蒼穹のファフナー

登録日:2009/12/26 Sat 00:00:11
更新日:2024/03/08 Fri 11:36:59
所要時間:約 5 分で読めます





「俺達は、どこへ行くんだ?」


「楽園だよ」


正式名称は『蒼穹のファフナー Dead Aggressor』
2004年7月~12月に放送されたアニメ。全26話。
制作会社はXEBEC。監督は羽原信義。脚本は前半が山野辺一記、後半が冲方丁。
キャラクターデザインは平井久司。メカニックデザインは鷲尾直広。

前日談にTVスペシャル『蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT』。
後日談に劇場版『蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』がある。
また、『HEAVEN AND EARTH』の続編としてTVアニメ『蒼穹のファフナー EXODUS』、その更に続編OVAにして完結編『蒼穹のファフナー THE BEYOND』が展開されている。



本項では、『蒼穹のファフナー Dead Aggressor』及び上の4作を除く直接的な関連作品についてのみ解説する。


【ストーリー】
太平洋に浮かぶ孤島、竜宮島(たつみやじま)。この島は平和な楽園だった。
ある夏の日、好奇心に駆られた少年達はラジオから流れ出す未知なる者の声を聞く。
「あなたはそこにいますか……?」
少年たちは、その言葉に答えた。

それから数年後、竜宮島に同じ声が響く。
それこそ正しく未知の生命体“フェストゥム”による侵攻の合図だった。
仮初めの平和は破られ、竜宮島と少年たちは、フェストゥムとの戦いに身を投じていく。




【登場人物】
竜宮島の子供たち(一騎世代)については、それぞれの項目を参照。

真壁一騎
CV:石井真/豊口めぐみ(幼少時代)

皆城総士
CV:喜安浩平





近藤剣司
CV:白石稔

小楯衛
CV:斎賀みつき


真壁史彦
CV.田中正彦
一騎の父。元軍人。売れない陶器屋を営んでいる。アルヴィス副司令だったが、1話でアルヴィス司令の皆城公蔵が戦死したため、代行を経て、正式に司令となる。
妻の影響で、フェストゥムに対しては「共存」寄りの考えを持つ。
陶芸は嫁の見様見真似。作品はどれも前衛的。本作では明確には語られないが笑えない理由があったりする。


遠見千鶴
CV:篠原恵美
真矢の母。42歳。遺伝子関連の研究者。同化現象を人類の新たな可能性ととらえている。
立派な研究者であり、島の子供たちを大切に思っている。
乙姫の母親のような存在である。
二人の子持ち(一人は成人している)とは思えないほど、若々しい容姿の持ち主。作品が進むごとにどんどん若くなっていく。


溝口恭介
CV.土師孝也
8話から登場したアルヴィスの特殊工作員。真壁夫妻とは親友にして戦友だった。
普段は真矢にセクハラばかりするだらしない酒浸りのおっさん。実際は凄腕の工作員であり、有事には頼れるイイ男。酒浸りなのは演技なので中盤以降はしなくなる。
全編を通じて一騎達をサポートし、彼らの成長を見届ける。
うぶちんに「コイツどうやっても死なねぇ」と言わしめた、作中一の死亡フラグクラッシャー


日野道生(ひのみちお)
CV.堀秀行
詳細は個別項目にて。


カノン・メンフィス
CV.小林沙苗
詳細は個別項目にて。


皆城乙姫(みなしろつばき)
CV:仲西環
総士の妹。詳細は個別項目にて(ネタバレが多数ある項目につき、未見の方は注意)


真壁紅音
CV.豊口めぐみ
史彦の妻で、一騎の母。
元は日本軍のエースパイロット。
陶芸を通じて、フェストゥムを知ろうとし、最初に理解した人物である。
物語開始以前に、史彦をかばってフェストゥムに同化されている。
同化される際に、フェストゥムの祝福を受け入れたことが大きな可能性となる。

劇中では、紅音の姿をした存在が登場する。
(ネタバレが多数ある項目につき、未見の方は注意)


イドゥン
CV.真殿光昭
マスター型フェストゥム。詳しくは個別項目参照。

【用語】
独自用語が非常に多いのも本作の特徴。
続編ではその辺りかなり抑え気味になっているのだが死に設定になっている訳ではなくあえて登場人物が口にしないだけだと思われる。

  • 竜宮島(たつみやじま)
主人公達が暮らす孤島。
昭和の雰囲気を強く残す集落が印象的で、商店や病院、喫茶店はあるがいずれも規模としては小さい。
また、向島(むこうじま)、剛瑠島(たけるじま)、慶樹島(けいじゅとう)という無人の離島も存在している。竜宮島から向島までは近いのでその気になれば泳いでも行ける。

その実態は「超大型移動要塞アルヴィス(Alvis)の一部」であり、島民の居住域……つまり竜宮島として子供達が認識している部分はアルヴィスの海面から出ている部分に過ぎない。*1
とある理由から人類、フェストゥムの双方から逃げ続けるためこのような形態を採っている。
メガゾーン23などを彷彿とさせる設定だがこちらでは大人は全員竜宮島の正体を知っており、子供達もある一時期を過ぎると島の正体を教えてもらって島の防衛や管理といった仕事に就くのが本来の風習となっている。*2

モデルが広島県の尾道市や福山市なのは有名。ファンによる聖地巡礼やそちらでのイベントも度々行われているそうな。

  • アルヴィス(Alvis)
竜宮島の正体である超大型移動要塞の名称であり、同時にそこに勤めるスタッフの総称でもある。
前述の通り大人達の多くはアルヴィスの職員でもあり、平時は学校の先生や病院のお医者さんなど「普通」の仕事に就く。
制服のスカートが短いことに定評がある。
食料製造プラントが内部に存在しており自給自足が可能だが、竜宮島に漁港が存在する事からも明らかな通り漁業も一応行われている。

  • 偽装鏡面
簡単に言えば島全体を覆い隠すレベルの光学迷彩。
音波や熱源すら遮断する超高性能なもので、フェストゥムですら探知するのは容易ではない。
更に、展開中は島の中から外の光景を見る事ができない(普通に海が広がっているようにしか見えない。太陽の位置などは写し出された偽物である)ので、子供達に「外の世界」を見せない工夫にもなっていた。
ぶっちゃけこれさえ張っていれば万全なのではと思うかもしれないが、本編1話では遂にフェストゥムに島の位置を特定されてしまう。
その後も偽装鏡面を張りつつ島を移動させて身を隠そうとするが様々な理由で解除せざるを得なくなりそこをフェストゥムに突かれるというパターンがお約束に。
また、後述するヴェルシールドとは同時発動できないので、フェストゥムが度々襲ってくる後半では偽装鏡面を発動していないことの方が多い。

  • ヴェルシールド
フェストゥムの攻撃や侵入を防ぐための重力波バリア。波長をランダムで変えることで波長を共鳴させてのすり抜けに対処している。
この手のバリアのお約束としてフェストゥム相手には時間稼ぎにしかならない。第一ヴェルシールドさんは噛ませ。
しかしながら本来のバリア能力としては鉄壁に近いらしく、これに関しては相手が悪いとしか言いようがない。
続編では性能や張れる枚数が向上しており、そこそこ頼れるヴェルシールドさんにはなった。第一ヴェルシールドさんは相変わらずすぐに破られるが

  • ソロモン
竜宮島アルヴィス内部のキールブロックに存在する液体型超高性能コンピューター「ウルドの泉」をマスターサーバーとしてフェストゥムの探知や解析を行うシステム。
序盤は「ソロモンの預言」と何やら仰々しい言い回しをしていたが後半からは「ソロモンに反応」とストレートなものにされている。
本来レーダーに映らないフェストゥムの接近を正確に探知できる地味に超重要なシステムだが、後半からはこれをすり抜ける個体も出てくる。
ウルドの泉については設定上は続編以降も存在し重要な役割を担うのだが、単語としてはほぼ出てこない。ちなみに泳いでも大丈夫らしい。

  • ブリュンヒルデ・システム/ワルキューレの岩戸
島の防衛機構を統括するシステムと、その統括を行う「コア」を島と一体化させるために造られた岩戸(人工子宮)。
竜宮島の中枢であり、実質的にコアが全ての制御を一元管理している。
続編では「システム」「岩戸」とほぼ完全に省略された言い回しで統一されている。固有名詞が多すぎて煩わしくなるからだろうか。

  • 新国連/人類軍
いわゆる「外の世界」の人類が属する組織。
本作では実質国家という概念は消えており(と言っても「日本」「アイルランド」などかつての国名は残っているが)、人類は新国連の旗の元で一丸となってフェストゥムに対抗している。
しかしある理由で竜宮島だけは新国連と袂を分っており、敵ではないが味方でもないという複雑な関係。
詳しくは人類軍(蒼穹のファフナー)を参照のこと。

  • フェストゥム
遠い宇宙から飛来した珪素生命体。人類の思考を読む「読心」能力を持つため人類側の戦術や兵器が通用しない。
本作における主要な「敵」ではあるが、竜宮島では彼らを「理解」しようとする動きも同時に見られる。
フェストゥム(蒼穹のファフナー)を参照のこと。

  • ファフナー
フェストゥムに対抗するために開発された人型巨大ロボット。「読心」を無効化或いは弱体化して戦うことができる人類にとって数少ない希望でもある。
だが読心を完全に抑えようとすればするほど、搭乗するパイロットは別の問題に晒されることになる。
また、主人公達が搭乗する「ノートゥングモデル」は本編開始時点における最高性能のファフナーだがそれでもフェストゥムには常に苦戦を強いられるぐらいには「詰んだ」パワーバランスだったりする。

【評価】
食わず嫌いが多い作品である。

キャデザの平井久司氏が『機動戦士ガンダムSEED』のデザインも担当しており、SEEDの熱烈なアンチがファフナーをも批判することがあった。

「中学生パイロット」
「敵の力を利用したロボット」
「拠点に隠された何かを狙って襲いかかる敵」(実際はそうでもないのだが)
と設定がエヴァンゲリオンに似ている、と当時のロボットファンに批判され、前述のガンダムSEEDの話と合わさって「エヴァンダム」と蔑称をつけられた。
もちろん、ファフナーはオリジナルのアニメであり、ストーリーは独創的なものである。そもそも「エヴァっぽい」という評というか先入観自体当時のロボットアニメではかなり多く見られたものではある。

また、主要人物の中の人として(当時)マイナーな声優を多く起用したため、演技がおぼつかないという批判もある。


16話以降、脚本が山野辺一記氏から冲方丁氏に交代(正確には、12~15話の脚本は山野辺・冲方両氏が担当している)
冲方脚本の人気は高く、後半から面白くなる作品という声も多い。
一方で(後半に比べつまらないと称されやすい)前半を見ないと後半や次回作以降の展開にどっぷりハマれないというジレンマもあったり。
未見の人は是非とも、16話以降まで見てから良し悪しを判断することを推奨する。

独特な世界観やキャラクターの相関を有するが序盤はその辺りの描写が不足気味であり、後半は専門用語が多いいつもの冲方スタイルため分かりにくいという意見もある。
これについては前日譚「蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT」で補完されているので、過酷なストーリーだが先にそちらを観てから本編を見てもいいだろう。
或いは後述するシリウス版コミックスで序盤を把握してから16話を見るという手も。

一応ロボットアニメなのでロボの戦闘シーンもあるが割とアッサリめ。
蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』以降はオレンジのCGモデルによる大迫力の戦闘が評判になっているが、そっちから先に観ると本作の戦闘が物足りなく感じてしまうかもしれない。


【メディア展開】
  • 小説
アニメ本編16話以降の脚本を担当した、冲方丁氏の執筆。
ストーリーはオリジナルであり、アニメと異なるものになっている。
設定も本編と繋がらないものが多いが、続編ではこの小説版を意識したと思われる展開や設定がいくつか散見される。
挿絵の翔子は一見の価値あり。

  • コミックス
電撃コミック版と月刊少年シリウス版(後に)の2つが刊行されている。

前者は本放送当時のものなので途中からは実質独自の展開となりぶっちゃけ未完に近い。

後者は「蒼穹のファフナー EXODUS」放送期に描かれたものであり、本作の放送終了~EXODUSまでに行われた設定やキャラクターの相関関係の整理・深掘り*3、小説・ドラマCD・舞台などのメディアミックスで補完された要素の統合などを行って改めて「蒼穹のファフナー Dead Aggressor(つまり本作)」を描いたものとなっている。
残念ながらこちらもアニメで言う15話の時点までしか連載されなかった*4のだが、この15話までというのがちょうどアニメでの描写不足などが問題視されていた部分であり、ここから16話にシームレスに繋がるので「蒼穹のファフナー」を理解する上で極めて良質なものになっているとファンからの評価は非常に高い。

  • webラジオ
ニコニコ生放送にて月に一度、webラジオを配信している。
パーソナリティは、一騎役の石井真と総士役の喜安浩平。
実態は、まりか無双。


  • ゲーム
『蒼穹のファフナー(PSP版)』
フルボイスのシューティングゲーム。劣化ACEとも呼ばれるが、操作性は悪くない。
オリジナル展開で、よほどの事がない限り全員生存するため、本編ではいなくなったキャラを救済することが可能。

スーパーロボット大戦UX
劇場版と同時に参戦。
同じく「対話」がテーマの『劇場版ガンダム00』『劇場版マクロスF』、キャラデザ繋がりの『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』とのクロスオーバーが展開される。
クロスオーバー故に設定は多少変更されてはいるが、原作の内容をしっかり再現しており、各所で「誰かがいなくなった」時に流れるED曲「Separation[Pf]」やDVEがプレイヤーの涙腺を刺激させる。
ここでもいなくなったキャラを救済可能であり、その生存方法が色々とぶっ飛んでる事で話題になった。
特に翔子の生還の過程については、誰一人として想像不可能であろう驚愕の展開が待ち構えており、全てのプレイヤーの度肝を抜く事となった。




『スーパーロボット大戦K』
楽しい宴会でしたね…。
霧が深い。そんなものはなかった。








「あなたはそこにいますか…?」

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最終更新:2024年03月08日 11:36

*1 と言っても本作では島とアルヴィスのサイズ感を確認する術がない。アルヴィスの全貌が見えるのは「EXODUS」18話以降である

*2 実際はフェストゥムが襲来したので子供達も全員島の正体を知ることになり、以後は島の正体を子供達に隠さなくなったものと思われる

*3 本作製作時点で存在していたが裏設定レベルで表に出てこなかったものや、細かい設定のすり合わせなど

*4 打ち切りではなく完結という形を取っている。途中雑誌の移籍もあり6年の歳月を要した