フロム・ダスク・ティル・ドーン(映画)

登録日:2012/02/14(火) 21:38:38
更新日:2024/03/13 Wed 09:59:13
所要時間:約 7 分で読めます








返り討ちにしてやるぜ!!



概要


フロム・ダスク・ティル・ドーン(原題:FROM DUSK TILL DAWN)は、1996年1月19日にアメリカで公開された映画。
日本では1996年6月15日に公開。
タイトルは直訳すると「夕暮れから夜明けまで」だが、夜の間はノンストップで上映しているドライブインシアターの看板のキャッチコピーが由来となっている。
監督はロバート・ロドリゲス、脚本・製作総指揮はクエンティン・タランティーノ
お互いを「ブラザー」と呼び合うほど仲のいい、オタク監督二人が出会うきっかけになった作品である。

元々本作の脚本は、特殊メイクデザイナーのロバート・カーツマンが書いたプロットを、タランティーノが肉付けしたもの。*1
カーツマンは監督を志望していたが、タランティーノが脚本を仕上げたというセールスポイントがあるにもかかわらず、実績がないということでどこからも相手にされなかった。

この脚本がロドリゲスの元に渡ったのは、1992年9月のトロント映画祭でのこと。
パネルディスカッションの時に配られたタランティーノの資料を見て、ロドリゲスは衝撃を受けた。
そこには、クライム映画からジャンルが根本から変わるほどのトンデモ展開と化すという、あまりにも荒唐無稽な内容の脚本について書かれていたのだ。
タランティーノはカーツマンから脚本を買い戻して監督しないかという申し出を受けたが断っており、代わりにロドリゲスに監督をやらせるようプロデューサーに言ったという。
「脚本書き直してくれるなら引き受けるぜェ……」
「いいぜェ……(ついでにオイラの演じるキャラも掘り下げるぜェ……)」
こんな具合に二人はすっかり意気投合し、以降はオムニバス映画『フォー・ルームス』や『グラインドハウス』でそれぞれ監督したりするなど、とても微笑ましい仲を披露している。

そういう背景あって作られた本作は、そのメーターの振り切りっぷりから、好みが真っ二つに分かれる作風である。
前半の雰囲気に期待していた人からは最低のクソ映画の烙印を押されるが、バカ映画好きには拍手喝采という、かなり見る人を選ぶ怪作となっている。
例えるなら、まるで高級料亭で食事をしてたと思ったら、いきなりアマゾン奥地の土着民族の料理が出てきたような感じだろうか。

また、3まで続編が出ているが、本国では劇場公開されていないオリジナルビデオ作品である。
2014年にはTVドラマ化もされている。
他にも、本作のメイキング作品『フル・ティルト・ブギ』があるが、レンタルビデオ版は早々に廃盤。
シリーズ3作品DVD-BOXのおまけとして再販されただけで長らく単品発売がなかったりと、地味にレアな作品だった。

あらすじ


全米各地で悪行の限りを働き、犠牲者16名*2を叩き出したゲッコー兄弟は、メキシコを目指し逃走中。
同じころ、キャンピングカーで旅をしていたフラー一家は運悪く二人の泊まっていたモーテルで鉢合わせ。
国境越えのための隠れ蓑として人質にされてしまう。
なんやかんやあって、まんまと国境を越えたゲッコー兄弟。
仲間との待ち合わせのため、彼らは酒場ティティー・ツイスター(TITTY TWISTER:おっぱいグルグル)で一晩過ごすことになるが、なんとそこには恐ろしい秘密が……!

登場人物



  • セス・ゲッコー
演:ジョージ・クルーニー
吹替:野沢那智

ゲッコー兄弟の兄。
カンザス州立ローリング刑務所で服役していたが、リチャードの助けにより脱走し、共に逃走を続けている。
言動のイカれた弟に悩まされるが兄弟仲も良く、頭もよく切れる。
「悪党だが人の心はある」と語る通り、彼自身は無駄な殺人はしない主義。もっとも、弟のせいで台無しになっているのだが……

クルーニーは当時テレビドラマ『ER』のダグラス・ロス医師役でブレイクしたところ、タランティーノが『ER』の脚本を担当したことがきっかけで、本作への出演が決まった。
彼にとってはこれが、初めてのハリウッドメジャー作品出演であった。

  • リチャード・ゲッコー
演:クエンティン・タランティーノ
吹替:広川太一郎

ゲッコー兄弟の弟。
頭が悪く現実と妄想の区別がついておらず、意味不明な理由でレンジャーを撃ち殺したり、大事な人質を兄が目を離した隙に殺してしまうなど短絡的でミスが多い。
おまけにサルマ・ハエック演じる美女「地獄のサンタニコ」の足に酒を流しながら舐める変態である。
実際、演じたタランティーノ自身足フェチ職権乱用もいいところである。

  • ジェイコブ・フラー
演:ハーヴェイ・カイテル
吹替::大塚周夫

キャンピングカーで旅をする一家の大黒柱の元牧師。
ゲッコー兄弟には冷静な態度で接する。
過去に妻を亡くし信仰を棄てたが、最大の危機に立ち向かうため棄てた信仰を取り戻していく。

  • ケイト・フラー
演:ジュリエット・ルイス
吹替:松本梨香

フラー一家の姉。
5人の中で唯一の女性。リチャードの異常な振る舞いにはほとほと困り果てている。
ティティー・ツイスターでの戦いには消極的だったが、後半はボウガンによる無双タイムを披露。

  • スコット・フラー
演:アーネスト・リュー
吹替:檜山修之

フラー一家の弟で、中国系の養子。
育ち盛りの年頃で、後半は聖水が入ったコンドーム爆弾や水鉄砲で無双するが、非情な選択を迫られる。

  • チェット・プッシー
演:チーチ・マリン
吹替:辻親八

ティティー・ツイスターで客引きをやっているオッサン。
その口上は一度聞いたら忘れられないこと請け合い。

そーら、プッシー、プッシー、プッシーだぜぃ!プッシーの好きな奴はみんな来~い!
ここティティー・ツイスターじゃばっさりプッシーの価格をカット!お手頃価格のナイスなプッシーが勢揃い!
まさにドピュ~ンと大放出だ!よりどりみどりだ!
白いプッシー!黒いプッシー!スペインプッシー!黄色いプッシー!
それにホットプッシー!アイスプッシー!ヌレヌレプッシー!
そして、くせぇプッシー!毛深いプッシー!血まみれプッシー!そしてバァ~クバァクプッシー!
それからシルクプッシー!ビロードプッシー!形状記憶プッシー!
おまけに馬のプッシー!チキンのプッシー!名犬プッシーたらぁ~!
どーだチキショーもってけドロボー!ヤってけプッシー野郎!よ~待ったれプッシー、あっぱれプッシーマニア~!

ちなみに演じたチーチ・マリンは他にも国境警備員や待ち合わせ相手のカルロスと合わせて一人三役。
これは元々ロドリゲスがお笑いコンビ「チーチ&チョン」のファンで友人同士なので、「人を見たらチーチ・マリンと思え」というギャグから取られている。

  • レザー・チャーリー
演:ダニー・トレホ
吹替:宝亀克寿

ティティー・ツイスターの店員。
この店にはバイク乗りとトラック乗りしか入れないとゲッコー兄弟を追い出そうとするが、ジェイコブが仲裁に入り事なきを得る。


  • フロスト
演:フレッド・ウィリアムソン
吹替:糸博

ティティー・ツイスターにて酒を飲んでいた黒人の男。
その体躯から発せられる怪力で敵を倒す(素手で心臓をぶっこ抜く)が、油断して自分の過去話をつらつらと独りでに喋り始めるというホラー映画のお約束フラグを立て……


  • セックス・マシーン
演:トム・サヴィーニ
吹替:笹岡繁蔵

ティティー・ツイスターで酒を飲んでいた一般人、のはずだが股間に装備したピストルや鞭で敵を滅する一番普通じゃない人。
本業は特殊メイクアーティストであり、ロメロゾンビ13日の金曜日にも携わったベテランである。



余談


〇ゲッコー兄弟の目的地、メキシコのエル・レイは、ジム・トンプソンの小説『ゲッタウェイ』に登場する町の名前。
金さえ払えば一生捕まる心配のない暮らしが約束される犯罪者たちのユートピアとして描かれている。
実際、エンドロールのスペシャルサンクスで作者の名前がクレジットされている。
また、ロドリゲスが開設したケーブルテレビチャンネルの名前も「エル・レイ・ネットワーク」である。

〇物語序盤で射殺されたテキサスレンジャーのアール・マクグロウは、タランティーノとロドリゲス作品の常連キャラで、本作がデビュー作。
キル・ビル』や『デス・プルーフ』では親子揃って登場しているが、実際の演者も親子である。

〇ティティー・ツイスターにいたバンドの名前は「Tito & Tarantula」で実在のバンド。
リーダーのティト・ラリヴァは『デスペラード』にも出演している。
そこで自身が作ったヴァンパイアについての曲を演奏したところ、ちょうどロドリゲスの次回作も同じテーマだったので本作に参加することになった……という経緯がある。

〇セスが地獄のサンタニコに「奴隷にしてあげる」と言われた場面、字幕と吹き替えでは言っていることが正反対になっている。
字幕版では「俺は女房の奴隷だ」と言っているのに対し、吹き替えでは「嫌だね!せっかく離婚したのに」と言っている。
……いずれにせよ、あの凶悪犯とよく結婚できたものである。

〇『ウマ娘』を展開するサイバーエージェント(サイゲ親会社)社長で馬主になった藤田晋氏の持ち馬に、その名もズバリ「フロムダスク」と「ティルドーン」がいる。


ロドリゲス監督の次回作は、学生たちが密かに侵略してきた宇宙人と戦うSFホラー映画『パラサイト』である。


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参考文献
クエンティン・タランティーノ 映画に魂を売った男(フィルムアート社)
タランティーノ・バイ・タランティーノ(株式会社ロッキング・オン)
フル・ティルト・ブギ

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最終更新:2024年03月13日 09:59

*1 この時カーツマンは報酬が1500ドルしか払えなかったため、『レザボア・ドッグス』撮影時に自社のスタッフを無償で提供した。血糊や切られた耳はここが作っていたのだ

*2 その内訳は、テキサスレンジャーが5名、警察官8名、市民3名。さらにこの後人質の女性も殺害したので17名となった