力場

登録日:2010/08/23 (月) 12:44:40
更新日:2022/06/28 Tue 16:59:31
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力場とは主に、空間に対し力を及ぼしている状態のことをいう。空間の性質を変化させている力のこと。身の回りでは電場、磁場、重力場などがある。


◆電場(または電界)

電場とは、帯電した物体が周囲の空間の帯電体に影響を及ぼしている状態のこと。要は物体の持つ静電気力が周囲にばらまいている力のこと。

帯電体が持つ電気のことを電荷といい、電気の正負で正電荷、負電荷と区別する。
またこの電荷同士の間には静電気力が働く。引力か斥力かは、電荷の種類で決定される。

帯電体の大きさが無視できるような大きさ(純粋に単純な電荷を求めるとき)だと、点電荷といい、電荷の持つ電気の量を電気量という。
電気量の単位はクーロンで単位はC。1Aの電流が一秒間に運ぶ電気量が1C。

点電荷の間に働く静電気力は電気量の積に比例、距離の二乗に反比例するため、

F=k(q1)(q2)/r^2

で表す。このときkは比例定数で、真空中では

k=9.0*10^9(N*m^2/c^2)

である。


なお電場に限らず力場は発生している点から球状に力を及ぼす。平面で考える場合円状に力を及ぼすとする。

この力の及んでいる空間に試験的に電荷を置くと、力の向きに押されていく。
この軌道を電気力線といい、電場の強さを表す際にも使用でき、電気力線の密度でクーロン力の大きさを表す。
Qクーロンの帯電体から単位面積あたりE本の電気力線を描くため、

E=kQ/r^2

と球の表面積を掛け合わせ、

kQ/r^2*4πr^2=4πkQ

で求める。つまり4πkQ本の電気力線が発生していることになる。




電場は導体を布などでこすって帯電させても発生している。
このとき別の物体へ近づけると、例えば導体にプラス電荷が溜まっている場合には、
近づけられた物体の中の電荷のマイナスが引き寄せられ、プラスが追いやられるため、プラスとマイナスで引力が発生する。これを静電誘導という。
下敷きで髪の毛をこすって逆立てることができるのはこのせい。

さらに、電場の中に導体を置くとどうなるか。
これは導体の中の自由電子が電場の強さに応じてプラスとマイナスがわかれる(※)。
このため導体内部には電場が発生していない状態になり、この現象を静電遮蔽という。


不導体(絶縁体)を置いた場合、自由電子が存在しないため、静電遮蔽は発生しないが中のプラス・マイナス電荷は静電気力により引っ張られる。
このわずかな差異により、プラス、マイナスとわかれる。
これを分極といい、常に帯電体側に異種の電荷が寄るため、誘電分極という。
そのため不導体は誘電体ともいい、また不導体の中の電場は外よりも弱いものとなる。


これら電場を利用したものが、コンデンサーである。
一番簡単なコンデンサーを平行板コンデンサーといい、平行に金属板(導体板)を置いたもの。
コンデンサー容量の計算は割愛するが、極板の面積に比例し間隔に反比例する。つまり限りなく大きくした金属板を限りなく近づけていくと容量は大きくなる。

また極板同士の間に誘電体を置くと容量が大きくなる。
電気容量の単位は1Vの電位差を与えたとき、1Cの電気量を蓄えるとすると、それを1ファラッド(F)とする。
現実的にはそんな巨大な電気量をためることはできないため、マイクロファラッド(uF)、ピコファラッド(pF)と表記する。




◆磁場(または磁界)

磁石から発生している力が周囲に及ぼす力のこと。

磁石を砂鉄に近づけると模様のようになるが、それは磁界が砂鉄に力を及ぼしているということ。


棒磁石であれば、その両端を磁極という。引き付ける力(磁気力)は磁極の強さ、磁気量による。クーロンの計算によく似ていて、違うのは比例定数と単位くらい。

k=6.33*10^4(N*m^2/Wb^2)

Wbはウェーバ。真空中で同じ力の磁石を1m離して置き、6.33*10^4Nの力を発生させているときが1ウェーバ。



磁力はNからSに向かい、このときの力の線を磁力線という。


磁力線の本数も単位面積あたりで引く数が変化する。


金属のように磁石に引き付けられるものは、磁場におかれたときに磁石の性質を帯びる。これを磁化といい、その性質の差でいくらか呼び方がある。

強磁性体
磁場の向きに強く磁化される。鉄、コバルトなど。

常磁性体
磁場の向きに弱く磁化される。アルミニウム、空気など。

反磁性体
磁場の向きと逆に弱く磁化される。銅、水など。





◆重力場

重力の及ぶ場所。つまり万有引力の及ぶ場所。遠心力あたりで説明したような…






さて電場と磁場は互いに大きく関連する。電流が磁場を発生させることもできるためで、電流を流すと右ネジ方向に磁場が発生する。
その磁場の強さH(N/Wb)は電流I(A)に比例し、導線からの距離r(m)に反比例する。

H=I/2πr

で表す。

また、電場と磁場でフレミングの左手の法則を思い出すかもしれない。

フレミングの左手の法則とは、左手の親指と人差し指でL字をつくり、人差し指と直角に中指を立てることで完成する。
このとき、中指から電流、磁場、力であり、磁場の中で電流を流すと力が発生するという単純にして明快なもの。この力はローレンツ力という。

このローレンツ力を求めるのには磁束密度などが必要になる。割愛。



電流が磁場を発生させることができるのだから、その逆も可能で、コイル(導線をぐるぐる巻いて筒状にしたもの)の中に棒磁石を通すと、電圧が発生する。
この現象を電磁誘導、発生した電圧を誘導起電力、そのコイルの繋がった回路に発生する電流を誘導電流という。

さらに

誘導起電力は、それによって流れる誘導電流のつくる磁束が、外から与えられた磁束の変化を打ち消すような向きに生じる

というレンツの法則がある。つまり、下向きに磁束(N極を下にした状態)でコイルにいれると磁束が上向きになるように電流が発生する、ということ。



以下余談


金属には自由電子というマイナス電荷とそれを打ち消すだけの固定されたプラス電荷が存在する。
マイナス電荷が片側へ移動することによって、もう片方はマイナス電荷が少なくなり、プラスが強くなる。そのためプラスとマイナスが区別される。
もしもプラス電荷も動くと、金属に電流を流すとぐにぐにと形が変わることになる。


コイルに電流を流すと磁場が発生する。さらに鉄などの強磁性体を中に入れると、より強い磁力が発生する。これが電磁石の理屈。



アルミニウムの筒の中に強力な磁石(ネオジム磁石)を落とすとどうなるか?という実験を行った番組があった。
まずは一巻きのコイルを思い浮かべ、そこに磁石を落とす。
すると磁石がコイルに近づくと、コイルには上向きに磁場を生じるように誘導電流が発生し、またコイルを通過すると今度は下向きに磁場を生じようとする。
次にアルミニウムの筒を、ソレノイド(高い密度で充分長く巻いたコイル)と見る。

するとアルミは常磁性体であり、さらに通過する際(落ちていく際)に常に上向きの磁場が発生する。
もちろん下向きの磁場も発生するのだが、電流が発生していることによりローレンツ力も発生する。
このため、アルミニウムの内面に触れることなく、ゆるやかに落ちていくのである。百聞は一見にしかず、見てみる価値はあるかと。




追記・修正は電磁力

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最終更新:2022年06月28日 16:59