に刻まれていた辞世の句を見る限り、自らもその矛盾を理解し葛藤を抱え続けていたようである。
それでも殺人奇剣の性能はどれも凶悪であり、そんな心境ですらこんな刀を打てた辺りはやはりプロフェッショナルである。



■主な作品

連刃刀(れんばとう)
刀狩りの張使用の初期型殺人奇剣。
通常時は二振り一組の日本刀だが、柄と鍔部分の縦を分離・合体させることで一つの柄から二つの刃が横並びに生えた刀に変化する。
この刀身で同じような間隔で傷をつけられると傷の縫合がうまくいかず、致命傷を与えられずとも傷口から腐って死に至ると言う。
現代人には感覚が分かり辛いが、細菌の存在すら知らなかった当時の衛生環境や縫合技術を考えれば恐ろしい武器だったのだろう。*1
しかしそんな凶悪な設定で活躍できるはずもなく、剣心に刀身の間に刀を差し込まれた状態で捻られボキボキ折られた悲しい武器。
実写版ではこちらがメインになっており、接続を固定式でなくする事で、鋏のように敵を挟み斬るという能力が追加された。刀身をずらすことで時間差の斬撃を繰り出すことも可能である。
原作のように間に刀を入れて折るというのも避けられる為、原作よりもパワーアップしている。


薄刃乃太刀(はくじんのたち)
こちらも張愛用で一番のお気に入りの後期型殺人奇剣。
恐ろしく長い刀身を持ちながら、可能な限り薄く鍛えてある。そのため鞭のようにしなりつつ遠距離攻撃が可能。
また先端の部分が僅かに重いので、手首のスナップで様々な軌道を描く。
扱いは相当難しい筈だが張は自在に使い、刀の無い剣心を追い詰めた。
彼は、普段は腹に巻いて防具にしている。
危なくないのか?と思われるかもしれないが、巻いた薄刃の太刀の下に腹当てを付けているので大丈夫…なんだろう、多分。
元ネタは恐らく、インドの武術「カラリパヤット」「ガッカ」で使用される薄刃の剣『ウルミ』。
実際ムチのようにしなり、普段はベルトのようにして腰に携帯できるなど、長さ以外は薄刃乃太刀まんまである。

北海道編では新たに薄刃乃小太刀が登場。文字通り薄刃乃太刀の小型化したもので手首に巻いているリストラップから展開し、主に不意打ちによる奇襲や薄刃乃太刀では向いていない近距離の間合い向けに使われる。


無限刃(むげんじん)
最終型殺人奇剣。志々雄真実の愛刀。連載時点では「不変刃(ふへんじん)」という名前だった。
如何なる名刀も刃こぼれひっかかりが生じてしまうと言う考えの元、最初から鋸状の刃にする事で常に一定感覚で扱える刀に仕上げた一品。
実際の所実戦においては刀の摩耗は想像以上にあるので、とても理に叶っていると言えるだろう。
加えて鋸のような刃で切りつけられると傷口が複雑になって非常に治しにくくなると思われるので、連刃刀と同じような効果もあるかもしれない。
とは言え、実際に攻撃を食らった剣心曰く「斬撃の鋭さに比べて傷は深くない」との事なので、殺傷力そのものが凄いわけではない模様。
尤も志々雄の場合「一戦一殺」なので相手が剣心や宇水レベルでもない限り仕留め損なうなんて事は無いだろうが。
焔霊初使用の場面では処刑した兵士を両断してたし。
志々雄はこの刃で今まで殺してきた人々の脂をこそげ取り発火させる事で、相手に「焼く」と「斬る」同時の痛みを与える「秘剣」を編み出した。

因みに人間の脂は発火燃料では無い。如何言う理屈で発火しているのだろう?
また志々雄は追憶編で既に焔霊を使っている。つまり既に相当数人を斬り殺していた事になり、最終型殺人奇剣ではあるものの完成されたのは意外と早かったようだ。

また本作の正式な続編である北海道編では、元志々雄一派の末端であった明日郎が様々な巡り合わせにより無限刃を愛刀として所有することとなる。明日郎も無意識で焔霊を使っており、後に意図的に焔霊を使えるようになっている。これに関しては明日郎が凄いというか、志々雄が人を斬り過ぎて脂が大量に着いていたのだろう。


逆刃刀・影打/真打(さかばとう・かげうち/しんうち)



  我
子 を
に 切
恨 り
ま  
れ 刃
ん 鍛
と え
も て

孫 幾
の 星
世 霜
の  
た  
め  

赤空最後の作。
刀身に峰と刃が逆についた日本刀であり、緋村剣心の代名詞とでも言うべき刀。

殺人奇剣ではなく京都の白山神社に奉納される御神刀として作成された物で、選別のためより出来の良かった「真打」とやや劣る「影打」の二振りが作られた。
その内、真打は神社に奉納され、影打のほうは幕末の動乱終結後流浪人として京都を発とうとしていた剣心に譲られた。
出来損ないである事は剣心にも告げており、万が一折れた時は自分を訪ねるよう言い残していた。
以降、影打は約10年間剣心の愛刀として振るわれたが、新月村での一件で刀身が真っ二つになって刀として使うことは出来なくなった。
そして再び京都を訪れた剣心が張との闘いの最中に真打を手にし、以降は影打に代わる彼の愛刀として志々雄や縁などの強敵との戦いに用いられた。
そしてエピローグでは剣心から元服を迎えた弥彦への餞別として譲られたが、北海道編では護身も兼ねて剣心に返却されて再び剣心が振るう事になった。

刀としては上記の通り刃と峰が逆になっている以外は変わったところは無いが、真打と影打では剣心も手の馴染みの差を感じる程度には完成度に差がある。
また、真打入手から間もなくの比古清十郎との修行の折、奥義習得時に僅かに目釘の部分に緩みが出た結果比古が九死に一生を得ることとなり、彼からは「主人の気持ちをよく汲んでくれるいい刀」と評された。
他にも剣心の実力がさらに上がったという事もあるが、影打は宗次郎の虎徹と抜刀術の撃ち合いで虎徹を修復不能にしつつも真っ二つにされたのに対し、
真打は宗次郎の真の愛刀である菊一文字と抜刀術で撃ち合っても傷一つ付かない(菊一文字は若干のヒビが入った)頑丈さを誇る。

真打は当初白木の拵えとなっていたが、初戦闘時の衝撃で砕け*2顕わになった茎には赤空の辞世の句と思しき言葉が刻まれている。
多くの人を殺める凶器を作り信念との矛盾に人知れず傷つき走り続けてきた自分が神社の御神刀を作る事になった時、何か思うものがあったのかもしれない。
剣心に影打を託す際に言った、「剣に生き、剣にくたばるのがお前の生きる道だろう」と言うのは自分自身にも向けたものだったのだろう。
葛藤に苦しみながら、彼自身も新時代のためと信じ「殺せる刀」を作ってきたのだから。

とはいえ、刃が逆になっているという事は逆刃刀で戦うのは単なる鉄塊で敵をブッ叩いているようなものであり、こんなもので剣心が本気で暴れ回っても不殺を貫いているのは
剣心自身の殺人剣の技術が極まっているが故に殺さないように紙一重の手加減できるために他ならない。
剣心がかつて殺人剣の使い手だったからこそ十全に逆刃刀の機能を発揮でき、逆に竹刀剣道を極めた弥彦では逆刃刀の機能を十全に発揮できないというのは皮肉としか言いようがないだろう*3
本編中でも天翔龍閃の伝授で比古を殺さなかったのも実際は偶然の要素も強かった*4ので、
伝授後に比古は「天翔龍閃で不殺を貫けるように緩急自在に使いこなせ」とアドバイスしていた。

劇場版の新京都編では、逆刃刀・京心と名前が変わった。

尚「逆刃刀」の語を作中で最初に発したのは神谷薫だったり、明神弥彦が将来購入するために貯金していると言ったり
連載初期には赤空独特の作品ではなくるろ剣世界にはありふれた刀であるように描写されていた。
ゲーム『るろうに剣心 十勇士陰謀編』は本編と異なるオリジナルストーリーなのだが
「赤空以外にも彼と同じ真理にたどり着いて逆刃刀を打った刀匠がいた」という設定があり、こちらでは彼の打った逆刃刀・真打が剣心の最強武器になっている。
多分あの世界では刀匠が剣術について殺人以外の道を探究すると逆刃刀を作りたくなるのだろう。


■その他の作品

業火乃大剣(ごうかのたいけん)
北海道編から登場した殺人奇剣。厳密には新井赤空の作品ではなく、北海道に潜伏する劍客兵器が創り出した殺人奇剣で、偽號 権宮剛豪の愛刀。
新井赤空が刀の時代の終わりを悟り銃身と刀が一体化した殺人奇剣を考案したものの、そんなもの作るくらいなら銃そのものを作った方が早いことに気づいたのかどういう気変わりか封印したモノを劍客兵器が設計図を手に入れ、改良を加えて創り出した明治生まれの殺人奇剣。一見するとと見紛う程の大剣であるが、それ自体が偽計でその大剣に隠れた銃による狙撃が本命。狙撃としての銃以外にも大剣の側面を展開することで大量の鉛玉を放出することも可能。
ただやはり赤空のオリジナルではないため赤空の他の刀に比べると精度も低いようで、張からは「けったくそ悪ぃ剣」と吐き捨てられている。


全刃刀(ぜんじんとう)
完全版の再筆にて、抜刀斎の愛刀として設定された刀。本編には未登場。
峰と鍔にも刃がついた刀である。
鞘に納めるのがもの凄く難しいと思われる刀である。この造りでは「本来の」龍翔閃など使おうモノなら自分の手を斬りかねないので、
当時から逆刃刀での不殺アレンジと同様に刀を水平にして刀の腹を打ち上げていたものと推測される。
普通の刀より殺傷力下がっとるがな






いくつもいくつも項目立てといて立て逃げしてんじゃねえ。
追記・修正に生き、くたばる。
それしかwiki篭りの生きる道は無い筈だぜ。

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最終更新:2024年01月03日 14:56

*1 昭和のヤンキーの一部には「カッターの刃などを2枚重ねたもので傷を付けると並行に並んだ傷はいつまでも残って消えにくい」ということで致命傷にはならないが消えない傷を付ける凶器として使う例もあった。

*2 メタ的に言えば、元々真打は白木の拵えのままの予定だったが、剣心は鍔や鉄拵えの鞘も多用していることから元の拵えに戻すために砕けたとのこと。当然ながら金属の鞘より強度に劣る為、実際は抜身の刀を保護する為の仮初の鞘か、作中通り奉納品の拵えとして使う事が多かった。

*3 それでも何十年もかければ活人剣のみを極めた状態で逆刃刀を使いこなせる可能性があるらしい

*4 比古が自画自賛していたように再修業で真打を使い込ませなければそもそも目釘の緩みが生じなかった。