明智小五郎

登録日:2011/11/06(日) 03:57:36
更新日:2023/11/27 Mon 22:56:24
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◆明智小五郎

明智(あけち)小五郎(こごろう)」は探偵小説家・江戸川乱歩が創造した架空の名探偵。

初登場は大正14年に書かれた『D坂の殺人事件』で、その時には人間の心理を研究する書生風の若者であった。

『D坂の殺人事件』によれば「講談師の(神田)伯竜の若い頃によく似ていて、縮れだ髪の毛をモジャモジャにのばした」好男子では無いが天才的で、
異常人の風格を備えた人物として紹介されている。

心理を研究していると云うだけはあり、当時の日本には馴染みの薄かったと思われる、
性愛に絡む異常心理と何気ない心理トリックの作用が齎す見落としが一見複雑な物として他人に見せていたこの事件を鮮やかに解決して見せて以降は、
(※ただし別段警察に協力したりしていなければ事件そのものの解決にも関わっていない)
その特異な才能に注目が集まると共に探偵紛いの商売を始め、活躍をする様になる。

世間と云うよりは司法や警察関係者の注目を集めた『心理試験』や『屋根裏の散歩者』『幽霊』事件等に関わった後に海外に渡航。
折からの戦争による混乱の時代……明智が海外で何をしていたかについては実は全く明かされていないのだが、
恐らくはその能力を活かした間謀(スパイ)として日本の外務省外、各国の国際的犯罪事件の解決を引き受けていたとされている。

初登場時には上記の様に美男子とは言い難い風貌の持ち主で、よれよれの絣の着物に兵児帯を締めた姿とされていたのだが、
この頃になると明智の容貌の描写もすっかり変化し、初の通俗長編『一寸法師』では黒い支那服を纏った姿に。
更に、乱歩の作品が後の活劇を中心とした『蜘蛛男』を始めとする通俗長編物に移行すると、
モジャモジャの髪の毛がトレードマークとして残るのみで、日本人離れした英国紳士風の出で立ちと描写されるようになる。

そして、現在の明智小五郎像の基本となっている「少年探偵団シリーズ」では黒づくめの役者の様な美男子となり、
キャラクターも初期の凄みのある人物像から、漫画的な完璧超人へと移行。
探偵法も相手の心理を読み、トリックを仕掛けていた青年時代から変化して、
変装術や腹話術、格闘術を使用する八面六臂の活劇の様な活躍をする行動派探偵へと変化して行った。
……まあ、相手が『一寸法師』とか『蜘蛛男』とか『魔術師』とか『吸血鬼』とか『黄金仮面』とか
『黒蜥蜴』とか『人間豹』とか名乗ったり呼ばれたりする連中だから、マトモな探偵法が通じるとは到底思えない為、それはそれで良い気はするのだが……。

また、こうした輩を相手にする時には更に劇場型の異常犯罪者である彼らを超える大仕掛けを施して逆に彼らを罠に嵌める事もあり、
こうした描写は「少年探偵団シリーズ」で更に加速して行く事になる。

まぁハッキリ言えば子どもたちを相手にする手前その保護者の信頼も考えれば当時の価値観として当然の変貌ではある。
ぶっちゃければ、この頃からの明智は「子どもたちの(理想の)先生(すなわち教師)」として「憧れを抱かれる本当の大人」でなければならなかったのだ。

……因みに、初期の明智小五郎の『冴えない風貌だが異常性を感じさせる天才的人物』と云うキャラクターは、
後輩の横溝正史の創造した金田一耕助に引き継がれる事になる。
ただし、外国帰りの後に変身した明智に対して、金田一は最初から洋行帰りである。
また、この二人には当時の知識人らしく、生活スタイルが西洋風(洋館風アパート住まい・朝食はパン中心・洋書を多量に所蔵し愛読などなど)と云う共通点がある。
最大の違いは、金田一耕助は「最初から最後まで御洒落にはならず、初期の姿形を貫き通した」点。これは、横溝正史が初期の明智小五郎のキャラクターをいかに気に入っていたかを物語っている。


【家族】

正体不明の高等遊民として登場した為、出身地や父母の存在、学歴等は不明である。

しかし、三十代の頃に『魔術師』事件にて当初は敵として出会った「魔術師」の娘である文代と云う美しい娘と出会い恋に落ち、彼女を妻としている。

また「少年探偵団シリーズ」の主人公である小林芳雄少年は(一応)大人向けの通俗長編シリーズにも登場し、明智の助手として彼の世話を灼いている。

文代夫人との間に子供は無く、夫人は明智とは十以上の年齢差がある筈だが『化人幻戯』の頃には長期の入院をしているとする描写がある。


【怪人二十面相】

明智小五郎のライバルと云えば、誰もが怪人二十面相の名前を挙げるだろうが、実は怪人二十面相が登場するのは児童向けの「少年探偵団シリーズ」のみで、
しかも明智と云うよりは小林少年率いる「少年探偵団」のライバルと呼んだ方がしっくり来る存在である。
……何しろ、それまでどれだけの活躍をしていても、明智小五郎本人が出て来た場合には凡るトリックが看破された上で罠に嵌められ、
挙げ句に捕らえられるのだから始末に負えない(若しくは死を偽装する)。
……まあ、この展開もシリーズの為のお約束と言ってしまえば仕様がないのだが、矢張り魅力的な悪役が居なければシリーズが続く筈も無い訳で、
そうした意味では怪人二十面相こそが「少年探偵団シリーズ」の真の主人公であると云う説も既に出尽くして埃を被っている程である。

乱歩が怪盗ルパンから着想を経て(寧ろパクry…)誕生した、この闇の怪盗紳士は、光の明智と対立する存在として、
現在では同一人物説すらが存在する(心理的な意味でも)。


【黒蜥蜴】

明智小五郎が対決してきたライバルの中でも二十面相に次いで知名度が高いのが黒蜥蜴である。
美しい物を狙う美貌の女怪盗でポプラ社版では単なる宝石泥棒だが、原作では美しい男女を剥製としてコレクションに加えるというガチのネクロフィリアである。
明智とは愛憎半ばする複雑な男女関係であり、特に最後のやり取りは屈指の名シーン
三島由紀夫による戯曲と美輪明宏の演じた黒蜥蜴が有名。


【演じた俳優】
※多い上に、あんまり遡り過ぎると判らないので比較的新しい世代に絞る。
金田一耕助に比べて、代表作と呼べる映像化作品が存在しないのは残念な所である。



【ドラマ】

◆天知茂「美女シリーズ」
◆陣内孝則
◆稲垣吾郎
◆田村正和
◆松岡昌宏



【映画】

◆仲村トオル『K-20』
◆本木雅弘『RAMPO』
◆浅野忠信『乱歩地獄』
◆嶋田久作『屋根裏の散歩者』
※嶋田久作は実相寺昭雄による『屋根裏の散歩者』『D坂の殺人事件』にて乱歩の初期作品のイメージに連なる明智小五郎を怪演。
作品自体も18禁でエロシーンが普通に出てくるが、映像作品としては最も忠実に乱歩世界を再現していておヌヌめ。






【余談】

毛利小五郎明智小衣等、二次作品で明智小五郎をもじったキャラクターは少なくないが、本家と比べると……。タメが張れるのは明智健悟くらいか。







二十面相「よし、これが全てのヲタク共をアニヲタWikiに集わせる秘宝……“冥殿のユルメのアナル”か……
     クックックッ……これでヲタク共の妄想は夢を支配する俺様の物だ!!」


???「そうはさせんぞ、二十面相!!(くぐもった声)」


二十面相「なっ……誰だ!?(大袈裟に)」


???「ここだ!……私だよ二十面相」
※部下に変装していた明智と少年探偵団が正体を現す。
明らかに体格や身長がおかしい。


二十面相「貴様は明智!……どうしてここが……」


明智「二十面相……お前はミスを犯した……二十の立て逃げに隠れた部下への暗号……僕が気づかないとでも思っていたのかね?
   ……観念しろ、アジトは腕利きの自治厨に包囲されている!!」


二十面相「ハハハハハ!……甘いよ明智君!私がむざむざ追記修正させられると思うのかね?……さらばだ!!」

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最終更新:2023年11月27日 22:56