カルナ

登録日:2012/11/08(木) 20:18:18
更新日:2024/04/13 Sat 22:54:44
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1.インドにおける二大叙事詩の一つである『マハーバーラタ』に登場する武将。
太陽神スーリヤの息子で半神半人の英雄。

武勇、人格もともに優れており、
異名にヴリシャン(有徳の人)があることからも、それがうかがえる。
そんな彼の最大の特徴は不幸である事

そんな彼の人生は、まず母親であるクンティーの過ちから始まっている。

カルナの母親であるヤドゥ族の王女クンティーはとある善行の御褒美に仙人からあらゆる神をも呼び出せるマントラ(呪文)を教わった。
まだ幼かったクンティーは興味本位で太陽神スーリヤを呼んでしまう。
呼び出したは良いものの、特に用事があるわけでもなかったクンティーはスーリヤに帰ってもらおうとする。

だが、ス―リヤは驚愕の事実を口にする。
クンティーが唱えたマントラは神々を呼び出し子供を授かるマントラであったのだ。
クンティーは驚きどうにか止めてもらおうとしたが、ス―リヤ自身もマントラの力には抗う事が出来無いと知り、
一つの条件と引き換えにス―リヤの子供を身ごもることを承知した。
すなわち、我が子が誰にも傷つけられないように黄金の鎧と耳環をつけて生まれてくるようにと。

そして、クンティーの願い通り黄金の鎧と耳環を兼ね備えて生まれてきたカルナは、



生まれるや否や川 に 流 さ れ た 。



もう一度言おう。生まれて直ぐに 川 に 流 さ れ た のである。

まあ、一応クンティーにも言い分がある。未婚の女性が子供を産むというのは許されない事であり、
下手をしたら名誉の殺人の対象ともなりかねないので、仕方がないと言えば仕方がないが、
保身のために子供を捨てたと言われても仕方がない行いである。
こうして、川に流されたカルナは、子供のいない夫婦に拾われて育ててもらえる事となったが、
拾ってもらった夫婦の低いカースト(インドにおける身分のようなもの。基本的にその身分が変わる事はない)のスータ(御者)カーストであった事が、
カルナの一生を悲劇的なものにする最大の要因となる。


ともあれ、拾われた夫婦から十分な愛情を受けて育ったカルナは成長するにつれ、
家職である戦車の操縦よりも武芸に興味を持ち、当代随一の武芸者ドローナの弟子となった。
長じて弓の名手となったカルナはクル族の王家が主催する競技大会に飛び入り参加して、
ドローナのもっとも優れた弟子であるアルジュナ王子が演武で披露した技を全て再現してみせ脚光を浴びた。
しかし、この競技大会は元々アルジュナを始めとするパーンダヴァ(クル族先代の王・パーンドゥの息子と言う意味)五兄弟の武芸のお披露目として、
開催されたものであった。

まあ、ざっくばらんに言ってしまえば、パーンダヴァ達の優秀さを見せびらかす為に、公平ぶって誰でも参加できる競技大会を開いてみたら、
本当にパーンダヴァ達と同等以上の参加者が出てきてしまった、と言う何とも情けない話なのである。

面子をつぶされた形となったアルジュナは怒り、カルナと一騎討ちをする事となった。
しかし、そこで王家直属の武芸師範であるクリパから待ったがかかる。

「王族の者と一騎討ちが出来るのは、王族以上の身分を持った者だけである。
 アルジュナ王子に挑もうとする者よ、汝の身分を明かすがいい」

当然、御者の身分であるカルナは答える事が出来ずに身の程知らずの無礼者として辱められつつあった。

この時パーンダヴァ達の従兄弟に当たるドゥルヨーダナがカルナを王位につける。
敵対関係にあるパーンダヴァ達に対抗する為にカルナに恩を売り自陣営に引き込もうとしたのだ。
衆人環視の場で恥ずかしめを受けることを免れたカルナは感激し、ドゥルヨーダナに永遠の友情と忠誠を誓う。

と、ここで終われば美談で済むのだろうがそうは問屋がおろさず、
なんと、大出世を果たしたカルナの晴れ姿を見ようと義理の父親が競技場に表れてしまい、そのまま、カルナの身分がばれてしまう。
カルナが御者の身分である事を知ったパーンダヴァの次男ビーマセーマは大いにカルナを罵る。

「卑しい御者の身分でありながら我が弟アルジュナに挑もうとは何事か!
 お前ごときは、アルジュナに殺される価値すらないのだ!
 御者の子よ、弓など捨てて、貴様にお似合いの鞭でも手に持っていろ!」
言い返す事が出来ないカルナはただじっとビーマセーマの暴言に耐えるしか無かった。
そこで、激怒したのがドゥルヨーダナである。
そもそも、王族の条件とは血筋、勇敢さ、他の王を倒すこと、の三つのうち何れかを満たしておれば良く、ビーマセーマの暴言は不当であると主張した。
一触即発の雰囲気となった競技大会であるが、日が暮れた事により争いは一旦持ち越される事となった。


この時は、パーンダヴァもカルナも知りはしないが、
実はパーンダヴァの上の三人ユディシュティラ、ビーマーセ―マ、アルジュナとカルナは同じ母親クンティーから生まれた異父兄弟なのであった。
クンティーはカルナを捨てた後、クル族の王・パーンドゥに嫁入りしていた。
諸事情により、子作りをすると死ぬ呪いをかけられていたパーンドゥは自身が子供を作れず、死後正しく祀られ無い事を恐れ、
クンティーに頼み込み神を呼び、子供を三人儲けていた。
それこそがユディシュティラ、ビーマーセ―マ、アルジュナなのである。



こうして、知らず知らずのうちに兄弟と争うことになったカルナは、
ドゥルヨーダナの陣営の重鎮としてパーンダヴァ達と本格的に敵対しいがみ合い、終には戦争へと発展するまでに互いを憎み合った。



この競技会から戦争までの間にカルナは様々な正直ドン引きするレベルの不幸に会う。

~カルナ不幸伝説~
  • 師匠はアルジュナを気に入ってたので、御者の子には奥義を教えてくれない。
  • 師匠の師匠に奥義を教えてもらったけどヴィシュヌの妨害の所為で呪をくらった。
  • バラモンの牛を間違って射殺したら致命的な呪いをもらった。謝っても許してくれない。
  • 王様「如何なる者でもこの試練を見事成し遂げたら私の娘を嫁にやろう」
    →カルナが挑戦→王女「私、御者の妻になんかなりたくない」→退場(´・ω・`)
  • なぜかいつも師匠や長老からバカにされる。なぜかアルジュナばっかりひいきする。
  • なんか敵からよりも味方からの罵倒の方が多いんですけど……?
  • インドラに防具を取られる。
  • 明らかに釣り合ってない単発花火を代償として貰う。
  • 友軍が足を引っ張りまくって、最終的には神をも殺す槍を浪費する羽目になる。
  • 実の母からも友軍を裏切れとせまられて落ち込む。
  • 最終的に押し切られてアルジュナ以外の兄弟を殺さない誓いを立てさせられる。
  • 一対一のはずなのに超戦士クラスの相手(分かりやすく言うとサーヴァント級)が十人以上+軍隊で囲んでくる。
  • アルジュナとの決闘時に、自分の御者が相手とツルんでて戦意喪失させてくる。
    (一説によれば、カルナの呪を知ってて車輪を土にめり込ませたのはコイツ)
  • 呪でブラフマー神器が使えない。


文字数の関係で入れられないが ま だ ま だ あ る 。



こうして、実力を碌に出せないままカルナは宿敵であるアルジュナに殺害される。
死後その魂は、父である太陽神スーリアと一体化したと伝えられる。

ちなみに、マハーバーラタのテーマは「因果応報」なのだが、カルナだけはこれがほとんど当てはまらない。
強いて言えば、カルナは上記の通り貧困層の出なので立ち振る舞い等が粗野になりがちで、そこで印象を損ねてしまうという点はあったが、短所という程ではない。
ただ、比較対象になるアルジュナが容姿も武技も性格も素晴らしい完璧超人なので、どうしても瑕疵として目立つ要素ではあった。

あまりにも、理不尽に不幸で研究者からは、


「カルナと言う存在は、マハーバーラタの大筋とその大団円を嘲っている」


と言われる始末である。

ただ、本場インドではカルナはマハーバーラタで一二を争うほど人気がある。
どんな苦境にさらされても決して諦める事無い姿が好感を呼んでいるようだ。

例えばインドではないが、インドネシア独立の英雄であり同国初代大統領であるスカルノの名前の由来はこのカルナであるとされる。


2.Carna、ローマ神話における健康の女神
元々は人間の内臓を司る神であるらしいが資料が少なすぎて由来がよく分かっていない。
6月1日が祭日にあたる。
オウィディウスの『祭歴』においては、男嫌いのニンフで処女の狩人クラネが門の神ヤヌスにレイプされた後、蝶番とサンザシを司る神になったと言われており、
新生児の血を吸う魔鳥ストリクスを追い払うなど家を守護する存在だったという。

が、これは別の女神カルデア(ギリシア神話のアルテミスに近い)の話と混同した結果であるとされる。

よく健康にまつわる企業の名前の由来になっている。


追記・修正はカルナよりも不幸な方にお願いします。

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最終更新:2024年04月13日 22:54