人間失格

登録日 :2010/01/18(月) 16:09:17
更新日 : 2017/04/27 Thu 13:15:32
所要時間 :約 3 分で読めます




恥の多い生涯を送って来ました。




『人間失格』は、太宰治の中編小説。
1948年に雑誌「展望」に連載小説として発表された。
よく太宰の遺作として扱われているが、太宰はこの後に「グッド・バイ」という小説を(未完ながら)書いている。
『俗天使』などの作品の中に『人間失格』について言及している箇所があることから、長年の構想を経て書かれた作品であると言える。

作品の原型としては『HUMAN LOST』という小説がある。
また、『あさましきもの』という作品に出てくる内容がほぼそのまま用いられている。

物語は二人の語り手によって進められる。
一人は、「葉蔵」と言う男の記した三冊の手記と三枚の写真を、ある場末の酒場のマダムから受け取った作家と思しき男。
まず、三枚の写真に写る児童、少年、そして青年とも老年とも見える男性を眺めるにあたって、
耐え難い嫌悪感と虚無感を感じ取ったと言う書き出しで、「はしがき」を記し、その手記と写真を得た時のことを回想する形で「あとがき」とした。
その間に挟まれて居るのが、「葉蔵」と言う名の男の手記であり、三枚の写真に写りこんでいた彼が第二の語り手、そして主人公である。

手記には、葉蔵が自らの半生を振り返りながら、ひたすら後悔、もしくは自嘲を繰り返す文言が綴られている。
前半はいかに自分が社会に対して不適合であるか、狂人であり道化であるか、そうであると思い込み、要らぬ気苦労を背負い込んでいたか、
そして後半はその気苦労を忘れ、多少の図太さを得た自分がいよいよ本当に狂気と惰性の沼に落ちて行ったかが描かれている。

葉蔵は裕福な家庭に育ち、幼少の頃にすでに女中や親戚の女に犯され、「理解出来ない」としながらも確実に女の生態を把握しており、
その深く陰を落とした、印象派画家の自画像のような美貌と、
他人を極端に恐れ、道化として振る舞っていたことによる上辺のコミュニケーション能力の異常な発達により、
家族の手配した下宿よりも紐として女の部屋で眠っている期間の方が長いと言う稀代の垂らしである。
本人はそれを忌まわしい呪詛のように思っており、実際に、人間関係を築くにあたって、
葉蔵は草食系の極致、同時にその対極にあると言うきわめて特異な性分をしていた。

そんな葉蔵が、遊び半分の反政府活動や、鎌倉での心中未遂を経て、
薄ら暗い酒場の裏の路地を無気力、無軌道にふらふらと彷徨する様子が、葉蔵本人の手によって記されている。


文章は太宰治特有の、不浄と清浄を同居させた流れるような語彙で描かれ、一見読みやすい。
しかし、気を抜くと、霧のように意識の焦点から外れてしまい、なかなか何かの作業をしながらでは読み込めない、掴み所の無い文体を取る。

夏目漱石の『こころ』と長年にわたり累計部数を争っている。


太宰の生誕100年前後には、さまざまな企画により『人間失格』が人々の注目を集めた。
2007年、集英社文庫新装版の表紙を小畑健が描いたことで話題となった。
2009年にはアニメ化。小畑健がキャラクター原案を担当した。
2010年には生田斗真主演で映画化された。


追記・修正を切に願います。

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