ぞうとおじさん(ドラえもん)

登録日 :2011/09/05(月) 04:10:32
更新日 : 2017/08/15 Tue 19:50:22
所要時間 :約 9 分で読めます




ドラえもんのエピソードの一つでてんとう虫コミックス5巻に収録されている。


※ネタバレ注意!


夏のある日、インドに滞在していたのび郎おじさんが帰国した。おじさんはドラえもんとのび太にインドであった不思議な話を聞かせてくれる。

おじさんは自分の幼少期、戦時中の頃から話をはじめた。
当時動物園に「ハナ夫」という名前の子供たちに大人気の象がいて、おじさんはハナ夫が大好きでせっせと動物園に通った。
しかし時は第二次世界大戦中。戦争はじきに激化し、おじさんたちは家族とともに疎開することを余儀なくされた。
疎開先で東京が焼け野原になったと聞き、おじさんはハナ夫のことをひどく心配していた。
やがて終戦。東京に戻ったおじさんは真っ先に動物園に行ったが、そこで聞いたのは残酷な事実。ハナ夫は 殺された というのだ。
戦時中の爆撃で檻が壊れ猛獣が町中に逃げ出さないよう、動物園の飼育員たちにより処分されたのだろう。

それを聞いて憤激するドラえもんとのび太。仕方なかったんだよ、と宥めるパパとおじさんに


ドラえもん「しかたないとは何ですか!」


そんなのあんまりだ、助けよう、と思い立った二人はタイムマシンで太平洋戦争末期の上野動物園に向かう。
動物園の中は静まり返り、どの檻も空。

象の檻に急ぐドラえもんたち。
果たして、ハナ夫は生きていた。しかし餌をもらっていないのか大きな体は骨が浮き出るほどにやせ衰え、力なく寝ワラの上に横たわっていた。
飼育員がやってきて、ドラえもんたちは隠れた。ハナ夫は嬉しそうだ。


飼育員「おなかがすいたか?よしよし、今、楽にしてやるぞ。」


何故か目に涙を浮かべる飼育員。


「じゃがいもだ……。食べな。」


飼育員の手は、震えていた。

しかし途中で「だめだ!」と餌を与える手を止める。空腹のハナ夫を哀れんだドラえもんとのび太は飛び出して、じゃがいもをハナ夫に与えるがそれは の入った餌だった。
幸いハナ夫は賢く毒入りの餌を食べようとはしなかった。ほっとするドラえもんたち。
飼育員は軍の命令でハナ夫を殺さなければならないという。しかし飼育員は涙を流す。


「だれがころせるもんか…。子どもみたいにかわいがってきたのに。」



場面は変わり、動物園の園長が軍の将校に詰め寄られていた。軍国主義のもと、一刻も早く象を殺すよう将校は強硬に迫る。


「たとえ動物でもお国のためならよろこんで死んでくれるはずだ。」


ちなみに園長の話では、象に毒の注射を試したものの、象の皮膚は厚くて針を通さなかったらしい。

そこに先ほどの飼育員が戻ってきてハナ夫が毒を食べなかったことを伝える。激昂した将校は銃を抜き「おれがかたづける!」と檻に向かった。
ドラえもんたちが象も疎開させたら?と訴えたが聞く耳を持ってもらえない。


のび太「戦争ならだいじょうぶ。もうすぐ終わります。」

ドラえもん「日本が負けるの。」


軍の将校の前で笑顔でこんなことを言ってしまい、「貴様ら、アメリカのスパイだな!」とサーベル振りかざして追われる始末だったが、直後にアメリカ軍の爆撃が始まり将校たちは退避していった。
象の檻にも爆弾が落ちたらしく駆け付ける飼育員とドラえもんたち。檻は大破したもののハナ夫はなんとか無事だった。

飼育員は「絶対にお前を殺させたりしない」とハナ夫とともに逃げることを決意した。
しかし、象が逃げたことが先ほどの将校に知られてしまい、銃殺命令が発される。

逃げられないことを知り泣き崩れる飼育員。そこでドラえもんたちは彼に提案した。ハナ夫を故郷のインドに脱出させてやろう、と。
呆然とする飼育員の前でドラえもんとのび太は「スモールライト」で縮小したハナ夫を「ゆうびんロケット」に入れ、元に戻す手配も整えて一瞬で生まれ故郷にハナ夫を送り出す。


のび太「もう安心ですよ。」


驚きながらも嬉し涙を流し、帰っていくドラえもんたちを飼育員は見送った。



話は現代に戻る。

居間に行くとおじさんが先ほどの話の続きをしていた。

おじさんがインドの山奥で遭難した時。飢えと疲労のあまり森の中でとうとう動けなくなり、もう歩くことも出来ない。
死に直面したおじさんは、走馬灯のように様々なことを思い返したという。両親の顔、田舎の風景、そして ハナ夫の顔……

力尽きたおじさんの前に、一頭の象が現れ、ゆっくり歩み寄った。懐かしそうな優しい目で彼を見つめる象。

幻だろうか?しかしおじさんは薄れゆく意識の中、ハナ夫の背に揺られていたような記憶があるという。

そして彼はふもとの村の近くに倒れていたところを救助された。


パパは死んだはずのハナ夫がインドにいたなんて夢だろう、と言った。おじさんもそう思うと言う。しかし夢でも嬉しかったと。

ハナ夫は無事だったのだ!無事にインドで暮らしているのだ!
ドラえもんとのび太はその話を聞いて涙を流して喜びあったのだった。




戦時中の軍国主義の残酷さを戦争を知らないドラえもんとのび太の目から描いた初期のドラえもんによくある反戦のテーマ。
ドラえもんの 「しかたないとは何ですか!」 と言うセリフはもしかしたら当時言いたくても言えなかった藤子先生の心の声だったのかもしれない。

この話のベースとなったのは、土家由岐雄氏の童話『かわいそうなぞう』である。
これは上野動物園での実話をもとに作成されたものであり、これも戦争中に上野動物園の動物達が次々と殺処分され、動物園にいた3頭の象もその対象になるという話である。
こちらの象も毒入りの餌は食べず、注射針も寄せ付けなかったが、餌も水も与えられずに3頭とも餓死させられてしまった。
上野動物園には、3頭を始めとする、園内で物故した全ての動物を悼む慰霊碑が、ゾウ舎の向かい側に建立されている。

大山ドラにおいては、時期が夏から、正月に変更。
プロローグでは、ジャイアンとスネ夫がのび太を凧揚げに誘うも、ドラえもんと共に深刻な顔をしたのび太は断り、
その理由が回想で語られた後、2人は過去に出発。
エピローグでは、ハナ夫が助かったことに安堵したドラえもんとのび太がハナ夫を模した凧(タケコプター付き)を揚げた。
ジャイアンとスネ夫を登場させたためか、のび郎の回想内において、ジャイアンとスネ夫そっくりの悪ガキが出ている。
大山のぶ代著書の『ぼく、ドラえもんでした』でも、のぶ代氏はこのエピソードが特に好きだったと絶賛しており、
このエピソードが当時の小学4年生の教科書にも載せられ、日本中の子供たちがドラえもんに拍手を送ってくれたと書かれた。
曲に関しても、この作品のために特別に「ゾウさんの瞳はなぜ青い」という曲が作られた。


わさドラでは、のび太のおじ(小学生の甥がいる年齢層)では、もう年代的に無理があるためか *1 、(いわゆるサザエさん時空の影響)動物園で知り合った、客のおじさん(おじいさんにも見えるが)に変更された。
それに伴い、のび太の両親とのび郎はカットされ、代わりに、しずか、ジャイアン、スネ夫が登場。

2017年7月28日からのリニューアル記念スペシャル回では新たに作り直されて放送。
のび太の親族と夏の組み合わせが、アニメ版で初めて再現されたが、叔父ののび郎から、大叔父ののび四郎に変更。
大山ドラでの疎開先での出来事も取り入れられた。
将校からハナ夫を逃がす展開も大幅にアレンジされ、爆風で木の下敷きになった将校を飼育員の頼みでハナ夫が助け、
それがきっかけで将校もハナ夫を殺すことは本意ではないが、戦争という強大な力の前には個人の感情が通用しないことを嘆くシーンも描かれた。


追記・修正は檻から逃げたたぬきと間違われてからお願いします。

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