うつ病

登録日:2012/01/19 Thu 20:52:32
更新日:2023/08/10 Thu 19:41:51
所要時間:約 13 分で読めます




※ご自身の健康問題については、専門の医療機関に相談してください

うつ(鬱)病とは、精神疾患の一つである。正確には心身疾患であるが。


主な症状

  • 気分が沈んだ状態が半月以上続く
  • 不眠(眠れない・眠りが浅い)/逆に過眠・日中の眠気など
  • 食欲が急激に減退する/逆に過剰になる
  • 甘いものを大量に欲しがる
  • 身だしなみなど、細かいことに頓着がなくなる
  • 趣味が楽しめなくなる
  • 仕事や学業に集中できない/出社・登校する意欲が湧かない/作業速度が極度に落ちる
  • 性欲が減退する
  • 生きる意欲を失う
  • 体重の異常な増減が起きる
  • 体の痛み、微熱(逆に低体温)、しびれ、動悸、便秘、下痢、耳鳴りなどの身体症状が起こる
いずれも割とありふれたことのように思えるが、こういった項目が幾つも、かつ長期間当て嵌まる人間というのは意外に居ないもの。
この中でも不眠はほとんどの人に見られるが、これらすべてが必ず発生するわけでなく、人によって症状にかなりばらつきがある*1
もし自分がそうなら、軽視せず一度通院してほしい
うつ病以外に危険な病が潜んでいることもあり得るため、一度検査を受けることが重要である。


原因となる事象

学校や職場でのいじめ、パワハラ、セクハラ、モラハラ、体罰、家族・パートナー内での家庭内暴力や嫁姑問題、進学や就職などによる環境の変化、受験や就職の失敗、突然の失業、病や怪我、将来への不安、家族やペットとの離別、災害など、原因は様々。
日々の小さなストレスが溜りに溜まって、罹患する可能性がもある。

また、PTSD・心的外傷後ストレス障害が原因となることがある。
殺人などの重大な犯罪に巻き込まれたり、大規模な災害により被災したり、戦争などに巻き込まれて生命の危機に瀕した人などは、PTSDからうつ病に移行してしまうことが解明されている*2

さらに心身に負担をかけすぎた結果「パニック障害*3」を煩い、そこで外出が怖くなり、適切な治療ができず、周囲の理解も得られず外出の恐怖に怯え、自分で自分を追い込んでしまい、そのまま発展することもあると言われている。


診断・治療法

医療機関を受診する場合、精神科の管轄となる*4
心療内科や内科などで診てもらえる場合もあるが、厳密には専門分野が異なる*5
とはいえ、最初は心療内科や内科を受診する人も多いとされ、近所に精神科が無い場合などは選択肢になる。
必要があれば別の精神科や別の病院に紹介状を書いてもらう形になるだろう。

診断はほとんどの場合問診であるが、一部の医療機関では光トポグラフィー装置による脳の血流量測定も行われている。
他にも近年血液検査、高性能MRIなどでの診断が研究されている。

治療に関しては、休養、薬物療法、精神療法が基本である。
この辺りは、本人の環境、医療機関との相談で決めることになるだろう。


うつ病患者への対応

「心の風邪」とよく言われるが、これは"誰にでもかかるから"ということで、すぐに良くなる、気合で治るというわけではない。
特に、再発率が高い為、予後が悪い場合が散見される。
このキャッチフレーズで甘く考えている人は、風邪も拗らせたら命に関わるということを思い出してほしい。

気の持ちようや気合で何とかなる。甘え。」という意見は未だにあり、そうした面が皆無という訳ではない。
が、これは初期段階の話
むしろ初期段階では、なりかけてる当人が「疲れてるだけだ」で無理を押して悪化してしまうケースの方が圧倒的である。
こうして少しずつ体が自分のコントロール化を離れて体調不良を起こし、不安を覚えて自主的に健康診断を受けても、基本的な検査では数値として目に見えてすぐに「欝です」とはわからないのだ。
この段階で「自律神経の乱れではないか、心療内科に行ってみては?」等と心療・精神系の可能性を示唆し、薦めてもらえればまだ救いのあるほうである。

うつ病というのは、深刻になってくると脳の分泌物に異常が発生する。
アドレナリンやエンドルフィンで超覚醒!なんて、Wiki篭りにはお馴染だろうが、アレと真逆の現象が起こっていると思って良い

こうした症状になると、悩みの種である問題等を少し深く考えようとしただけでも頭がかきむしられるようになって軽い混乱状態になったり、
正常に思考が働かなかったりする。
そのため、ある程度症状が進行している場合、気の持ちようだけでどうにかなるものではなく、メンタルケアや投薬治療も必要になってくる。
病状にもよるが、治療には数か月から年単位の時間がかかることがほとんど。どんなに早くても半年はまずかかる。
急げば治りが早くなるわけでもないので治療に際して焦りは禁物である。

ただし、自律神経に異常が起きている場合には生活習慣を改善すると、症状の程度にもよるが少しは快方に向かうことが多い。
強迫観念から夜は不眠状態になることが多いが、ある程度午前中日光に当たることを意識する等基本的なことに留意しておくと、症状の悪化は防ぐことが出来る。

また、治療中の者に「甘ったれるな」「さぼるな」等の罵倒は勿論だが、意外と思うかもしれないが「がんばれ」も厳禁
というのも、患者の多くは「他の人間はちゃんと頑張れているのに、自分は頑張れない。駄目な奴だ」と自己嫌悪に陥っている場合が多いので、これらの激励は「あんなに応援して貰ってるのに、体が動かないし頭が働かないからそれに応えられない。自分はどこまでも救えない最低な奴だ」などと、逆に彼らを追い込んでしまいかねない。
最悪の場合、自らの命を絶ってしまう
というか、大体はそもそも頑張りすぎた結果がうつ病なのである*6
第三者が横から口を出して良いような問題ではないから、迂闊な言葉は口にしない方が無難だろう。
自分の視点でしか人を見ておらず、励ましにもならないただの自己満足の発言1つで本当に自殺に追い込んだ場合、最悪の場合犯罪者として糾弾され大事な物を失ってしまう事になる。
間違っても「死ねよ」などと言ってはいけないし、医者でも身内でもないのに美味いもの食わせに誘おうだなんてしなくていいのだ。

…ただ、周囲の人たちからの優しさや人望に甘え、自分で改善する姿勢や行動を身内や職場に示さなければ、それは社会常識だとか関係なくサボりだろうと思われてしまうのは仕方ないことである。
(例、医者から早めに布団を入ることを勧められながら深夜のスマホいじりがやめられずスクリーンタイム15時間、ちょっとでも都合が悪くなるとすぐ休職するからまとまな仕事をまかせることが出来ないしミスを注意をすることができない、など)
もちろん行動で示すことは難しいだろうから、せめて周囲への感謝を言葉と文字に示すことは行っておこう。
お世話になっている人への感謝を忘れむしろ牙を剥くような人が破滅することは歴史上の人物たちが証明しているはずだ


余談

最近の研究では、うつ病患者の殆どが強いストレスによって脳に何らかのダメージを負っているらしいことが分かっている*7
仮に原因を取り除いたとしても、脳のダメージがすぐ元に戻る訳ではないので、些細なことでも再発してしまうのはこの為であると考えられている。
従って、かかった人には長期的ケアが必要であり、特に就業・復学面を中心としたアドバイスが必要となる。

自殺者のうち、自殺の動機が確認できた人の実に7割以上が、何らかの精神疾患にかかっており、殆どがうつ病とみられる。
自殺の詳細については当該項目を参照のこと。

近年は非定型うつ病が増えており、知らない人からは仮病と誤解されやすい
従来考えられてきたうつ病は、主に脳が覚醒仕切っていない朝方に症状が顕著に現われるが、
非定型は朝方は動けるが、昼間になると体のだるさや眠気等が襲ってきて、突然作業が困難になる。
これは、朝方に作業を集中的に行う主婦等に多く、精神的にぎりぎりの状態で家事等をして、
午後を迎えた際に、脳の伝達異常が発生して、思ったことをなかなか行動にうつせない為と考えられている他、
統合失調症等と取り違えている場合も多い。
各種メディア等で「新型うつ病」と呼ばれるのはこれらの非定型うつ病のことだが、これは俗称のようなもので「新型うつ病」という病名は存在しない*8

モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)が有効だとされているが、副作用の問題から日本では適応疾患に指定されていない。

非定型うつ病従来のうつ病の違いとしては、
前者は「仕事から開放されると趣味が楽しくて仕方なくて没頭出来る」という状態に近い感覚があり、
後者は「かつての趣味も全く楽しくないが、とりあえず何も考えないで済むから何となくやってる。だが集中は出来てない」という状態に近いという。
個人差はあるが、大体こういう差異が目安の一つとなる。

統合失調症の場合は、うつ病と違って、遺伝子レベルの異常であって、うつ病とはまったく違う病気である。
ただし、統合失調症後うつ病というものがあるので、注意深く観察することが大事なのは言うまでもない。
なお、精神障害者手帳交付指定疾病である。

近年では、ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)の遺伝子がうつ病の原因の一端であると考えられている。このウイルスは高熱と共に突発疹を引き起こすウイルスで2歳までにほぼ100%の人が感染し、その後95%以上の確率で唾液や血液、脳細胞に潜伏感染する。潜伏中には、宿主が疲労時やストレスを感じた際に活性化し、唾液中に増加するとされている。活性化したウイルスが鼻と脳を隔てる嗅球という部分に達して感染し、
SITH-1(シスワン)という遺伝子によって生成されるたんぱく質が嗅球の細胞死を誘発させ、脳のストレス状態を増幅することにより、うつ病を発症させることが判明した。

うつ病患者84人と健常者82人を対象とした研究では、うつ病患者79.8%にSITH-1の活性化が強く影響していることが分かり、対し、健常者には24.4%しか確認されなかったことが分かっている。この結果によってヒトヘルペスウイルス6はうつ病と過労に深い関係があることが最近の研究によって明らかとなっている。


付記

……さて、重苦しい話は後にして、アニヲタWikiらしい話にしよう。
とはいっても、テーマ自体が重たく社会問題*9でもあるため、現時点ではうつ病を扱ったアニメや漫画は多くない。

しかし、最近では漫画家やその家族が発症するという背景もあり、うつ病をテーマにする漫画(または患者ブログの出版)が増えてきている。
有名なものとして、

『ソーウツ夫を救え!! ウツな私の熱血ライフ』
『入院しちゃったうつウーマン 』
『ツレがうつになりまして』

などが挙げられる。

いずれも作者本人や周辺人物の実体験を事細かに描いているのが特徴であり、読みやすい作風に仕上げられている。
患者やその周囲の人々にとっては、他人の実例を細かく知る手段になるため、機会があったら手に取ってみるといいだろう。
ただし、うつ病は症状・原因・治療方針など個人差が大きく、モデルケースとして見て疾患理解に活かそうとするのは止めた方が無難。
あくまで「こういう場合もあるのだな」と参考にして、実際の行動に反映する際にはよく考え、然るべき医療機関に相談しながらにしよう。


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最終更新:2023年08月10日 19:41

*1 ここに書かれていない症状が起こることもある。

*2 阪神・淡路大震災後の被災者や、地下鉄サリン事件の被害者等への追跡調査による。

*3 近年多数の芸能人が多忙とストレスからこれに掛かっている・いたと告白することも多くなってきている。

*4 患者の受診しやすさを考慮して、メンタルクリニックなど別の呼称を使用している場合も多い。

*5 心療内科は心身症(ストレスなどが原因の身体疾患)、内科は身体疾患全般を中心に扱っている。

*6 ただしこれはメランコリー型大うつ病や内因性うつ病の話であり、気分変調症(持続性抑うつ障害)や非定型うつ病には通常当て嵌まらない。

*7 うつ病でない人に比べて、記憶を司る海馬が萎縮し、ストレス反応に関わる偏桃体が発達している傾向にあるとされる。

*8 「うつ病とは違うもの」と誤解を招くためこの呼び方を問題視する人もいる。

*9 軽々しく扱ったら当事者達を傷付けかねない。