登録日:2012/01/10 Thu 14:39:24
更新日:2024/03/28 Thu 09:53:02
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シロッコ。貴公の許せん所は、自分以上に能力の高い人間はいないと思っていることだ。馬鹿にするな!
地球連邦軍独立組織「
ティターンズ」の前線指揮官で階級はティターンズ大佐(連邦軍准将待遇)
宇宙世紀0087に発生した「
グリプス戦役」においては宇宙におけるティターンズ部隊を戦役の終盤まで指揮・統率した。
スキンヘッドが特徴で、ティターンズではジャミトフに次ぐ実質ナンバー2の地位にあった。
前線指揮官として実績を重ね、
一年戦争終結時点で大佐の地位にあった。
一説によればこの
戦争中に
ジオンの捕虜となり、その際に苛烈な
拷問を受けたことで視覚障害を負い、
それを補うために彼の特徴であるゴーグルを着用することを余儀なくされたとも言われる。
ちなみに、捕虜への虐待・拷問もれっきとした南極条約違反(しかもジオンの末端の兵士すら周知する常識)であり、彼もまたジオンの戦争犯罪の被害者と言える。
その後、
U.C.0083においては地球軌道第1艦隊司令代理を務め、ソーラ・システムⅡの設営、運用の現場指揮を執った。
この戦いで彼は
アナベル・ガトーの妨害によるコントロール艦の破壊によって『コロニー落とし阻止を妨害された』ために感情的になり、部下の制止を押し切り味方もろともソーラ・システム第2射を発射する暴挙を行っている。
ただ、この場面で味方艦隊もろともという部分は明らかに暴挙でありとんでもない行動だったものの、この激昂自体は人間としてもあまりに真っ当すぎるものであり、更に
戦闘地帯外で核攻撃したり地球にコロニーを落とそうとするとんでもねぇ奴らと、連邦所属だけど友軍を殲滅するなどの暴走している奴が超兵器で戦っているなどの混迷を極めた戦況でもあったので、のちの彼の行動に比べれば理解できる暴走である。
そして結果論的な視点ではあるが撃っていなければあの
ノイエ・ジールが損傷の少ない形で残る可能性が高く、
さらに被害が増していた可能性が高かったので指揮官としても意外とおかしくはない。
ま、後に部下(ジャマイカン)が同じようなことして即座に謀殺されたりしている以上、この選択自体は真っ当とも正解とも言えないが。
実はこの時点のバスクは改革派の
ジョン・コーウェン中将の派閥に所属していたのだが、彼が保守派のジーン・コリニー提督及び
ジャミトフ・ハイマン准将(当時)らとの派閥争いに敗れると、バスクはあっさり保守派に転向。上記の暴挙も握り潰されて問題化することはなく、
逆にティターンズ実戦部隊司令官に栄転することになる。
しかし、次第に彼はジャミトフの思惑以上に暴走していくことになる。
(もともとバスクはジャミトフの「真意」を全く知らされていなかったのだが)
ちなみに
暗殺を実行するなど地位を簒奪する気満々だった
シロッコは分かるが、バスクからジャミトフへの感情については不明。
前線に居続けていることや諸々の後処理などを考えると悪く思ってはいないと思われるが、確かなことは言えない。
宇宙世紀0085年7月には連邦政府の要請によりサイド1の30バンチにて行われていた反連邦デモを
G3ガスによって住民を虐殺するという強硬手段によって鎮圧するがジャミトフによる情報操作によってこの暴挙は隠ぺいされる。
が、完全には隠ぺいすることは叶わず、ブレックス准将を筆頭に反ティターンズ派の連邦軍将兵やスペースノイド、ジオン残党は結託し独立組織「
エゥーゴ」を結成、ティターンズとの対決姿勢を強めていく。
つまり、後に発生した「グリプス戦役」の種は
バスク自身が撒いたのであり、言い換えれば
彼によってグリプス戦役は引き起こされたのである。
その後もバスクはさらに増長、0087の時点にいたってティターンズは当初の理念から暴走した軍隊となり果てていた。
…とは言え、エリートなどを色々なところからかき集めた部隊であり、増長はバスクだけの問題ではない。
ティターンズに配属されることはエリートの誉れであり、能力の高さと同時にプライドも高い連中が集まりやすい土壌が形成されていたことも大きい。
これは後にティターンズを掌握することとなるシロッコにも共通している。
このバスクの専横に危機感を抱いたジャミトフはバスクへのけん制のために「木星帰りの男」
パプテマス・シロッコを登用し、力の均衡と分散を図ろうとするも、
両者の対立と派閥間での抗争を激化するだけの結果となる。
0087の時点においてはサイド7に建設されたグリーン・オアシスにおいて同基地の司令及び新型MS、
ガンダムMk-Ⅱの実地運用テストを行っていたが3月2日に発生したエゥーゴによる
ガンダムMk-Ⅱの奪取作戦に遭遇、民間人である
カミーユ・ビダンの協力もあって二機のガンダムMk-Ⅱを奪取される。
バスクは即座にエゥーゴ追撃の艦隊を出動させ、自らも前線指揮を執る。
なお、この時バスクに意見を具申した
ブライト・ノアに対して部下共々暴力を振るうなど横柄な指揮官として描かれる。
また、彼はカミーユの両親であるビダン夫妻を人質にとり、その後
見せしめとして夫人を殺害。
更にエゥーゴによるジャブロー侵攻作戦に際しては
味方ごとジャブローを核自爆させるなど、味方・地球すらも顧みない非道な作戦を展開する。
その後、エゥーゴによる反攻により、
地球における拠点を喪失して以後はその行為がさらに苛烈化。
月面都市グラナダに対しての
コロニー落とし作戦を実施し、さらに各コロニーとエゥーゴとの接近をけん制すべく中立コロニーであったサイド2に対して
グリプスⅡのコロニーレーザーによる直接攻撃やG3ガスの使用による「第2の30バンチ事件」を再現し、コロニー政府を恫喝する。
しかし、これらの行為はコロニーのエゥーゴへの接近、ティターンズへの対決姿勢を強めるという逆の効果を生んでしまう。
最終的にエゥーゴ・アクシズとの三者会談に臨んでいたジャミトフがシロッコによって謀殺されたことで最大の後ろ盾を失ったバスクはティターンズ内で孤立。
ジャミトフの死後、時をおかずしてシロッコ派であったレコア・ロンド(
劇場版では
ヤザン・ゲーブル)によって戦死に見せかけ謀殺されることになる。
地球連邦軍史上最大の内部抗争であった「グリプス戦役」。その引き金を引いた男はこの戦役がどのような形で終結したのか、そして自らが育てた「巨人達」の最期を看取ることなくこの世界から退場を余儀なくされたのであった…。
尚、小説版では設定が異なる部分がある。
「一年戦争に参加していない」「政治的な手段で今の地位をでっち上げた」「部下からの評価は(威張るだけの無能)」辺り。
ちなみにシロッコ死後も終盤までは生き残る。
これらは後発作品の設定などに埋もれていき、彼の行動などに対して説得力に欠けるせいか死に設定となっている。
狂信的な地球「人」至上主義者であり、そのため彼の崇拝対象は「地球連邦政府」でもなければ「
地球」ですらなく
「地球に住む人類=アースノイド」であった。
これが彼のコロニー住民に対する弾圧の行動原理となっており彼にとって「スペースノイド」とは常に
潜在的な「敵」であり「宇宙人」であった。
軍人としては常に最前線で指揮を執り、部下達を叱咤するなど勇猛な武人であった。
数々の作戦を指揮し、優秀ではあるがアクの強い
ジェリド・メサや
ヤザン・ゲーブルといった隊員達をも抑え込み統率するなど、指揮官としては非常に高い能力を備えている。
非人道的な作戦を実行しながらも
部隊レベルでの離反や反抗が発生しなかったのはジャミトフの政治的な支援がもちろんあるのだが、
一方で彼の上官としての人望の高さや組織運営の巧妙さが相当だったことの証左とも言える。
また、常に前線って言っても旗艦という安全な場所でえらそうにしているだけでは?という批判や疑問があるかもしれないが、
周囲の戦力が充実していることは想像に難しくないものの、ガンダム世界ではミノフスキー粒子によって有視界戦闘をほぼ強制されているので
戦場に出るだけでも危険である。
08小隊に出てくるイーサン・ライヤー大佐辺りが分かりやすい描写だが、後方に居ても敵の射程範囲外とは限らない。
ここらも過激な行動や性格の割に、長きに渡って指揮官を務めあげた秘訣かもしれない。
いかにもオールドタイプ的な人物ではあるものの人を見る目は有り、冒頭のシロッコに対する名言は実に的を射たものと言える。
お互いに強く反感を抱いていることを察することが出来るが、バスクの方はシロッコが優秀ということは認めていることがうかがえる。
他にも高圧的な発言などで敵を作ったりもしているので器用に生きているとは言い難い。
基本的に悪い意味ではあるものの、自分の信念はたやすく曲げないという人物なのだろう。
他方でもその権力を自らの私腹を肥やすなどの私利私欲には一切使用せず、「自らの」正義のためのみに行使するなど軍人として良い部分だけを見れば高潔な軍人であった。
しかし、ジャブローの核自爆に代表される地球本土での彼の行動から、彼自身もまたティターンズの思想に芯から賛同したというよりは、ただ単にスペースノイドに対する復讐を望む「悪い意味での」軍人であったと言えるだろう。
彼の暴走行動そのものに関しては酌量の余地はない。まごうことなき悪役である。
一方で宇宙世紀0087という一年戦争後の時代背景までを考慮に入れると、彼の思想自体はあながち常軌を逸したものではないことも言及しなくてはならない。
一年戦争後の地球はジオンのコロニー落としによってその人口の半数が死に絶え、多くの居住可能な土地が不毛の大地と化していた。
そこから更に
ジオン残党によるテロや(後発作品とは言え)0083にデラーズ・フリートが行ったコロニー落としによって地球はさらに荒廃し、地球全土に
ジオンひいてはスペースノイドに対する怨嗟の声が渦巻いていたのは想像に難くない。
そのスペースノイドにおいても、実に過半数(七つのサイドのうち五つ)がジオンの虐殺による被害を受けており、彼らもまたジオンを憎んでいた。
(実際、
FGの小説版では「連邦宇宙軍の兵士はジオンのコロニー潰し・コロニー落としの生き残りが大半を占めていて、ジオンへの敵意がすさまじい」とされている)。
しかもティターンズ結成の直前には彼が所属している連邦軍が、不意打ち核攻撃によって数多の犠牲を出しているという背景もある。
当然、あの一件で死亡した連邦兵士にも家族や友人はいるわけで、彼らもまたジオン残党への憎悪や嫌悪を抱いたであろう。
バスク自身の、ゴーグルの下に隠された視力障碍も、ジオンによる南極条約違反の捕虜虐待・拷問の結果である。
(ちなみに『バスクの視力障碍はジオンの拷問の結果』というのは近藤和久の漫画が初出で、それがのちに本編裏設定に引用された経緯がある。だが、その原点漫画ではパラレルワールドということも相まって、拷問を受けた結果バスクは視力障碍のみならず
下半身不随となり、ベッドから身を起こすのが精一杯で、艦内・施設内では移動式の座椅子から降りられない姿となっている。
拷問の悪夢を見て苦しむ場面もある)
ティターンズが大きな武力を持つに至った経緯は、地球連邦のみならずそういった地球圏市民そのものの感情も大きいと言える。
さすがにその後のやりすぎとしか言いようがない暴走が世間に明らかになると地球連邦からもつま弾きになったわけだが、軍備強化や後のロンド・ベルでも見られるような単純な取り締まり強化などに関しては支持も多かったはずである。
また、連邦を暴走させて粛清したいというのもジャミトフの思惑の一つだったので、仮にバスクが穏やかな人物だったら他の人物を台頭させた可能性が高い。
それこそジオン憎しの人物などたくさん居るだろう。
そのように考えるのであれば、彼は実のところは常軌を逸した選民思想の持ち主や腐った連邦の象徴などではなく、地球市民の
被害者代表だったとも言える。
どこまで思っての行動だったのかは分からないが、実際に彼のやったことは大半が
ジオンもやった、あるいはやろうとしたことである。
そして彼を生み出した一端が一年戦争の業火であったのならば彼もまたジオンの被害者でもあり、
ハマーン・カーンらアクシズと同様に
「ジオンの亡霊」であったとも言えるのかもしれない…。
なお余談だが、一年戦争時の階級を大佐であったとするなら、
八年近くに渡って全然昇進できなかったことになる。
しかも別に左遷されていたとかではなく政争の最前線にいて、なおかつ勝ち組であったにもかかわらずである。
(ちなみに0083時点で准将だったジャミトフは大将に、0080時点で大尉だった
ブライトは中佐に昇進している程)
このあたりの理由は定かではないが、虐殺行為は基本隠ぺいされていることを考えると、やっぱり味方ごとのソーラ・システム照射が連邦上層部に響いたのだろうか。
むしろスペースノイドを討つことに拘って前線に居続けているっぽいので、戦場に居づらくなる場合を考えて昇進を自ら蹴っていた可能性もありうる。
「ティターンズは2階級上として扱う」って慣例はこれへのフォローなのかもしれない。
基本的に
完全無欠の度し難い敵役や
弾圧以外能が無い愚かな人物として描かれている。
実際やたら暴力的だったりアレな作戦をしているので、役割的に言えば基本的に原作に忠実だと言えるだろう。
一方で行動理念は分かっている限り、どこまでも
スペースノイド絶対殺すマンとしか言いようがないため、
(ティターンズにもスペースノイドが一応いる辺り所属員や敵対的かどうかの線引きは出来るようだが、概ねこの認識で良いだろう)
様々な勢力やら思惑が交差する
クロスオーバー作品においては、悪役であることは良いとして人物像には疑問符が付く作品もある。
上記の通り(傍から見るとアウトにしか見えなくても)最低限の線引きは出来る男なので、メタ的な役割ではなく設定という意味では逆スパロボ補正と言っても良いだろう。
●
スーパーロボット大戦シリーズ
基本的に親玉であるジャミトフの扱いが空気なので、「単なる脳筋な悪役」みたいなイメージで描かれることが多い。
『X-Ω』では
あのムルタ・アズラエルですら、「あそこまで考えなしだとは!」「(バスクを野放しにしては)こちら側の名目が立たない」と焦り出すほどであった。
そんな彼も『
Z』において
「そんな猿芝居が通じるか!」とツッコミに回ったことがある。
多くの作品においてはプレイヤー自ら引導を渡すことになるが、『Card Chronicle』では
恐竜帝国が発射したマグマ砲に巻き込まれて消し飛ぶというあっけない最期を迎える。
また『GC/XO』では登場した時点で
既にジャミトフ共々逮捕されておりその後2度と語られない。
●
ヒーロー戦記 プロジェクト オリュンポス
本作におけるティターンズはエゥーゴ内部のタカ派という設定であり、ジャミトフがほぼ登場しないのでティターンズの実質的なトップである。
クーデターを起こしてガンダム大陸を制圧するも、用済みと見なされて部下であるシロッコに銃殺され、ティターンズを簒奪される。
●
ギレンの野望シリーズ
地球連邦軍編、ティターンズ編で登場。
連邦軍編では0083と同様の服装だが目が潰された経緯は描かれておらず最初からゴーグルを装着している。階級は中佐。
ティターンズ編では原作通りの非道ぶりを発揮。
イベントで彼の要請にYESと答えるとろくな事にならない。(核で敵味方の部隊が壊滅、パイロットが死亡・離脱する等)
NOと断ると、とても上官に対する言葉とは思えないような返事が返ってくる。
中盤でシロッコがバスクの殺害許可を申し出てくるが、
ここで断ると
シロッコ、ヤザン隊、サラとレコア、ハイファンがアクシズに寝返ってしまう。 \(^o^)/
そして許可を出した場合粛正されるのはバスクだけで、原作でシロッコとそりが合わないように描写されたジャマイカンやアヤチは生き残り、引き続き方面指揮官として使用可能。
性能は指揮・耐久・射撃の能力が高く使いやすいが魅力が一桁。
連邦編ではバスクより強い指揮官が多く埋もれがち。
ティターンズ編では総大将のジャミトフより強く、指揮官不足な事もあり非常に頼りになるが、実はティターンズ(ジャミトフ)のベストエンドではシロッコが在籍していることが必須条件、つまりバスクを残すとベストエンドが見れない。
そしてやり方次第ではシロッコを残留させながら暴政エンドも可能。
上記のイベントの都合上殺してしまう事が多い。実に不遇な男である。
●絵本
ひかりのくに社が出版した子供向けの絵本
そもそもZガンダムの内容自体子供向けではないが……。では子供でもわかりやすい悪役の外見のためか、
ティターンズという悪の組織のボス的な存在として描かれている。
さらにここでは
『地球連邦政府は地球を綺麗な星から汚れた星に作り替えようとしているが、それに反対する人がいるので、連邦政府のバスク大佐は宇宙に浮かぶグリーン・オアシスに、反対する人間をやっつけるための基地を作った』という、原作を考えると前半部分は驚愕なあらすじとなっている。
しかし、カミーユが乗った
Mk−Ⅱの活躍で戦いが不利になると、
「う~ん、おぼえていろ!」と凄く気の抜ける悪役らしい捨て台詞を吐いた。
さらに講談社版の方でも、
わるものバスクたいさは、いつもきょうりょくなモビルスーツをつかって、ガンダム=マークIIをたおそうとしているぞ!(原文ママ)とここでも「悪者」扱いされている。
「建て主、貴公の許せん所は、自分以上に追記・修正の上手い人間はいないと思っていることだ。馬鹿にするな」
最終更新:2024年03月28日 09:53