飛騨からくり屋敷殺人事件(金田一少年の事件簿)

登録日 :2011/05/22(日) 23:23:28
更新日 : 2017/08/12 Sat 09:48:57
所要時間 :約 23 分で読めます





金田一さん――
この村は「獣の村」なんです
自分のためなら他人をも喰い殺す
「獣」がいっぱい棲んでるんです…

飛騨からくり屋敷殺人事件は、金田一少年の事件簿での事件の1つであり、かつて金田一少年が解決した事件のうちの一件。
単行本第11巻、第12巻に収録。全12話。
閉鎖的な村、名家の確執、全体の不気味さなど、『金田一少年』よりもむしろじっちゃんである『金田一耕助』シリーズに近いストーリーである。
登場する怪人は「首狩り武者」。 首狩り武者 の呪いに注意…!!

アニメ版の容疑者リストの順番は上段が左から猿彦、倫太郎、征丸、紫乃で下段が隼人、龍之介、もえぎ、赤沼でバックは緑色。

以下、ネタバレにご注意下さい。










【事件の始まり】

剣持警部の元に、「くちなし村(またの名を首無し村)」にいる幼なじみの紫乃から、「首狩り武者に脅迫されているから助けて欲しい。」と手紙が来る。
剣持警部は早速、一、美雪と共に岐阜県奥飛騨のくちなし村に向かう。
そこで彼等は、赤沼三郎という黒子の様な男と出会い、紫乃が待つからくり屋敷へと案内される。
からくり屋敷に到着するなり、金田一達は紫乃の悲鳴を聞いた。急いで駆けつけると、紫乃の部屋の障子が、刀で斬られていた。
紫乃は「首狩り武者の仕業」だと言う…。


【事件関係者】

  • 巽紫乃(たつみ しの)
CV:武藤礼子/演:真行寺君枝
この事件の依頼者。巽家の後妻。37歳。
和服の似合う美人だが、時折別人のような形相を見せる。
龍之介たち義理の息子たちからは好かれてはおらず、特に龍之介からは徹底的に嫌われている。
この事件で一人息子の征丸を失ってしまう…。

  • 巽龍之介(たつみ りゅうのすけ)
CV:林延年(現:神奈延年)/演:山本太郎
巽家長男。18歳。
暴力的で短気な性格。昔は客人に日本刀で斬りかかったこともあるという危険人物で、一に面と向かって「ちょっと神経どうかしてる」と言われたほど。
こんなんでも学業はそこそこ優秀らしく、去年までイギリス留学をしていた。
紫乃と征丸を徹底的に嫌っており、自分が当主になったら2人を追い出そうとするが、父の遺言で次期当主は征丸に決まってしまう。
この為、紫乃と征丸への憎しみは以前にも増して強くなり、征丸が死んだ際には「今度こそ自分が当主になれる」と喜んでいた。
まぁ、自分が帰って来た時に使用人の女が義理の母になって、その息子が義理の弟として自分の家に入り込んでいることを知ったら、面白くない気持ちも分からなくはないが…
ドラマ版の中の人は後に同じ作者の別作品でも主要人物を演じることになる。

  • 巽もえぎ(たつみ -)
CV:西村ちなみ/演:大村彩子
巽家長女。17歳。
物静かな美少女だが、言葉はかなり辛辣。大の猫好き。
養母や弟たちに対しても横暴な態度を見せる龍之介も、妹のもえぎの言うことには耳を傾けるという意外な一面があるが、シスコンというよりは、しきたりにより当主の座とは無縁の女性が相手ゆえかもしれない。
ドラマ版ではロリ。

  • 巽隼人(たつみ はやと)
CV:鈴木琢磨
巽家の次男。15歳。
容姿の整った美少年だが幼い頃の病気で幼児退行してしまっているらしく、まともに言葉すらしゃべれない。ビー玉遊びが好き。

  • 巽征丸(たつみ せいまる)
CV:高木渉/演:阿久津健太郎
紫乃の息子。18歳。
紫乃が後妻になったのと同時に自分も巽家に入った。
龍之介とは対照的に礼儀正しく母親想いの好青年。だが、自分たちを虐げる龍之介には激しい憎しみを抱いている。
前当主の遺言により、巽家の家督は彼が継ぐことになった。
勝ち誇った顔で龍之介を見下していたが、赤沼殺害の翌日に外出した矢先、「首狩り武者」に惨殺され、一達の目の前で生首を晒された。
2番目の死亡者。

  • 赤沼三郎(あかぬま さぶろう)
謎の黒子。とにかく不気味。
紫乃によると、蔵之介の古い友人らしいが、実際は征丸の死産したはずの双子の兄弟らしく、紫乃の前だけで見せた素顔は火傷により征丸と同じ顔であるかは分からないと、謎めいている。
首狩り武者の秘密を知っているらしく、一に正体を教えようとした矢先、「合わせ扉の間」で首なし死体となって発見される。検死の結果、紫乃とは血の繋がりがないことが判明。
最初の死亡者。

  • 冬木倫太郎(ふゆき りんたろう)
CV:石丸博也
紫乃の主治医。40歳。
くちなし村では紫乃と征丸の数少ない味方であり、赤沼の件では征丸の将来を踏まえて、大金を渡すように紫乃に助言した。
一と美雪が首狩り武者にさらわれた際には、剣持に首狩り武者の由来を語って聞かせた。

  • 桐山環(きりやま たまき)
巽家使用人のメガネっ娘。17歳。そばかすがあるがなかなか可愛い顔をしており、胸も大きく、スタイルも悪くない。美雪とはまた違うタイプの美少女と言っていい。
巽家の使用人ではあるが、遺産相続をめぐる醜い争いが繰り広げられる巽家や因習にがんじがらめにされたくちなし村のことを良くは思っていない。
一達が保護された後、一が目を覚ましたのを見て、安堵の涙を流す、性格の良い子。
彼女の母親も元は巽家の使用人だったが、環が幼い頃に他界。
アニメ・ドラマでは登場しない。

  • 仙田猿彦(せんだ さるひこ)
CV:二又一成/演:小倉久寛
巽家の使用人。
身のこなしの軽い小男で、元は軽業師(ドラマ版ではサーカス団のピエロ)であったらしい。どこか不気味な雰囲気を持っている。
剣持の推理後、銃の暴発事故で死亡する。
3番目の死亡者。
遺品から柊家(後述の柊兼春の家)の家紋の入った短刀が発見された為、「先祖の敵討ち」と断定されたが…

  • 冬木ウメ(ふゆき -)
CV:巴菁子
倫太郎の母親。70歳。
首狩り武者の信奉者。


【それ以外の人物】

  • 柊兼春(ひいらぎ かねはる)
CV:二又一成/演:野仲イサオ
くちなし村において「首狩り武者」として語り継がれる戦国時代の落武者。
関ヶ原の戦いで敗走し、今のくちなし村付近まで落ち延びるが、家康に兼春の首を差し出して保身を図ろうとした部下に殺された。
その後、くちなし村の住人となった部下たちが次々と首なし死体で見つかるという祟りが起こったため、生首神社にて祀られる。
尚、直接兼春の首を討った部下が巽家の先祖であり、巽家の縁者には特に兼春の祟りを恐れるものが多い。

  • 巽蔵之介(たつみ くらのすけ)
故人。
巽家先代当主。
晩年は「首狩り武者」の影にずっと怯えていたらしいが…。

  • 巽綾子(たつみ あやこ)
CV:日野由利加/演:橋本愛
故人。
巽家の前妻で龍之介、もえぎ、隼人の母親。
ものすごいヒステリーで使用人たちからは恐れられていた。
8年前に死去。

  • 森刑事
  • ゴリラーマン似の刑事
岐阜県警の刑事たち。
オランウータンに似た老刑事とゴリラーマンに似た刑事のコンビ。ゴリラーマン似のほうは本名不明。
いい人たちだが、典型的な縄張り意識をもった刑事。
ゴリラーマン刑事は一に手帳・安物のライター・粗品のボールペン・スナックのマッチ(女性の字でメモ入り)をスラレた。

  • くちなし村の住人
昔からくちなし村に住んでいる人達。
柊兼春の呪いを信じており、警察の捜査に協力しなかったり、一達を「災いを呼ぶ者」と決めつけて追い出そうとしていた。 あながち間違ってはいない。


【レギュラー陣】

毎度おなじみ主人公。
今回はオッサンの依頼で巽家に赴く。
環に浮気しかけるが…
そのバチが当たったのか、中盤、美雪と共に「首狩り武者」に拉致され、首を… 落とされませんでした。
だがそれ以降はどことなくクールでドライ。
普段のおちゃらけた彼とのあまりの違いに戸惑った人も多いのでは?
…だがこの次次の事件で今作以上に酷い目に合う事になる…
ちなみに、美雪をさらった首狩り武者を彼が追跡したことが、犯人にボロを出させる結果に・・・

ドラマ版はトラウマ。

毎度お馴染みヒロイン。
環に浮気しかけた一に常にキレ気味だった。
下着姿のシーンには大変お世話になった紳士も多いことだろう。
2度、首狩り武者に狙われるが、1度目はたまたま一が戻って来たため未遂に。
2度目は本当にさらわれ、追って来て返り討ちに遭った一ともども征丸の死の「証言者」にされた。
征丸の生首を見せられたショックで気絶、そのまま一に背負われて脱出。
途中で一も力尽きて気絶してしまうが、
冬木に発見され、警察によってか、2人揃って巽家に運ばれた。
健康状態に問題は無く、目を覚ました時、一と無事を喜び合った。

毎度おなじみオッサンにして、今回の実質的な主人公。
幼馴染であった紫乃の依頼で巽家に赴く。
中盤では一を差し置いて鮮やかな名推理をする(結局外れていたが)など、コミカルな面ばかりだったオッサンの警視庁の警部としての本来の姿を見せてくれた
残念ながら彼の推理は犯人のミスリードで、一が彼より先に1度考え、既にボツにしていた物だった。

のちの剣持警部の殺人にて年齢が48歳と判明するが、この設定を鵜呑みにするとこの事件や他のエピソードとは矛盾が生じてしまう。
たぶん作者の設定ミスだと思われる。詳しくは後述。
ちなみにアニメ版では年齢が38歳となっているため、紫乃と幼馴染という設定に違和感がなくなっている。ドラマ版だと『すでに警察の駐在所に勤めていた若き日の剣持と、当時学生だった志乃が挨拶を交わして知り合っていた』という設定に代わっており、まあ納得できる経緯となっている。














【以下、事件の真相… 更なるネタバレに注意してください】










あなたの知ってる「紫乃」はもうあなたの思い出の中にしかいないわ
ここにいるのは「紫乃」という女の皮をかぶった―
醜い「獣」なのよ…

  • 巽紫乃
この事件の真犯人 「首狩り武者」
彼女の苦難は、幼い頃、父が多額の負債を抱えたまま亡くなったことから始まった。
病弱な母を支えようと紫乃は必死で勉強し、県下トップの高校に進む。
しかしそこで紫乃は、クラスメイトのお嬢様・綾子から壮絶なイジメを受け、更には2年生の時に母を亡くし、仕事のために高校を中退せざるを得なくなる。
母を失い全てに疲れ果てた紫乃は自分に近寄ってきた男・猿彦の元に身を寄せるが、彼女の妊娠と同時に、猿彦は紫乃を捨てる。
そして紫乃は出産のために入院した病院で、偶然同じく妊娠した綾子と擦れ違う。
男に捨てられ暮らしにも困窮する自分と、生まれた家が裕福だったというだけで旧家に嫁ぎ、何の不自由もなく暮らす綾子…。
そのギャップに対する激しい怒りと惨めさは、出産後に新生児室で我が子と対面した紫乃に悪魔の囁きを齎す。


ごめんね…私なんかの所に生まれたばっかりに…
お前ももっといい家に生まれてたらきっと…


いい家――!!

その囁きに耳を貸してしまった紫乃は、こっそり自分の子供と綾子の子供を入れ替えた。
この時はまだ子供には罪はないと思っていたのか、憎い女の子供であるはずの征丸を暴力を振るうこともなく龍之介の分まで愛情を注ぎ、
18年間しっかりと育て上げた。

そして月日は流れ、入れ替えた実子の姿を見たいという思いを抑えきれなくなった紫乃は、綾子が嫁いだ巽家の使用人となる。
再び綾子から虐げられる日々に耐え、実の子である龍之介の成長を喜びと共に見守っていた彼女は、綾子の死後、先代・蔵之介に見初められ後妻として巽家の一員となる。
紫乃が蔵之介の求婚を受け入れたのは恐らく、例え表向きは「義理の親子」という関係だとしても、龍之介の「母親」になりたいという思いがあったからだろう。
もちろん紫乃の一番の望みは龍之介が当主になって不自由なく暮らすことであり、
その上で彼が征丸たちとも仲良くして、巽家を盛り立ててくれるのならばそれでいいと思っていた。
しかし…

蔵之介が死に際して遺した遺言は「財産と家督を征丸に相続する」というものだった。
愕然とする紫乃の前で、征丸は今まで母共々虐げられてきた鬱憤を晴らすように、龍之介を嘲笑う。
そして、かつて自分を嘲笑った綾子にそっくりなその顔を見た瞬間、紫乃は耳元に綾子の嘲笑を聞いた。


あんたの子供は幸せにはなれない
運命には逆らえないんだ

貧しい生い立ち、理不尽に虐げられた日々…蘇った「貧困」と「綾子」に対する怒りと憎しみが、彼女を「獣」へと変えた…。
「龍之介の両親である自分たちが巽家を乗っ取る」という名目で猿彦の協力を取り付けた紫乃は、
龍之介に家督を相続させるために今まで息子として育ててきた征丸を殺し、その死体の首を切るという残忍な犯行に手を染める。
龍之介が仕込んだ毒入り紅茶を飲み干してしまうも、一切恨み言を漏らすことなく、最期まで龍之介を庇いながら絶命する。

実の子の代わりに愛情を持って育てた征丸を「綾子と同じ顔をして、龍之介の幸せを奪おうとしたから殺した」のは酷すぎだが、
龍之介の幸せのために全てを捨てた姿は母の愛情という執念だった。

ちなみに、彼女は1度だけ赤沼に扮装していたが、実は首狩り武者の扮装をした事は一度もない。
(首狩り武者の初登場は彼女がいる部屋を襲撃するという形であり、一と美雪の前に現れた際は後の回想シーンで中身が猿彦だったと判明している)

  • 仙田猿彦
この事件の共犯。
紫乃の恋人だったが、彼女が妊娠すると、彼女を捨て、行方をくらます(ドラマ版では何らかの罪(紫乃に対するDV?)で逮捕されており、その時に剣持と一瞬だけニアミスしている)が、彼女が巽家の後妻になるなり、彼も使用人になる。
元軽業師の技量を活かして崖に渡したロープを伝って事件が起こった部屋から逃げることができると推理されたが、実は軽業師だった頃に綱渡りで落下事故を起こし、それ以来高所恐怖症に陥っていた。
その恐怖心は、植木を剪定するのに脚立の最上段はおろか2~3段目までしか登ることができないほどに重度であり、一は彼が植木の枝切りをしていた際、脚立を使えば届く範囲の枝を切るのにも高枝切り鋏を使っていたことを思い出してそのことに気付き、猿彦犯人説が偽装であることを見抜いた(紫乃にしてみれば、元軽業師の仙田だからこそ実行可能な偽トリックをあてがったつもりが、高所恐怖症で実行不可能になっていることは計算外だった)
紫乃曰く「とんでもないクズ」であり、使用人になったのも自分との過去の関係を彼女にチラつかせ、金をせびるためだった。
柴乃から龍之介が自分の子であることを知らされ、紫乃の計画に加担し、巽家を手中に収めようと目論む。
剣持に犯行を暴かれた後、逃亡中に合流した紫乃が提案した心中に賛同するふりをして、紫乃に全ての罪を着せようとするが、紫乃には考えを読まれており、鉛の詰まった猟銃を使ったことが元で自身だけが死亡。「柊家の子孫で先祖の仇討ちのための犯行の末に自滅」とされた。
柊兼春の子孫だという話も、ただのでっち上げで、そう思わせて動機を作るために紫乃が関連の品を置いて行っただけ。
龍之介の性格は、綾子の教育だけでなく、猿彦の血が強かったという面もあるだろう。

美雪をさらったのは、征丸の死体を出すとDNA鑑定で紫乃の子でないことがバレるし、隠すと行方不明扱いになって龍之介に家督が回って来ない。そこで、「征丸の死体が出ないまま死だけが確認される方法」として、第三者に証言させる、という方法をとったため。それには、巽家と利害関係が皆無、警察からの信用がある、非力で誘拐しやすいと、三拍子揃った美雪は、うってつけの「証言者」だったのである。

ちなみに、征丸の死の「証言者」にするために美雪をさらう際、刀で首筋を峰打ちにしているが、現実には、それでも十分に殺してしまいかねない危険な行為である(しかも、征丸の生首を見せられた時に自分で気絶していなかったら、もう1回打たれていたと思われる)

また、その際、一の追跡という予想外の事態が発生、その一を横道も隠れる場所も無い狭い洞窟の中で背後から紫乃が殴ったことで、一に犯人が2人いることを気づかせるきっかけになってしまった。

洞窟の中で征丸の服を着て横になっていたのは紫乃の変装。立ち去る際に火の点いたローソクを残したのは、気がついた後の一達がそれを使って手首のヒモを切って逃げ出せるようにするためだった。しかし、運動音痴ながら有事の際の行動力に優れた、男の一がいたから、その思惑どおりにヒモを切ることが出来たが、 もしも当初の計画通りに美雪1人だったら、一のように上手くヒモを切れたかどうかわからない。 失敗して火傷をすることを恐れて切ろうとすること自体できない可能性もあるし、切れる前に火が消えてしまう怖れもある。これについては、一という予定外の人間がいたからこそ上手くいった、とも言えるだろう。もっとも、失敗して2人(当初の計画なら美雪1人)が戻って来なかった場合は、紫乃あたりが警察に洞窟の存在を教えて保護に向かわせるつもりだったのかもしれないが。

ちなみに、もっと前、美雪が1人で着替えをしていた時、背後から犯人が拉致しようとするも、たまたま一が戻って来たために未遂に終わる、というシーンがあるのだが、この時拉致しようとしたのが紫乃と猿彦のどちらだったのかは、謎のままである。ただ、殺人のターゲットならともかく、ただの目撃者役を拉致するのに「若い女性が下着姿になっている時」をためらい無く狙おうとしたことから、美雪と同性の紫乃だった可能性が高いかもしれない。

しかし、美雪が剣持や一に同行して村に来たことは、紫乃や猿彦にとっては予定外だったはずなのだが、もし来ていなかったら、目撃者役は誰にやらせるつもりだったか、という謎は残る。他のメンバーで最も適任なのは環、非力を考慮しなければオッサンだろうか。元々巽家にいる人間の中で最も適任の環にやらせるつもりが、たまたま来た美雪の方がより適任と考え、急遽変更した、と考えれば、辻褄は合うが・・・。

  • 赤沼三郎
正体は猿彦と紫乃の二人一役。事件のアリバイトリックと、征丸の死体を別人として始末するために作りあげられた架空の人物。
首なし死体は征丸のものだった。

  • 巽龍之介
紫乃の実の息子。
自分が紫乃の子供だということは事件の謎解きの際に初めて知った。
征丸の死後、彼は晴れて巽家の新たな当主になることが決定しており、実母とも知らず邪魔者の紫乃を毒殺しようと企んでいた。また、弟の隼人が父親に可愛がられるのを妬み、6年前の「五月の節句の会」で、祝酒に毒を盛って殺そうとする等、綾子の教育が原因なのか、相当問題的な人物であったようだ。
しかし、隼人に対する殺人未遂が6年前ということは、 12歳の子供が9歳の弟を毒殺しようとした ことになり、いくら性格が悪いにしても、 年齢的に無理があり過ぎる のではないだろうか・・・。毒自体、12歳の子供がどこから入手できたのか、不明なのである。

紫乃が実母であり、自分のために征丸を殺したことを知り、自身が毒を盛った紅茶を飲もうとする彼女を慌てて止めるが、間に合わずに紫乃はそれを飲んでしまう。
その直後、隼人に過去の毒殺未遂を暴露された上に「また毒を盛ったね?」と糾弾され、一気に人生が転落した。
義母同様に傲慢で苛烈なその性格は、隼人からも「死んだ母の『性格』を継いでいるのは絶対あの人だと思ってた」と言われるほどだったが、実母を殺害してしまったことで人が変わったかのように意気消沈してしまったらしい。
(一応、証拠はない上に紫乃本人が「自分で毒を入れた」と庇ってるので、「毒を入れる場面を見てしまった」と主張すれば言い逃れは出来たはずだが、その気すらも完全に失せてしまったようである。)

養父の蔵之介が、綾子の歪んだ教育で性悪になってしまった龍之介の問題点をどこまで気付いていたのかは不明だが、後継者を紫乃の子と思っていた征丸に選んだ事からも、隼人に毒を盛った悪事等についても知っていた可能性があるかもしれない。


俺を見るあんたの目…… あれは憎しみの目だとずっと思ってた……。
……でも、そうじゃなかったんだね……?

あの目は…… 俺を見るあの目は……

ドラマ版では結末こそ変わらないものの、ほんの僅かな間だけでも紫乃と「親子」として向き合えたシーンが追加されており、原作に比べれば少しだけ救われたといえるのかもしれない。

  • 巽隼人
幼児退行は演技で、本質は巽家で一番まともな人物。
幼少の頃、父親に可愛がられていたために龍之介に嫉妬され、6年前の「五月節句の会」において、祝酒に毒を盛られて危うく死にそうになるも、一命を取り止める。
その後、身を守るために毒でおかしくなったフリをしていた(環にはかなり前からバレていたらしい)。
そして、紫乃が毒を飲まされた直後に演技を終え、皆の前でそのことを告白。
実は環と相思相愛の仲であり、いずれは家を捨てて彼女と駆け落ちするつもりらしい。ビー玉遊びが好きなのはガチらしい。
ただし、アニメ版では下記の理由から駆け落ち設定が消滅している。

  • 巽征丸
実は綾子の実子。
病院で紫乃の手により、入れ替わる。何も知らない征丸は、紫乃を「母さん」と呼び、慕っていた。
征丸が傲慢な龍之介とは対照的に誠実で心優しい青年に成長したことからも分かるように、紫乃もまた、彼に対しても実の子のように愛情を注いでいた。

そう、あの時までは…!!

「龍之介の家督相続の邪魔になった上、自分が家督を相続できると知って龍之介を嘲笑った時の顔が綾子にそっくりだった」という理由だけで、義母に利用され殺される。
何も知らずに義母のトラウマスイッチを入れてしまっただけであって彼本人には何の罪もなく、『金田一少年』全体を見てもトップクラスの可哀想な被害者
そもそも、彼が龍之介を嘲笑ったのは散々母と自分を虐げてきた龍之介への仕返しであり、母を思っての行動でもあった可能性がある。
それで母に殺意を抱かれてしまうとは、つくづく報われない青年である…。

ちなみに、『金田一少年の事件簿』開始当初からの担当編集者であり、後に原作者となった天樹征丸氏のペンネームの由来はこの巽征丸である。

  • 桐山環
実は隼人の恋人(早くから伏線は張られていた)。
彼の「演技」については、かなり前から気づいていたらしい。
綾子のイビりこそあったが隼人に支えられ、彼とは相思相愛の仲になる。
いずれは巽家を捨てて隼人と駆け落ちするつもりらしい。

  • 巽もえぎ
巽家では隼人に次いでまともな人物。
巽家の掟では女性は当主になれない(後述)が、ぶっちゃけそんな古い掟なんかやめて彼女を当主にすれば案外いい当主になれるかもしれない。

後に異人館村の草薙のばあちゃんの幽霊と共に(?)不動高校の文化祭に遊びに来た。
元気そうで何よりである。

  • 冬木倫太郎
その正体は柊兼春の子孫のうちの一人(苗字も柊→木冬→冬木というアナグラム)。
18年前、インターンとして在籍していた病院で偶然紫乃の赤ちゃんの入れ替えを目撃してしまうが、母親から先祖の無念を聞かされていた彼はそれを黙認してしまう。
(剣持警部に村人の多くが兼春を裏切った部下の子孫だと明かした際、彼は「あの主君殺しどもの」と口走っており、母の影響で彼も巽家を筆頭とする兼春の家来の家には恨みを抱いていたと思われる)
ただし、彼は当然このような惨劇を望んでいたわけではなく、彼が紫乃の行動を黙認したのは「龍之介が成長し家督を継げば、巽家の血縁による家督継承が断絶する(自らの手を汚さず巽家本来の血筋を平民に落とすことができる)」という考えからであった。
もしも彼がこの時に紫乃を止めていたなら、この事件は起こらなかったかもしれない。彼自身も紫乃のことを恋慕していた雰囲気があり、それが余計に哀しい。
金田一にそれを指摘された際にも、「そんなつもりではなかったんだ…」と、紫乃を凶行へ駆り立てる遠因になってしまったことへの後悔から泣き崩れていた。

  • 冬木ウメ
前述のように柊兼春の子孫であり、首狩り武者の信奉者であるのはそのため。
息子の倫太郎と違い、オープニング以外出番が殆どない。そのため、「ワ、ワシの出番ない…;」の名セリフで、読者を爆笑の渦に巻き込んだ。

  • 巽綾子
この事件の元凶。
お嬢様育ちの悪いところだけを凝縮したような最低の性悪女で、貧しいながらも何かと目立つ紫乃が気に入らないからという実にくだらない理由で、壮絶なイジメを行なった。トラウマに苛まれる紫乃の姿からも、その時の行いの酷さが窺える。
性格は言うまでもなく最低、顔もいかにも性悪そうな釣り目の不細工だが、裕福な家の出身というだけで巽家への嫁入りに成功し、悠々自適の生活を送っていた。が、最も溺愛し実子と思っていた龍之介は、実の弟と思っていた隼人や義母であった紫乃を「邪魔だから」という理由だけで毒殺しようとする程、性格が醜く歪んでしまっている。逆に実子であった征丸は、紫乃の養育によって素直で母親思いの優しい人間になっているのだから、母親としても最低そのものである事をはっきりと証明している。(正直、こんな顔も性格も最悪の女からどうやって征丸達美男美女の兄弟が生まれたのか不思議である)
ぶっちゃけ、コイツがイジメなんてしなければ、事件は起こらずにすんだ。
なお、病院で紫乃と擦れ違うシーンで綾子に付き従っていた使用人達は「資産家令嬢であった綾子が巽家に嫁いだ」がゆえに綾子を慕っていたとされているが、裏を返せば「巽綾子という人物そのものは慕っていない」とも受け取れる。

巽家に嫁いでからも性悪ぶりは変わらず、紫乃や環といった使用人はよくその被害に遭っていた様子。
死亡した後も紫乃の夢に出てくる等、ある意味では「首狩り武者」よりも恐ろしい亡霊と言える。
29歳(紫乃と同級生・8年前死去から逆算)という若さで早死にした点は報いと言えるかもしれないが、紫乃が自らの手で復讐することができなかったという点では良かったのかどうか…。
せめてもの救いは、実の子供たちにはこの女の残酷な面は受け継がれなかったということなのかもしれない…(それどころか、隼人やもえぎは実母を反面教師として毛嫌いしており、征丸が誠実に育ったのは紫乃の教育の賜物。夫の蔵之介が紫乃を後妻にしたのも、散々綾子に虐げられていた彼女を不憫に思ってのことだったのかもしれない)。
征丸はある意味実の母親に殺されたと言っても過言ではない。
アニメでは上記の紫乃への「あんたの子供は幸せにはなれない」の一言(幻聴)だけが台詞であり、後半の「運命には逆らえないんだ」は、征丸(の幻影)が言った様に演出されている。

  • 剣持勇
紫乃に利用されるだけ利用されていた、 ある意味征丸以上に可哀想なこの事件最大の被害者。
仕事をサボってまで紫乃を助けようとしていたが、とことん報われなかった…。
紫乃はオッサンの初恋相手であり、なかなかいい仲であったことが様々な回想シーンから伺えるが、
もしもオッサンと紫乃が結ばれていたら、どうなっていたのだろうか…。
ちなみに先述の矛盾とは、『オッサンの年齢48歳と、志乃の年齢37歳では 一緒の学校に通えるはずがないから 』。

幼なじみ時代の紫乃はかなりの美少女であり、こんな人に「剣持くん、一緒に帰ろ?」なんて言われたら、初恋をしてしまうのも無理もないことである。

  • 剣持和枝
剣持警部の奥さん。エピローグにて初登場。
仕事をサボって定期預金まで使い込んでいたオッサンにキレており、オッサンも「あんなヤツ」呼ばわりしていたが、実際の夫婦仲は割合良好。
意外と美人だし、悪い奥さんではない。
後の作品で美雪と一緒に水着姿になるシーンがあるが、さすがに若く美少女でスタイル抜群の美雪と比較すると分が悪いものの、
プロポーションもそれなり以上に保たれていて、中年になり女を捨てたそこらへんの「オバサン」とは明らかに違う。
ちなみに2人の馴れ初めは怪奇サーカスの殺人にて明かされた。


【謎解きについて】
論理を組み立てるというよりも直感型のトリック。
シンプルゆえにインパクトのあるトリックで、原作者もこのトリックはかなりお気に入りだったようだ。
しかし性質上、勘のいい人なら一瞬でわかってしまうかもしれない。

にしても、部屋のすぐ外に別の誰かがいたらどうする気だったのか……
よく考えると、シンプルゆえにリスクも高そうなトリックである。



【原作との違い】
◇ドラマ版
  • 舞台を宮城県に変更。そのため事件名を「首無し村殺人事件」に変更。
  • 柊兼春の事を説明する人物が剣持に変更。
  • 年齢等の設定的に無理があるため、剣持警部は、かつて紫乃がいた村の駐在さんに変更され、そこで挨拶をされて知り合ったことになっている(ただし紫乃の中の人と剣持警部の中の人はほぼ同い年だが)。
  • 冬木倫太郎、巽隼人、桐山環は登場しない。
  • 龍之介、もえぎ、征丸は常に和服。
  • 一達が巽家に到着したと同時に首狩り武者が現れる。
  • もえぎが征丸の事を「征丸兄さん」と呼んでいる。
  • 家督相続の発表で龍之介が日本刀を持って征丸を襲おうとした。
  • 龍之介が征丸に銃を突きつけるのが夕食の時に変更。
  • 一が首狩り武者の洞窟から美雪を連れて脱出するシーンはカット。
  • 銃に鉛が詰まっていた事を知っていたのは蔵之介と紫乃の2人だけ。
  • 紅茶を日本茶に変更。
  • 紫乃は龍之介が毒を入れていた事を知っており、彼の制止を振り切って毒入りの茶を口にしており、ほとんど自殺のような形で死んでいる。

◇アニメ版
  • 生首という言葉や首無し死体の直接的な描写が変更 *1
    • 生首神社を武者神社に変更。
    • 首狩り武者を呪い武者に変更。
  • 赤沼三郎は武者神社で初登場する(この時、赤沼に変装していたのは巽紫乃)。
  • 何故かこちらでも桐山環は登場しない。その為、上記の通り、隼人が彼女と駆け落ちする設定も消滅している。
    • 環が登場しないため、祭で一達と同行したり、銃に鉛が詰まっていた事を説明する人物が巽もえぎになっている。
  • 冬木ウメは最初から容疑者リストに表示されていない。
  • 武者神社の洞穴で台の上に置かれた生首は征丸のものだけになっている。
  • 一が首狩り武者の洞窟から美雪を連れて脱出するシーンはドラマ版同様にカットされたが、「洞窟の近くで倒れていた所を冬木が見つけてくれた」という説明が入った。
  • 森刑事ら岐阜県警の刑事と剣持和枝は登場しない。
  • くちなし村の人達が巽家に押しかけてくるシーンがカット。
  • 冬木倫太郎が柊兼春の子孫であることやインターン時代の出来事がカット。


【余談】
征丸は死亡、龍之介は逮捕、隼人は原作では環と駆け落ちするつもり。
巽家の掟では女性は家督相続権はないとされているため、もえぎも当主にはなれない。
つまり、巽家の家督を継げる者は現在存在しないことになる。
掟を変えない限りは、出所後に龍之介が継ぐか、もえぎが婿養子を取って継がせることになるだろう。
(アニメ版ではそのまま隼人が当主になれば問題はない)
(法律上、家督はともかく父の遺産をもえぎが継ぐことは可能である。故人の指定した相続人である征丸が既に死亡しているため、3兄弟には1/3ずつ相続する権利がある)

また、先代当主が征丸を後継者に指名したのは、

「征丸が実子であることを密かに見破っていたため」

だとか、

「後継者として一番無難だったのが征丸だった(龍之介→傍若無人過ぎて家督を任せられない。隼人→幼児退行してしまっているのでダメ。もえぎ→女の子だから家督は継げない。征丸→器量よし、性格よしで後継者として申し分ない。龍之介とも和解してくれるだろうし血筋ももえぎと結ばれてくれれば大丈夫。よし、征丸を後継者にしよう!)」

ので、征丸を指名したのではないかと言われている。 ただし、もし征丸ともえぎが結婚するとなると、実の兄妹による近親婚という大問題になってしまうが・・・。

なお、この事件以降(この事件も含めて)6件連続で犯人が死亡している。中には犯人の生死がはっきりと描かれていないものや、共犯者は生き残った事件もあるが。


追記・修正の間…!!

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