フル・フロンタル

登録日:2011/11/13 Sun 13:08:27
更新日:2024/03/13 Wed 07:51:27
所要時間:約 7 分で読めます






シャア・アズナブル「ニュータイプになれば
あの温かな光を以て、時間さえ支配出来る?

それは夢だ

地球を包んだあの虹を見ても人は変わらなかった
これからも変わることはない
真理からは遠く、光を超える術すら手に入れられず、届く範囲のスペースで増えては滅ぶ
それが人間だ

導く必要はない。その価値もない」

フル・フロンタル「ならば

私は“器”になろう」





フル・フロンタルとは小説、アニメ『機動戦士ガンダムUC』に登場するキャラクター。


●目次

【データ】

年齢:不明
出身:不明
所属:袖付き
階級:大佐
搭乗機:シナンジュネオ・ジオング(OVA)、フロンタル専用ギラ・ドーガ



【概要】

フル・フロンタルは、小説・アニメ『機動戦士ガンダムUC』に登場する男性キャラクター。
ジオン共和国の政治家モナハン・バハロが命じ、シャア・アズナブルに似せ個を封殺し作り上げさせた強化人間に、全体の一部となったシャア・アズナブルの残留思念が取り憑いた存在である。
袖付き」の首魁にして、『赤い彗星の再来』の二つ名を持つ。
搭乗機はMSN-06Sシナンジュ。
声優は、中に宿っているシャア・アズナブルの残留思念同様に池田秀一が務めた。

U.C.0093、ネオ・ジオン総帥シャア・アズナブルが実行したアクシズ落下作戦が、他ならぬ彼が意図的に連邦軍(アムロ)側に流出させたサイコ・フレームを媒体に、
残留思念が集うフィールド「全体」のパワーがνガンダムを中心に集まって起った奇跡アクシズ・ショックによって失敗に終わったことと、
その際に、宿敵であるアムロ・レイと共にシャア自身も消息を絶ってしまったことで、新生ネオ・ジオン軍は存亡の危機に立たされていた。
シャアという求心力を失ったネオ・ジオンがこのまま烏合の衆となることを危ぶんだモナハンが、シャアに代わる旗印としてフロンタルを総帥に付け、
『赤い彗星の再来』たる彼が組織を纏めたことで、ネオ・ジオンは『袖付き』として再度結束を取り戻すこととなった。

その経緯から、フロンタルは普段一年戦争時代のシャアを思わせる仮面を着けて行動しているだけでなく、
仮面を外した顔はシャアそっくりに整形されており、額には一年戦争時にアムロ・レイに付けられた傷まで再現されている。
尤も、シャアと違ってフロンタルにはさほど顔を隠す理由が無いためか、仮面は傷を隠すためでもなくファッションでしていると述べており、
劇中でバナージ・リンクスと対面した際には、彼の求めに応じてあっさり外している。

上述の通り、フロンタルは自我を封殺された強化人間で、あくまでシャア本人ではなく、彼に似せて作られた存在である。
彼を作り出した『シャアの再来計画』ではフロンタル以外の被検体も存在したが、フロンタルが成功例ということで、他の被検体はおそらく失敗作と見なされたと思われる。
アニメ版『機動戦士ガンダムUC』の続編に位置する『機動戦士ガンダムNT』には、その失敗作であるゾルタン・アッカネンが登場するが、
失敗作であるゾルタンは、フロンタルと異なり自我も封殺されておらず、シャアに似せた整形もされていないため、ぱっと見では関係性に気付けないだろう。

全体に溶けたシャアの残留思念がフロンタルに憑依したことで、シャア本人しか知り得ないア・バオア・クーでの出来事や幼少期のミネバ・ラオ・ザビについても把握している。
しかし、自我を封殺され空っぽとなっていたフロンタルの人格は、シャアの残留思念に侵食されてしまった。
小説『機動戦士ガンダムUC』の追補小説『不死鳥狩り』では、自分と同様に自我が空っぽになっている強化人間を思念で遠隔で乗っ取ることで、
ヤクト・ドーガをコアにハルユニットと合体し、ネオ・ジオングを不完全ながらも誕生させるなど暗躍している。


【人柄】

U.C.シリーズ』に登場する強化人間の中では非常に精神状態が安定していて、
CCA』に登場した男性型の強化人間ギュネイのようにモビルスーツで生身の人間を握り潰すような凶行も取らない。
平時・戦闘時共に基本的には落ち着いた言動を取り、思考も明瞭。
人の感情を重視する若人のバナージとのやり取りでは「大人」を感じさせる余裕、合理性を見せる。
しかし、実際の精神構造はシリーズに登場する他の強化人間たちより歪である。
シャアの残留思念が宿っているにもかかわらず、本人は自身がシャアである事を否定し、シャアを「敗北者」だと称する一方で、
「彼ら(袖付きのメンバー)が望むならシャアになる」と述べ、『赤い彗星の再来』として行動している。

シャアのライバルであるアムロ・レイや、主人公であるバナージを全否定する、アンチシャア、ネガシャアとでも言うべき側面も持っていて、
いわばシャアの後継者でありながら、シャアの過去の発言すら否定する態度を見せており、

例:過ちについて

シャア:「認めたくないものだな、自分自身の若さ故の過ちというものを」

フロンタル「過ちを気に病む事はない。
ただ認めて、次への糧にすればいい。それが大人の特権だ」

このように振る舞うフロンタルを、作者の福井は『“大人”であることをものすごく自覚的に武器として使う男』と説明。

生前にシャアが見せていた苦悩さや劣等感、苛立ち、希望や絶望といった、いわば感情的な言動・反応を見せることはほぼ皆無であり、
自身の肉体を自分の意思で動かしていたシャアと比べ、“シャアの意思”がロボットを動かしているような無機質さや異質さを感じさせる人物で、
「敵」以外にも「ライバル」「もう一人の主人公」という言葉も当てはまるシャアに対し、「敵」という言葉しか当てはまらないキャラクターである。

こういった無機質・異質な言動は、フロンタルの元々の精神・人格がシャアの残留思念に浸食された結果、
フロンタルが、シャア(の残留思念)という仮面(ペルソナ的な意味合い)を外してしまえば『何者でもない』哀れな存在となってしまったことに由来する。
バナージが垣間見た「虚無」、ミネバが語ったシャアと違う「空っぽの人間」とは、このフロンタルの歪な人格を指しての言葉であり、
『UC』における最終決戦にて、バナージはフロンタルとの舌戦の最中、彼のこういった精神構造を「のっぺらぼう」と揶揄している。
(ただ、ミネバが多少は知っているシャアの本性も良くも悪くも彼とは違う方向にアレな人のために、ファンから違和感を覚えられやすい場面でもある。)
フロンタル自身も薄々自覚していたのか、バナージにその本性を指して「自分では何もしない、出来ないくせに他人を嗤う、シャアの皮を被った臆病な操り人形」と糾弾された際には、
何も言い返さず、無言のまま動揺と怒りの感情を示して彼に攻撃を仕掛けている。

フロンタルを作り出したのはモナハンだが、フロンタルはモナハンではなく、自分をそのような無為な存在にしてしまった世界そのものを恨んでおり、
モナハンが発案したサイド共栄圏を「ニュータイプを否定した人類への報い」という形容した発言こそがフロンタルの本音と、バナージは感じている。


【能力】

フル・フロンタルはかつてシャア・アズナブルが称されたと同じ赤い彗星という異名を持ち、卓越した操縦技術を誇る。
それはデブリ帯をシャアが編み出した五艘飛びの技術で後続機の三倍のスピードで突破し、ネェル・アーガマを単機で攻撃不能に追い込んだことからも分かる。
NT−Dを発動させたユニコーンガンダムとさえ、ユニコーンモード時を遥かに超えるその圧倒的な機動力や性能に目を見張りつつも、対等に渡り合うほどの技量を示した。
彼の乗機であるシナンジュはもちろん、ギラ・ドーガやリバウといった彼の乗機もしくは彼の搭乗予定だった機体も彼の高い技術力によって性能を引き出されている。
しかし、リバウはフロンタルが乗ることはなく漫画『機動戦士ガンダム U.C.0094 アクロス・ザ・スカイ』で、フロンタルを慕うニュータイプの女性ルガー・ルウがパイロットを務めた。

交渉術にも長けており、ミネバ人質に取ったエコーズ920部隊司令ダグザ・マックールにも隙を見せなかった。

【本編の活躍】

【小説】

ラプラスの箱を巡る最終決戦では「箱」の中身を知り、その開放を望むミネバとバナージの前に、開放せずに利用するべきと主張して立ちはだかる。
バナージと論戦をしつつの銃撃戦では、例え強化人間であろうと致命傷と思われる頭部への銃撃を受けて流血したが、
死なないどころか平然と話を続けた後にシナンジュに乗り込むという人間離れした行動をしており、あまりの異質さにバナージは戦慄している。
フロンタルがシナンジュに搭乗した直後のバナージはまだ生身であったために、彼がユニコーンに乗る前に殺そうとするが、
自分を庇うためのガエルの命懸けの行動にバナージは感情を爆発させる。すると、それに応えるように、ユニコーンが自動で駆けつけ、フロンタルのMS戦にもつれ込む。

ユニコーンとの一騎討ちでは、小破しているシナンジュでユニコーンを翻弄する卓越した操縦技術を見せつけるが、
ユニコーンの救援にバンシィとトライスターのジェスタ2機が現れたことで戦況は一変。
「ナンセンス」と呟きつつ奮戦、ジェスタを一機撃破するものの戦力差は覆せず、
マリーダやカーディアスなどの残留思念達の力を借り、ビーム出力を増大させたハイパービームトンファーによりシナンジュは核を貫かれ、フロンタルは死亡した。
しかし、フロンタルは残留思念となって、バナージに「君はもう、“みんな”の中には帰れない」という不吉な予言とも、呪いとも取れる言葉を遺し、
その言葉に不吉なものを感じたバナージは、この後に起こした奇跡の代償としてユニコーンに思惟を吸われ、一時「“みんな”の中には帰れない」状態になっていた。

その後、フロンタルの遺体の入ったコクピットは、バナージとの戦闘で自害を試みるもまだ死ねずに宇宙を漂っていたアンジェロ・ザウパーの元に流れ着き、彼と共に凍結していった。


【アニメ】

小説同様、シャアの残留思念が取り憑いたというバックボーンはそのままに、
イベント「赤の肖像 ~シャア、そしてフロンタルへ~」で、シャアが死んで全体に溶けて、フロンタルへ憑依するまでが描かれ、その誕生経緯が補足された。

最終決戦ではシナンジュをコアユニットにした巨大MA『ネオ・ジオング』を駆り、ユニコーンに乗るバナージ、バンシィ・ノルンに乗るリディと戦いを繰り広げる。
その中でフロンタルはサイコシャードの能力で全体の中にある刻をフラッシュさせることで、一年戦争終盤の状況など、過去の映像をバナージに垣間見せた。

最後はシャアであった時に、自分が辿り着いたこの世の果て、人類が死滅した静寂が支配する宇宙を見せるが、
諦めないバナージが操縦するユニコーンの掌から伝わった熱を注ぎ込まれる。
また、全体に溶けたララァ・スンの残留思念、アムロ・レイの残留思念、シャア・アズナブルの残留思念と邂逅。
彼らに説得され、直後にネオ・ジオングは崩壊。
そして、フロンタルの代わりにシャアが「君に未来を託す」とバナージに告げた後、
シャア、ララァ、アムロの残留思念と共に、フロンタルに取り憑いていた残留思念もいずこかへと去って行った。

この結末は監督の古田氏のフロンタルも送り出す大人として決着させたいという思いと、声優の池田氏の彼を成仏させたいという思いを、
原作者でOVAのストーリー監修の福井氏が聞き考えを改めたためであるということ。

【客演】

ゲーム作品などに出演すると、モナハンによって自我が封殺されたという設定もあり、
フロンタル個人にはあまり言及されず、何かにつけて「シャアではない、別人だ」というようなことを各方面から言われたりする。
SDガンダムバトルアライアンスでは「ガンダムのみのクロスオーバー」「それぞれのキャラは原作の世界から一時的にゲーム作中世界に集まって戦う」という設定のため、
逆シャアの時点のアムロがフロンタルとバナージが会話した際に「奴の言うことは 間違っていないが、正しいというわけでもない 」(だからバナージは深く受け止めようとするな)という、
流石は長くシャアと(宿敵として)付き合ってきた彼らしいというべきか、地味に的確な分析をしていたりする。

スーパーロボット大戦シリーズにおいて】

第3次スーパーロボット大戦Z』にてガンダムUCの参戦とともに登場。
こちらはシャアの影武者という設定だが、正体は平行世界のシャアの記憶を受け継いだ人間であり、もう一人の特異点である。

物語終盤に「真の赤い彗星」を名乗り、自らに刻まれたシャアの記憶の元にアクシズ落としを決行するが、
Z-BLUEとそれに加担したシャア、そして彼の想いに共感したネオ・ジオンの兵士(+ギュネイ)によって阻止される。

天獄篇では、ネオ・ジオンの事実上の総帥になりアマルガムや偽のミネバを率いてスペースノイドによる人類統率を狙うなど、かなり醜悪な行動が見られている。
また、レイの口からZシリーズでの一年戦争末期に作られたシャアのクローンに並行世界のシャアの思念が入り込んだという設定が明らかになった。
その出自もあってか「君の生まれの不幸を呪いたまえ」、「そういう言い方は嫌いですな…。大人っぽくて」、
「(シャアと同じセリフだが明らかに細かい演技が違う)アクシズ、行け! 忌まわしい記憶と共に!」、
「だが、この暖かさを持った人間が感情を制御しきれず、自滅の道を歩んでいる……ならば、よりよき世界に導く指導者が必要になる!」など、
数々の台詞をオマージュした形で伏線を撒いたり、シャアの負の部分を担当し、プレイヤーを動揺させた。

スーパーロボット大戦BX』では、宇宙世紀ガンダムが『UC』のみの参戦になっているせいもあってか、自軍との因縁があまりないため、やや影が薄い。

スーパーロボット大戦V』では第3次Zとは逆に、アムロやカミーユから「お前はシャアじゃない。シャアの呪縛を断ち切れ」と説得され、改心。バナージと完全に和解する。
最終的にネオ・ジオングに搭乗して地球艦隊・天駆に合流するという大きなサプライズとなった。

ちなみに、ステータス画面ではフロンタルの正体をバラしているともとれる記述があったりする
確かに設定上はああするしか無いわけだが…(ついでに言うと前例がないわけでもなかったり)


カラになったこの身体に人の総意を引き受け、彼らが願うところを願うとしよう

“ニュータイプ”
可能性はもう要らない

無為な存在ならそれに相応しく、小さく自足できる環境をくれてやろう

……おかしなものだ
これではまるで、復讐を誓っているようではないか

誰の為の復讐だ?
シャア……?
それもいい

人がそう望むなら、私はシャアになろう

『フル・フロンタル』
“赤い彗星”の再来

響きは悪くない。可能性を捨てた人類には似合いの響きだ

永遠の縮小再生産と、その果ての閉塞

準備は整っている

見せてもらおうか
新しい《ガンダム》の性能とやらを!


夜のテンションを気に病むことはない。
ただ認めて、次への追記・修正にすればいい。それがwiki籠りの特権だ

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最終更新:2024年03月13日 07:51