精神隷属器/Mindslaver(MtG)

登録日:2010/05/30(日) 08:13:51
更新日:2023/05/17 Wed 16:53:47
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精神隷属器はマジック・ザ・ギャザリングのミラディンに収録されたカードである。レアリティはレア。


《精神隷属器/Mindslaver》 (6)
伝説のアーティファクト
(4),(T),精神隷属器を生け贄に捧げる:プレイヤー1人を対象とし、そのプレイヤーの次のターンをあなたがコントロールする。(あなたはそのプレイヤーが見ることのできるすべてのカード*1を見て、そのプレイヤーのすべての決定を行う。

その名の通り「対戦相手を隷属させる」、つまり相手の次のターンの選択をすべて行えるようにするカード。

型破りなエキスパンションとして知られるミラディンを象徴するかのような、ひと目見てわかるぶっ飛んだカード。
他TCGプレイヤーに話すと興味を誘えるカード単品と言えば、こいつと《白金の天使*2《Ashnod's Coupon》*3なんて時代もあった。ぶっちゃけMTGやTCGの知識がないと書いてあることがよく分からないパワー9よりも書いてあることおかしく見えるもんね。……今はどうなんだろう?
そして《Ashnod's Coupon》をはじめとした銀枠の話がやたら有名なせいで「それ普通の環境じゃ使えないんでしょ?」という質問を呼ぶ。

残念なことに使えてしまうのである。
それどころかトーナメントシーンでの使用実績も十分ある上に、類似効果が禁止カードに指定されたこともある


本来は無意味あるいは利敵行為になるので絶対に行わないプレイング、つまり

  • 《稲妻》を自分に向けて打たせる。
  • 《時間のねじれ》を相手に向けて打たせる。
  • フェッチランドを起動してライブラリーの中を見て、土地が見つからなかったことにしてシャッフルさせる。
  • 相手の《極楽鳥》をこちらの《悪斬の天使》に向けて攻撃させて自爆させる。
  • 攻撃性能を強化する《踏み荒らし》を使って攻撃しない。
  • 《火と氷の剣》を意味のないクリーチャーに装備する。
  • 《電結の荒廃者》などのパーマネントを生け贄に捧げることで利益を得る効果を無意味に起動し、盤面を更地にする。
  • 《呪文滑り》のライフコストを無意味に支払い続けてライフを0~1にする。
  • 土地をとりあえずフルタップしてターンを終了し、返しのターンで何もできないようにする。
  • 自分の呪文を《マナ漏出》で打ち消す。

なんていう自爆ギミックは簡単に考えられる。これに加えて

  • クリーチャーを展開させて返しのターンに《審判の日》で全部吹っ飛ばす。
  • こちらが適当に唱えた呪文を《マナ漏出》させて無駄に消費させる。
  • 《破滅の刃》を大型の《悪斬の天使》ではなくその隣の《さまようもの》に打たせる。

などの「協力プレイ」のようなことまでできるなど、とにかく型破りなことができる。
そのため相手にそこそこの自滅させることは簡単だが「相手を徹底的に自滅させる」のがものすごく難しい
そもそもどんなTCGでも負けるためだけに自滅ギミックを入れることなんて普通考えないので、能動的に自爆できるデッキ自体が稀。必然的に特有のテクニックの知識と独特なプレイセンスが必要になってくる難しいカード。
当然同じデッキでも場と手札の状況なんて一戦ごとにでいくらでも変化するので、70%くらいまでならだれでもできるが、90%以上使いこなすのは難しい。

とはいえコントロールデッキやコンボデッキがこんなもんを通してしまったら戦線はまず確実にガタガタになるため、事実上のフィニッシャーとして機能する。
あれらのデッキは1枚1枚を無駄にしない緻密なプレイスキルが要求されるため、こんなもんを通していい加減なプレイをされてしまったらそれだけで敗色が濃厚になる。
温存しておきたい手札を浪費されてアドバンテージを失ったり、コンボギミックを途中まで中途半端に行うだけで、数ターン分の損失を与えることができるのだ。
そうでなくともたいてい「土地をフルタップしてターン終了」ということは絶対に行うので、《時間のねじれ》*4のような疑似的な追加ターンとして機能する。つまりこういったデッキを相手にしたときは空振りが少ない。

また効果が派手な分かなり重い。設置に6マナ、起動に4マナの合計10マナが必要。
この頃にもなるともうゲームの大勢が決している頃だし、後述するように弱点も多いのであくまで「効果は派手だけど相応に重い」ロマン砲の扱いになる……はずだった。
しかしミラディンのスタンダード当時はウルザトロンや《雲上の座》があったため、無色マナを大量に生み出すことがたやすい環境だったのだ。結果それらのデッキ、特にウルザトロンのフィニッシャーとして活躍した。
さらに使用する際に生け贄に捧げる、つまり追放ではないため使いまわすこともできる。環境によってはこの「無限《精神隷属器》」ギミックに素早くたどり着いて対戦相手にまともにゲームをさせずに投了に追い込むということをフィニッシュ手段にすることもある。


この「対戦相手をコントロールする」というカードは一見すると派手に見える。しかし実際に使ってみると、刺さらない相手は意外と多い。
というのも、ターンのコントロールはカードの能力やMTGのルールによって指定された行動をしなければならないから。

つまり勝手にライブラリーを見たり、無意味に手札を捨てたり、クリーチャーを無意味にタップするなどはできない。
クリーチャーを唱えさせても、それは対戦相手のコントロール下で出る。自分がもらえるわけではない。
そもそも唱えるための呪文がなければ、コントロールしても相手にさせることがまったくないなんてこともある。

ゆえに例えば対戦相手の手札がない場合や自滅させる手段がない場合は、自滅させるための手札がないのでせいぜい土地をフルタップして終わりになる。
相手がビートダウンデッキの場合、こちらにクリーチャーを受ける手段がなければ「自爆特攻させる」ということも難しい。

また、最近のMTGではMTGAのプレイテンポをスムーズにするために「プレイヤー1人を対象にしてメリット効果を与える」呪文(ドローやライフ回復、追加ターンなど)が「あなたは」というテキストになっていることが多くなっている。対戦相手に向けて打つなんてことが絶対にない*5のに、いちいち対象を選んでいたらプレイテンポが悪いからだ。
そのため現在では「ドローや追加ターンを奪う」という手法で相手を壊滅させることが、カードプール上難しいことも増えてきた*6

このように派手な効果に対して、実際には刺さる相手や状況が限定的。
親和などが相手の時は《電結の荒廃者》のように自分のパーマネントを生け贄に捧げる能力を持つカードがあれば自滅させられるが、《金属ガエル》などだけが並んでいる状態では旨味がない。
逆に《精神隷属器》を起動された次のターンに親和側がそういうカードを引くと対戦相手が悶絶して勝敗が決する。
このようにどれだけ刺さるかは本当に「状況次第」というわけで、最悪の場合は「10マナの《時間のねじれ》*7」という評価に落ちぶれることもある。
空振りした時、唱えても意味がない場合のリスクが非常に大きく、そこが本当に弱い。


《修繕》やウルザトロンなどで高速展開が可能な環境では、さっさと出して4マナ払って序盤の対戦相手を自滅に追い込むこともできる。
しかしそういうことができない環境だと、別のカードを素直に使ったほうが強いという結論になることも多い。
ミラディンの傷跡環境で再録されて話題を呼んだが、6マナにタイタン、10マナ以降にエルドラージと大型フィニッシュ呪文がこれでもかというほど存在していたため、採用されることがあったとしてもサイドボードからという評価に落ち着いている。
また、Zooやゴブリンが強かった時期のレガシーでも「そもそも間に合わない上に、対戦相手のコントロールを得てもあまり有利にならない」という弱点が浮き彫りになる。上述の「10マナの《時間のねじれ》」のパターンである。

そのため話は有名なものの、環境次第ではまったく見かけないカード。
一見すればぶっ壊れて強いことが一目でわかるド派手なカードほど、刺さる部分が少ない。MTGというのはそういうゲームで、だからこそ面白いのだ。


ちなみに友人とのカジュアル戦で使うことはまったく推奨しない
理由は考えればわかるだろう。使いまわすなんてもってのほか。


類似カード

「プレイヤーをコントロールする」ルールがこのカードのためだけに設立された、と語り草になるくらいユニークを極めた独特なカードだが、MtGの長い歴史の中で同効果を内蔵したカードが登場している。

Worst Fears / 最悪の恐怖 (7)(黒)
ソーサリー
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーの次のターンの間、あなたはそのプレイヤーをコントロールする。最悪の恐怖を追放する。(あなたはそのプレイヤーが見ることのできるすべてのカードを見て、そのプレイヤーのすべての決定を行う。)

黒のシングルシンボル8マナのソーサリー。テーロス・ブロックで登場。再利用できない、一括払いという制約を得たおかげか必要になるマナは8マナと軽くなった。
この時期はマナを伸ばすのが比較的簡単な環境だったので、打つのは意外と楽。
ただし上述したような弱点のほうが目立つことや、もっといいフィニッシャーが腐るほどいたことなどでさっぱり活躍しなかった。
ターンをコントロールしてもさっぱり刺さらない「ミッドレンジ」という新しい考え方のデッキが登場した時期だったこともある。
カジュアルに使ってもあんまりおもしろいカードではない。


Cruel Entertainment / 残酷な見世物 (6)(黒)
ソーサリー
プレイヤー1人と他のプレイヤー1人を対象とする。後者のプレイヤーの次のターン中、前者のプレイヤーは後者のプレイヤーをコントロールし、前者のプレイヤーの次のターン中、後者のプレイヤーは前者のプレイヤーをコントロールする。

多人数戦用の《最悪の恐怖》。イラストには悪趣味な人形劇とそれを演じる人物が描かれているが、さながらそのように「対戦相手2人のコントロールを入れ替えて殺し合わせる」ためのカード。
……なのだが「対象にされた対戦相手が委縮して無難以上に動かなくなってしまう」「対象にされた対戦相手同士が結託してこっちを狙ってくる」など、
本来想定されたであろう状況にさっぱり発展しないことの方が多い。なんか精神操作系の敵が操り切れなくて返り討ちにあう展開と全く同じだよねこれ
ちなみに自分をプレイヤーの1人に選ぶことで、1マナ軽いが自分を操作されるデメリットのある《最悪の恐怖》として使うことも可能。……当然だが相手はものすごくこちらを恨んで自滅させてくるだろう。
一見面白そうだが実際はあんまり盛り上がらないカードのひとつ。
なお、撃たれた2人が1ターンの間席を入れ替わる光景も見られるが、厳密には間違った処理なので注意。
プレイヤーAがプレイヤーBをコントロールしている間、Aは自分の意志で行動できる(逆もまた同様)ためである。


Sorin Markov / ソリン・マルコフ (3)(黒)(黒)(黒)
伝説のプレインズウォーカー — ソリン(Sorin)
[+2]:クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。ソリン・マルコフはそれに2点のダメージを与え、あなたは2点のライフを得る。
[-3]:対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーのライフの総量は10点になる。
[-7]:プレイヤー1人を対象とする。あなたはそのプレイヤーの次のターンの間、そのプレイヤーをコントロールする
4

ゼンディカーで登場したプレインズウォーカー。詳しい説明はリンク先参照。
プラス能力がかなり強力なのだが、これに加えて奥義に「対戦相手をコントロールする」というものがあるので暗に対処を迫る。
ただし6マナと重い上に即座にコントロールできるわけではない点、小マイナス能力が盤面に一切影響しない点、そして上記の「刺さるかどうかが状況次第」という弱点から、
対コントロールデッキのフィニッシャーとして扱われることがほとんどで、それも《墓所のタイタン》登場以降はサイドボードに1枚挿し程度で、そこまで使われたわけではなかった。
使いまわすというよりも、この奥義の存在で相手にプレッシャーをかけていくためのカードといった感じ。もちろん実際に起動されてしまうと大変。


約束された終末、エムラクール/Emrakul, the Promised End (13)
伝説のクリーチャー — エルドラージ(Eldrazi)
この呪文を唱えるためのコストは、あなたの墓地にあるカードに含まれるカード・タイプ1種類につき(1)少なくなる。
あなたがこの呪文を唱えたとき、対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーの次のターンの間、あなたはそのプレイヤーのコントロールを得る。そのターンに続いて、そのプレイヤーは追加の1ターンを得る。
飛行、トランプル、プロテクション(インスタント)
13/13

ストーリーにちなんで対戦相手をコントロールするというやりたい放題なやつ。しかも自身がファッティなので、上述の「クリーチャーの自爆特攻」も可能。
しかもコストもたやすく軽減できるので、8~9マナくらいで簡単に出てくる。《最悪の恐怖》の立つ瀬がない。それだけでなく「唱えたとき」に誘発するので、ガチャこと《霊気池の驚異》などで引いてもこのターンコントロールが誘発する。
その代わり対戦相手に追加ターンを与える、つまり「土地をフルタップして隙だらけにしてターンをもらう」という小技ができず体勢を立て直すための猶予を与えるようになった。
これでバランスを取ったつもりだったようだが、2017年初頭にスタンダードで禁止指定された。
これはスタンダードで約6年ぶりに禁止カードが出たことで話題を呼んだが、その時の説明文が

「彼女は物語中の世界の終末、全能の怪物であり、それはスタンダードにとってやりすぎたものでした。」

というもので、そのあまりにポエムな説明からストーリーに興味のないプレイヤーの失望を誘った。「禁止を出すのも許しがたいがちゃんと説明しろ!」というわけである。

ただ禁止にされた理由は厳密には「コントロールを得る」ではない。どう強かったかは、エムラクールの専用項目へ。
ここでは項目にちなんだ別の話題を。

このカードの登場とともに、ターンコントロール界隈では重要なルール変更が行われた。「コントロールしている対戦相手のサイドボードを見ることができない」というものだ。
これはサイドボードからカードを引っ張ってくる「願い」との兼ね合いで、《燃え立つ願い》のようにカードタイプを指定するカードをどう扱えばいいか、という際に問題にされたのだ。
これが紆余曲折を経て「サイドボードをいつでも見てもいい」ということになったのだが、これはルールではなくイベント規定による制定で、しかも願いを使用しないプレイヤーやそもそも存在しない環境でもできるのはおかしかった
この《約束された終末、エムラクール》(と新しい願いカード《久遠の闇からの誘引》)の登場とともにルールが改められ、「できません」と明言されたのだった。

とはいえほとんど問題になることはなかった。そもそもサイドボードを見られて何か問題のあるような状況なんて少ないし、それらのカードは重い=ゲーム終盤なので投了することも多いからだ。
しかしサイドボードを見るテクニックは、マニアックなレガシー勢の間ではそこそこ有名だった。それが後述の、非常にマニアックなカード。


Word of Command (黒)(黒)
インスタント
対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーの手札を見て、その中からカードを1枚選ぶ。Word of Commandが解決されるまで、あなたはそのプレイヤーをコントロールする。そのプレイヤーはそのカードを可能ならばプレイする。そうする間、そのプレイヤーはマナ能力を、自分がコントロールする土地のマナ能力で、それらが生み出すマナを自分がコントロールする土地の他のマナ能力を起動するためかそのカードをプレイするためにのみ起動できる。その選ばれたカードが呪文として唱えられる場合、あなたはその呪文が解決されている間、そのプレイヤーをコントロールする。

読者も初心者時代に「対戦相手にカードを無理やり使わせるオリカ」を考えたことがないだろうか。あれである。トレカ文化の最初期のカードなのでさながら「リチャード・ガーフィールドさんのかんがえたさいきょうのカード」である。
対戦相手の手札にあるカード1枚を、対戦相手にプレイさせるカード。対象やコストなどの決定は自分で操ることができる。つまり呪文を唱えて自滅させるためのカードで、限定的なターンコントロールである。
非常にややこしいカードであり、例えば「土地のマナ能力は起動できるがアーティファクトは無理」「フェッチランドはマナ能力ではないので起動できない」「一方で指定した呪文に大体コストやモードがある場合、それを自由に選択できる」などがすでにものすごくややこしい。
っていうか値段も高いし、クリーチャー主体のデッキには一切刺さらない。あくまで唱えさせるだけで、そのクリーチャーを奪えるわけではないからだ。普通に考えたら《トーラックへの賛歌》のほうが強い上に汎用性も高いのである。

しかしこのカードのミソは「たった2マナでコントロールできる」という点。序盤で上述のサイドボードのぞき見テクができる=投了を誘発しないことに加え、

  • 《意志の力》などを相手の最も重要な青のカードとともに切らせる(スタック上の《Word of Command》を対象にさせる)
  • そうでなくとも打ち消しを浪費させることもできる
  • 《否定の契約》などを唱えさせて自滅させる
  • バーンや黒系のデッキが相手の場合、序盤で展開されたクリーチャーに除去をあてることできわめて質のいい1:2交換が可能

など、ハマった時のリターンはトーラックよりもずっと大きい。レガシー環境ではマニアックなカードとして認知されていた。



余談


多人数戦の場合

多人数戦、特に統率者戦ではこの「相手のターンをコントロールすることで自滅させる」という戦術を取るデッキが存在する。
その場合、いちいち自分がコントロールしていては面倒だし使いこなせない場合がある。そもそもカジュアルに遊ぶものである。
そのため「そのコントロールした対戦相手に非常に大雑把な指示をだし、それに向けて行動させる」という使い方をするコミュニティもある。
「あいつ殺してフルタップでターン終了」とか「自害せよランサー」みたいな感じ。

いわばミッションを与えてそれを遂行させるというもので、相手がずるをしようとするのも後ろから見ておけば問題もない。さながら遊戯王の《魔法の操り人形》のイラストみたいになる。

なおこの手の友達とわいわいするにはアレなカードの類の宿命として、
人によってはゲーム内外問わず滅茶苦茶ヘイトを買うので、ヘイトコントロールは必須。

適用される範囲

この「対戦相手をコントロールする」という効果は、あくまでもMTGのルールにのっとった行動をしなければならない
よく質問が出るものとしてはこんなものがある。
  • 対戦相手に投了させることはできない(そもそもそれができるなら素直に「あなたはゲームに勝利する」って書く)。
  • 対戦相手を突然叫ばせたり脱衣させたりすることはできない(そもそもカードゲームの範疇の外になる。カードはルールに勝つという黄金律があるMTGも、本物の法律には勝てない)。
  • 対戦相手のサイドボードを見ることはできない(前述済み)。
  • マナ・バーンは起こらない(ミラディン版の実際のテキストに明記されている。その後マナ・バーンは廃止された)。
上の2つは少し考えればさすがにわかるだろう。

逆に「実はできてしまう」というものには、

  • 「この店で明日行われる大会を調べてくれ」と指示を出す

というのがある。これはMTGの総合ルールに
  • 100.6b プレイヤーは最寄りの大会を見つけるため、Magic Store & Event Locator http://www.wizards.com/Locator/ を使用することができる。
というのが規定されており、これは「MTGのルールに則っている行為」だからである。
困ったことにMTGには、「ルール適用度が高い大会では、インターネットに接続できる電子機器を使えない」というものがある(第三者との相談や「通し」の防止のため)。これを利用すると、
「ロケーターで大会を調べてくれ」→「ネットに接続したらジャッジキルが成立、そうでなければ相手がルールに従ってくれないのでジャッジキルが成立」
ということができてしまうってわけ。

当然だがこんなことでジャッジキルしようとしたら、「そんなくだらないことで呼ぶんじゃない!」とたいへん怒られてしまう。
そもそもルール適用度が高い大会は賞金が出るようなものばかりだから、こんなくだらないことをしたら悪い意味で有名になってしまう。MTGは結構その辺が厳格かつうるさい上に、ジャッジがルールより偉いゲームである。
これは昔、あるジャッジが「絶対に起こらないけどルールを厳格に適用したらこういうことも理論上できてしまうから、そういう時はジャッジがルールに反する裁定を下すよ」という文脈で紹介した面白事例のひとつである*8


Gleemax

実はこの効果、《精神隷属器》としてミラディンで登場するはるか以前からアイデアとしては存在していた。
もともとは《Gleemax》と呼ばれるカードにこの効果を搭載する予定だったが、結果的にミラディンに収録。
《Gleemax》には別の(これまた豪快な)能力が印刷された、という有名な小話がある。


マネデス

相手に何でもさせられる効果、黒枠で使ってもゲームを破壊し尽くす十二分な凶悪さだが、銀枠だとさらに悪質な応用がいろいろ考えられる。
例えば、アングルードの《Ashnod's Coupon》。

Ashnod's Coupon (0)
アーティファクト
(T),Ashnod's Couponを生け贄に捧げる:プレイヤー1人とドリンク1本を対象とする。そのプレイヤーは、そのドリンクをあなたのために取ってくる。あなたはそのドリンクに必要なあらゆるコストを支払う。

こいつをタップ状態で《寄付/Donate》*9して、次のターンで対象を自分にして起動させる。
すると、対戦相手は買いたくもないドリンクを買ってこなければならない。
誰が呼んだかマネーデストラクション、通称『マネデス』コンボである。ランデスが土地破壊なら、こちらは財布破壊。
後のアンヒンジドで登場した類似カード《Booster Tutor》(こちらはパックを買わせる)でも同じ戦法(?)がとれる。

ただし、ネタとしては面白いものの実用性は皆無。
というのも、他プレイヤーにコントロールされていても投了は即時無条件に行えるため。即投了してしまえば財布破壊は免れられる。


第三者にコントロールさせるカード


なんとか隷属機/Kindslaver (5)
伝説のアーティファクト
(5)(T),なんとか隷属機を生け贄に捧げる:プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーの次のターンの間、ゲーム外の人物1人はそのプレイヤーをコントロールする。そのターンの終了時まで、どちらのプレイヤーもその人物に助言してはならない

《精神隷属器》がついに銀枠に登場だ!Mind(精神)がKind(友人とか何かとか)にパロディされており、効果はなんと「ゲーム外の1人を巻き添えにしてその人にプレイさせる」というもの。
その人があなたに友好的なら?対戦相手の方に友好的なら?考えるだけでも夢が広がるね!
……使わなくても分かるだろうが、これとにかくめちゃくちゃ気を遣う。ルール上はあなたの妹さんとかお母さんも呼べるが、できればMTGを知っている人を選びたいもんね。
そして何より、呼ばれた時がマジで困る。どっちの味方をするべきなのか……銀枠で遊んでいる連中なんて気のいいやつばっかだからあまり気にしないんだうから、ド派手に動かしてくれてもいいわけで。
ちなみに開発のテストプレイ中の話として、

「別の仕事で忙しい同僚を呼んで使ったところ自滅されてしまい、なんでこんなことをするんだ!と聞いたら『次からは別の人呼んでくれ』というニュアンスで返された」

というなかなかアレな話が残っている。……アメリカは怖い国だ。
というわけで、言っておくとあんまりおもしろいカードではない。
MTG wikiでも問題を未然に防ぐために、知らないプレイヤー向けのテンプレート風の注意書きができている。そっちはある種のジョークなのだが、それだけ面倒なカードということだ。


それは時間をもっとも無意味にさらす兜だ。
《追記修正器/Aniwotaslaver》


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最終更新:2023年05月17日 16:53

*1 注:現在は総合ルールの変更により、「見ることのできるすべてのカード」にサイドボードが含まれなくなった。そのため願いを唱えることは可能だが、サイドボードから選ぶの所は不発するので、マナと願いが消費されて何もしないという事になる。旧ルールでは願いを唱えた場合サイドボードの閲覧と、そこから願いで1枚カードを手札に加える事が可能だった。さらに旧ルールではカードタイプを指定しない《死せる願い/Death Wish》は使用可能だった、ただしサイドボードから選ぶことは出来ず、無作為に1枚引く。それ以外の願いは現行ルール同様に唱えられるけど何も出来ないという扱い。

*2 あらゆる敗北を踏み倒すカード。詳しくは当該項目を参照。

*3 ジュースを買いに行かせるジョークカード。無限パシリやマネデスというド派手な話題を持つ。後述の「マネデス」における《精神隷属器》の相棒

*4 追加ターンを得る5マナの呪文。

*5 特例はいくらでも挙げられるが、それが圧倒的少数派の「特例」だから省くという話である。

*6 テーロス期の《最悪の恐怖》と《スフィンクスの啓示》などで問題になった。実際に通ったとしてもこういう強力な呪文を奪えないから全然旨味がないという評価になるのだ。

*7 追加ターンといえば強そうに見えるが、適切な状況でなければ「5マナの《探検》(2マナで1ドロー、追加で土地セット)」という評価に落ちる。つまり「最悪の場合、10マナ使って2マナの呪文を唱えているような状況になってしまう」というわけ。

*8 ジャッジキルというと10年ほど前は遊戯王の《マインドクラッシュ》やTODの話が有名だったが、その遊戯王の誇張された話が生易しいほどにMTGでジャッジキルが横行した時期があった。ルールを徹底的に適用しようということで「相手の攻撃宣言不備を見つけたらジャッジを呼んでゲームロス」などが横行したのだ。結果カードゲームというより単なる粗探しになってしまい、この反省を踏まえ以降MTGは「ルールを厳格に適用してゲーム性を損なうことは許さない」という姿勢になったのだが、これをジャッジ個人が打ち出したものである。実際ルールに従って問題が起こる事例には速やかに対処しており、「MTGはカード名の記憶ゲームではない」という文章はこの時に出されたものだ。

*9 その名の通り送りつけ札