ゾルフ・J・キンブリー

登録日:2010/05/31(月) 20:57:39
更新日:2024/04/18 Thu 22:25:33
所要時間:約 6 分で読めます




ゾルフ・J・キンブリーとは、漫画鋼の錬金術師』の登場人物。
声:吉野裕行(FA)
演:山田裕貴(実写映画版『復讐者スカー』)


『紅蓮の錬金術師』二つ名を持つ国家錬金術師
白いスーツにコート(原作者の荒川弘曰く「白いスーツって変態なイメージ」)と揃いの帽子を愛用し総髪・吊り目が特徴、アニメFA版では青眼。ネクタイは原作においては赤、FAにおいては紫であり、これはホムンクルス達の瞳の色と一致する。
紳士然として慇懃無礼にも似た言動の人物。
だが、殺人に美意識を見出す重度のサイコキラー
しかしながら単なる快楽殺人鬼とは異なり、その本質は「自らの意志に基づいて美しく生きる」事で、殺人もその独自の理念の一部でしかなく、
「死から目を背けず忘れない」という考えから殺害した相手の顔は逐一記憶するといった行いも見せる。


自分が異端の存在であると自覚しており、紳士を演じているのもその為*1
異端であるが故に、感情論に左右されない、合理的な考えを示すこともある。
彼の錬金術は掌を合わせて対象物に触れ、爆発性のある物質へ作り変えるというもの。
掌に刻まれた錬成陣は右手には下向きの三角形、中に太陽(陽を表す)、左手は上向きの三角形、中に月(陰を表す)を刻んである。
また上下の三角はヘキサグラム四大元素全てを含む記号であり、左右の手のひらを合わせることで発動するタイプの錬成陣である。

錬金術の特性に加え、爆発に対する造詣も深いことから「爆弾狂のキンブリー」の異名を持つ。

イシュヴァール殲滅戦で「傷の男(スカー)」に瀕死の重傷を負わせ、彼の家族を死に至らしめた張本人で、傷の男に最も怨まれている。
キンブリー自身も仕事人として討ち漏らした彼に執着をみせており、宿命の敵とも言える。


極めて狂気的な人物だがその反面、自分とは相容れないものであっても信念を貫く者には敵味方問わず敬意を払い、エルリック兄弟の殺さない覚悟を認めているほか、
撤退命令後も医師の本分を守ってイシュヴァールに留まり治療を続け傷の男に殺害されたロックベル夫妻に対しては「殺される前に会ってみたかった」と発言しており、
後に夫妻の娘のウィンリィに会った際も好意的に接している(このせいでロリコン疑惑を向けられたが即座に否定している)。




【本編の行動】
イシュヴァール殲滅戦で上官から賢者の石を貸与され、大きな戦果を上げる。
しかしよほど魅力的だったのか終戦後に賢者の石の返還を渋り、上官(直属の上司はヒ○ラー似)5名を爆殺。
この行動からエンヴィーに気に入られ、自らの特性を最大限にバックアップしてくれることからホムンクルスの協力者となる。

その後、上官殺しの罪で中央刑務所にて服役生活を送っていた。
(アニメ第1話では元同僚「氷結の錬金術師」アイザック・マクドゥーガルから反体制ゲリラへの参加を誘われるがすぐに蹴っている)
初登場シーンではすぐ隣の第5研究所が爆発したのを受けウキウキしており、講釈を聞かされた看守たちから「爆弾狂めが…」と嫌悪の情を持たれていた。
やがて月日は流れ、ラストの穴埋めとして傷の男の抹殺と逃亡の疑いのあるマルコーの捕獲のため「上からの命令」で出所する。

なおその時、看守(初登場時に爆弾狂だと罵った看守と同一人物)に世話になった礼に握手を求めるが、嫌味を言いつつも受け入れた看守の腕時計を不意打ちで悪趣味なデザインの時限爆弾に錬成する。
鳴り響くチクタク音に怯え泣きながら解除を懇願する看守をニヤけながら見下ろして無視、哀れ看守は爆死…
と思いきや。
実は時計は時限爆弾「風」の鳩時計に錬成されており、タイムリミットと共に現れたのはかわいらしいひよこであった。
お茶目なんだか、性格悪いんだか…



北に向かう途中で傷の男と遭遇、出所したばかりで勘が鈍っていたためか重傷を負わせられるが、強引に車両をふっ飛ばして切り抜ける。
賢者の石と錬金術を使える医師により全快、しかしエドワード達の妨害により傷の男の始末に再び失敗する。

この途中でエドワードと一時行動を共にした際、彼の言い放った「殺さない覚悟」を最後まで覚えていたらしく、後の登場時にも口にしていた。

翌日再び傷の男の捜索に乗り出し、エドワードと戦闘になる*2が、崩落に巻き込み瀕死の重傷を負わせる。

炭鉱を捜索中にプライドの指示により狙いをブリッグズに「血の紋」を刻むことを優先するよう指示を受け、
ブリッグズ兵の一枚岩っぷりを利用し、ドラクマ兵を騙して出撃させ、彼らをブリッグズ兵に蹂躙させることで達成した。

その後は気ままにイシュヴァール人の生き残りを殺して回っていたが、「約束の日」にお父様から幽閉されたプライドの救出を命じられ、
外で待機していたハインケルを撃退し、救出したプライドとともにアルフォンスと交戦。
アルの作戦によって回復したハインケルの奇襲を受け致命傷を負い、既にグラトニーをも取り込んで腹を減らせたプライドに食い殺される。


が……。



暴風雨? 笑わせないでいただきたい

怨嗟の声など私にとっては子守唄に等しい!


最終決戦の最中、プライドが自身の新しい容れ物としてエドに目を付け肉体を奪おうとした瞬間、魂の暴風雨(傲慢の深淵)より自我を保った姿で現れ、
美学に反する人造人間の醜態を咎め、その行動を妨害。
自ら「異端」を以って鳴る『紅蓮の錬金術師』の強烈なアイデンティティの前では、魂たちの叫びは文字通り聞き流せる、むしろ自らが爆殺した人々の断末魔に歓喜し打ち震える彼にとって心地よい程度のものでしかなかった。


人造人間の矜持だ何だとのたまっておきながら
自身に危機が訪れた途端に下等生物と見下す人間の容れ物に逃げ込もうとする……

貴方
美しくない

その隙をついてプライドの内部に潜り込んだエドの勝利を確信するかのように微笑み、紅蓮の錬金術師は帽子を上げて別れの挨拶を残すと、暴風雨の中へと消えていった。


最終27巻でも扉絵に回想とその存在感は最後まで色褪せなかった。
でも最後の最後の土壇場にエドの味方したからって、人類サイドの人々が組む円陣の中にしれっと紛れ込む神経の図太さはどうかと思いますよ……



死から目を背けるな 前を見ろ

―そして 忘れるな


ホムンクルスの協力者の中では、「大きな世界の流れの中で人間とホムンクルスのどちらが生き残る力を持つのか観てみたい」と述べるなど、
レイブンら永遠の生命欲しさに協力した通常の軍部の協力者とは一線を画している。
その言動・行動は敵味方を問わず多くの者に多かれ少なかれ影響を残しており、存在感は大きい。

ロイ・マスタングがイシュヴァール政策をマルコーから頼まれた際に脳裏を過ぎったのも、殲滅戦の際にキンブリーが言った上述の言葉である。

ちなみに作者曰く、ミドルネームのJは「ジャジャジャジャーン」のJらしい。つまり適当に決めた。
よく鰤、寒鰤などと略されたりもする。男の娘じゃないぞ!

おまけの4コマより、住まいは『はがね荘』でG様駆除に錬金術を使い、大家さんにしこたま怒られた。
と言うか彼にもそれを思わせる触覚(特にアニメ)が生えうわちょ何をすry

FA版の円盤特典の4コマ劇場では2回もガーフィールさんの餌食になったり全裸でプライドの中から取り出されて思いっきり地面に叩きつけられるなど、ろくな目にあっていない。
ハガレン展や書店購入特典の書き下ろしなどではやたらマッチョメン達に絡まれ、悪夢を見たり妙な入れ墨を彫られたりしている。彼にとって筋肉モリモリの姿は美しくないらしい…


【台詞集】
「私からすればあなたがたの方が理解できない
 戦場と言う特殊な場に正当性を求める方がおかしい
 錬金術で殺したら外道か? 銃で殺したら上等か?
 それとも 一人二人なら殺す覚悟はあったが何千何万は耐えられないと?

 自らの意思でこれを着た時に すでに覚悟があったはずではないか?
 嫌なら最初からこんなもの着なければいい
 自ら進んだ道で何を今更被害者ぶるのか
 自分を哀れむくらいなら 最初から人を殺すな

 死から目を背けるな、前を見ろ
 貴方が殺す人々のその姿を正面から見ろ
 そして忘れるな 奴らも貴方の事を忘れない」

「身体の底に響く実にいい音だ
 脊髄が悲しく踊り鼓膜が歓喜に震える
 それも常に死と隣り合わせのこの地で感じる事のできる喜び 何と充実した仕事か!」

「ぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいい良い音だ!!!
 すばらしい!!すばらしい 賢者の石!!」

「誰?」

「あんな形式ばったもの自分が異端であることを理解していれば常人のふりをしてパスできます」

「ああご心配なく 私ロリコンの気はありませんから」

「世界の変わる様を見てみたい
 覚悟と覚悟 意思と意思 命と命 信念と信念のぶつかりあい
 人間側と『進化した人間』と名乗る人造人間側のどちらが勝つのか見てみたい」

「自分が今のこの世界において異端である事はとっくにわかっています」

「私を見下ろすな…!!」

「その甘さと私が賢者の石をもう一個持っているかもしれないという思考に行き着かなかったのが―――――貴方の敗因です」

「ああ なんて事でしょう せっかく新調したスーツが汚れてしまった
 仕事熱心もほどほどにしなければいけませんね 本番はこれからだというのに」

「戦い敵を倒すのが、あなた方兵士の本分
 人の命を助けるのが、医者の本分
 この人達は本分を貫き通したのですよ
 私は意思を貫く人が好きです
 残念ですね、生きているうちに顔を拝んでおきたかった」

「ならばもうひとつの可能性
 あなた方は元にも戻れず皆も救えないという選択肢も用意しなさい」

「暴風雨? 笑わせないでいただきたい
 怨嗟の声など私にとっては子守歌に等しい!!!」

「殺す? 貴方 エドワード・エルリックをわかっていない!」

「アッー!」


【アニメ2003年版】
声:うえだゆうじ
当時、原作キンブリーは刑務所を出ておらずまだ謎に包まれた存在だったため、完全アニメオリジナル設定で造られたのが2003年版である。
つまり、同姓同名で顔がそっくりなだけの別人として見た方がよい。

性格は皮肉屋で信念といったものは薄く、爆弾の錬成で人を殺す事に快楽を見出す異端児。
原作以上に粗暴であり、酔った勢いで護衛の兵士に外出禁止令を解かせようとしたり、表面上は仲間だったマーテルを敵対後にバケモノ呼ばわりするなど、
慇懃無礼な敬語で包み隠した本性が露見することがよくある。
また、アルとの戦闘でアルの策で閉じ込められて自分の爆発に巻き込まれた時、笑みを浮かべており、純粋な爆発に対する欲求などはこちらが強いと思われる。
ただ人間と言う存在自体には大した価値を見出だしていないという点ではある意味で原作と共通すると言えるかもしれない。
ちなみに、バスクが暗殺されエンヴィーが成り代わっていた際には、その言動を見て「准将閣下はあんなに聡明ではない」と偽物であると看破していた。
バスクを嫌っていたのは、イシュヴァールでの戦いで獲物を横取りされた恨みもあったからというのが傷の男の回想でうかがえる。

容姿も白いスーツを愛用して身なりに気を使っていた原作と異なり、着崩した服装に逆立った髪型(原作と違い布を巻いて一本結びにしている)という
ワイルドな風貌をしている。
まだ当時顔が暗がりの中でしか描かれていなかったので、あの特徴的なゴキブリ前髪もない。瞳は金(黄)色。
人体を直接爆弾に作り替えるという錬金術を得意としており、イシュヴァール殲滅戦においては賢者の石を用いた大虐殺を敢行(後に原作に逆輸入)、
挙句にアメストリス兵を人間爆弾に変えて特攻させるという原作以上の非道に及び、「仲間殺しの爆弾魔」と呼ばれていた。
尚、この錬金術は人体そのものを材料にしているが真理の門に飛ばされる描写は無いためエルリック兄弟が行った「人体錬成」とは異なる模様*3

第五研究所の騒ぎに乗じて脱獄した後は、タッカーと共にデビルズネストに潜伏していたが
アーチャーから軍復帰を持ち掛けられると、グリード達をあっさり裏切り一味壊滅の原因を作った。
その後リオールで「傷の男」との激闘の末、手刀で胴体を貫かれるも最期の意地でアルのふんどしに手を突っ込んだり鎧にすりすりしたりした挙句、
彼を時限爆弾に錬成し、一矢報いて力尽きる。
手刀で体を貫かれながらもアルを爆弾に変え、それを自慢気に喋りながら笑って死んでおり、凄まじい生命力の持ち主でもあった。
ちなみにそのあと、キンブリーの死体はスカーによってリオールの外れに投げ捨てられ、アメストリス軍に進撃を開始させる嚆矢にされた。
…この時スカーさん、両腕ないのにどうやって?

裏鋼では監督をSATSUGAIした。



【台詞集】
「人間の体は大半が水分ですが多少の金属原子を含んでいます、その組成と若干の有機物を利用すれば簡単に爆発性の物質に錬成できるんですよ…」

「ハッキリ言っていいんですよ、女も子供も見境なくボーン♪ それを止めようとした上官も…」

「駄目、か?」

「大丈夫かい?君ならいい花火になりそうだぁ」

「私は元々軍人です。ならず者に恨まれる筋合いはない」

「あの鎧、必ず爆発させてやる!」

「いいことを思いついた、少しずつ貴方の体を爆発させてあげましょう」

「ハハハハ! 逃げるだけですか?
 貴方達と同じ肌の色のイシュヴァールはもう少し歯ごたえがありましたよ!」

「私に言わせれば、人間はちょっと作り替えるだけでただの爆弾になる…人間なんてそんな大したものじゃない
 私も…貴方も…虚しいもんです……空っぽなんですよ!」

「ハハハハ! ヤッタ! ヤッタ! 貴方の身体は立派に錬成されましたよ!」

「聞こえますか? 死の秒読みが!貴方の腕はゆっくりと大気中の酸素と化合し、やがて…」

「嗚呼いい感触だ…君なら素晴らしい爆弾になれ…ますよ!!」



余談になるが、原作とFAでの名前のスペルは“Solf・J・Kimblee”でアニメ一期では“Zolf・J・Kimbly”である。



おや、追記・修正しないんですか? 美しくないですね……(パンッ)

ドカーン

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最終更新:2024年04月18日 22:25

*1 「国家試験の精神鑑定は自分が異常者だと自覚していれば意味がない」とも言っている。

*2 本来はマイルズたちによって暗殺されるはずだったが、納得できないエドが独断で生け捕ろうとした。

*3 性質としてはショウ・タッカーが人間を材料にして錬成した合成獣に近い。