トンネル効果

登録日 :2012/03/20(火) 09:41:55
更新日 : 2016/12/07 Wed 12:35:52
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「まさおー! ごはんよー!」

「セーブしたらいくー!」


こんなシチュエーション、子供の頃に体験した人は多いのではないだろうか。そんなありふれたシチュエーション、実はここに不思議が隠されている。


日常の上では全く意識しない事だが、音は間に障害物があっても伝わる。
それが単なる壁でも、複雑に入り組んだ屋内でも、適当な音量であれば伝わる。

これは波に共通した性質で、『波の回折』と呼ばれる。
波は進行方向に障害物があると、障害物の後ろに回り込む性質があるのだ。

音は空気が圧縮されながら伝わる波である。
他にもテレビのリモコンが間に障害物があっても使えるのも、リモコンの信号が赤外線という電磁波だからである。
海が近い人はテトラポッドなんかを見ると、入り組んだテトラポッドの奥にまで波が入り込んでいるのを見る事ができるだろう。
すべてこの『波の回折』によるものである。(ほかにも波動を参照)
さて、ここで皆さんはこんな話を知っているだろうか。

「物質はすべて波の性質を持つ」

これはド・ブロイという物理学者が提唱した、物質波という概念である。
まあ色々説明すれば長くなるので、かい摘まんで「めちゃくちゃ小さい状況になると物質の波の性質が顕著になる」とだけ理解しよう。


めちゃくちゃ小さい状況、例えば電子なんかは、粒子であるが同時に波でもあるというのだ。わけわかんねえ!
まあそういう色々は量子論の項に任せるとして、とりあえず微視的な状況では波の性質を持つという事が重要なのである。
波の性質を持つ、という事は回折もする、という事である。

つまり、電子やら陽子やらそういう小さいものは、間に障害物があってもヒョイっと後ろに回り込む事があるという事だ。
障害物は別に物質的な壁じゃなくても、静電気的なポテンシャルの壁でも良い。てか物質的な壁はポテンシャルの壁でもあるし。
とりあえずいろんな壁を、その壁を超すのにエネルギーが足りなかったとしても、なぜか通り抜ける事があるのだ。

これが世に言う『トンネル効果』である。
まるでトンネルがあるように壁を通り抜けてしまうのだ!

物質はなんでも波の性質を持つので、人間が壁をすり抜けるのも不可能ではない。
でも小さくないと波の性質は如実にあらわれないので、多分体当たりで壁を壊す方が早い。


このトンネル効果、例えば太陽で頻繁に起こっている。
太陽のエネルギー源は水素の核融合によるものである。核融合は核、つまり陽子がくっつく事で起こるが、
陽子はプラスなのでプラス同士反発しあい陽子はなかなか近づくことができない。
十分な速度でぶつければ近づくのだが、計算上太陽でそんな速度を得るのは難しい。

そこでトンネル効果ですよ。

トンネル効果により、プラス同士の反発力(クーロン障壁)を突破、障壁が多い程燃える恋によって太陽は熱く輝いているのだ。

他にも色々な例はある。

さて、ではトンネル効果を実感してみよう。

◆理論屋の場合
xにおけるポテンシャルをV(x)、エネルギーをEとする。
シュレーディンガー方程式
[-{(h^2)/2m}(d/dx)^2+V(x)]ψ(x)=Eψ(x)
を満たす波動関数をψ(x)とすると、その絶対値の二乗|ψ(x)|^2はxにおける粒子の存在確率を表す。
ポテンシャルV(x)は0≦x≦aのときV(x)=V、それ以外で0とする。このとき0<E<V。
x<0、0≦x≦a、a<xについてシュレーディンガー方程式を解き、境界条件(x=0、aで波動関数は滑らかに連続するとか)を考慮して特解を求める。
なんと、壁の内側でも波動関数は急に0にならない事がわかる!
ね、簡単でしょ?


◆実験屋の場合
実験してみる。

誤解してはいけないのが、トンネル効果は壁があるけどすり抜けるという事である。
ニュートリノやダークマターも物質をすり抜けるが、これらはもともと相互作用しにくい、つまりもともと壁がないという事で、トンネル効果とは違うのだ。
また、大きさが小さいから分子の隙間から通り抜けるというわけでもないので要注意。


追記・修正はシュレーディンガー方程式を解いてからお願いします。

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