デスティニープラン

登録日 :2012/02/18 (土) 18:50:05
更新日 : 2017/08/10 Thu 02:07:59
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これこそが繰り返される悲劇を止める唯一の方法です。
私は人類存亡を賭けた最後の防衛策として、デスティニープランの導入実行を、今ここに宣言いたします!!


デスティニープランとは、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に登場した社会構想である。
プラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルが提唱したものであり、
彼の「人は自分を知り、精一杯できることをして役立ち、満ち足りて生きるのが一番幸せだろう」という思想に基づく。



【概要と問題点】

基本的には人間の遺伝子を解析することで個人の適性を見出し、それに合った職業に就くことで誰もが幸福に生きれる社会を作るシステム。
個人の適性に合わせることを最優先にすることで不満も生じず、争いも生まれないことを理想としている。
更には国家間の争いを無くすことも視野に入れていた。

生まれ持った「性格」「知能」「才能」「重篤な疾病の有無」などを遺伝子解析によって解明し、
その情報に基づいて、その人の特性に適した役割を与えるというシステム。
例えば、音楽的な才能を持つ者には、その才能を開花させられる環境を与えよう、というような仕組みである。

能力がないにも関わらず、親のコネなどの不正な手段で職業や地位を得たものを蹴落とし、
年齢や縁故、経験に関わらず、その職業や地位に適した人物がその役割を与えられる、という革命とも言える交代劇を引き起こす。
ある意味では「徹底的な能力主義」とも言える社会構造を作り出す。

シン・アスカは、今の世界を根底から変えようとするシステムだと考えた上で、才能を見出され浮かぶ者がいる一方で沈む者もいるはずだ、と不安を感じていた。
野球選手になりたくて頑張ってきた人が、ある日突然「君の能力では無理だ。歌手になりなさい」と言われて「はい、そうですか」と納得できるものだろうか、とも考えていた。

ラクス・クライン達は「人々から決定権を国家が取り上げて管理する」というものと捉え、「世界を殺すシステム」だと断じた。

実際のところはプランへの参加は自発的なものであり、プランの導入を強制するものではない。
もっともデュランダルは世論を操作することで、プランを導入せざるを得ない状況にもっていこうとしていたらしく、
戦争の只中で突然の発表に至ったのも、戦争とロゴス壊滅による政治経済の混乱に乗じて、なし崩し的に導入させるためと思われる。


プラン導入に伴う問題点はいくつか指摘されている。
遺伝子とひとくくりに言っても、生まれたときから発現している遺伝子と、生まれた時点では発現していない潜在的な遺伝子の二種類が存在し、
後者の遺伝子は本人を取り巻く環境や本人の生活スタイルによって発現するか否かが決まってくる。
例えば遺伝子上はスポーツ選手の適性が潜在的にあったとしても、適切な食事や運動ができない環境ではその能力を発揮できない。
仮にプランの導入によって適切な環境の提供が確約されたとしても、そういった潜在的な遺伝子が確実に発現するとも限らない。

遺伝子による適性と本人の望む職業に齟齬が生じた場合にも不満が生じる。
その場合、二番目以降に適性のある職業が割り当てられる仕組みならば、不満が生じるのを抑えられるかもしれないが、そういった説明は本編中にはなかった。
また人によっては天が二物も三物も与え、最も高い適性が複数同時に生じる場合も考えられ、その場合どう判断するのかも不明である。

そして天才の子どもが天才とは限らないように、親は優秀だったが本人には才能がなく、親や知り合いのコネを使って組織の重鎮に納まっているタイプの人間の場合、
このプランが導入されることで地位や権力、果ては職を失うことにもなり、そういった人々からの反発や、それに伴う大規模な社会的混乱も必死である。

一番どうしようもないのが後天的な心身の問題(事故や病気による身体の欠損・麻痺、トラウマ・ストレスなど)によって働くことが困難になる場合である。

この点についてアスラン・ザラ等は「そぐわない者は淘汰、調整、管理される」と予想していたが、実際のところどうするつもりだったのかは不明。
キラ・ヤマト等はこれを「逆らうものは排除する」という意思表示と見ている(実際、デュランダル自身もそのように述べている。これについては後述)。
元々、アルザッヘル基地へのレクイエムによる攻撃は、先のレクイエムによるヤヌアリウスとディセンベルの崩壊に対する報復攻撃としての意味合いが強いのだが、何故かそこは一切触れられない。


この計画を悪人が利用した場合、「強者が弱者を蹴落とす」という弱肉強食の社会構造を生み出す可能性も高い。
また仮にプランに従って各々が適性のある職についても、その適性のある人間同士で実力差などから妬み等が生じる可能性はある。

悪人が利用せずとも、『THE EDGE』でもキラが言及していたが、
「遺伝子で職業が決まるなら、より職業の適性の高い優れた人間を狙って製造する方向へと加速する」という問題がある。

元々資金力のある人間が一層金をかけて、子孫が人気の職業に就けるように、より正確に発現するよう高精度の遺伝子調整を行うデザインベビー合戦へと発展し、
人気職に需要が集中してその適性に偏った人間しか居ない不健全な社会構造と化していき、「遺伝子調整され損ねて職にあぶれた落ちこぼれ」が次から次へと溢れて行く結果になるとも考えられる。

しかし作中世界では最高のコーディネイター(つまり遺伝子調整による強化の限界)であるキラとナチュラル(正確にはクローンだが)であるラウ・ル・クルーゼが互角に戦ったことなどから、
遺伝子調整されていない者でも才能や能力が開花する例が目立つようであれば、価値観が変化し、高い金をかけてまで遺伝子調整に拘る必要がなくなる可能性もある。


製作者スタッフによると、あの世界の場合、プランが導入されれば戦争はなくなっていたとインタビューによって回答されている。ただ、このプランのみで人類から憎しみや争いをなくすというのは困難である。あくまでも格差や先天的特質を理由にした争いの解決手段となりうるだけで、思想などに端を発するものについては不可能。
計画の内容としては聞こえはいいが、これらの問題点をデュランダルが想定していたかまでは不明。



【発表後とその末路】

デスティニープランが発表された後、機動要塞メサイアでシステムが起動し、各国にそのマニュアルが届けられた。
早速遺伝子調査を始めるプラント地区もあったが、多くの国は突然の発表に当惑した。

以前からプランについて知っていたクライン派、オーブ連合首長国やスカンジナビア王国、そして地球連合の一部は反対を表明(オーブについてはそもそも明確に敵対状態になっていたのだから、プラン以前の問題でもある)。
これらの勢力に対し、デュランダルは『人類の存亡を賭けた最後の防衛策』としたうえでプランに敵対する者を『人類の敵』と見なし、修理したレクイエムを発射。
プラントに向けて艦隊を発進させていた月のアルザッヘル基地を艦隊ごと破壊する。

その後メサイア攻防戦が勃発し、デュランダルの死でプランは頓挫した。

なお、製作者スタッフはデュランダル派の残党やそれ以外の組織によってデスティニープランが後の世に復活する可能性を示唆している。 



【その他あれこれ】
  • 「デスティニープラン」の名前が出て来たのは終盤はじめ頃。44話にて概要が説明された。
    しかし急な展開に加えコミカルなSDアニメを交えた説明から混乱した視聴者も少なくない。

  • 外伝『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY』シリーズの一作、『ΔASTRAY』に登場する
    火星への移住者、「マーシャン」の社会制度は遺伝子的素養を重視するという点でこれに近い。
    が、これはあくまで地球圏に比べて人材・物資など厳しい環境下にある火星圏において仕方の無い措置であることと
    遺伝子的素養以外にも重要な物があると理解しているマーシャンのリーダー、アグニス・ブラーエには否定された。
    実際、彼の副官であるナーエ・ハーシェルは遺伝子的素養から本来異なった役割を与えられていたが、アグニスと出会った際のやりとりでその能力を認められアグニスの副官としてスカウトされていた。

  • 放送前のSEED DESTINYの番宣アニメのナレーションには「繰り返される悲劇を止める事が出来るのは一体?」という台詞がある。
    冒頭のデュランダルの台詞は、これに対する自身の返答となっている。

  • 一応「遺伝子によって人間の適性を判断し、個人がそれを人生の判断材料にする」という発想自体はそこまで問題のある物ではない。
    あくまでデスティニープランが問題とされたのは、「遺伝子を社会の絶対的な基準にする」という極端な方向に行ってしまったからである。


【他ゲームでの扱い】

本編では説明不足により詳細不明だったため、『スーパーロボット大戦シリーズ』では他作品とのコラボレーションも交え、より充実した内容となっている。
最終的に自軍から反対されるのは本編と変わらないが、プラン自体が充実したためか反対される理由も本編より充実している。


スパロボSC2nd
シロッコのクローンによる地球圏の防衛計画。
一応、遺伝子的な欠陥は取り除いた上でのものと説明されてはいるが、真相を知ったレイからは
「自分やクルーゼの悲劇を繰り返そうとしている」と見なされてしまい、デュランダルはレイの手で撃たれてしまう…
(デュランダル自身も「レイとクルーゼを裏切ってしまった」という自覚はあった模様)


スパロボZシリーズ
黒歴史の遺産の一つで、「ニュータイプ(ガンダムX)に覚醒する人類を探し出す」方法として流用される。
フロスト兄弟はプランの副産物兼被害者という設定で登場しているため、デュランダルを恨んでいた。
後に第3次Zにて、SEED保有者を発見してクロノ保守派(ナチュラル)から隠し、絶望の未来に抵抗しようとしていたことが判明する。

またZシリーズにおけるコーディネイターは、クロノ改革派による保守派への対抗策として生み出された存在で、
ナチュラルとコーディネイターの対立は、クロノにおける保守派と改革派の戦いでもあった。


スパロボL
恐らく独自の解釈が大幅になされた作品。
バジュラやクトゥルフといった異星人対策の延長上として提唱される。

「地球人のゼントラ化」や「SEED保有者の発見」のためにプランを遂行することでLOTUSのような勢力を多く作り、地球圏を防衛することが目的。
また、統一意思セントラルに個々の突出した才能の有用性を認めさせて、こちらの世界における「全人類のマキナ人間化」を防ぐための苦肉の策でもあった。

なお、今回は「息子には自分の意思で将来を選ばせてやりたい」と考えたタリア、
「たとえ悲劇が待っていたとしても、そんな運命は自分の力で切り拓く」と決意したシン、
「他人に人生を決められるなんて私の生き方じゃない」と己の選んできた人生を誇りに思うルナマリアと、
ミネルバクルーが率先してデスティニープランを否定する立場に周り、レイは捨て台詞を吐いて一人部隊を離脱する羽目になった。
…フラグ建てたら戻ってくるけど。


スパロボUX
シン総士に対して「かつて実行されようしたが、その思想は人々に受け入れられなかった」と語っている。
もしデュランダルがイノベイターの存在を知っていたら、プラン内に「イノベイターに覚醒し得る人間の発見」も盛り込んでいた可能性が高い。

前大戦で「運命」という言葉を一番に嫌う男がこの計画名と内容を聞いていたら間違いなく怒り狂っていただろう。
ついでに声的にデュランダルの宿敵だったであろう男はブチキレるか、自分が頂点である上でその成果をそっくりいただこうとするかどっちかだったに違いない。

また、シンはファフナーパイロットに選ばれた少年少女達の生き様と、彼らを待ち受ける宿命をデスティニープランと重ね合わせていた。
この時、彼は「人は生まれながらに生き方を左右されたりはしない」と暗にデスティニープランを否定しており、原作とは違い反対する立場に回ったようにも見えなくもないが…?


スパロボV
SEED DESTINYが原作終了後参戦ということで大きく原作再現はされなかったが、
このデスティニープランと同種の政策を極端な形で導入・実践したオリジナル勢力超文明ガーディムが登場する。
しかしその実情は、 合理化とシステム化の名の元に愛や恋愛といった「人間性」が切り捨てられ、種族全体がシステムに隷属する管理社会であった。
人間性が失われた反面、技術力と武力は非常に優れた文明となっていたものの、同時に他種族を頭ごなしに見下し蔑む傲慢な差別意識の権化となり果て、
更には他文明を「管理」や「矯正」の名目で侵略する蛮行まで働いていた。
詳しくは当勢力の個別ページを参照。
彼らの醜悪で歪な傲慢さとプライドは、自分達が開発したシステムからも 「害悪」 とまで評して蔑まれた。


余談

なお現実ではすでに遺伝子を解析するサービスが一部では始まっている。(一回数十万円程度から行える模様)
遺伝子解析で判定できる内容は身体能力(短距離走向きか長距離走向きか等)、精神面(楽観的か悲観的か等)など多岐にわたり、未だ発展途上で信頼性や倫理面において賛否が分かれているが、英才教育の一環として一定の利用者がいるようである。
また上記の問題点の一部は放送当時の遺伝子研究に基づいた問題点であり、現在では遺伝子研究が進み、個人が先天的に持ちうる「能力」だけでなく、性格や精神の傾向(コミュニケーション能力やストレス耐性など)、
後天的に発症するリスクのある疾患(癌やうつ病など)などもある程度はわかるようになってきている。
遺伝子解析技術の発展次第では、プランを実行した場合に想定される問題のうち、「割り振られた職業に適応できない」や「後天的な疾患で働けなくなる」などの問題が解消される可能性もある。


追記・修正は遺伝子調査をしてもらってからお願いします。

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