仮面ライダーファイズ正伝 異形の花々

登録日:2012/03/24 Thu 23:31:06
更新日:2024/02/09 Fri 21:27:22
所要時間:約 6 分で読めます




仮面ライダーファイズ正伝 異形の花々』とは2004年に出版された小説である。テレビドラマ『仮面ライダー555』を小説化した作品。
作者は『555』の脚本を務めた井上敏樹

ドロドロした人間模様や群像劇を特徴とするテレビ版に負けず劣らずきっついストーリー展開を見せる作品。
その反面、書いたのが井上氏ということもあって戦闘シーンの描写はかなり淡白で大ざっぱ。
「テレビと同じものをやるのではつまらない」ということで、様々な変更がなされている。

2013年1月には『小説 仮面ライダーファイズ』のタイトルで講談社キャラクター文庫から再販された。
書き下ろしの後日談が収録されているが、残念ながら井上氏と草加雅人役・村上幸平氏によるあとがきがカットされている…
とはいえ、一時期高騰気味だった『異形の花々』の中古価格も再販の影響で値崩れしているので、あとがきに興味ある方は文庫と両方揃えてもいいかもしれない。

なお、ファン界隈でファイズの小説と言われる時は大体この作品を指すが、他にも『劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト』を題材にした作品(題:『555』)がある。
こちらの作者は井上氏ではなく、『GOSICK -ゴシック-』などで知られる桜庭一樹氏が執筆している。


◇主な変更点

  • 敵組織であるスマートブレイン関連がばっさりカット。
    『異形の花々』版の表紙には社長をはじめオルフェノク達が描かれているが、作中にはスラッグオルフェノクとドラゴンオルフェノク以外のスマブレ側のオルフェノクは登場しない。
    しかもドラゴンオルフェノクも北崎ではない(後述)。

  • 一部キャラクターの背景や性格、設定などが変わっている。特に長田結花と木村沙耶は大きく変更されており、もはや誰だお前ら状態。

  • 仮面ライダーデルタは登場しない。流星塾生もほとんど登場せず、主要登場人物、特に真理にスポットを当てた作品となっている。


◇あらすじ

美容師を夢見る少女・園田真理は、東京で乾巧や菊池啓太郎と同居しながら修行を続けていた。
ひょんなことから出会った青年・木場勇治に好意を抱く真理の前に、かつて「流星塾」で共に過ごした仲間である草加雅人と木村沙耶が現れる……。


◇登場人物


本作の主人公。でも割と空気。
実はギターを弾けるという設定が登場し、ちょっと嫌がりながらもその腕前を披露する。海堂さんェ…。
物語のラストで死期が近いことを悟り…。

本作のヒロイン。しかし登場頻度が高く彼女の視点で物語が進行することも多いため実質主人公。
木場勇治に好意を抱き交際を始めるも、かつての友達との再会が彼女に悲劇をもたらす。

自分の外見や下着について気にすることもあり、テレビ版よりも「年頃の恋する少女」という印象が強い。

相変わらずのお人よし。
テレビ版以上にあれこれ人助けをする。心を閉ざした結花に献身的に尽くし、やがて……
一般人でありながら怪人を孕ませるという快挙(?)を成し遂げる。

ある意味でテレビ版より危なくなった人その1。
建築デザイナーを志すも才能を妬んだ友人に殺されてオルフェノクになるなど、やっぱりろくな目に遭わない。
自分に好意を向ける真理と付き合い始めるが、ホースオルフェノクであることを隠しての交際に思い悩む。
人間とオルフェノクとの架け橋になりかけた結花に自分の希望を託して祝福するが、雅人の手で彼女が殺されたことで人間に絶望し、怒りと憎悪を向ける。
そして雅人を達磨にした。

テレビ版から大きく変わった人その1。
母親が出産直後の彼女の姿を嫌悪し絶叫したせいで心を閉ざし、喋れなくなる。
親戚に預けられても学校にさえ行かせてもらえず過酷な生活を送る。

自分の要求を従順に聞く啓太郎に無理難題を押しつけ玩んでいたが、彼の真摯な想いによって相思相愛となる。
後に啓太郎との子供を授かるも、草加雅人率いるカイザ部隊に襲われ命を落とす。

テレビ本編とあんまり変わっていないっちゅーか。
一見いいかげんでちゃらんぽらんだが、懊悩する勇治に核心をついた言葉を投げかけたりすることも。

終盤では結花の亡骸から見つけてきた子供を自らの子と称して育てている。
5年後には生死は不明ながら姿を消す。

ある意味でテレビ版より危なくなった人その2。
相変わらずの…というか、更にヤバくなった独善的かつヤンデレな性格で策を弄し、人間との間に子を授かった結花にカイザ部隊を率いて襲いかかったり真理をレイプしたりとやりたい放題。
しかしそんな彼も自分の上を行くヤンデレの手にかかることに……。

彼を演じた村上幸平氏による巻末コメントは必見。
文庫版による加筆収録ではさらに酷い事になり、村上氏がブログにて巻末コメントを彷彿とさせる発言をしている。

テレビ版から大きく変わった人その2。もはや原形を留めていない。
本編では正しい心を持つデルタの装着者の一人だったが、とんでもないヤンデレとなった。こっちが初期案だったという話もあるとかないとか。

真理とは親友だったが、次第に雅人への歪んだ愛情を露わにし不審な行動も見られるように。
その正体はドラゴンオルフェノク
映像作品とは異なり、触れるものを灰にする能力はない。
というか死期が近いため、自身が灰化しつつある。そのため、手の灰化を隠すために常に手袋をつけている。
物語終盤、木場勇治によって達磨にされた草加雅人を拉致監禁、ずっと共に生きていこうとするが……。

ナメクジの特性を持つオルフェノク。作中で正式名称は言及されず、地の分では「ナメクジタイプのオルフェノク」と呼ばれる。
でっぷりと太った中年オヤジが素体。溶解液と長い舌が武器。
交通事故で死亡し、自分が死んだことにも気づかないうちにオルフェノク化した。
真理に一方的に惚れており、彼女に飲ませた牛乳瓶の空瓶を嘗め回すという奇行を人間の頃から繰り返していた。
病院で暴れていた所をファイズのクリムゾンスマッシュで粉砕される。

  • オックスオルフェノク
鉄球を振り回す牛のオルフェノク。
公園で真理と勇治を襲撃したが、駆け付けたファイズに鉄球を切り裂かれ、ひるんだ所を滅多切りにされて消滅。

  • スカラベオルフェノク
全身を岩のような装甲で覆った黄金虫のオルフェノク。
オックスオルフェノクを倒して油断したファイズをタックルで弾き飛ばし、猛毒の唾液で毒殺しようと目論んだ。
しかし突然現れたカイザに射殺される。

  • マンティスオルフェノク
蟷螂のオルフェノク。夜道で女性を襲っていた所を勇治に倒される。

  • スコーピオンオルフェノク
蠍のオルフェノク。木の上から突然現れて結花を襲撃したが、返り討ちにされる。これにより啓太郎が彼女の正体を知ることとなった。

  • エレファントオルフェノク
象のオルフェノク。最初から激情態で、歩き回るだけで地響きを起こす程の巨体の持ち主。
勇介に襲いかかったが逆にボロクソにやられた。

啓太郎と結花との子供であり、人間とオルフェノクとのハーフである。
結花の亡骸から直也が見つけ出し、啓太郎の家におしかけそこで育てる事になった。
対外的には直也自身の子と冗談めかしているが、啓太郎はその真相を大体悟った模様。
2013年の書下ろしの5年後では急激な成長を遂げ、5歳で高校生並の身体に驚異的な知能を備えている。
光る人への変身能力を持つ。


◇余談

特撮ヲタの間では本作における草加雅人の婦女暴行シーンとその最期がよくネタにされており、コピペとなってしょっちゅう貼られている。
元より有名なシーンだったが、再販以降は更に人気が上がった(気がする)。
やはり草加雅人の人気は乾巧っていう薄汚いオルフェノクを圧倒しているなぁ…

なお、筆の早い井上氏らしく、この作品は2週間で仕上げた(前から考えてた内容を纏めただけなのかもしれないが)。

2020年には、テレビ版で木村沙耶役を演じた斉藤麻衣氏が、本作を読んで衝撃を受けた事を自身のSNSでコメントしている。



もうだいじょうぶだ。きっと、まりちゃんがたすけてくれる。
いつものように、ぼくの項目をみて、ついき・しゅうせいしてくれる。
雅人は真理に向かって手を伸ばした。
ホースオルフェノクは何のためらいもなくその腕を引き抜き、握り潰した。



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最終更新:2024年02月09日 21:27