異人館村殺人事件(金田一少年の事件簿)

登録日 :2011/05/22(日) 21:43:15
更新日 : 2017/08/21 Mon 09:40:41
所要時間 :約 22 分で読めます




意識を失っている間、俺は「夢」を見ていた。


ある山奥の村で若い夫婦の間にし男の子が誕生した。

そして彼は成長し、同じ村の少女と愛しあうようになる


やがて二人は一緒になり

幸せに暮らすという……



悲しい夢だった。


異人館村殺人事件は、金田一少年の事件簿で金田一少年が解決した殺人事件のうちの一件。
単行本の第2巻と第3巻に収録。全11話。
登場する怪人は「七人目のミイラ」。

連載初期はもちろん、シリーズ全体においても殺人描写の残酷性・猟奇性とホラー性が群を抜いて高いことで知られる。

以下、ネタバレにご注意下さい。






【事件の始まり】
金田一のクラスメートの一人、時田若葉が教師の小田切進とラブホテル *1 から出て来る写真が何者かによって公開。
これにより、若葉は生まれ故郷・青森県六角村に連れ戻され許婚と結婚させられることに。
金田一は結婚式に出席するため美雪、小田切と共に六角村に向かう。
六角村…通称・異人館村。ダビデの星の形をしており、教会を中心に六つの洋館が立ち並ぶ村で風変わりな住人が暮らしていた。
若葉の家の地下室で金田一達は、首の無いミイラを発見する。
その夜、若葉は<花嫁は結婚前夜、村の教会で一夜を過ごす>しきたりに従い教会に閉じこもった。その数時間後教会の鐘が鳴る。
「鐘が鳴るのは葬式の時だけだ。」
何やら不吉な予感がした金田一達は教会へ向かった。中に入ると、教会のベッドの上で、若葉の首無し死体が横たわっていた…。


【事件関係者達】

  • 小田切進(おだぎり すすむ)
演:東根作寿英
不動高校教師。27歳。
童顔なイケメンだが気弱な性格で若葉といけない関係になっていたのを何者かに撮影されてしまい、関係が表ざたになってしまう。
自分の気持ちに踏ん切りをつけるために一と共に自分の車で六角村に訪れるが…
ドラマ版では英語担当。原作のような気弱ではなく、授業中に納豆食べてる一を廊下に立たせている。尚、演者の東根作は後に同作者コンビの「探偵学園Q」SPドラマ版で真木慎太郎を演じる。

  • 時田若葉(ときた わかば)
演:遊井亮子
明るく負けん気の強い金田一のクラスメート。17歳。時田十三の娘。
密会写真で退学の危機に瀕するが、一の機転で退学は取り消しに。
だが結局親元に呼び戻され、連城と結婚することに。
故郷に帰る寸前に美雪に「家紋を象ったペンダント」を渡し涙を流す。
実家内では令嬢故、おしとやかに振舞っていた。(一はその様子を鳥かごの鳥と比喩していた。)
結婚前夜、昔からのしきたりで教会に一人籠るが、その直後「首のない死体」となって発見される…
最初の死亡者。 殺害されたのは2番目

  • 兜霧子(かぶと きりこ)
演:松原朋子
兜礼二の娘。若葉の幼馴染。釣り目気味だがなかなかに美人。17歳。 劇中で台詞がない。
一たちが若葉の家のある場所を聞こうとした時に無愛想に指を指して案内した。
披露宴ではカラスの羽を飾りにした不気味なドレスを着ていた。
普段着の時は一たちを睨みつける様な険しい表情だったが、ドレス姿になってからは終始生気を感じない物憂げな表情だった。
若葉の付き人として教会の入り口で寝ずの番を担当する。
若葉死亡後に行方不明になったことから最重要容疑者と見なされるが、実は若葉と同時刻に殺されており、
なぜか塔の館のミイラ同様に右肩から左腕にかけての部分を切り取られ、首を自宅の父の鎧コレクションの中に詰められていた。
なお、彼女の住む鎧の館は 骨盤部分が欠けた ミイラを持っていた。
(発見されたのは四番目だが)二番目の死亡者。 実は最初に殺害されている

  • 時田十三(ときた じゅうぞう)
演:三谷昇
「時計の館」主人。老け気味の若葉の父親。
警戒心の強い顔と人当たりのいい顔の二面性を持つ。常に顔の半分は影がかかっている。
一に問い詰められ、27年前に六角村で起きた殺人事件とミイラの事を話した。
直後、牧師夫婦への恐怖と後悔を抱きながら心臓発作で死亡。
五番目の死亡者。
ドラマ版では教会に火を付けた際に火傷を負い、彼が連城の代わりに「フクロ男」になっていた。
中盤にて罪の意識に耐え切れず、長年使わなかったヘロイン精製工場を焼き払おうとしたが、火を投げ入れる寸前で見張っていた剣持に止められる。
真相を話すように促され、原作同様に27年前の惨劇を剣持とその場に居合わせた一たちに話し終えると発作を起こして倒れそして、自分たちの罪のために死なせてしまった若葉へ詫びながら死んでいった。
尚、若葉を連れもどしに来た際、立ちはだかった一を杖で叩いて、K.O.している。

  • 一色寅男(いっしき とらお)
「ステンドグラスの館」主人。ハゲ気味のデブオヤジ。右の頬に痣を持つ。
かなりのゲテ物食い(自称「グルメ」)で、好物は猫の丸焼き。
時田家を嫌っており、若葉が死んだ時には祝ってパーティを開いたりした。
草薙のことも嫌ってるらしく披露宴で失礼な暴言を吐いていた。
三番目の死亡者で、心臓を一突きにされて右足を切り取られ、死亡。
この作品自体では 男性キャラ初の被害者描写 が映された。
ドラマでは未登場。

  • 草薙三子(くさなぎ みつこ)/冬木三子(ふゆき みつこ)
演:白川和子
「ツタの館」主人。ヨボヨボのおばあちゃん。
数年前に一人息子を亡くし、廃人同然になってしまった。かなりの猫好き。パーティーの食事を手でつかんで猫にあげるほど。
一色がパーティーで猫の丸焼きを出した時に自分の猫を丸焼きにしたと誤解して殺そうとした。そのため一色殺害の容疑をかけられる(が、体格面で無理と一に論破された)。
四番目の死亡者で、絞殺されて左足を切り取られ、死亡。
その後、不動高校の学園祭にて幽霊となって登場。
ドラマでは「冬木三子(ふゆき みつこ)」と名前が変更され、館も「白い館」に変更された。恰幅のいい女でヘロイン中毒者。(ドラマ版)三番目の死亡者。殺害シーンは堂本版金田一の例に漏れずグロいが、殺害直前の叫び声はちょっとシュール。

  • 風祭淳也(かざまつり じゅんや)
演:岡田眞澄
「風見鶏の館」主人。六角村の村長でもあるらしい。
すっきりした顔立ちのナイスミドル。狩猟が趣味で、自宅にはたくさんの剥製を飾っている。
曲者ぞろいの館の主人の中では一に協力的で、第一の事件後一たちを迎え入れてくれた。
彼の住んでいる風見鶏の館は左肩から右腕がないミイラを持っていた。

  • 五塔蘭(ごとう らん)
「搭の館」主人。推定40代後半と思われるがその割に見た目はかなり若い。
「夫人」ではあるが結婚指輪をしてない為、多分独身。
ガチレズっぽく、美雪を狙っているなど危ない性格をしておりHシーンを連発。
服を脱ぎ捨て全裸状態で姿見に映った姿に自己陶酔していたところを襲われ、右肩から左腕にかけての部分を切り取られて死亡。
六番目及びこの作女性ゲストキャラ最後の死亡者。更に放火され、焼け跡から発見された・・・のだが、この放火自体、 いったい何の意味があったのか? どっちみち一は、遺留品から美雪が五塔婦人の館に連れ去られていることに気づいていたので、遅かれ早かれ駆けつけていたはずだし、ちょっとばかり死体を早く発見させる必要も、特に・・・。
エリザベート・バートリーにあやかって乙女の生き血を望んでいたらしいが…ぶっちゃけ必要ないです。
ドラマでは未登場。

  • 兜礼二(かぶと れいじ)
演:綾田俊樹
「鎧の館」主人。霧子の父親。地味でかなり根暗な性格をしている。
「塔の館」焼け跡に彼のコレクションの剣があったことから重要参考人として連行される。
ドラマではチョビ髭メガネのナイスミドル。

青森県警捜査一課の刑事。
一にはかなり厳しい態度をしているが、悪い人ではない。
ただし推理力はまるで無く、一色が殺された時、猫のことでもめていた草薙を逮捕しようとして、「体格と腕力の面で無理だ」と一に論破され、苦し紛れに「共犯者がいる。姿を消している霧子だ」と言うが、これも「霧子に一色を殺す動機は無い」と、一蹴されてしまった。

  • 連城久彦(れんじょう ひさひこ)
若葉の婚約者。青森県内で五本の指に入る資産家の子息らしい。
何故か顔を頭巾ですっぽり覆っている袋男。一からは「KKK団か!?」と突っ込まれた。
怪しさ全開の行動をするが…
なお、制作初期の段階では 原作者は「結婚式が舞台だから新郎も出す必要がある」ということをすっかり失念しており、ネームの段階でようやく「若葉の婚約者」がいないとマズいことに気付き、慌てて付け加えた という逸話がある。
彼が袋男であることについても、「この段階からねじ込むなら開き直って怪しさ全開にしよう」「どう怪しくしたらいいですかね…時間もないですし」「と、 とりあえず袋被せとこう! 」というノリで決まったとか。

【その他】
  • 牧師夫婦
村人達(館の主達)と共に大麻を栽培し密売。女ばかり七人の養子をとって生活していた。
しかし、成長するに連れ罪の意識が芽生え始めた養女達を思い、「罪深い行為で富を得るのは辞めよう」と主張。
大麻栽培で巨万の富を得ていた館の主達の反発を受け、殺害されてしまう。
今回の事件は、その亡霊が起こしたものと思われていたが…。

  • ユキさん
「時計の館」の使用人のおばあちゃん。
初登場時は不気味さ全開の感じだったが、根はいい人。

  • 一色家使用人
一色寅男の死体発見シーンにて登場した、メガネのオッサン。

  • 校長先生
不動高校の校長。不倫相手であるPTA会長の息子の推薦入学を斡旋しようとしていた。
ダメだ、この学校…
この事で一に弱味を握られる羽目となり、口止めとして、若葉の退学を取り消すことになった。
尚、校長と会長の写真が異人館村事件で一に解決のためのヒントの1つとなる。

  • PTA会長
校長の不倫相手のおばはん。傲慢で嫌味な性格で、生徒からは嫌われている。
若葉の退学を決め、美雪の抗議にも耳を貸さないどころか 男ならセクハラで訴えられかねない不適切発言をした。
校長と同じく、一に弱味を握られる羽目に。

【レギュラー陣】
毎度おなじみ主人公。
序盤では持ち前のスリテク(スリのテクニック)で若葉の退学の危機を救ったりと活躍。
何故か新郷村のいきさつとか「ダビデの星」とかにやたら詳しかった。じっちゃんに習ってたのだろうか?
教会の屋根から落下した十字架で頬に切り傷を負い、さらに真犯人によって腹部をライフルで撃たれ重傷を負って入院と、美雪とは対照的にボロボロである。

毎度おなじみヒロイン。
今回は五塔夫人に狙われたりその直後の火災に巻き込まれたり、犯人に人質にされたりと、後の事件に劣らず散々な目に遭ってしまう。
しかし、結果的に見れば、なんという強運なのか、何度も危険な目に遭ったにもかかわらず、 全くの無傷 である。
なお、1つの事件の中で2回も危険な目にあった話は、 以降の事件でも全く例が無い
ちなみに、真犯人が来なかったら五塔夫人に殺されていた怖れがあるため、ある意味では、真犯人に救われたかたちになっている。
この頃はまだ態度やツッコミも初々しい。

毎度おなじみオッサン。
今回は管轄外の為本庁で留守番。
一を信用できない俵田に「お前らが10人集まったってそいつの足元にもおよばねぇんだよ!」と電話越しに啖呵を切った。
ドラマ版では捜査を担当し、原作中盤での一の推理を代わりに担当するなど切れ者の警部としての側面を見せていた。

【用語】
  • エデンのリンゴ
100年前の宣教師たちが追い求めた謎のアイテム。
その正体は野生の大麻。
これを栽培して売りさばくことで宣教師と六家族は巨万の富を築き、六角村を作り出した。
ドラマ版ではヘロイン精製工場となっていた(後述)。















【以下、事件の真相… 更なるネタバレに注意。】













逃げ場はない…?
本当にそんなふうに思っているのかい?
オレを甘く見てんじゃねぇか?


名探偵のボーヤ!!


  • 小田切進
この事件の犯人 「七人目のミイラ」
ただし「小田切進」の名前は偽名であり、本名は「 六星竜一(ろくせいりゅういち) 」(ドラマでは「神崎竜一」)。
27年前に六角村で起きた、牧師夫婦と七人の養女殺害事件(以下、六星一家殺害事件)の中で、ただ一人運良く生き延びた娘・六星詩織の一人息子。
母親から様々な格闘術・殺人術を仕込まれ、その仕上げとして 実の母を殺害して 以降、彼は「人間を殺すのはハエやゴキブリを殺すのと一緒だ」と考えるような冷酷な殺人マシーンとなった。
若葉を利用する為、本物の小田切進を殺害し、彼になりすまし、不動高校にやって来る。
そしてまんまと若葉に近づき、復讐の機会を練りながら交際していた。

「芸術的な殺人」という点では後の高遠遙一に通じるところがあるが、向こうが「意外性」やトリックの精巧さを重視するのに対し、彼の場合は「残虐性」や殺人現場の装飾に拘っている節がある。(2人の特徴をそれぞれ一言で言うと、六星は「残虐」で、高遠は「狡猾」と言えるだろう。)


教会でのアリバイトリックを成功させた後は悠々と残虐な殺人を実行していったが一に密会写真に於いての矛盾を指摘されて犯行が露呈。
映されているにも関わらず自分だけカメラ目線になっていたこと、若葉がまったく気づいていないこと から彼が遠隔操作で撮影したと見破られた。
本物の小田切の死も公になったことで、観念すると思いきや、恐るべき本性を現し、警官2人を格闘技で瞬殺した後、場所が風見鶏の館だったことから飾ってある猟銃を手にし、美雪を人質に取り、自分たち親子の呪われた人生を明かした後、最後の標的である兜を射殺した。

その後、美雪を人質にしたまま大麻畑まで逃走し、最後の仕上げとして大麻畑を焼き払おうとし、連城や一に邪魔されながらも、
2人に銃弾を浴びせて負傷させるが、実の父親であった風祭に撃たれてしまう。
母が「風祭だけは殺すな」と言った理由に気づきながらも、その真実は六星には、あまりにも重たく、信じられぬまま、涙を流して絶命した。

死亡扱いで戸籍がなくなっていた母の死にもの狂いの努力で育てられたと語られるが、 その環境で殺人術や警官2人を瞬時に倒せるほどの格闘術を習得 し、更に まともな教育すら受けられなかったであろうはずなのに教師に成りすますことができていた 点から、 とんでもない天才であったのは間違いない だろう。
被害者の方がクズなのは確かだが、様々な殺人術を身に付けていたり平然と無関係な人間を殺したりしていることから、 遠野と並ぶ作中髄一の危険人物 である。

ラストで人質にとって大麻畑まで連れて行った美雪に関しては、誰も来ないまま大麻畑を燃やすことに成功していた場合、どうする気だったのか、不明である(畑を燃やせば用は無くなるが、殺す理由も無くなるし、本人が言ったように「逃げる気が無かった」のなら、全ての目的を果たした後に無関係な美雪を殺す必要性がない)。


バカな女さ、騙されているとも知らずに、本気で俺を愛してたんだからな
本気で……命がけで……
こんなろくでもない男をよ……


若葉の事はどうやら本気で愛してしまっていたようで、他の被害者の死体から切り取った部分はゴミのように扱っていたが、彼女の首だけは丁重に埋葬しちょっとした墓まで立てていた。
また、彼の一人称は「小田切進」を演じている間が「僕」、本性を現して以降は「俺」なのだが、若葉の死体が発見された翌朝、若葉の死体が司法解剖されることを説明する俵田刑事に「これ以上若葉を傷付けないでくれ」と訴えた時だけは一人称が「僕」ではなく「俺」になっている。
恐らく、これ以上若葉を傷つけたくないというのは偽りのない彼の本心だったのだろう…。

  • 時田若葉
この事件の共犯+被害者。
六星に「いっしょになるにはこれしかない」と唆されアリバイ作りに協力し、兜霧子を殺害。
霧子と衣装を交換して、ベッドの上に寝かせて、クロロホルムがついたハンカチを彼女の顔の上に落として眠らせる。
ベッドをウインチのようなもので引き上げて殺し、首を斬った。だがその直後、六星の手によって殺された。
一はベッドの脚に霧子のドレスの羽飾りが挟んであったことからベッドを引き上げたと確信した。
実は六星が自分を殺すつもりであることはうすうす感づいていたらしく(霧子同様父親が六星一家の仇だったため)、絞殺された彼女の遺体には(薬で眠らされたりしたわけでもないのに)一切抵抗した痕跡がなかった。
六星は若葉を絞殺する時に涙を流していた。
(オープニングで一達と別れる際、美雪に家紋の形のペンダントを渡したり涙を流していたりしたのはその伏線であった)

  • 時田十三
  • 一色寅男
  • 兜礼二
  • 草薙三子(ドラマ版:冬木三子)
  • 五塔蘭
大麻密売(ドラマではヘロイン密売)というとんでもない悪事をしていた今回の被害者たち。
それに加えて(すでに時効とはいえ)六星一家をも惨殺するという鬼畜な事までしてしまっていた。まさに殺されても仕方のない連中。
相対的に見て後述の風祭や時田のオヤジさんの二人は罪の意識と後悔を抱いていた分まだマシだったのかもしれないが、他の四人は反省などしていないのは明白であった(息子を亡くして廃人同然になっていた草薙のばあちゃんは既に報いを受けていたようだが)
27年前に事件を引き起こしたということは、当時20~30歳台で館の主になれたのか…?
人物によっては親が直接手を下したのかもしれないが、時系列がちょっとおかしく感じる。
兜は原作では正体判明後の六星に射殺されたが、ドラマ版では生存した。もっとも、過去の悪事が暴かれた上、自分たちの罪のせいで一人娘の霧子まで喪ったのだから、これからの人生は真っ暗であろう。
尚、六星の感想によると、「一色のブタ野郎は命乞いをした」「草薙のネコババアは、あっさりしすぎて物足りなかった」「五塔の淫乱ババアは俺のように、良い趣味をしていた」とのこと。兜に対しては、「本当なら、あんたにも芸術的な死体を用意していた」と告げた後に射殺した。


許せ……息子よ!!


  • 風祭淳也
27年前に起こった六星一家殺害事件の加担者の一人だったが、それ以前に養女のうちの一人、六星詩織とは将来を約束しあった仲だった。
自分自身も麻薬で富を得ていたことから他の館の主たちに逆らうことができず、六星一家の殺害に加担してしまったが、他の館の主たちの目を盗んで、燃え盛る教会に入り、1人だけ生きていた詩織を助けて、ふもとの町の病院に運んだ後、既に死んでいた六人の死体を七人の死体に見せかける「あのトリック」を使用した。
事件後、狩猟と剥製づくりをピタリとやめ、罪悪感で苦しんでいた。
一に大麻やミイラを暴かれた際、反論せず罪を認めている。
息子・竜一を止めるために射殺し、自らが父親であることを明かした。そして、牧師夫婦や息子が成しえなかった大麻畑の放火処分を決行。一に感謝の言葉を残し、自らも頭を撃ち抜いて死んでいった。
彼が牧師夫婦と共に止めればこの事件は起こらなかったかもしれない。

  • 六星詩織(ろくせいしおり、ドラマでは「神崎詩織」)
演:寺田千穂
六星一家長女。風祭とは相思相愛の仲だった。
六星一家殺害事件にて、風祭の必死の救助によりただ一人生き残った。
事件後、戸籍上は死亡したことになっていた彼女は風祭の前から姿を消し、竜一を出産。
財産も身寄りも技能も無く体に火傷痕の残る彼女と息子との生活はかなり厳しく、館の住人への憎悪のみが生きる糧だった。
様々な殺人術を彼に仕込み、最後の仕上げとして、自分を殺させた…。
だが、恋人であり、竜一の父親であった( そして27年前に自分と(自分の腹の中にいた)竜一を救出してくれた命の恩人でもある )風祭への愛(や感謝)は忘れていなかったらしく、息子には「彼だけは殺すな」と釘を刺していたらしい。
家族を亡くす前はごく普通の女性だったであろう彼女が、一体どこで殺人術などという物騒なものを学んだのか…考えるだに恐ろしいことである。格闘術にしても、彼女に素養があったとも思えず、どうやって仕込んだのやら…。

  • 兜霧子
実は時田若葉よりも先に殺害されており異人館村で起こった連続殺人事件の第一の被害者だった。
このキャラクターを一言で言い表すならとにかく「不憫」である。
親の罪のとばっちりを受けアリバイトリックの為に殺された上、死体を切り刻まれ、警察には事件の犯人と誤認され指名手配される。
そしてこれだけ散々な扱いを受けたのにも関わらず作中では特にフォローはなく他の館の住人達と同じ「殺されても仕方のない連中」のカテゴリに入れられてしまう(死体の一部も他の館の主人と同様ゴミのように捨てられていた)。
本物の小田切先生と並ぶ、この事件最大の被害者。
更に言うと彼女はまだ17歳なので未成年である…。
若葉の「逢いたい人がいるからしばらく自分と入れ替わって」というムチャなお願いをすんなり了承し、しかも「教会のベッドで横になって祈る」という花嫁のしきたりまできっちりと代行していた辺り、無愛想ではあったが性格はいい娘だったに違いない。
(ここら辺は完全に推測だが、若葉が恋人と駆け落ちする気かもしれないと思い、彼女を応援するつもりだったのかもしれない)
ドラマ版で追加された台詞から考えてやはり彼女は若葉に同情していた様である。
可哀想すぎる…。彼女や若葉、連城は生き残って欲しかった…。
他人に親切にしなかったことが原因で殺される人がいる一方で彼女の様に他人に親切にしたことが原因で殺される人もいる。
難儀なものである。

  • 本物の小田切進
オープニングで発見された白骨死体は彼。 作品自体では初の男性被害者
不動高校に赴任予定だったというだけで六星に殺され、成り代わられた可哀想な人。
ちなみに生前の姿どころか、頭蓋骨すら描かれておらず、その後の書籍でも一貫して手の部分だけで済まされているというかわいそうな扱いまで受けている。
『金田一少年』史上トップクラスの動機無関係な被害者。

  • 俵田孝太郎
事件後は一を認め、後に準レギュラーに。
実は風見鶏の館にあった弾が詰められたままの猟銃について、風祭に注意をしなかったという、職務怠慢とも取れる様な行動を起こしている。
(ただ、風祭は27年前を境に狩猟と剥製づくりをやめているので、弾丸が入っていなかったのを六星がこっそり仕込んでいた可能性もある)。
警察全体の話として、これが非クローズド・サークルで起きた事件であり1件目の殺人事件以降に出動していて、なおかつ一連の被害者に顕著な法則性があったにもかかわらず、犯人に標的を皆殺しにされるというすさまじい失態を犯している。
以降『金田一少年の事件簿』は探偵・警察サイドが「事件の真相を突き止めること」には強い関心を持つが、「次の犠牲者を出さないこと」にあまり頓着しないという作風でほぼ一貫している。
これは事件が起きなきゃマンガにならないというメタ的な事情を考えれば仕方のないことなのだが。

  • 連城久彦
六星が教会の罠を仕込む所を目撃してしまい、「奴が若葉を殺したに違いない」と思い込んでいた彼は、若葉の仇を討つべく復讐の機会を狙っていた。
最期は六星を刺すが返り討ちに遭い、俵田が一の見舞いに来る前日に死亡する。生き残って欲しかった…。
なお、公式ガイドブックによると素顔は中性的な美青年だったとか。
袋を被っていたのは皮膚の病気の為で、そのせいで体が弱く家に引きこもりがちであった彼は、幼少期から写真だけでしか知らない婚約者の若葉を好きになっていったらしい。
そんな境遇の彼が、敵討ちのためとはいえ人に刃を向けるのだから、余程の覚悟があったことが伺える。
完全な政略結婚であったが、彼は若葉を心から愛していたのだ。しかし、その若葉は自分を殺す男、六星竜一に身も心も捧げ惚れぬいており…。
結果的に彼の敵討ちは無駄な想いとなってしまっているわけで、この事件を余計後味悪く、切ないものにしてしまっている。
せめて事件前に、若葉と少しでも言葉を交わす機会に恵まれていれば、彼の想いも少しは報われたかも知れない…。

金田一に登場する「素顔不明の人物」は、ほとんどが犯人、犯人が偽装工作をするために作り出した架空の人物、後ろめたい事情のある被害者のどれかであるが、数少ない例外がこの連城である。

  • 金田一一
推理の後、美雪を助けるべく六星と取っ組み合い、腹を撃たれて重傷を負う。
幸いにも急所は外れていたが、一歩間違えば連城のように死んでいたところだった(おかげで美雪はケガもせずに助かったが)。
重傷を負いながらも「若葉を利用した」ことに怒りを燃え上がらせる一の言葉は、
若葉のことを本気で愛してしまった六星に、若葉を侮辱する発言とは裏腹に後悔の涙を流させることになった。
事件後は入院していたが、容態が安定したことから美雪と共に東京に帰宅。

この事件は 事件の関係者全員(俵田刑事と使用人を除く)が死亡し、誰一人救うことができなかった(しかも犯人である六星は結果として勝ち逃げに近い最期を遂げている) という、一にとっては非常に苦い結果の事件となった(ドラマ版では兜礼二のみが助かっており、関係者全員死亡は免れた)。
帰りの電車の中では、美雪にセクハラを働いたり、竜一に撃たれた箇所が痛むと言ったりてごまかしながらも、六星と若葉の写真を見て涙を零していた…。




意識を失っていた間見ていた「夢」(項目冒頭がその内容)は、

「もしも27年前の悲劇が起こらなかったら」

というあり得たはずの未来だったのかもしれない…





【ドラマ版】
  • 尺の都合により、六角村を十文字村に変更。それに伴い、村の形は十字架に、洋館の数、ミイラの数は4つに変更。怪人名も「五人目のミイラ」に変更。
  • 六星親子の名字を神崎に変更。いわゆる「本物の小田切」は登場せず、単なる偽名となっている。
  • 俵田孝太郎、一色寅男、五塔蘭、連城久彦は登場しない。俵田の代わりに剣持が登場する。
  • 序盤での一の行動が異なる。原作では学校をサボろうとしたが、美雪に引きずられてしまう。ドラマ版では授業中に早弁(しかもおかずは納豆)をしていたところを先生に見つかり、廊下に立たされた。
  • 神崎と若葉がホテルから出る写真は十三の元に送り付けられている。
  • 若葉は上記の件で不動高校に乗り込んだ十三と部下に連れ去られる。一たちが六角村へ向かったのも若葉を連れ戻す為。。
  • 草薙三子が冬木三子に変更。恰幅の良い体格、猫好きでなくヘロイン中毒の設定に変更。
  • 住んでいる家をツタの館から白い館に変更。
  • 若葉の家の場所を聞く時、霧子が一や美雪に対して話すシーンがある。原作ではカラスを手づかみだったが、ドラマでは鳥かごに入れている。
  • 事件の舞台は青森ではなく東京の奥多摩に変更。その為剣持警部が登場し、ドラマ版オリジナルキャラの向井が俵田の代役になった。
  • 大麻畑をヘロイン精製工場に変更。
    (予算の都合と、「大麻畑を燃やしたら麻薬成分を含んだ煙で大変なことになるんじゃ?」というツッコミが入ったからだと思われる)
  • 霧子が犯人だという人物が冬木に変更(原作は一色)。
  • 牧師夫婦の設定を変更。
  • 風祭が右肩から左腕、冬木が左脇から右腕のないミイラを所持している。
  • 「ミイラに繋ぎ合わせた痕跡があるのでは」という推理は、一ではなく、剣持が言い出している。
  • 連城の代わりに時田十三が袋男になっている(教会放火の際に負った顔の火傷を隠していた)。
  • ミイラの数を誤魔化すトリックに気付くキッカケが異なる。原作では幼い頃美雪が大事にしていた人形を一が間違えて手足を付け替えた事を思い出したが、ドラマでは美雪が窓を開けた事で風に飛ばされた紙の人形を見て気付いている。どっちも美雪絡みではあるが。
  • 一が神崎に打たれた部分が原作の腹部から右足に変更されている。
  • 美雪は、一が撃たれた後、原作では六星につかみかかって突き飛ばされているが、ドラマでは足を撃たれた一をかばうように立ち、その一に押しのけられている。
  • 神崎が詩織を殺すシーン。原作では一突きだったが、ドラマでは メッタ刺し である。
  • 神崎が最後に銃を向けた相手が、原作の一から、兜に変更されている。
  • 前述の通り、兜礼二が唯一の生存者となった。

【余談】
この事件中のとあるトリックが、島田荘司先生の推理小説「占星術殺人事件」のメイントリックをそのまま流用していたため、大変な騒ぎになった。 
と、云うのも「占星術殺人事件」は島田先生のデビュー作にして御手洗潔シリーズの第一作、加えて「本格ミステリ」復活の礎となった作品で、先生自身「類を見ないトリック」と称するなど、日本ミステリ界の金字塔と呼ばれる、付加価値が非常に大きい作品だったため。
更に言うと島田先生はこの作品について映像化は許可しないという方針だったため、この事件がドラマ化までされたことで更なる大問題となってしまった。
担当仕事しろ!…と言いたいトコだが本作の担当はマガジンきってのオマージュキングと名高い『あの』キバヤシ(後の天樹征丸)である。早い話が担当による確信犯。
故に仕方ない。

その後、島田先生が「ゲリラ的な発想によるトリックの無断使用は問題で、民事訴訟になりかねない」とお叱りのコメントを発表する事態になり、
話し合いで本人からトリック使用の承諾は得たということだが、ドラマ版はDVD未収録の欠番作品となってしまった。
連続ドラマ版第1話という重要なはずの話なのだが、現在合法的に視聴するには初期版VHS(後期版VHSはDVDと同じく未収録)もしくは当時の録画テープを手に入れるしかないという状況である。
勿論、アニメ化もされなかった…まぁ、元々ドラマ化できたのが奇跡なレベルの歴代でも屈指のグロ描写の塊なので、どの道アニメ化は無理だったろうが。 

ちなみに、文庫化された際には、 中表紙に「この事件のトリックには『占星術殺人事件』のメイントリックを使用しています」と明記する というある種の公開処刑に処されることとなった。
また、公式ファンブックの「金田一少年の全事件簿」では 「トリックのサンプリング」 という表現と共に『占星術殺人事件』の宣伝が行われる形となっている。

…というかこれ、「異人館村殺人事件」を先に読んだ人間にとっては「占星術殺人事件」のネタバレになってしまうのだが、問題はないのだろうか…?
なお、このトリック自体は「異人館村殺人事件」の犯人やメイントリックに繋がるものでは無いため(そもそも真相が明かされるのが解決編より前)、
先に「占星術殺人事件」を読んでいても別に致命的なネタバレにはならなかったりする。

さらに余談だが御手洗潔シリーズが初実写化されたSPドラマ『天才探偵ミタライ〜難解事件ファイル「傘を折る女」〜』(2015年 フジテレビ)にて、主人公の相方「石岡和己」役としてはじめの演者の相方であるkinki kidsの堂本光一が起用されていた。
この一件を知ってから観ると妙な因果とも言える。


母さんは俺に様々なスレ立てを仕込んだ。そして、最期の仕上げとして、追記・修正した。

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