デフォルト(金融)

登録日:2011/09/25 Sun 02:42:41
更新日:2022/10/17 Mon 10:43:11
所要時間:約 14 分で読めます




(´^ω^`)「もうすぐおいらの楽しみにしてたエロゲーの発売日だお!メーカーはあの冥殿ちゃん率いるアニヲタプロジェクトだお!期待で胸が熱くなるお!!」

?「アーヤッベードウスッカ...」

(´^ω^`)「しかももう代金は支払済みだお。あとはkonozamaさえ起きなければおいらの至福のエロゲーライフが幕を開けるお!」

?「アーウン、ダヨネーシカタナイカ...」

(´^ω^`)「わくわくだおっお」

(´冥ω殿`)「マジごめん、マスターアップ用の全データと振り込まれた代金を下請けにパクられてトンズラされたので、
      ゲーム発売も代金返却もできなくなっちった…(てへぺろ」

(´゚ω゚`)「   」

問題:このときのますらおの気持ちを200文字以内で記述しなさい(10点)


◇概要
デフォルトは、日本語では「債務不履行」と呼ばれ、債券発行者(≒借金してる人、債務者)が破綻等で利払いや元本の支払いを停止することや、
企業融資やプロジェクト融資などの返済が滞ることをいう。
要するに「支払いの義務とか約束とか俺しーらね!」(借金踏み倒し)やら、
「今月キビシーから来月まで待って?ねっ?ねっ?」(契約外の支払い遅滞)の事である。
また、冒頭の例のように、お客さんにゲームを渡すこともお客さんから受け取ったお金を返すこともできなくなってしまい、
にっちもさっちも行かなくなってしまうようなのもデフォルトである。

デフォルトが起こると、程度の大小に関係無しに大抵は非常にヤバいことになる。
特に金額が大きい・関連する人や企業の数が多い場合には、巨大な不良債権(≒返ってくる見込みのない借金)が発生することになり、債権者は多大な損失を被る。
また、もちろんのことだが、デフォルトした債務者の信用も失墜するため、以後の経営に大きな問題を残すことになる。

ちなみに、デフォルト(債務不履行)はなんとなく企業や後述する国のお話に感じてしまいがちだが、我々の身近にも存在するお話である。


◇そもそも債務とは
一般的な意味:ある人が他のある人に対して一定の行為をする、またはしない義務。借金と同義で扱うことも多い。
(逆に言えば、必ずしもお金を指す言葉ではないということだ)
某漫画っぽく言うのなら「何かを得るために背負う相当の対価」とでも言えばいいだろうか。

債務の面白い点は、ある債務はある債権とセットになっているという点である。
債権とはこの場合「ある人が他のある人に対して一定の行為をしてくれる、またはしないでくれる権利」である。
これによってある債務が生まれる際には、「債権を有する者(債権者)」と「債務を負う者(債務者)」の2者が生まれる。

  • 具体例
(´^ω^`)「夏休みの宿題が終わらないお。助けてほしいお。」

(´・ω・`)「あ、うん。いいよ。でもタダじゃやだな。」

(´^ω^`)「わかったお。おいらの秘蔵のエロゲー150本を全部貸すお!オール初回限定盤だお!」

(´・ω・`)「それならいいよ。じゃあ早速宿題やろう。」

これによって(´^ω^`)は(´・ω・`)が宿題を教えてくれる権利を持つ債権者となった。
逆に(´・ω・`)は(´^ω^`)に対して宿題を教えないといけない義務を持つ債務者となった。

これの何が嬉しいかと言えば、
『ある人が自分がある「債務」を負うような「債権」を発行し、それを何らかの条件で引き受けてもらう』
『ある人がある「債権」を欲しいがゆえに、何らかの条件で別のある人に「債務」を請け負ってもらう』
という実に単純ながら明快なマーケットが生まれることにある。
あえて「お金」でやり取りされると明言しなかったのは、必ずしもお金だけがやり取りされる対象では無いためである。
多少シモの話になるが、いい例が女王様と下僕、サドとマゾ、ネコとタチ、責めと受けなどである。
(これらがお金で成り立つ関係の場合もあるがそれは除外という事で…)

ところが、これを金融だけの話へと変貌させるある発明があるとき誕生する。

  • 具体例
(´^ω^`)「今日発売のエロゲーが欲しいんだけどお金が無いお。貸して欲しいお。」

(´・ω・`)「えー、僕だって欲しいゲームがあるのに。」

(´^ω^`)「わかったお。それじゃあ『月末に貸してくれた額に10%利子つけて』返すお!だから1万円貸して欲しいお!!頼むお!!」

(´・ω・`)「うーん、それならいいよ。じゃあハイ、ちゃんと返してね。」

そう、「お金を手に入れるために『お金を渡す義務』を背負うこと」、もしくは逆に「『お金を渡される権利』をもらうためにお金を渡すこと」を始めるのである。
これが現在の金融のある種前提になっている考え方の出発点である。
これは実に画期的だった。なぜなら債権も債務もそれを発行した際に得られるものも全部まとめてお金だけで考えられるからだ。

すると、こういう事が可能になる。
  • 具体例
(´・_・`)「しょぼんくん、ますらおくんに利子付きでお金貸してるんだって?」

(´・ω・`)「そうなんだお。利子が付くとはいえ、月末までまだ2週間あるからお財布が軽いお」

(´・_・`)「なら僕と取引しないかい?君が持つ『月末に1万円に10%利子つけて返してもらえる』権利を、僕に今ここで10400円で売ってくれないかな?」

(´・ω・`)「おお、それはこちらとしては万々歳だお!ますらおくんには君にお金を渡すように言っておくお!」

(´・_・`)「ありがとう、こちらとしても嬉しいよ。じゃあこれお金ね。」

なんと、債権がお金で売れてしまった!しかも(´・_・`)も2週間後に利益が得られ(る可能性があり)、(´・ω・`)も(目減りはしたが)利益が確定している。
つまり彼らは『権利』をやりとりすることでお金儲けを成功させてしまったのだ。ちょっと乱暴ではあるが、これが債権を利用したビジネスの根幹である。

こうして徐々に債権の取引の数や取引される額が増えて行き、今では企業や国が取り扱う借金みたいな意味となっていくのであった。
(その詳しい過程は割愛させて頂く)


◇債務における信用の重要性
しかし、上記の債務のお話にはある落とし穴がある。先ほどの(´^ω^`)と(´・ω・`)のお金の貸し借りの、別の世界線での展開を見てみよう。

  • 具体例
(´^ω^`)「わかったお。それじゃあ『月末に貸してくれた額に10%利子つけて』返すお!だから1万円貸して欲しいお!!頼むお!!」

(´・ω・`)「だめだよ。キミこの前もそう言って返すのが3ヶ月も遅れたでしょ?僕それでPSVita買えなかったんだよ?(ぷんすか」

(´゚ω゚`)「   」

その落とし穴とは『信用』という問題である。
相手が自分の申し出に乗ってくれるかは「相手の自分に対する信用」がなければ不可能であることは言うまでもない。
(ここでは『相手』への信用を取り上げたが、もちろんのこと相手の申し出そのものへの信用も大事である)
では、この場合どうしたらよいのか?

  • 具体例
(´^ω^`)「わかったお。それじゃあ『月末に貸してくれた額に10%利子つけて』返すお!だから1万円貸して欲しいお!!頼むお!!」

(´・ω・`)「だめだよ。キミこの前もそう言って返すのが3ヶ月も遅れたでしょ?僕それで3DS買えなかったんだよ?(ぷんすか」

(´^ω^`)「たしかに…。それじゃあ『月末に貸してくれた額に30%利子つけて』返すお!
      それに『もしちゃんと来月までに返さなかったらその2倍』払うお!」

(´・ω・`)「…そこまで言うのなら。分かった。今度だけだよ?」

今度は(´^ω^`)はお金を借りたいけれど、借りるのには足りない自分の信用を補うために、より自分にとってキツい条件を提示した。
これによって(´・ω・`)にとってはリスクは大きいもののその分リターンも魅力的となったため、食指が動いたというわけだ。

リスクが高い(相手への信用が低い)状態では、その分旨味(リターン)を付け足すしか契約が成立する方法は無い。これが俗に言うリスクとリターンの関係である。
ただし、もちろんではあるがリスクが高すぎる状態では、そもそもどれだけリターンを大きくしてもダメな場合もある。(ヘタをすると詐欺となってしまうことも)
このことをデフォルトリスク(債務不履行の危険性)ないしは信用リスクと呼ぶ。
また、これに関連して信用が低い場合に、ある債権を他の人に転売しようとしても、
「買い手がつかない」「自分の売りたい値段では買ってもらえない」というリスクを被ることもある。
これを流動性リスクと呼び、信用リスクと合わせて債権を評価する際の指標として用いられる。

よく日経新聞とかダイヤモンドみたいな経済系の雑誌でムーディーズとかが出してる国債とかの信用格付けを紹介しているが、
あれがまさに信用リスクを評価したものである。

信用が足りない企業や国の債権を買うことは金をドブに捨てるような行為に等しいのだ。
(なお、逆にこのような信用の低い社債や国債に手を出して半ばギャンブル的に儲けを出そうとする人たちもいたりする)
1つ補足しておくと社債の場合、原則的にデフォルトが起こった場合の補填は存在しないと考えてもらっていい。
この辺りは債権者の「自己責任」と捉えられる部分である。
「てめーが自分で選んでそこに投資したんだから、それがダメだった場合もてめーでケツを拭け」ってワケだ。

ちなみに、信用に関してはかつてヨーロッパでは大航海時代頃からの社会問題となっていたようである。
なにせ君主たちの発行する公債は、私的な債権なのか国としての債権なのかよく分からない上、
「俺、債務放棄しまーすwwww」と言ったり、
もっとひどい場合には君主の跡を継いだ者が「先代の借金なぞ知らん!」と言ったりしてデフォルトしまくっていたという。
昨今の国債の方が安全だという認識は、この後王政がなくなり議会制へと移行していくことで誕生することになる。


◇債務不履行の種類
さて債務不履行の話に戻すと、債務不履行の種類は一般的に以下の3つが知られている。
(最近は2分類として扱われたりしているそうだが、本項目ではそちらは紹介しない)

1.履行遅滞
(´・ω・`)「あー、ますらお君。そろそろ約束の期限だよね?この前貸した1万円返してよー。」

(´^ω^`)「すまんお、ちょっと今持ち合わせがないんだお。来週だったらどうにか…」

(´・ω・`)「そっかー、それじゃしょうがn( 」

ノξ*゚⊿゚)ξ「あ、ますらお!きょ、今日のデート別にこれっぽっちも楽しみになんてしてないけど・・・」

ξ*〃〃)ξ「その、ちゃ、ちゃんと約束通り5時にデ○ズニー●ーで待ってるわよ?遅れちゃダメだからね!///」

タッタッタ...

(´・ω・`)「…。」

(´^ω^`)「…。」

(´・ω・`)「…ちょっと屋上まで行こうか?」

(´゚ω゚`)「   」


履行遅滞とは、債務の履行が可能なのにもかかわらず履行期を経過しても履行しないことである。
つまり借りた金を返せる状態なのに期限が来ても返さない、という言わずもがな色々アカン行為だ。

みんなは借りたものはちゃんと返すように!!!

2.履行不能
ノξ*゚⊿゚)ξ「ますらお、この前二人で買ったマイホームがね…」

(´^ω^`)「おっお、おいらの清水の舞台から飛び降りた一世一代の買い物がどうしたって?」

ξ*〃〃)ξ「その、空から隕石が降ってきて突然壊れちゃったって!///」

(´゚ω゚`)「   」

履行不能とは、例えば売買契約後に商品が滅失したときのように、債務者の債務の履行が不可能になることである。
また、冒頭の例も履行不能に当たる。

なお、債務者の過失によって履行不能になった場合は填補請求したり契約解除が可能となっている。
ただし、これがもしも債務者に過失なしと認められた場合には「危険負担」というひじょーにややこしい問題となるため注意されたし。

ちなみに金銭債権(要は「金払え」という債権)は絶対に履行不能にはならず、必ず履行遅滞として扱われるというちょっと変わった特性がある。
これは、金銭には古銭などでない限り特定性(その特定の金でなければならない、という性質)がなく、その額面にだけ価値があるためどんな金で支払われようが規定の金額さえ満たされれば問題ない、という性質があるため。
債務者が例え金を払えない状況に陥ったとしても、世間には金は流通しているため、あくまで「債務者が金を調達できていないだけ」として扱われるのである。

3.不完全履行
(´・ω・`)「あー、ますらお君。そろそろ約束の期限だよね?この前貸した1万円返してよー。」

(´^ω^`)「すまんお、ちょっと今持ち合わせがないんだお。だから今日はこの5000円だけでどうにか…」

(´・ω・`)「えー、僕だって今日新作を買う予定があったのにどうしてくれるのさ!」

(´^ω^`)「ごめんお。返すお金も言葉も無いお…。」

不完全履行不能とは、債務者が一応の履行をしたけれども,その内容がどう見ても不完全なこと。
これに対して債権者は損害賠償を請求したり、契約の解除を行ったりできる。
こちらもあまり好ましい行為とは言えない。実生活の中では決してやらないように。


◇詐欺と債務不履行の違い
と、ここまで見ていただくとなんとなく思うのが「詐欺と債務不履行ってどう違うのさ?」という点だろう。
これに関しては詐欺は「初めから騙すつもりがあって相手を騙して、その結果金銭などの授受が行われる」ことが大事らしい。

つまり、以下の場合は詐欺になる。
(´^ω^`)「今日発売のエロゲーが欲しいんだけどお金が無いお。貸して欲しいお。」

(´・ω・`)「えー、僕だって欲しいゲームがあるのに。」

(´^ω^`)「わかったお。それじゃあ『月末に貸してくれた額に10%利子つけて』返すお!だから1万円貸して欲しいお!!頼むお!!」

(´・ω・`)「うーん、それならいいよ。じゃあハイ、ちゃんと返してね。」

(´・ω・`)「…それから10年、ついぞますらおが僕にお金を返しに来ることはなかった。」

(´・ω・`)「アイツは分かっててやってたんだ。まさかその週に海外へ転校だなんて…。僕は一生アイツを許さないだろう。」

無論、詐欺だろうが債務不履行だろうがやっていいはずはない。決してアニヲタwikiをご覧の紳士淑女の諸君は犯罪に手を染めないよう。


◇近年のデフォルトについて
デフォルトは企業だけではなく、国家でも起こりうる。実際、98年にロシア、01年にはアルゼンチンがデフォルトした。
最近では、アメリカ国債のデフォルト騒ぎがあった。
アメリカでは国債の発行上限を定める法律があるのだが、その定められた上限に国債発行額が到達してしまいそうになり、
それ以上の国債が発行できなくなりかけた。
国債を返すための国債が発行できなくなれば、デフォルトするしかなくなる。
一時大騒ぎになったのだが、これは法改正が間に合い、危機は回避された。

また、2011年9月下旬現在では、ギリシャ、韓国でデフォルト危機が起きている。
ギリシャは隠蔽されていた社会主義時代の膨大な借金が残っており、
もしもギリシャがデフォルトした場合、ギリシャ国債を多く保有するイタリア、スペインあたりに財政問題が発生しかねない。
ユーロ存続が危ぶまれるなか、ギリシャ救済に奔走するドイツも半ばキレ気味であり、もしかしたらEUから脱退とかもあるかもしれない。
ギリシャのデフォルトはEUの存続に関わる問題である。

韓国は、リーマンショック時に発生した多額の中国への国家の借金を筆頭に、家計の借金も韓国GDPの八割近くに上っている。
これらは韓国経済の爆弾となっている。
前述のギリシャの問題から新興国の通貨、国債の信用が薄れ、急激なウォン安の流れは貿易赤字の急増する要因にもなり、
ギリシャよりも危ないのではないかという論評も見られる。
韓国のデフォルトは、韓国への輸出の多い日本にも影響を与えるとみられ、動向が注目されている。



追記、修正しないと私の負債もデフォルトしちゃう☆

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最終更新:2022年10月17日 10:43