アルフォンス・エルリック

登録日:2011/07/17 Sun 23:51:11
更新日:2024/01/18 Thu 20:39:07
所要時間:約 8 分で読めます





人は何かの犠牲なしに

何も得ることはできない

何かを得るためには、

それと同等の代価が必要になる

それが、錬金術における等価交換の原則だ

その頃僕らは、

それが世界の真実だと信じていた



アルフォンス・エルリックは荒川弘原作の漫画、鋼の錬金術師のもう一人の主人公。

声優:釘宮理恵(2003年版・FA共通)/日下ちひろ(ドラマCD Vol.1) / 水石亜飛夢(実写映画版・モーションアクターも兼任)
年齢:14歳(エドとは年子)



エドワード・エルリックの実弟。
穏やかで心優しい少年で、怒りっぽく猪突猛進型の兄を宥め、フォローするストッパー的役割を担う。
が、時には自分の正しいと思ったことを頑なに主張する芯の強い一面も持つ。案外兄より世渡り上手なのかもしれない。
一人称は『ボク』で、周囲からの愛称は『アル』。エドのことは『兄さん』と呼ぶ。
容姿は後ろを刈り上げた短髪、髪と瞳の色は兄と同じく父譲りの金。面差しは母親を色濃く受け継ぐ。

本編ではその“元”の姿より“仮”の姿である鎧の大男のイメージが強い。


【概要】
大陸歴1900年、イシュヴァール内乱勃発の前年にヴァン・ホーエンハイムとトリシャ・エルリックの次男として田舎町リゼンブールに誕生。
ほどなくして父親が家を出て、以降は母子三人暮らしとなるが、隣人のピナコや、その孫娘で幼馴染のウィンリィの支えもあり、平穏に暮らしていた。

母が流行り病で他界するまでは…。

兄と共に大好きな母を甦らせる方法を模索し、更に力を付けるため偶然村にやってきたイズミ・カーティスに弟子入りを志願。
ヨック島でのサバイバルを経て『一は全、全は一』の理を身をもって学び厳しい修行にも耐えた。

その後故郷へ帰還したアルは、兄と共についに禁忌“人体錬成”を実行するが、錬成は失敗。
母親に似ても似つかない何かを錬成した代償に、アルは自分の肉体というあまりにも大きな代価を支払う羽目になったが、
自身も左脚を「持っていかれた」エドの、今度は自身の右腕を代価とした決死の錬成により、
アルは兄が描いた血印によって、父のコレクションの鎧に魂を定着され、魂のみこの世に繋ぎ留められることとなった。


以降、兄弟は失ったものを取り返すため、“賢者の石”を探す長い旅に出ることとなった。



【能力】
幼い頃から兄と共に父の蔵書から錬金術を独学で学び、前述の通りイズミに師事していたため作中でも腕前はトップクラス。
生身の時期でもエドに喧嘩で負けた事がなく、格闘戦のスキルも高い。
ちなみに、幼少期から兄のエドよりも身長が高かった。

鎧の身体になってからは、食事・睡眠の必要がなく、痛みも感じない「魂だけ」の利点を活かし、
戦闘では相手からすれば特攻も同然の攻撃をしたり、鎧の中身を見せて相手の動揺を誘ったりすることも。
痛みを感じないため、魂を鎧に定着している血印が傷つかない限り、どれだけ攻撃を受けても死亡することはないが、
鎧が物理的にバラバラになったりすると、全く身動きが取れなくなってしまう。

もっとも、これは不死身の体であることを意味しない。
むしろ、かなり強引な術式によって本来定着しない無機物に魂を結び付けられた不安定な状態であるため、
いつ魂と鎧の結合がほどけ、消滅してもおかしくない「時限爆弾付きの体」である。

体が持って行かれた際の記憶を失っていたため、錬金術を使う際は普通に錬成陣を描いていたが、
物語が進み、人体錬成を行った時の「真理の扉」で見た記憶を取り戻して以降は、兄と同じく錬成陣を用いない手合わせ錬成も可能に。
その事でエドが凄く危機感を抱いた。
しかしその存在が真理の扉に近づいたことにより、鎧の体に「タイムリミット」(後述)が迫っていることも知ってしまった。

鎧の巨体から発せられるくぎゅうボイスはある意味凶器。
なお、鎧の中は空という設定から、アルの声は少しくぐもっている方がいいだろうということで、
釘宮理恵氏は一人だけ別ブース+やや細工したマイクで収録していたことが明かされている。


以下ネタバレ








【本編での足跡】
ニーナの一件でのやりきれない思い、空っぽの身体に募る虚無を抱えながら出会った多くの人々の助けもあり旅を通し大きく成長していく。
そんな中、自分と同じような存在・No.66ことバリー(実写映画版ではショウ・タッカー)に、「魂など目に見えない不確かなもの」という理由から、
「本物の『アルフォンス』の魂ではなく、エドによってそう思い込むように錬成された偽物の魂ではないのか?」と唆され、
それを真に受けてしまい、一時期エドにきつく当たってしまったことも。
2003年版アニメでは原作以上に情緒不安定となり、(事故とは言え)兄に暴力を振るってしまったり、兄の元から一時的に失踪するという行為にまで発展している。
実写映画版ではタッカーのその言葉が原因で兄とガチ喧嘩に発展した。


ダブリスでグリード一味と対峙した際は自分の中に匿った蛇の合成獣・マーテルが大総統に殺されてしまう。
そのとき、彼女の血がアルの血印に触れたことで失っていた真理を見た記憶を取り戻した。


傷の男に胴体をもぎ取られてしまった自分をかばい、命を差し出そうとまでした兄にブチ切れぶん殴ったり、

「バカ兄!!可能性を捨てて死ぬ方を選ぶなんてそんなマネは絶対に許さない!!」

ヒューズの死を受け他の人が犠牲になるくらいなら元の身体なんていらないと言ったり、空っぽの自分を悲観してナーバスになることもしばしば。
が、

「守れたはずの人が死んで行くのを見るのは我慢できない!!」

と、ラストからホークアイを守る漢全開な活躍を見せたこともある。
プライドに触手プレイされた上、身体乗っ取られる他エライ目に遭うことも多いが、
シン国より密入国した姫君メイ・チャンに惚れられたり女の子や女性との関わりは兄より優遇されている模様。

また無類の猫好きで鎧の中には猫様と女の子しか入れない主義。
鎧のゴツイ見た目からアルが『鋼の錬金術師』として認識され豆粒兄貴エドを見てガッカリする流れがお約束と化していた。

その後、改めてリゼンブールの自宅跡に戻り、埋葬された『トリシャの人体錬成で出来た何者か』の死体を検めたところ、
「髪の色が違う」などの理由から、それはトリシャではないという結論に至る。
これによって、エドとアルは「自分たちは人体錬成によって母親を二度死なせたのかもしれない」という、ずっと心に秘めていた十字架から解放されると共に、
「自分たちはトリシャを錬成しようとしたのに、トリシャではない何かが錬成された」という顛末と、
どのような術式を組もうと、何を代価にしようと「存在しないもの」は錬成できないという錬金術の原則を照らし合わせ、
「故人であるトリシャ、つまり『死者』はこの世に存在しないため、肉体・魂どちらも錬成できなかった」という結論に辿り着いた。

そしてそれは、エドによって魂が錬成されたアルは、肉体がなくとも『生者』であるという裏付けにもなり、
かつての人体錬成の際に垣間見た「真理」に奪われたアルの肉体と、エドの身体の一部は生きていることが確実視された。

こうして、兄と共に様々な困難を乗り越え、過去の過ちと改めて向き合ったアルフォンスは、「兄と共に元の身体に戻る」という希望を強くするが、
同時に、最近頻発する意識の一時断絶が、自身の魂が「真理の扉」にある肉体に引っ張られる力が強まっている証左であると気付き、“タイムリミット”が迫っていることを実感する。

大型猫・ハインケルの助けやヨキのヒャッハーにより強敵キンブリーを撃退。
人柱候補として最終決戦に挑む中、ついに扉の向こうにいる己の身体と出会うが、
最早骨と皮しか残っていないような、あまりにも痩せさらばえた姿に「今戻れたとしても、これでは戦えない」と嘆く。
※なお、現実世界にない肉体が、生命維持に必要な食事や睡眠をどうやって摂っていたかというと、
二人で行った人体錬成をきっかけに、アルと精神・肉体がリンクしていたエドが(無意識に)肩代わりしていたため*1

そして、瘦せ細った肉体と、いつ“タイムリミット”が来てもおかしくない鎧の身体、どちらで最終決戦を迎えるべきか悩んだアルは、
悩み抜いた末、鎧の身体で現実世界に戻るという、苦渋の決断を下した。
だがその背を見送る肉体の方は、その先を見通したかのように呟く。

「気高いボクの魂よ 君の容れ物として誇りに思う」
「―けど…君が戻る事でこの世が絶望に満ちてしまうかもしれないんだよ」
「アルフォンス」




お父様が扉を開くことに成功した後も諦めず兄と一緒に父に力を貸し攻撃防御に尽力。
しかし、右腕の機械鎧が壊れた状態で左腕が瓦礫に突き刺さってしまったエドが、身動きがとれない絶体絶命の状況に陥ってしまう。


アルは、兄を救うため、メイに一つの頼みごとをする。
錬丹術の遠隔錬成を用いて、自分の魂を代価に兄の右腕を戻すための“道”を作って欲しいと。


かつてエドは、右腕を対価にアルの魂を引きずり出して錬成・定着した。
錬金術の原則は等価交換。ならば、自身の魂を対価にエドの右腕を再生できるはずだ、と。


「勝てよ 兄さん」




「―――もういいのかい?」
「うん あとは兄さんを信じる」




【その後】
お父様にエドワードたちが勝利した後、肉体と一体化して真理の扉の前で兄を待っていたアルは、
“最後の錬成”をして迎えに来てくれた兄に肩を貸され、念願の生身の「アルフォンス」の姿で、メイたちと再会を果たす。

全てを終えた兄弟は、『10もらったら自分の1を上乗せして11にして次の人へ渡す』という、等価交換に変わる新しい法則を胸に世界を見るため旅立つ。
アルはその足掛かりに、合成獣の姿を捨てて元の姿に戻ることを望むジェルソ、ザンパノと共に、シンで錬丹術を学ぶためメイの元へ向かう。

なお、エドは旅立つ直前にウィンリィにプロポーズして受け容れられており、その後に結婚して子供が出来たことを示唆する写真が最終回のラストで見られるが、
そこにはエドとウィンリィ夫妻(一家)の写真だけでなく、兄夫妻、そして成長したメイと映るアルの写真もあり、
劇中でメイがアルを慕っていた描写があったことから、明言はされていないが「最終回後にアルはメイと恋仲になったのではないか」と考察するファンもいる。


一方、長い間「アル」として戦ってきた鎧も、セントラルからリゼンブールに戻ってきた。
ウィンリィにこれを残しておかないのかと問われるが、ただ部屋の隅に保管されるだけなら死んでるのと同じだと考えたアルの願いで、機械鎧の部品にされることになった。
が、頭部だけはデンに持ち去られ、野鳥の巣になっている。



【旧アニメ(2003年版)のアルフォンス】
原作通りエドと共に旅をしているが、原作に比べて性格の穏やかさが強調され、人体錬成をする際もあまり乗り気ではなく、エドに付き従うように行っていた。
それを強調するためか、生身の姿も原作とは違い、髪と目が原作の姿より少し茶色がかかった、母のトリシャにより近い容姿になっている。

物語終盤でキンブリーに爆弾として錬成させられ、それを防ぐためにスカ―から再錬成させられた結果、鎧が賢者の石と化してしまい、ホムンクルスに狙われる羽目になってしまう。
最終的に、エンヴィーに瀕死の重傷を負わされたエドを助けるために自分の身体である賢者の石を消費して、エドの魂を取り戻した。
そして、エドは自らの肉体を代価にしてアルの肉体を取り戻すことに成功するが、エドを失った上に鎧であった頃の記憶を失ってしまう。

劇場版「シャンバラを征く者」では、兄が着ていた赤いコートと同じものを身に纏い、髪も伸ばしているところなど、意図的にかエドに近い風貌に成長していた。
「真理の扉」を通って「現実世界」に飛ばされた兄を追うアルと、「錬金術世界」に戻る術を探すエド。二人の兄弟は再会できるのか――。






「あんたが噂の追記・修正錬金術師!!」
「なるほど! こんな編集ができるから二つ名が“追記・修正”なのか!」

「あの、ボクじゃなくて…」

「まさか…あっちのちっこいのが?」


「誰が豆つぶドちびか―――ッ!!!」

「ニーサン落ち着いて!」

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 鋼の錬金術師
  • 鎧の錬金術師
  • 人柱
  • アルフォンス・エルリック
  • リビングアーマー
  • リビングメイル
  • さまようよろい
  • 愛すべきバカ
  • 真面目バカ
  • 釘宮理恵
  • 錬金術師
  • 日下ちひろ
  • 水石亜飛夢
  • もう一人の主人公
  • エルリック兄弟
  • 猫派
  • 無類の猫好き
  • ふんどし
  • ネタバレ注意
  • 釘宮病時上級者向け
  • 釘宮三大巨乳
  • モテモテウハウハハーレムアルフォンス王国
  • 腹黒?
  • 釘宮病A型
  • 紳士的
  • 天然タラシ
  • レンキングリーン
  • 禁忌を犯した者
  • アルフォンス
  • アル
  • 毒親育ち…ではなかった
  • 結構重い過去持ち
  • 苦悩の連続
  • 黄金の精神
  • 怒ると怖い
  • (▽w▽)

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年01月18日 20:39

*1 アル曰く、人体錬成後のエドは以前より眠っている時間が増えたとのこと。