機動戦士ガンダムSEED DESTINY(漫画版)

登録日:2010/08/17(火) 11:59:27
更新日:2024/03/05 Tue 06:31:43
所要時間:約 9 分で読めます






戦争の無い世界以上に、幸せな世界なんてある筈が無い!




機動戦士ガンダムSEED DESTINY』(以下種運命)を原作とする漫画。
ここでは『コミックボンボン』にて連載された高山瑞穂による作品…所謂「高山版」を取り上げる。




当然と言えば当然なのだが、本作では最後までシンの視点から彼を中心として物語が描かれている。
月刊連載という制約上、キラの出番が大きく減らされており、結果として最後までシンを主人公としたストーリーを維持する事となった。

また、インパルスの窮地を救った「ハイネ・ヴェステンフルス」の初登場シーン等の演出にも力が入っており、こういったシーンを評価する声も大きい。




ストーリー

主な流れは一緒。
だが如何せん尺が短く、放送中の内容と合わせなければならない為、話を省略したり、別のエピソードと繋げる等の細かい改変が多い。

アーモリーワンでのガンダム強奪。

ブレイク・ザ・ワールドの現場に遭遇、応戦。

オーブ離脱と共に地球連合軍と交戦。 シンはザムザザーとの戦闘中、SEEDを発現。

アスランと合流、ローエングリンゲート攻略戦。

ファントムペインの奇襲作戦(漫画オリジナル)、ハイネ初登場。

シン、ディオキアで溺れるステラを救出。

オーブで戦闘。 キラが介入し、ハイネが戦死。

クレタ島沖、オーブとの海戦でステラを収容。

シンがステラを返還。

ベルリンでの戦闘。 デストロイ撃墜後、そのままエンジェルダウン作戦へ……。

と、いった具合。
デスティニー受領後の展開は本編とそう変わりは無い。


また、単行本1巻は前作の回想から始まっている。
家族を失ったシンの慟哭に始まり、SEED MSVに登場するモーガン・シュヴァリエの奮戦、
パイロットとなってインパルスのテストに臨むシンが描かれている。

ページの都合もあるとはいえ、コアスプレンダーではなくフォースインパルスになった状態での発進シーンはかなり貴重である。




主な登場人物


我らが主人公
素直だが、直情的な性格は本編通り。
オーブのトップであるカガリに暴言を吐いてしまう等の問題行動も見られ、激しい怒りを露わにする事も多いが、
彼なりに自分が望む世界を作る為に戦っているという心情がモノローグで語られたりする。

嘗て、川で溺れるマユを助けられなかった事を回想したり、ハイネに命じられた便所掃除を彼の死後も愚直に行い続ける等、
本作で追加された演出も多い。
デスティニー受領後は待機中でもOSを調整し続ける等、調整不足とされる本編中の描写の補完や、
戦争終結への熱意を表す場面も見られた。

アスランに反発する場面も見受けられるが、言い争うシーンは削られており、アニメ本編よりは関係は悪化していないように見える。
また、最終回で彼に敗北した際は憎しみに囚われる事なく、素直に彼の実力を認めていた。



本作の実質ヒロイン。
ファントムペインの生体CPUとして戦火に身を投じる。
溺れている彼女をシンが助け出すところから2人の運命が動き出すのは一緒だが、
本作ではそこから更にハイネとの絡みに発展していく。

最終回では幻影としてシンの前に現われ、彼に明日を見る事を教えた。

尚、アニメ版第1話のラッキースケベはカットされた為、シンとの出会いは彼に助け出された時になっている。


もう一人の主人公。 前作の英雄。
シンの上官としてミネルバに配属され、セイバーに乗って戦場を駆ける。
彼にはかつての自分や父親のようになって欲しくないと思っており、厳しく当たったり、行き過ぎた行動を咎める事もあった。
しかし、アスラン自身が至って不器用な性格であるため、気持ちがすれ違ったまま道を違える事となってしまった。
最終回の決戦シーンにおける、シンとの名言ラッシュは必見。
尚、アニメ版では近付いてくる女性が多い為、女性関係で大分苦労していたが、ページ数の都合でそのような描写はかなり減っている。


中盤より登場する様になった前作の主人公。
本作では尺の都合からか、出番は控えめ*1
登場するのはほぼ戦闘シーンのみであり、彼の心情の描写も無かった。

ストフリの初陣のシーンも丸々カットされており、スーパードラグーンを使う場面も無い等、キラのファンにとってはがっかり。

ジブリールを巡るオーブでの戦闘では、一時的だがシンと共闘。 ジブリールが乗るシャトルを墜とす為に砲撃を行った。


シンの親友。
やはり冷静沈着である他、シンの友人である事が強調されている。
また、アニメ版最終回での行動が無くなっており、デュランダルと共に機動要塞メサイアと運命を共にした。

「やあ、レイ。無事だったか。」

「ごめんなさいギル。僕は・・」

「いいんだレイ・・お前はよくやったよ。」

尺の都合でシンの悪友ポジに落ち付く。
終盤ではシンの事を心配する様子はあったものの、特に関係を深める事は無かった。
アスランとの絡みも、ごっそり削られた。
当たらないガナーだけでなく、3巻では近接戦用のスラッシュにも乗っている。

本作でも出番は少なめだったが、二度目のレクイエム発射を阻止したのは、
アニメ版と同じく彼女のブラストインパルスである。



ステラ達が所属するファントムペインの気さくな上司。
シンと戦場で再会した際は戦わなければ生き残れないという苦しい胸の内を語った。
ベルリンでのデストロイとの戦闘では、キラによって撃墜されており、それ以降の出番は無い。

どうやら本作では、単なるムウのそっくりさんの模様*2


シンとアスランの良き兄貴分。

格式張らない性格の持ち主で、緩衝材としての役割を果たす。
訳合ってブリーフィングに遅刻したシンを厳しく叱責するアスランに対し、
「便所掃除3回」を提案した事でその場を収めた。

初登場時は漫画版オリジナルの話になっており、
ミネルバのカタパルトを塞がれてコアスプレンダーが合体不可能になるという絶体絶命の状況で登場した。
月をバックに現われ、シンとすれ違った後、瞬く間にアビスとガイアを圧倒するというエースパイロットの面目躍如と言える活躍を見せた。

アウル「何だ…こいつ!? ザクじゃねえ!!」

ハイネ「ふっ……」「ザクとは違うんだぜ! ザクとはな!」

散り際も変更されており、ガイアの前に偶々出て来てしまった為に斬られたのではなく、シンへの砲撃を庇うという形での戦死となった(この時、グフの両腕は破損しており、機体そのものを盾にするしかなかった)。

シン「ヴェ…ヴェステンフルス隊長!!」

ハイネ「ふっ…だーかーら ハイネだって…」

シン「ハイネー!!」

本作の彼は、間違いなく漢。

  • サトー
前代未聞のテロ、ブレイク・ザ・ワールドの首謀者。
多くの同胞が眠るユニウスセブンを地球に落下させる事で、ナチュラルの殲滅を画策していた。
アニメでは描写が少なかったからか、本作ではサトー含むテロリストの一派は武人の様なキャラ付けが為されており、目的の為なら己の身さえも投げ捨てるような戦い方をする。

「全機抜刀!! 突撃!!」

アニメ版通りジン・ハイマニューバ2型に搭乗。
日本刀の様な形状の重斬刀を得物にしており、新型であるゲイツRの機体を縦一文字に叩き斬る。
ブラストインパルスの砲撃を見切りで回避してシンを驚愕させ、彼を撃墜寸前まで追い詰める等、パイロットとしての腕は一流。

主なMS


前期主役機。 
ナイフ? 何それ。

後期主役機。
万全でなく、シンがOSをよく調整する描写が見られる。

本作オリジナルでガナーザクファントムが登場する(パイロットは勿論…グゥレイト!)

  • ジンハイマニューバII型
ユニウスセブン落としの実行犯・サトーの機体。
「全機抜刀!!」のシーンがムチャクチャカッコイイ。

ベルリンでの戦いでステラを殺した後、直ぐに倒される。

シン視点の為、出番は少ない。

こちらも出番は少ないが、シン視点の為、逆に印象に残る様になっている。
一応ラスボス。

  • バビ
単なる量産機ではあるが、一応ここに掲載。 ディンの後継機であり、飛行能力を維持しつつPS装甲対策にビーム兵器を装備しているスグレモノ。
セイバーガンダムの代車」扱いではあるが、エンジェルダウン作戦にてアスランが搭乗。
アレックス・ディノとしての搭乗だけだったザクウォーリア、事実上の乗り逃げだったグフイグナイテッドを考えると「アスランが唯一正規任務で搭乗した描写のある量産機」(実際にはジンにも乗った事があると思われるが)。


余談

単行本では一部の機体やヘルメット等のモールドが顔に見えるという高山氏の感想が語られており、読者を大いに和ませていた。
また、高山氏はマイナーな機体やMAがお気に入りのようで、カバーのめくりには「赤いザムザザー」、「バビ」、「ユークリッド」が描かれている。


高山氏は前作SEEDの漫画版『機動戦士ガンダムSEED キラとアスランの激闘』も描いている。
こちらは単行本2冊という短い内容であり、尺の都合上本編から変更、カットされたシーンも多い。
なお、連載開始の経緯だが、当時編集部がガンダムに見切りをつけていた為に当初はガンダム漫画の連載はしなかったのだが、
SEEDが大ブレイクした為にマガジンZ連載の漫画版が大ヒット。
その事で上から大目玉を喰らった編集部は大慌てでガンダム漫画を描ける人を探し出し、
嘗て覇王マガジンにて『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESITNY』を連載していた高山氏を見つけ出したとの事。
ロックマンとのタイアップを蹴った件といい、当時の編集部はこんなんばっかりである
また、カットアップ形式となったのはこの漫画が連載ではなく別冊付録100Pの読み切りとしての掲載であり残りはコミックス描き下ろしと特殊な形式を取っていた為
止むを得ず表題通りにキラとアスランの二人に焦点を当て、他のエピソードは切り捨てダイジェストにしたとの事。 ある意味後のこれの先駆けかもしれない。


例えばアラスカ攻防戦でのフリーダムの初陣では、大勢の敵の前でライフルすらも手放して丸腰の状態でアラスカからの撤退を呼び掛けているという描写に変更されている。
こちらのフリーダムは(当初の設定通り)ハイマットとフルバーストの両立が不可能なので、この時だとサーベルを抜かなければバルカン位しか攻撃手段が無い。

「信じてくれ! もう時間が無いんだ!」

「こ、こいつ正気か!?」


番外編となったバルトフェルドとの対決時にも、ナチュラルとコーディネイターの生存競争であり戦い以外に道が無いといバルトフェルドの主張に対して
「もしそうなら、貴方のいるあの街は何故あんなに平和そうなんだ!?」と主張するも、やはり死闘の末に倒すしかなかったという結末が描かれている。
なお、ラゴゥはコックピットに攻撃を受けており、爆発の際に脱出したもしくは外に投げ出されたような描写がされており、生存していた事に説得力を持たせている。

アラスカ攻防戦ではサイにも見せ場があり、連合の捨て石にされかかった怒りから上官に向かって啖呵を切るという、
アニメ版での鬱憤を晴らすかのようなシーンとなっている。

他にもクルーゼとの最終決戦では、ムウの散り際も変更されており、
アークエンジェルの身代わりではなく、中破したストライクに代わってメビウスゼロに乗り換え、有線式ガンバレルのワイヤーでプロヴィデンスを雁字搦めにして動きを封じ、
自分諸共キラにクルーゼを討たせるという壮絶なものだった。

なお、シンが中心とした物語になってはいたが、
掲載された『コミックボンボン』の表紙はアニメ版に合わせる形でストライクフリーダムが飾っていた。
人気だからという事だろうが、作中であまり描かれないので表紙だけでもという理由もあるかもしれない。


その他のコミカライズ

同じく種運命(アニメ)を原作とするマガジンZ版は作画が余り良くなく、評価も良くない。

一方、アスラン視点のTHE EDGEは評価が高い。
こちらは作者がシン好きという事もあって、扱いが良くなっている。
本筋は変わらないが心情のフォローが細かい事が特徴で、かなり印象が変わって見える。

また、久織氏の画風もあってキャラクターが可愛らしい。
現在削除されているが、久織ちまき先生の公式サイトでは沢山のシンのラフ画があった。


ゲーム版において

機動戦士ガンダム Extreme vs.』『スーパーロボット大戦UX』では高山版の台詞も採用され、ファンを大いに驚かせた。
特に後者は原作終了後の設定で参戦している上にクロスオーバーの影響もあり、「UXの種運命は高山版終了後では?」という声も上がった。
なお、シンばかり注目されるがアスランも『蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』の来主操の「俺はもう選ばされたんだ!君たちを傷つけて…今さらどう変われるんだ!」という発言に対して
変われるさ!何度だって変わればいいじゃないか!」と、高山版シンの「今さら何を!俺はもう選んだんだ、この道を!なら行くしかないじゃないか!」に対するアンサーと言える発言をしていたりする。




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最終更新:2024年03月05日 06:31

*1 もともと尺の都合からあえてキラ側の描写はカットしていたのだが、TV版の展開がああなりどうあがいてもTV版準拠の物語でやれないと判明した段階でサンライズからも了承を得たうえでシン主体の物語として継続することになった、とか

*2 これについては、高山氏が手掛けた前作のコミカライズ『キラとアスランの激闘』でムウがクルーゼと共に相討ちになった設定を活かしたものと見られる。