近代五種競技

登録日:2012/05/10(木) 13:09:28
更新日:2024/04/08 Mon 11:23:45
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こんな故事がある――

自軍まで戦果を報告するため、馬で敵陣に乗り込み、銃と剣で敵を倒し、川を泳ぎ、丘を走ったという兵士がいた…

このことを元に、フェンシング、水泳、馬術、レーザーラン(射撃&ランニング)という、
まったくジャンルの違う五種類の競技を一日で行うスポーツが近代五種競技である。
ロンドン五輪でオリンピック競技に採用されて100周年となる、由緒ある競技であり、
欧州では「キング・オブ・スポーツ」「貴族のスポーツ」とも呼ばれている。
しかし、そんな崇高な競技ではあるが、残念なことに日本のマンガやアニメ作品で近代五種競技がモチーフになっている作品は存在しない。
※近代五種競技経験者という設定を持つ登場人物がいる作品は、ジャッカー電撃隊ルパン三世VS名探偵コナンなど、無いわけではない。




【競技内容】

1.フェンシング・ランキングラウンド
この種目のみ別日に実施される。
エペ(全身が有効面)1分間は一本勝負で総当たりリーグ戦を行う。
五輪の出場者は36人なので、一人あたり35試合を立て続けに行うことになる。勝率7割で250点獲得となり、以下勝数が1増える(減る)ごとに点数は6点ずつ増減する。

2.水泳
ここからの競技は全て同じ日に実施される。
200メートル自由形を行う。2分30秒で250点を獲得となり、1秒ごとに点数は2点ずつ増減する。
東京五輪では東京スタジアム(味の素スタジアム)のグラウンド面(陸上トラックがある部分)に仮設の25mプールを設置して実施された。

3.フェンシング・ボーナスラウンド
一日で全種目を実施することや観客への選手紹介を兼ねた種目。
先に実施されたランキングラウンドの最下位とその一つ上の順位の選手がエペ30秒間一本勝負で対戦する。勝った方がその一つ上の選手と対戦する。これを繰り返していく。
当然トップの選手は最大1試合しか出れず不利と思われるかもしれないが、これは1勝につき1点しか入らないので競技にはほとんど影響しない。

4.馬術
成績下位の選手から馬に騎乗し、障害飛越を行う。パーフェクトで300点獲得、障害を落とすと7点減点、馬が障害を拒否すると10点減点、規定タイムから1秒遅れるごとに1点ずつ減点。また、落馬を2回するなど著しく悪いと試技打ち切りとなり点数は0点となる。
パートナーの馬とともに出場できる馬術競技と違い、抽選で選ばれる馬に僅か20分の練習後に騎乗することになるので、選手と馬との息が合わず、不機嫌な馬が試合放棄をし、馬術の点数がもの凄く低くなってしまう選手が出てしまうこともよくあることである。
なお、馬1頭につき2選手まで騎乗する。前半の選手がリタイアする程の不機嫌な馬に騎乗することになってしまった後半の選手の成績は、火を見るより明らかである。


5.レーザーラン(射撃&ランニング)
以前は「コンバインド」とされていた種目。
今までの点数を合計し、1点につき1秒の差をつけて順々にスタートする。
スタートしたら射撃ポイントに行き、レーザーピストルで10メートル離れた直径約6cmの的を狙う。
5回命中したら、800mのランニングを行う。
ランニングは陸上のトラックは使わず、芝生の上だったりアスファルトの上などを走る。これを4周行い、最初にゴールした人が優勝である。
息が切れている中でも5つの的を早ければ10秒以下で当てることができる。逆にミスが重なると一気に順位を落とすことになり、非常にスリリングな種目である。


【その他】

競技人口は世界で3万人、欧州を除き世界的にはマイナーな域で日本国内では100人と言われており、
オリンピックの時期になると『これなら五輪代表になれるチャンス!』とバラエティ番組で紹介されることがよくある。
しかし構成競技で手軽にできるのは水泳とランニング程度で、馬術、射撃、フェンシングと他全てで初期費用が多くかかってしまい競技環境を調達できるのは正に王侯貴族くらいのもの。
日本(に限らないが)には合法的に射撃をできる職業は限られており、馬術もあるため警察か自衛隊くらいしか満足に練習できないため、一般人は手が出せないのが現状である。


なんでこんなマイナー競技が「キング・オブ・スポーツ」と呼ばれ、五輪競技に選ばれ続けているかだが、実はこの競技を提案したのは近代オリンピックの父クーベルタン男爵。
何度となく五輪競技削減の候補に挙がりながらも近代五輪と共に生まれたスポーツという側面と、複合競技ゆえに他の競技施設を流用できるため、削減しても費用も時間も大して増えないため生き残り続けている。
それでも、観客が見やすいようにスリム化が実施されており、以前はランと射撃が独立しての1日1種目の5日間開催だったのが、1日5種目開催(ただし会場はバラバラ)になり、それが東京五輪では会場まで統一され、水泳もフェンシングも馬術も一つの会場で見れるという近代五種でしかできない光景が広がることになった。


また、日本ではこの競技自体がマイナーであるため、放送があったとしてもBSでハイライトが流される程度である。
日本が近代五種競技王国になる日は来るのだろうか。

日清食品は東京五輪でこのスポーツのスポンサーとなったが、その紹介ページは「やるのも辛い。見るのも辛い」など、やたらカオスかつ切なくなる文言が目立つ。
さらに応援キャラクターの「ぺんたうるすくん」は、近代五種の特徴を盛り込んだルックスもさることながら、現在確認されているのは世界中に1頭のみという設定。
……それ種の存続が詰んでないだろうか。「この種を、絶やしてはいけない。」というキャッチコピーなのに……


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最終更新:2024年04月08日 11:23