フルンティング

登録日:2009/06/22(月) 22:29:19
更新日:2024/03/13 Wed 09:56:35
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1.
フルンティング (Hrunting)
古代イングランドの叙事詩『ベオウルフ』に登場する剣。

巨人とも竜とも言われる魔物グレンデル素手で仕留め、次いでその仇をとりにきたグレンデルの母親との戦いに挑む主人公のベオウルフに、
フロースガール王の廷臣ウンフェルスが貸与した。
古より伝来する名剣で、長い柄を持ち、刀身は血をすするごとに堅固となると言い伝えられる。厨二マインドをくすぐる魔剣(由来から言えば聖剣と呼ぶべきか)。
『ベオウルフ』作中では数多の合戦を経、大勢の敵を葬ってきた伝説的な名剣として語られている。


が、物語においては、良く言えばベオウルフの危機を煽る為のスパイス、悪く言えば
「当て馬未満の何か」
状態。

しかし、グレンデルの母親である海の魔物が住む湖底の洞窟にベオウルフがたどり着き、いざ戦いを始める。
そして、ベオウルフはグレンデルの母親に必殺の一撃を見舞った……筈が、一切通用しなかったのである。
息子グレンデルより強力な魔物であるが故に掠り傷一つつけられず、まるっきり役に立たない。

ベオウルフは、グレンデルの母親との組み討ちの中で、洞窟内で見つけたヨートゥン(北欧神話の巨人の一族)の剣を使ってグレンデルの母親を倒し、首を切り落とす。
巨人の剣はその血液で溶けてしまい柄だけとなったともされるが、
何はともあれ、ベオウルフは勝利の証として倒したグレンデルの母親の頭と剣(の柄)を持って湖面へと帰還したという。

フルンティングは謝辞と賞賛とともにウンフェルスのもとに返され、ベオウルフは数々の功績によって彼は王となった。


まぁ、ベオウルフ自体のクソ力は名剣よりも優れたものなのだ、というお話でもある。
床の上で安らかに眠ることは戦士の恥(実情はどうだかしらんが)であり、戦いの中で死ぬことこそ誉れ。とされる中、
老いて王となろうと死ぬその瞬間まで竜と戦い抜いた理想的豪傑たる由縁の一幕、と言ったところか。

フルンティングが何故にへたれたことになったのかは、伝承は外来の宗教等によって変質することも間々あるので何とも言えんことも多々あるが、
「あの強い武器と強豪のコンビですら勝てない魔物を一体どうやって突破するんだ!?」
という物語としてのエンタメ性を追求したと考えると面白い。
その強い武器か強豪のどちらかがしょっぱい所為で、ぶっちゃけ当て馬としても機能してるか微妙に見える。という事例は現代の創作物でも散見する現象であり、
英文学最古の叙事詩の一つであるベオウルフから、そうした要素を窺うことも出来る。



2.
『赤原猟犬』(フルンディング)
原典:ベオウルフが振るった剣フルンティング

Fate/hollow ataraxia』にてアーチャーが使用した宝具。
これに限らず、アーチャーは「投影」によって創り出した宝具の劣化コピーを用いるため、
この作品で使ったのはアーチャーだが、この宝具の真の持ち主(担い手)というわけではない。

また、原典は「フルン『ティ』ング」だが、ルビは「フルン『ディ』ング」となっている。
……流石に宝具がフル〇ンの略称で呼ばれかねないのはちょっと、ということだろうか。


アーチャーがセンタービルから大橋へ向けて矢として放っていた魔剣。

全体が真っ黒で、幾つかの刃が細い芯に螺旋を描いて巻きつき、そのままやや外側に反り出したような外観。
劇中では説明されていないが、『偽・螺旋剣』(カラドボルグⅡ)のように、
アーチャーによって元々の形状から、矢として撃ち易い形状に改良されている可能性が高い。

剣として使用した場合の機能は不明だが、矢として放たれた場合は例え弾かれようと射手が健在かつ狙い続ける限り標的を襲い続ける、赤光を纏った魔弾と化す。


「一度放たれた矢の標的は変えられない」という絶対の原則を覆し、射出後に軌道変更が可能で、
この能力によって、当初の標的たる士郎のみならず、橋から飛び出したセイバーへの迎撃をも同時に行う事を実現している。
もっともこれはアーチャーの技量らしい。

魔力を込めるほど威力が上がり、劇中での最大チャージ時間は40秒。最大速度はマッハ6以上は確実。
途中軌道を変えてセイバーを迎撃するという寄り道(といっても殆ど直進だが)をしているにもかかわらず、発射からやられる2秒弱の間に標的に到達していることから、
令呪使用から1秒後に アイアスの詠唱、コンマテの1小節1秒の詠唱時間の設定からもわかる。よく間違われるがマッハ10ではない。
40秒チャージ時では不完全な『熾天覆う七つの円環』に弾かれつつも、その余波のみで橋を大破させた他、標的を狙い続ける連続攻撃の初撃でアイアスを完全破壊している。

狙撃される側にとってはこの上ない厄介な宝具と言える。

「新都一帯は私の射程だ」


外伝作品である『Fate/EXTRA』でも、アーチャーのスキルとして登場。

使用するMPも30と比較的少なく、ダメージ+追加効果で相手の耐久力を下げたり、攻撃力を下げたりと使い分けも可能。
序盤から使用可能な初歩のスキルなのだが、その便利さから終盤まで雑魚戦やボス戦を問わずお世話になる。

あと何故か外見が『hollow』時と違って赤いビームとなっている(恐らくはゲームの処理能力的な問題である)。


このように、Fateシリーズでは主に「剣」ではなく「矢」として用いられる形での登場であり、
本来の担い手であるベオウルフも『Fate/Grand Order』まで登場しなかったため、本来の剣としての能力は謎に包まれていた。
※これは先程例に挙げた『偽・螺旋剣』(カラドボルク)も同様だったが、フルンディングと違ってこちらはかなり有名な剣の一つであり、
さらに言えば『勝利すべき黄金の剣』(カリバーン)の原典に相当する宝具の一つでもあることから、ある程度は予想が付けられていた。

そして、上述の通り本来の担い手であるベオウルフがFGOに参戦したことで、フルンディングのある程度の用途は判明した。
彼曰く、姿形を自在に変えるグリンデルを見失わないよう、一度定めた標的を逃さないこの剣を探知機代わりにしていたらしい。
本作にもアーチャーこと赤い外套の弓兵は登場しているため、本来の担い手のベオウルフに彼の宝具の模造品を無断使用していることがバレることとなったが、
無断使用はともかく、使い方に関しては彼から太鼓判を押されるほど的確とされ「気に食わないが気に入った!今度あったら殴らせろ!」とコメントされている。
なお、ベオウルフの宝具は『源流闘争』(グレンデル・バスター)というステゴロ殺法であるため、ゲームでは通常武器扱いとなる。


「布石を打たせてもらう」

「赤原を行け、緋の猟犬!」



3.
とある魔術の禁書目録に登場する武器

18巻に登場した騎士団長の装備している剣。

通常は80cm程度のロングソードだが、戦闘時には表面が泡立ち、3m以上の長剣になる。

斬り伏せて返り血を浴びる程、強敵を倒す程強くなる魔剣でモデルは1。


4.
『ヴァルキリー・ワークス』(『這いよれ! ニャル子さん』著者、逢空万太原作ライトノベル)に登場する武器。

2巻にて登場した、剣を扱うことに長けたヴァルキリーシュヴェルトライテの所持する『神威(ケニング)』(平たく言えばFateの宝具のようなもの)のひとつ。

シュヴェルトライテが一目惚れするほど威厳のある神威だったが、真名(Fateの(ry )は『名剣(笑)』。つまり何の役にも立たない駄剣だった。

一応原典(本項の1.を参照)準拠とはいえ、まったくの駄剣ぶりにブチギレたシュヴェルトライテに地面に叩きつけられた。それ以降は登場していない。




略してフルティン! さあご一緒に!

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最終更新:2024年03月13日 09:56