東宝特撮

登録日:2012/01/24 Tue 22:27:18
更新日:2023/11/13 Mon 06:49:58
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東宝特撮とは、東宝が製作した特撮ドラマの総称であるが、メインは映画である。

どこまでを含めるかは書籍や媒体等に若干の違いがあるが(『幻の湖』等)、
概ね東宝が主体になって製作し、特撮関係のスタッフがいる作品を指すことが多い。


他の映画会社も特撮映画を製作してはいるが、
特に東宝は製作本数等で他社を圧倒しており、一種のブランドとして成立している。

そのため近年デアゴスティーニから東宝特撮のDVD付マガジンの「東宝特撮DVDコレクション」が刊行され、また書籍も多数存在する。
2023年には講談社よりゴジラをはじめとする東宝特撮作品を取り扱った*1「ゴジラ&東宝特撮OFFICIAL MOOK」が全40巻で刊行される。


【歴史】

第二次世界大戦中から東宝は特撮を積極的に使用した作品を製作しており、東宝特撮の前身として扱われている。
東宝特撮としては「ゴジラ(1954)」前後の作品から扱われることが多い。

その歴史は円谷英二と共にあり、戦中の作品から亡くなるまでのほとんどの作品に関わっている。

◆戦中・戦後

戦中は戦意高揚のための戦争映画が主体となっており、限定的ながら軍隊の協力も得つつ作品を製作していた。
軍事機密を理由にほとんど資料を回してくれない中でも執念によって作り上げた名作「ハワイ・マレー沖海戦」の精度は軍関係者さえ驚愕したという。

戦後しばらくは公職追放によって戦中のスタッフを満足に使えず、特撮作品の製作本数は激減する。
しかし、昭和20年代後半には円谷英二をはじめとするスタッフが再度集結し、「太平洋の鷲」等の作品を製作、そして「ゴジラ」が誕生。
この作品の成功により、東宝特撮は東宝の主力作品の1つとして扱われるようになった。

◆1950年代後半~1960年代前半

この時期は邦画全盛期と重なり、「ゴジラ」以降東宝は特撮をウリにした作品を年に数本製作していった。
作品の幅も広く、主力であった怪獣映画や戦記映画以外にも「地球防衛軍」から始まったSF作品、
ガス人間第一号」を代表する変身人間シリーズ等も製作された。
また、時代劇にも特撮を使用した作品も存在している。

◆1960年代後半

邦画業界が斜陽期に突入、観客動員数が激減してしまう。
東宝特撮も以前のように様々な作品を作れなくなり、
子供人気のある怪獣映画と定番として生き残った戦記映画以外はほとんど作られなくなった。

そして円谷英二が死去し、特撮製作の部門も解散してしまう。

◆1970年代

部門は解散したが、中野昭慶を中心に残ったスタッフが製作していった。
この時期は一部の大作以外は予算や製作期間が限られてしまう。

主力のゴジラは低予算の子供向け作品として製作され、70年代半ばには製作が終了した。
代わりに注目された作品群は「日本沈没」に代表されるパニック・スペクタクル路線である。

日本沈没」が880万人の大ヒットとなり、
この路線が中野監督が相性が良かったのもあり、後続の作品も作られた。
また、90年代を引っ張る川北監督がテレビ・映画で特技監督としてデビューした。

さらに変身ブームに乗っかる形でヒーロー番組制作にも参入、「愛の戦士レインボーマン」など数作が制作された。

◆1980年代

作品数、興行成績的には最も冬の時代である。
前半はSF・リバイバルブームを受けての大作、「ゴジラ(1984)」、「さよならジュピター」が製作された。
しかし、「ゴジラ」はヒットしたものの「さよならジュピター」は大コケしてしまう。

後半は「ゴジラVSビオランテ」やサンライズとの共同製作の「ガンヘッド」が公開。
「VSビオランテ」はまずまずの成績で90年代にバトンを渡すことに成功した。

◆1990年代

良くも悪くも平成VSシリーズが中心になった年代である。

VSキングギドラ」のヒットから始まったシリーズは、
年末作品の定番として300万人以上を動員し続ける人気シリーズとなった。
また、ゴジラがハリウッドで製作されることになり、製作陣は振り回された。

シリーズが終了した後は平成モスラシリーズを製作。
ついにハリウッド版GODZILLAも公開された。
ハリウッド版の評判が芳しくなく、モスラも成績が落ち始めたことで再びゴジラを作る気運が高まり、1999年に「ゴジラ2000 ミレニアム」が製作された。

◆2000年代


復活したゴジラシリーズだったが、興行成績は苦戦。
ハム太郎との併映で一時は持ち直すがやはり回復しきれず「ゴジラ FINAL WARS」でシリーズは一旦終了した。
後半に入り、CGを含めた特撮を利用した作品はリメイク版「日本沈没」や「K-20」等製作されている。
しかし、これらの作品は近年の大作ではお約束のテレビ局主体であり、東宝特撮としては語られていない。

テレビ作品としては『超星神シリーズ』も放送され、幻星神ジャスティライザーのロボットや怪獣の一部は東宝怪獣をモチーフとしている。
劇場版も製作され、川北監督の晩年の代表作となった。

◆2010年代

10年の沈黙を破り、レジェンダリー製作の新ハリウッド版ゴジラである「GODZILLA ゴジラ」が2014年に公開。既存のゴジラファンからも好評を得、続編の「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」も2019年に公開されている。2020年には「髑髏島の巨神」版のキングコングと対決する「ゴジラVSコング」が公開予定だったが、新型コロナの影響で2021年に延期された。
一連の作品は同一の世界観を持つ「モンスターバース」と呼ばれる。

さらに、上記のハリウッド版の好評も手伝って2016年には「シン・ゴジラ」が庵野秀明総監督・樋口真嗣監督により公開。
国内で82.5億円の興行収入を獲得する大ヒットとなり、また多くの賞を受賞するなど高い評価を得た。
特撮ではないものの、2017~18年にはアニメ版ゴジラが公開されている。ゴジラら怪獣達を「各種族における神・象徴」として描き、これ以上のないハードな人間ドラマを展開させた。

ゴジラ以外では、CG技術を駆使したファンタジー・SF漫画の実写映画化が盛んになっている。
当記事的には、シン・ゴジラと多くのスタッフを共通し、アナログ特撮もふんだんに用いられた「進撃の巨人」が代表例だろうか(評価は高くないが……)。

◆2020年代

2020年からは、毎年11月3日(初代ゴジラ公開日)に開催されている『ゴジラ・フェス』にて過去作のゴジラスーツなどを用いた特撮短編が公開されており、小規模ながらも現在ミニチュアを多用した東宝特撮を堪能出来る唯一の機会となっている。
2021年春には、TVアニメ「ゴジラ S.P<シンギュラポイント>」が放映された。怪獣達のデザインに大胆なアレンジをかけながら、再登場の機会に恵まれなかった多数の怪獣達を復活させた。
コロナ禍によって公開時期が流動的になっていたが、シン・ゴジラのスタッフによる「シン・ウルトラマン」が2022年5月に公開。興業収入44.4億円とヒット作となった。
2023年には山崎貴が脚本・監督を手掛けた新作ゴジラ映画「ゴジラ-1.0」が11月に公開。



【作品について】

基本的には特定のジャンルというより特撮をメインに使用した作品であるため、作品は多岐にわたる。
メインとしてはゴジラシリーズがあり、東宝特撮の歴史と共に歩んでいた。
また戦中から製作され続け、ファン層の違いから話題にはなりにくいが戦記映画も製作本数が多く、もう一つの主力といえる。

その他モスラを初めとした怪獣映画、SF映画や変身人間シリーズといったも作品もある。

その総数は書籍にもよるが100近く存在している。


【ファンについて】

歴史が長いシリーズであるため、1970年代後半にはすでにファンによる活動や同人が確認されている。
特に84ゴジラの製作はこれらのファンの活動が後押ししたと言われる。

反面、円谷英二時代の作品にたいする思い入れの強さからか、
1970年代の作品は製作体制を考慮に入れない極端な批判が目立ち、平成VSシリーズも強く批判していた。

現在では劇場で平成VSシリーズを、昭和作品をビデオで見ていた世代が増えている。そのせいか前よりは世代間の対立は減っている。
しかし、現在は新作が無いことからくるファン全体の減少が著しく、特にゴジラシリーズ以外の知名度は下がっている状態である。

某掲示板の特撮系の板でも東宝特撮に関するスレの数は減ってきている。
かつては特撮ファンでも最大級の数であったのだが……。


とはいえ、まだまだファンもいるので新作や関連アイテムの販売を待っていよう。


【作品一覧】

ゴジラシリーズは該当項目を参照

◇映画作品

◆「透明人間」(1954)
◆「獣人雪男」(1955)
◆「空の大怪獣ラドン」(1956)
◆「地球防衛軍」(1957)
◆「美女と液体人間」(1958)
◆「大怪獣バラン」(1958)
◆「日本誕生」(1959)
◆「宇宙大戦争」(1959)
◆「電送人間」(1960)
◆「ガス人間第一号」(1960)
◆「モスラ」(1961)
◆「世界大戦争」(1961)
◆「妖星ゴラス」(1962)
◆「マタンゴ」(1963)
◆「海底軍艦」(1963)
◆「宇宙大怪獣ドゴラ」(1964)
◆「フランケンシュタイン対地底怪獣」(1965)
◆「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」(1966)
◆「キングコングの逆襲」(1967)
◆「緯度0大作戦」(1969)
◆「ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣」(1970)
◆「日本沈没」(1973)
◆「ノストラダムスの大予言」(1974)
◆「東京湾炎上」(1975)
◆「HOUSE(ハウス)」(1977)
◆「惑星大戦争」(1977)
◆「さよならジュピター」(1984)
◆「ガンヘッド」(1989)
◆「ヤマトタケル」(1994)
◆「モスラ」(1996)
◆「モスラ2 海底の大決戦」(1997)
◆「モスラ3 キングギドラ来襲」(1998)
◆「シン・ウルトラマン」(2022)

◇テレビシリーズ

◆「愛の戦士レインボーマン」(1972)
◆「行け!ゴッドマン」(1972)
◆「クレクレタコラ」(1973)
◆「流星人間ゾーン」(1973)
◆「行け!グリーンマン」(1973)
◆「ダイヤモンド・アイ」(1973)
◆「行け!牛若小太郎」(1974)
◆「円盤戦争バンキッド」(1976)
◆「メガロマン」(1979)
◆「電脳警察サイバーコップ」(1988)
◆「七星闘神ガイファード」(1996)
◆「超星神グランセイザー」(2003)
◆「幻星神ジャスティライザー」(2004)
◆「超星艦隊セイザーX」(2005)


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最終更新:2023年11月13日 06:49

*1 ※「ガンヘッド」や『メガロマン』など、一部作品を除く。