エギーユ・デラーズ

登録日:2012/01/05 Thu 13:24:21
更新日:2024/03/23 Sat 09:35:30
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「繰り返し心に聞こえてくる、祖国の名誉のために!ジーク・ジオン!」


エギーユ・デラーズは「機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY」の登場人物
CV:小林清志

●目次

【概要】

地球圏最大のジオン残党勢力「デラーズ・フリート」の指揮官であり階級は中将。
0083に発生した「デラーズ紛争」において揮下戦力を率いて「星の屑作戦」を計画・実行した人物。

一年戦争時の階級は大佐、一説にはギレン・ザビ直属の親衛隊隊長を務めており、その功績によりギレンよりグワジン級戦艦「グワデン」艦長を拝命している。

ア・バオア・クー戦ではSフィールドにおいて艦隊の指揮を執っていたがギレン戦死の報を聞きそれがキシリアによる謀殺であると看破、艦隊に撤退命令を出す。
この時に、後に彼の右腕となるアナベル・ガトー少佐(当時大尉)と遭遇、死に急ぐ彼を引きとめている。

一年戦争終結後、カラマポイントに終結した公国残党軍は今後の方針を検討。
地球圏に残留して徹底抗戦を望むものと、アクシズで復活の時を待つか…である。
大部分の残党がアクシズ行きを選択する中、彼は徹底抗戦派を糾合・再編成し、暗礁宙域に係留基地「茨の園」の設営を開始した。
「デラーズ・フリート」の誕生である

なお正確な時期は不明ながら、このあたりの時期に彼は大佐から中将へ昇進している。
これは糾合した残党内での推挙とアクシズによる承認の結果であり、地球圏最大の戦力を率いるにあたって相応の階級が必要になったためと推測されている。
*1

そして3年後の宇宙世紀0083
地球連邦軍の「ガンダム開発計画」を察知した彼は「星の屑作戦」を立案、連邦に宣戦布告し独立戦争の継続を宣言することとなる…。



■[星の屑作戦]■

デラーズが立案した連邦軍に対する一大反攻作戦。
その要点は多方面での同時多発的な作戦の展開と、それによる最終目的の隠匿および敵艦隊の指揮系統を混乱させ分散させることである。

▼STAGE-1▼
「ガンダム開発計画」によって開発された戦術核兵器運用MS・GP02を強奪。
それを以って分遣艦隊はコンペイトウ基地(旧ソロモン)で挙行される連邦軍観艦式を襲撃し核攻撃を実行、連邦の主力艦隊の大半を撃沈させ行動不能にする。

▼STAGE-2▼
自軍の主力艦隊は別方面において移送中のコロニーを強奪、月へ向けて発進させる。
月軌道に入った段階でアナハイムの協力の元、コロニーのスラスターを点火させて地球への軌道修正を行い、月に向けて追撃を行う連邦追撃艦隊を出し抜く。
これまでの作戦行動により、地球軌道に残る連邦軍は少数になる。

▼STAGE-3▼
この段階で艦隊は再集結しコロニーを護衛、連邦残存艦隊を順次撃破しつつコロニーを北米穀倉地帯へと落下させる。
作戦終了後の残存艦隊は月からの敵艦隊の来援までの時間差をついて戦域よりの離脱を図る。

…というものである。
この多方面からの奇襲と陽動によって少数部隊によるコロニー落としを可能とする戦術は「コロニー落とし作戦」の完成形であり、以降多くの組織がこの作戦を流用し、それは0093に「新生ネオ・ジオン」が実行した「隕石落とし作戦」で一つの到達点を迎えることになる。
しかし、この作戦を最初に模倣したのはジオン系組織だけでない。「ティターンズ」「アポロ作戦」もその一つである。



【劇中での活躍】

「星の屑作戦」の序盤、「ガンダム強奪作戦」の実行部隊をガトーに一任し自らは「茨の園」において艦隊の整備、強化に努める。
またこの時期に宇宙海賊として悪名をはせていたシーマ・ガラハウ中佐のシーマ艦隊を自軍に引き入れている。

ガトー帰還後は、連邦の通信網を電波ジャックし連邦へ宣戦布告を行う。
その後、観艦式襲撃を任務とするガトー艦隊、コロニー奪取を任務とするシーマ艦隊を進発させ、自らも旗艦グワデンに座乗し全艦隊を出撃させる。

連邦艦隊を壊滅・行動不能にし、コロニーも地球への軌道修正に成功するも阻止限界点の直前においてシーマ艦隊が突然の離反、グワデンのブリッジを占拠され自身も人質にとられる。
さらに地球軌道上のバスク艦隊が展開した「ソーラ・システムⅡ」の存在によって「星の屑」は失敗に終わるかと思われたが、デラーズはガトーを叱咤する。


「行け、ガトーよ。」
「意地を通せ。現にコロニーはあるのだ!行け!ガトー!儂の屍を踏み越えて!」
「儂を宇宙のさらし者にするのかガトー!」
「ジーク・ジオン!!」

直後、激昂したシーマによって射殺され、彼を追うようにグワデンも撃沈される。
しかし、彼の遺志はガトーによって引き継がれ彼の死の数時間後、

宇宙世紀0083、11月13日0時34分 コロニーは地球へと落着
「星の屑作戦」は成就された

デラーズの友人であったアクシズ先遣艦隊司令は

「男達の魂の輝き」

と彼とその部下に賛辞を送り、生存者救出後、地球圏を後にした。


【人物】

ギレンの選民思想に共感していたかについては劇中では一切触れられていないが
0083の公式HPの人物紹介では
“単に「スペースノイドの自治獲得」という主張に賛同していただけなのかも知れない”
と記述されている

また彼は高潔な人物であり理想家であった。
例えばシーマの危険性を訴えるガトーに対して自らの力量で導くと啖呵をきっている。
彼はシーマの過去を知らなかった。星屑作戦後はともにアクシズに連れて行く予定だったらしい*2
また星の屑、茨の園等のどこかロマンチックなネーミングセンスなどからも非常にロマンチストであったことがうかがえる。

身だしなみも気を使っており、髪がない分髭には気を使っており毎日2時間かけて手入れをしていたという…
スキンヘッドも天然丸ハゲではなく剃っているものらしく、星屑作戦終盤はちょっと胡麻塩頭になってたかもしれないそうである…*3
また、『光芒のア・バオア・クー』においては、撤退中にわざわざグワデンを停めてまで、学徒兵を救助していたことが当時の学徒兵の口から語られており、彼の部下思いな人間性がうかがえる。

【能力】

軍人としては極めて優れた戦術家であり、軍政家であった。
暗礁宙域において3年もの間、将兵の士気と軍備を一定以上の状態に保持し続けられたのはひとえに彼の功績と言ってよい。
シーマ艦隊を引き入れた点にしても、シーマ艦隊がジオン残党としてはかなりの数の戦艦・MSを保有していることを考えるとかなりの軍の強化に繋がっている(シーマ側は裏切る前提だったとは言え)。

しかし、一方で政治能力については、星の屑が連邦側の政治戦略に利用されたことからそれ程高くはないと評価される。*4

「星の屑作戦」はスペースノイドの自治独立を掲げた壮大なプロパガンダであったとされる。
作戦そのものは成功し、地球経済にダメージを与えるという意味では目的を達成しており、宇宙世紀0090年代後半には、地球単体ではアースノイドの口を賄えない状況になっている。
ただしその後は被害を受けまくった連邦とアースノイド(それにジオン派でないスペースノイド)を強硬策に走らせ、ティターンズの台頭、スペースノイド弾圧の時代に導いてしまうことになった。
もっとも、長期的にはそれがグリプス戦役という連邦の大規模な内戦を招き、地球も連邦の力も削ぐことになっており、評価については視点や価値観により意見の分かれるところである。

【余談】

彼の話題に付随してよくGP02と南極条約の関係について話題になることが多いが、そちらについてはガンダム試作2号機の記事を参照

■[ゲーム出演等]■

MSに乗って戦わないながらも、組織の長として登場する事が多く
戦術・戦略系のガンダムゲームでは能力の高い、MS適正もそこそこ*5という有能なキャラである。
彼が一番輝くのはギレンの野望シリーズだろう、分裂しがちなジオン公国において絶対に離反せず最後まで付いてくるので、離反者多数になるジオンの系譜での完全勝利では重宝される。
また史実を捻じ曲げてジオンが快進撃を続けると、第二次ブリティッシュ作戦を提案。サイド7を核パルスエンジンで加速させ、またコロニーをギレンに落とさせた。*6

また、彼が主役のデラーズ・フリート編は所属している士官の数が滅茶苦茶少なく、初期配備の兵器も0079止まりの高難度であるため、ジオニストはこの難関シナリオに挙って挑んでは散って行った。ゲームバランスの都合でシーマの裏切りが無い、初期から何故か合流しているケリィとヴァル・ヴァロ、展開によってはアクシズからハマーン達が支援に駆けつけてくれるなど、独自の歴史を辿っていく。

スーパーロボット大戦シリーズには第4次から登場し、「ノイエDC」という
異星人からの脅威から地球圏を守りつつ腐敗した連邦政府も打倒する組織に属していたがジャミトフ達の政策に反発しコロニー落としを仕掛ける等
概ね原作どおりの事をするのだが、その後異星人勢力に追い詰められたときは「ハマーンとガトーにミネバを託して*7異星人の司令官に特攻かまして戦死」
という非常にかっこいい死に様を披露した*8
この際「地獄で会おうぞ!ガトー!」という言葉を発している
ここまで書くと過激派ではあるが、本来の目的を果たすために潔く散るかっこいいハゲなのだが
以後のスパロボでは出番が少ない上に異星人勢力が来てるのに打倒連邦しか興味の無いキャラとなっており、特にスパロボAではシーマが
プレイヤーにわかるように「ジオンの暗部や裏仕事を押し付けた」事を発露し、それ故にデラーズ達等信じられないと反発されたり早々に退場したり
ガトーがシャアの説得で心が揺らぐなど、原作に無い要素のおかげで立つ瀬がなくなったりしている。

ちなみにパイロットデータが用意されていても実際に戦闘する機会が少ないという妙な特徴があり、ルート次第で2回だけ戦える『A』・ルート次第で1回だけ戦えるが直ぐにイベントで撃墜されてしまう『α』とシリーズを通じて合計で3回しか戦闘機会が無い。原作で艦隊戦の描写が殆ど無いことの再現といえばそうなのだが。

ギャザービート系列のGジェネでも登場するが影は薄く、ギレンから
「使えるコマ」程度にしか見られていないのが露呈してしまう。

PS3の「ガンダム戦記」では時代が0081年であるため彼もまだ健在であり、
地上に大量に残っていた残党軍が「水天の涙」作戦の為に行動を起こしていたときは宇宙で大人しくしていた為*9作戦に参加はしなかったが
作戦終盤で実行部隊が宇宙に上がったときはゲルググ*10をプレゼントする等して支援している。
なおゲーム作品ではあるが、このPS3版ガンダム戦記を史実に組み込むと
「まだあちこちにいたジオンの地上残党軍が0081年に大規模な反抗作戦をして返り討ちに合いその数が激減、結果アフリカ方面で細々としたのが生き残っただけで水天の涙作戦も失敗、しかし良い所までは行っため、この作戦を参考に星の屑を思いついて実行した」
という流れになる。

戦士達の軌跡』ではガトー編の最終ミッションに登場。原作通りグワデンに座乗し、ギレン戦死の報を聞いてア・バオア・クーからの離脱を決意。プレイヤー(ガトー)はグワデンをエスケープエリアまで護衛することが勝利条件である。
とにかく敵の数が尋常でなく、倒しても無限に湧き続けるので難易度は高い。腕に自信があれば撃墜数でSランクを狙うこともできるが、基本的にはアビリティの「助言」を駆使してムサイを1隻でも守り抜くことになるだろう。
デラーズはかなりレベルが高く、よほどの状況にならなければ危機に陥ることは少ないが追い詰められたら彼に向ってでも「未熟!」と連呼せざるを得ない。
一年戦争基準の作品ではあるが、「連邦の実力披露してもらおう」*11「油断した…我が身の不覚であった…!」といった原作のセリフも収録されており、グワデンに接近することで例のやりとりが流れる。


◆エギーユ・デラーズの演説(デラーズ宣言)◆


地球連邦軍、並びにジオン公国の戦士に告ぐ。我々はデラーズ・フリート!

所謂一年戦争と呼ばれた、ジオン独立戦争の終戦協定が偽りのものであることは、誰の目にも明らかである!
何故ならば、協定は『ジオン共和国』の名を騙る売国奴によって結ばれたからだ。
我々は些かも戦いの目的を見失ってはいない。
それは、間もなく実証されるであろう。

私は日々思い続けた。
スペースノイドの自治権確立を信じ、戦いの業火に焼かれていった者達の事を。
そして今また、敢えてその火中に飛び入らんとする若者の事を。


スペースノイドの心からの希求である自治権要求に対し、
連邦がその強大な軍事力を行使して、ささやかなるその芽を摘み取ろうとしている意図を、証明するに足る事実を私は存じておる。

見よ、これが我々の戦果だ。
このガンダムは、核攻撃を目的として開発されたものである。
南極条約違反のこの機体が、密かに開発された事実を以ってしても、呪わしき連邦の悪意を否定出来得る者がおろうか!

省みよう!何故ジオン独立戦争が勃発したのかを!何故我等がジオン・ズム・ダイクンと共にあるのかを!

我々は三年間待った。
もはや、我が軍団に躊躇いの吐息を漏らす者はおらん。
今、真の若人の熱き血潮を我が血として、ここに私は改めて地球連邦政府に対し、宣戦を布告するものである。

仮初の平和への囁きに惑わされる事なく、繰り返し心に聞こえてくる祖国の名誉の為に、



ジーク・ジオン!!




「追記・修正せよ、ガトーよ」
「意地を通せ。現に項目はあるのだ!やれ!ガトー!儂の更新を踏み越えて!」
「儂をアニヲタwikiのさらし者にするのかガトー!」
「ジーク・冥殿!!」

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最終更新:2024年03月23日 09:35

*1 ガンダム・オフィシャルズ 103ページ

*2 宇宙の蜉蝣より

*3 スタッフの座談会の発言

*4 このあたりは前述ガンダムオフィシャルズでも触れられている

*5 自身専用のドムがあったという説があるためか

*6 しかし、この時点ではジャブローやルナツー以外連邦の領土が無いため、対空防衛網を沈黙させるためとは言えわざわざ環境破壊を伴う再度のコロニー落としは、いかにギレンでも即答を避けており、独立戦争記では第二次ブリティッシュ作戦ではなく、ギレン提案による月からのマスドライバーの隕石攻撃に変更されている。尚、新・ギレンでは再度のコロニー落としはギレンの発案になっている

*7 以下筆者の推測を含む情報です:ただし、デラーズは「ハマーンがミネバを傀儡にして独裁を行うのでは」と危惧しており、ガトーに「もしもの事があればハマーンを斬れ」と頼んでいる。結局ミネバを手中に収めようとするハマーンの前に立ち塞がったのはガトーではなくジュドーであり、ハマーンもまたジュドーの説得を受けてミネバを託して去っていった。そもそもデラーズは暗に「ミネバにはDCの旗頭になってもらう」前提で話をしており、ミネバという「人間」のことまで頭が回っておらず、傍から見ればデラーズこそミネバを傀儡にして独裁を行おうとしている側である。反面ハマーンはミネバに「普通の女の子として生きるものよし」「自分の意志で生きてほしい」と言伝しているが、もしかしたら「ミネバを人間として扱い、DCを亡ぼそうとする動き」を危惧したのかもしれない。

*8 後にOGシリーズでこの行為がオマージュされる

*9 ガトー等も一時期月に身を寄せている等していた頃

*10 数少ないゲルググであったと思われ、これでデラーズたちの戦力も目減りしてしまったと言える

*11 原作では「シーマ艦隊の実力披露してもらおうか」。