機動戦士ガンダムSEED DESTINY(漫画版)

登録日 :2010/08/17(火) 11:59:27
更新日 : 2017/01/07 Sat 15:55:11
所要時間 :約 9 分で読めます






戦争のない世界以上に幸せな世界なんてある筈がない!




機動戦士ガンダムSEED DESTINY(以下種運命)を原作とする漫画。
ここではコミックボンボンにて連載された高山瑞穂による作品…いわゆる「高山版」を取り上げる。



原作である種運命は前作「SEED」の続編として制作・放映されたのだが……

悪役化したシン、優柔不断なアスランをはじめとしてシナリオの迷走が多く、
作画の面でも脚本の遅れから異常に多くのバンク映像が使用されるなど、全体的に低評価な結果となってしまった。

しかし、この漫画版については主な流れは本編と同じくしながらも高い評価を得ている。


何といっても、 シンが主人公 なのである。

シンが主人公 なのである。

シンが主人公 なのである。

当然と言えば当然なのだが、本作では最後までシンの視点から彼を中心として物語が描かれている。
月刊連載という制約上、キラの出番が大きく減らされており、結果として最後までシンを主人公としたストーリーを維持することとなった。
多くの要素を泣く泣く切り捨てたことで魅力的な部分が際立つようになったということだろう。

最終的にアスランに敗北するという結末は変わらないが、自分の足で立ち上がり、明日へ向かって再び歩き始めるという
救いのあるラストになっている。

また、演出にも力が入っており、インパルスの窮地を救った「ハイネ・ヴェステンフルス」の初登場シーンや、
未曽有のテロを決行し、序盤の強敵として描かれた「サトー」に胸を熱くした読者は多かった。
アニメ版では余り見せ場がなかっただけに、このシーンを評価する声も大きい。

本作は賛否両論だった原作を良作に変えたとして「どうしてこうならなかった」とアニヲタからよく言われる。



ストーリー

主な流れは一緒。
だがいかんせん尺が短く、放送中の内容と合わせなければならないため、話を省略したり、別のエピソードと繋げるなどの細かい改変が多い。

アーモリーワンでのガンダム強奪。

ブレイク・ザ・ワールドの現場に遭遇、応戦。

オーブ離脱とともに地球連合軍と交戦。シンはザムザザーとの戦闘中、SEEDを発現。

アスランと合流、タンホイザーゲート攻略戦。

ファントムペインの奇襲作戦(漫画オリジナル)、ハイネ初登場。

シン、溺れるステラを救出。

オーブで戦闘。キラが介入し、ハイネが戦死。

クレタ島沖、オーブとの海戦でステラを収容。

シンがステラを返還。

ベルリンでの戦闘。デストロイ撃墜後、そのままエンジェルダウン作戦へ……

と、いった具合。
デスティニー受領後の展開は本編とそう変わりは無い。


また、単行本1巻は前作の回想から始まっている。
家族を失ったシンの慟哭に始まり、SEED MSVに登場するモーガン・シュヴァリエの奮戦、
パイロットとなってインパルスのテストに臨むシンが描かれている。

ページの都合もあるとはいえ、コアスプレンダーではなくフォースインパルスになった状態での発進シーンはかなり貴重である。




主な登場人物


我らが 主人公
素直だが直情的な性格は本編譲り。
オーブのトップであるカガリに暴言を吐いてしまうなど、問題行動も見られるが、
彼なりに自分が望む世界を作るために戦っているという心情がモノローグで語られたりする。
激しく怒りを露わにすることは多いが、アニメ版のような悪人じみた表情はなりを潜めている。

かつて川で溺れるマユを助けられなかったことを回想したり、ハイネに命じられた便所掃除を彼の死後も愚直に行い続けるなど、
本作で追加された演出も多い。
デスティニー受領後は待機中でもOSを調整し続けるなど、調整不足とされる本編中の描写の補完や、
戦争終結への熱意を表す場面も見られた。

アスランに反発する場面も見受けられるが、言い争うシーンは削られており、本編よりは関係は悪化していないように見える。
また、最終回で彼に敗北した際は憎しみにとらわれることなく、素直に彼の実力を認めていた。

「あんたが正しいっていうのなら俺に勝ってみせろ!」


本作のヒロイン。
ファントム・ペインの生体CPUとして戦火に身を投じる。
溺れている彼女をシンが助け出すところから2人の運命が動き出すのは一緒だが、
本作ではそこからさらにハイネとの絡みに発展していく。

最終回では幻影としてシンの前に現われ、彼に明日を見ることを教えた。

なお、アニメ版第1話のラッキースケベはカットされたため、シンとの出会いは彼に助け出された時になっている。


もう一人の主人公。前作の英雄。
シンの上官としてミネルバに配属され、セイバーに乗って戦場を駆ける。
彼にはかつての自分のようになってほしくないと思っており、厳しく当たったり、
行き過ぎた行動を咎めることもあった。
しかし、アスラン自身はいたって不器用な性格であるため、気持ちがすれ違ったまま道を違えることとなる。

なお、アニメ版では女性関係で大分苦労していたが、ページ数の都合でそのような描写はかなり減っている。

君は僕に似ている。


中盤より登場するようになった前作の主人公。
アニメ版では主人公の座を完全にシンから奪い取っていたが、本作ではそれが嘘のように出番は控えめ。
登場するのはほぼ戦闘シーンのみであり、彼の心情の描写もなかった。

ストフリの初陣のシーンもまるまるカットされており、ドラグーンを使う場面もないなど、キラのファンにとってはがっかり。
ただ、あくまでシンを主人公とした物語と言うことならば、このくらいのバランスで丁度いいのかもしれない。

ジブリールを巡るオーブでの戦闘では一時的だが彼と共闘。シャトルを墜とすために砲撃を行った。


シンの親友。
やはり冷静沈着であるほか、シンの友人であることが強調されている。
また、賛否両論あったアニメ版最終回での行動は無くなっている。


尺の都合でシンの悪友ポジに落ち付く。
終盤ではシンのことを心配する様子はあったものの、特に関係を深めることはなかった。
アスランとの絡みもごっそり削られたが、これによって尻軽な印象は無い。
当たらないガナーだけでなく、3巻では近接戦用のスラッシュにも乗っている。

本作でも出番は少なめだったが、2度目のレクイエム発射を阻止したのは、
アニメ版と同じく彼女のブラストインパルスである。


ステラたちファントムペインの気さくな上司。
シンと戦場で再会した際は戦わなければ生き残れないという苦しい胸の内を語った。
ベルリンでのデストロイとの戦闘ではキラによって撃墜されており、それ以降の出番は無い。

どうやら本作では単なるムウのそっくりさんのようである。
これについては、高山氏が手掛けた前作のコミカライズ『キラとアスランの激闘』でムウがラウとともに相討ちになっており、
この設定を活かしたものと見られる。


シンとアスランの良き兄貴分。

格式張らない性格の持ち主で、緩衝材としての役割を果たす。
訳合ってブリーフィングに遅刻したシンを厳しく叱責するアスランに対し、
「便所掃除3回」を提案したことでその場を収めた。

初登場時は漫画版オリジナルの話になっており、
ミネルバのカタパルトを塞がれてコアスプレンダーが合体不可能になるという絶体絶命の状況で登場した。
月をバックに 現われ、シンとすれ違った後、 瞬く間にアビスとガイアを圧倒する というエースパイロットの面目躍如と言える活躍を見せた。

アウル「なんだ…こいつ!? ザクじゃねえ!!」

ハイネ「ふっ……」「ザクとは違うんだぜ!ザクとはな!」

散り際も変更されており、ガイアの前にたまたま出てきてしまったために斬られたのではなく、
シンへの砲撃をかばうという形での戦死となった。
(この時、グフの両腕は破損しており、機体そのものを盾にするしかなかった。)


本作の彼は間違いなく漢。


  • サトー
前代未聞のテロ、ブレイク・ザ・ワールドの首謀者。
多くの同胞が眠るユニウスセブンを地球に落下させることで、ナチュラルの殲滅を画策していた。
本作ではサトー含むテロリストの一派は「ノリス・パッカード」のような武人としてのキャラ付けがなされており、
目的のためなら己の身さえも投げ捨てるような戦い方をする。

「全機抜刀!! 突撃!!」

アニメ版通りジン・ハイマニューバ2型に搭乗。
日本刀のような形状の重斬刀を得物にしており、新型であるゲイツRの機体を縦一文字に叩き斬る。
ブラストインパルスの砲撃を見切りでかわしてシンを驚愕させ、彼を撃墜寸前まで追い詰めるなど、パイロットとしての腕は一流。

主なMS


前期主役機。 
ナイフ?なにそれ。

後期主役機。
万全でなく、シンがOSをよく調整する描写が見られる。

本作オリジナルでガナーザクファントムが登場する(パイロットは勿論…グゥレイト!)

  • ジンハイマニューバII型
ユニウスセブン落としの実行犯・サイトーの機体。
「全機抜刀!!」 のシーンがムチャクチャカッコイイ。

ステラを殺した後すぐに倒される。

シン視点のため出番は少ない。

こちらも出番は少ないがシン視点のため逆に印象に残るようになっている。
一応ラスボス。

  • バビ
単なる量産機ではあるのだが、一応ここに掲載。ディンの後継機であり、飛行能力を維持しつつPS装甲対策にビーム兵器を装備しているスグレモノ。
セイバーガンダムの代車」扱いではあるが、エンジェルダウン作戦にてアスランが搭乗。アレックス・ディノとしての搭乗だけだったザクウォーリア、事実上の乗り逃げだったグフイグナイテッドを考えると「アスランが唯一正規任務で搭乗した描写のある量産機」(実際にはジンにも乗った事があると思われるが)。 


余談

単行本では一部の機体やヘルメットなどのモールドが顔に見えるという高山氏の感想が語られており、読者を大いに和ませていた。
また、氏はマイナーな機体やMAがお気に入りのようで、カバーのめくりには「赤いザムザザー」「バビ」「ユークリッド」が描かれている。


高山氏は前作SEEDの漫画版『機動戦士ガンダムSEED キラとアスランの激闘』も描いている。
こちらは単行本2冊という短い内容であり、尺の都合上本編から変更、カットされたシーンも多い。


例えばアラスカでのフリーダムの初陣では、大勢の敵の前でライフルすらも手放して丸腰の状態でアラスカからの撤退を呼びかけている。
こちらのフリーダムはハイマットとフルバーストの両立が不可能なので、この時だとサーベルを抜かなければバルカンぐらいしか攻撃手段がない。
番外編となったバルドフェルドとの対決時にも、ナチュラルとコーディネイターの生存競争であり戦い以外に道がないというバルドフェルドの主張を「本当にそう思っているなら、貴方の治めている占領地はあんなに平穏じゃない」と真っ向から論破し、バルドフェルドの事を理解しつつも死闘の末に倒すしかなかったというより苦々しい結末が描かれている。

アラスカではサイにも見せ場があり、連合の捨て石にされかかった怒りから上官に向かって啖呵を切るという、
アニメ版でのうっぷんを晴らすかのようなシーンとなっている。

他にもラウとの最終決戦では、ムウの散り際も変更されており、
アークエンジェルの身代わりではなく、中破したストライクに代わってゼロに乗り換え、ワイヤーでプロヴィデンスを雁字搦めにして動きを封じ、
自分もろともキラにラウを討たせる という壮絶なものだった。


その他、本作こそシンが中心とした物語になってはいたが、掲載されたコミックボンボンの表紙は
アニメ版に合わせる形でストライクフリーダムが飾っていた。


その他のコミカライズ

同じく種運命(アニメ)を原作とするマガジンZ版は作画もあまり良くなく、逆に評価は良くない。

一方、アスラン視点のTHE EDGEも評価が高い。
こちらは作者がシン好きということもあって、扱いが良くなっている。
本筋は変わらないが、心情のフォローもあってかなり印象が変わって見える。

また、久織氏の画風もあってキャラクターが可愛らしい。
現在削除されているが、久織ちまき先生の公式サイトでは沢山のシンのラフ画があった。


ゲーム版において

機動戦士ガンダム Extreme vs.』『スーパーロボット大戦UX』では高山版の台詞も採用され、ファンを大いに驚かせた。
特に後者は原作終了後の設定で参戦している上にクロスオーバーの影響もあり、「UXの種運命は高山版終了後では?」という声も上がった。




「あんたが正しいっていうのなら追記・修正してみせろ!」



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