SAN値/正気度

登録日:2012/05/09(水) 21:28:37
更新日:2024/01/29 Mon 22:55:21
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SAN値/正気度とは、クトゥルフ神話TRPGの用語である。



【概要】

『クトゥルフ神話TRPG』シリーズにおける探索者パラメータのひとつである「Sanity」、略称「SAN」を指す言葉。
日本語版では「正気度」および「正気度ポイント」が正式な名称なのだが、主に後者が呼称あるいはスラングとして「SAN値(さんち)」で定着している。
本項でも以下SAN値で通す。


【そもそも『クトゥルフ神話TRPG』って?】

クトゥルフ神話をベースにしたテーブルトークRPGのことで、
ケイオシアム社が発表した『Call of Cthulhu(クトゥルフの呼び声、以下CoC)』を土台に発展したベーシックスタイルのTRPG群。

シナリオは主にオリジナルと、原作のクトゥルー神話作品に沿ったものの二種類がある。

原典と同じくCoCも外宇宙の邪神やその信奉者と関わってしまった人間の狂気を描いており、その狂気を表現するために用いられるのがSAN値なのだ。


【ベーシックスタイルとは?】

同じくケイオシアム社が考案したTRPGの基幹システム。正式には『ベーシック・ロールプレイング(BRP)』
『ルーンクエスト』や『ストームブリンガー』などがこれにあたる。

キャラクターメイキングにおいてダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)のように職業別のクラス適性を与えるのでなく、様々なスキルを与え熟練度によるパーセンテージで成功/失敗を判定する。

例えば『目星58%』なら目星判定の際1D100(百面ダイス一回)で58以下ならダイスロール成功、となる。*1
+ 余談:百面ダイスってなんぞや?
TRPGの経験が無い方には不思議に思われる方も多かろう言葉である「百面ダイス」だが、これは字義通りに言えば「面が100個あるサイコロ」という意味。
(参考までに書くと、一般的にスゴロクに使うような1~6の目が書かれたような普通のサイコロが六面ダイスである)

無論そんなダイスは無い……という訳でもないのだが、出目が読み難い上にほぼ球体なだけに卓を際限なく転がって使い難いので、
通例として1~10までの出目が書かれた「十面ダイス」を二つ用意し、片方を10の位、もう片方を1の位として扱う(数字が二桁になった10の位専用の物もある)。
たとえば片方(=10の位用)で5、もう片方(=1の位用)で7と出たら出目は57として扱う。

というか本来のルールでも「1D100=十面×2」が想定されており、文字通りの「百面ダイス」というのはそれより後に登場した、半ばジョークグッズみたいな物。
乱数を使ったダイスロールができるアプリやWEBサイトでも、ビジュアル的な要素が付随する場合は通例通り十面ダイス二つで表現される事が多い。

基本的にはどのゲームでも共通の、以下の7つの基本能力にそれぞれ3D6あるいは2D6+6で割り振る。
  • STR(筋力)
  • CON(頑強さ)
  • SIZ(体格)
  • INT(知性)
  • POW(精神力)
  • DEX(敏捷性)
  • CHA(魅力)もしくはAPP(外見)
  • EDU(教育)

これら能力値を出すのだが、このうち能力値POWから算出されるクトゥルフ神話TRPG独自の能力値が「SAN」、そしてさらにそこから算出される「SAN値」である。
能力値SANとSAN値は別の概念なのだが、能力値SANをゲーム中に使うことはごくごく稀……というか皆無と言っていいレベルなので、初心者のみならず熟練者からもだいたい無視される。
SAN値の初期値は【POW×5】で、基本的な状態での最大値は99。
※ただし『新クトゥルフ神話TRPG(第7版)』のルールにおけるステータス初期値は最初から3D6の5倍で計算するため、SANは「POW初期値と同じ」という扱いになる。
その他の、例えば最大値やセッション中の判定方法などは概ね同じ。


【SAN値って何のステータス?】

「正気度ポイント」という正式名称が示す通り、「探索者(キャラクター)がどれだけ理性を保っているか」を示すステータス。
ゲーム的に言うなら「精神のHP」。

高いほど健全・正常な精神状態にあり、低い時は精神が追い詰められた状態と言える。

もう少し正確に言うと「常人(普通の人間)としての精神をどれだけ保っているか」を表す値である。
低い時は、常人とはかけ離れた精神状態だと言える。傍から見れば「正気でない」「狂っている」「気がふれている」と形容されるだろう。


【どうやって使うの?】

「惨殺死体を見た」「目の前の人物が突然ヘドロと化し崩れ落ちた」「邪神に出会った」等、何か恐ろしい事象に立ち合い、正気を保てないかもしれないという時に判定を行う。
これを「正気度ロール」、スラングとして「SANチェック」となどと呼ぶ。混同されて「SAN値チェック」なんて言われがちだがこれは間違いである。
1D100で現在SAN値より小さい数値が出れば成功、大きければ失敗として扱う。
そして状況に応じ、失敗・成功それぞれにSANの減少値が指定される(固定値だったり「◆d○(◆個の○面ダイス分の出目)」と指定されたりする)。判定に成功したとしてもSAN値の減少を防げるとは限らないのだ。

また、魔術を使った場合、MPだけでなくSAN値も消耗する。

描写としては
「SAN値が減少する = 正気を保てなかった
という扱いとなる。


【SAN値が減ると何が起こる?】

大前提として、SANチェックは現在のSAN値より小さい数字を出さなければならない。
よって失敗してSAN値が下がれば下がるほど、次の判定にも失敗しやすくなる。

精神的に弱っていると、次の異常事態への耐性も下がってしまうわけである。

一度に大きく(大体5程度)減少すると追加でアイデアロール(基本値はINT×5)を行い、成功すると『一時的な狂気』に陥る。
「あなたは気づいてしまった、理解してしまった」のである。

一時的な狂気』が発症している間、プレイヤーは探索者として狂気ロール(指定された精神状態を演じること*2)を行う。
これは文字通り一時的なもので、短時間で回復する(正気に戻る)。
また、一部の症状はHPへのダメージなど強い刺激を受けた事で回復できたとする場合もある。

一方、短期間*3でごっそり(20%とか)持って行かれると『不定の狂気』に陥る。
これを発症した場合自然に治ることはなく、精神疾患として治療するしかない。それでも1D10ヶ月とかはザラ。
仲間探索者に治療できるスキルがあればある程度回復もできるが……。

そして、0を割った瞬間に『発狂/永久的な狂気』となる。
もはや常人の精神が残っていない」状態である。
仮に自発的な行動が出来たとしても、その精神は「完全に壊れている」か「怪物同然」か、はたまた「人としての理など意に介さない外道」か…。
何であれ、その探索者はゲームオーバー
以降、特に救済措置がない場合はNPCとして扱い、探索者としてはロストしたものとされ使えなくなる。仮に救済があっても完治まで5D10年とか1D100年とかだけど……

よくあるオチは
  • 自殺
  • 行方不明
  • 隔離病棟送り
といったところ。もしくは発狂した勢いでこちらに牙を剥くこともある。
そのキャラの「マーシャルアーツ*4」と「キック」の技能値が高かったら素直に逃げるか、さもなければ首をへし折られる覚悟で引導を渡すしか無い。
なぜかって?最悪の場合、迫撃砲の直撃クラスの威力や熊が即死する威力の攻撃が飛んでくるからだ。


【回復手段はないの?】

基本的にセッション中は減ることはあれ回復はしない。
セッションの報酬として、セッション終了時に多少の回復が成される事が多い。
また、狂気中のカウンセリングにより多少回復する事はある。
カウンセリングは仲間の探索者が試みる事も可能だが『精神分析』の技能値とダイス運の勝負で、
結局のところ全てはキーパー(ゲームマスター)次第。

なお、技能『クトゥルフ神話』を得てしまうと、その分最大値が削られる。
たとえば『クトゥルフ神話技能18%』ならSAN値の最大値は「99-1881」になる。

クトゥルフ神話技能は魔導書を読んだり神話生物に遭遇すると増え、攻略の助けにもなるが、あまりに増えすぎると今度は正気を保っていられなくなるので注意が必要。


【結局どうしろと?】

逃げなさい。
危険なことには極力近づかない。近づいても気づかないように務めることが生存の鍵。
通例TRPGにおいて探索系スキルは有利に働くが、ことCoCに限っては知らない方が良い『余計なこと』に気づいてしまうので諸刃の剣となりうる。
無論、あんまり見落としていると状況が悪化して行く可能性も高いのだが……。

不穏な場面でアイデアロールが発生した場合は「失敗する事」を天に祈る他ない。
先述の通りアイデアロールは『気づいたかどうか』の判定であるからだ。

それでもCoCの場合ダメ押しのように

うっかり怪しい品に遭遇→SAN値減少→狂気で行動制御不能→なんやかんやで邪神遭遇→発狂

のコンボとか普通に起こるため、確実に回避することは不可能と言っていい。

ちなみに初期設定のSAN値減少一例

状況 成功時 失敗時
ひどい拷問を受ける 0 1D10
ダゴンに遭遇 1 1D10
クトゥルフに遭遇 1D10 1D100

上位邪神は遭遇するだけでアウトなのがお分かりいただけただろうか?
まぁ中には失敗しても減少値のダイスロールで3とか出して切り抜ける強運の持ち主もいるが。
更に言えば、下位の神話生物であれば1回見るくらいならば割となんとかなることも多い。ミ=ゴさん見てSAN値減少0な探索者つよい……
また、ロールプレイによっては回避可能なことも(リアル言いくるめ)あるものの、その難易度は筆舌し難い。

SAN値が下がるのは正気判定の失敗率上昇にも繋がるので、できるだけ終盤まで温存しておきたいところ。

ただし狂気ロールはクトゥルフ神話TRPGの醍醐味でもあり、あえて冒険に出るのも一興ではある。


【ネットスラング】

本来のSAN値の使い方は上記の通りだが、クトゥルフ関係とか精神的にダメージを受けそうな狂気的な画像や動画などを見てしまった時に、「SAN値が減った」などとコメントするのがある意味通例となっている。
がっつり減らされたら「SAN値直葬(さんちちょくそう)*5」にアップグレードする。

まあ実際に狂気に陥る人は少ないと思うが。


【余談】




この項目に追記・修正:1D10/1D100

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最終更新:2024年01月29日 22:55

*1 ちなみに「目星」とは目視で確認できる情報を探すための技能。成功すると、例えば隠されたアイテムなどを見付けたりできる。これの聴覚版が「聞き耳」。また「本棚から指定した分野の本を探す」といった場合は目星ではなく「図書館」などを使う事もある。

*2 ロールプレイの内容は状況に合わせても、一覧からダイスで決めてもよい。

*3 基準としては1時間だが、キーパー(ゲームマスター)の采配次第で変動する。「1日」だったり「起床してから就寝するまで」あたりがスタンダードか。

*4 現代セッションなら武道:立ち技系

*5 「産地直送」とかけたネットスラング。