機動戦士ガンダムF91

登録日:2010/04/03 Sat 05:06:51
更新日:2024/04/08 Mon 19:53:37
所要時間:約 7 分で読めます







人は、いつ戦争を忘れることができるのか?

GUNDAM F91(フォーミュラナインティワン)




〈概要〉

1991年3月に劇場公開された ガンダムシリーズ の一つ。タイトルの読みは予告編段階では英語だったが、現在は「エフきゅうじゅういち」で通されている。
同時上映は「武者・騎士・コマンド SDガンダム緊急出撃」。

元々はテレビアニメ用として製作されていたが、途中で劇場版に変更されたため宇宙戦等大幅にシーンがカットされている。
主題歌は「ETERNAL WIND〜ほほえみは光る風の中〜」。Zガンダムで後半OPを担当した森口博子が務めた。
イメージソングは「君を見つめて -The time I'm seeing you-」。元々はこちらが主題歌の予定だったが、富野由悠季が逆に使用したという逸話がある。
ちなみに森口博子は「ETERNAL WIND」で紅白歌合戦に出場している。

劇中では前作の「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」より30年が経過しており、MSの小型化やビームシールド、ビームフラッグなどの新技術が多数登場している。
ただし、0096年のUCから本作を視聴した人からは、UCが後年の作品である都合上(時代設定とは逆に映像面は当然UCが進化している)、技術的な進化を感じ取りにくいという人も。

本作において特筆すべきは、ガンダム映像作品では初めてジオンが出てこないという点である。
時代背景設定からもわかるよう、登場人物もメカも世代交代がほぼ完全に行われており、過去作の面影はせいぜいロートル化したジェガンや戦争博物館に展示されているザクドムゲルググ程度である。
これは本作に与えられたテーマが「新しい時代と人物による新しいガンダム」であったためで、そのコンセプトは後世のアナザーガンダム作品群を先取りしたものといえるだろう。
なお、「古いガンダム」の新作であるOVA「機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY」も本作とほぼ同時展開されていることから、サンライズやバンダイとしても「新しいガンダム」が受け入れられるかどうか不安があったと見られる。

元々テレビシリーズとして企画されていたこともあって、作中では描ききれなかった設定やストーリーも多く、実際にテレビシリーズで続きを描くつもりだったようだが様々な要因が重なり企画は頓挫。
それでも90年代当時は富野監督がその続きを描く気があったようだが、その後いろいろあった結果、監督が鬱を患ってしまい、
しばらくの間は監督業から外れていたため、2021年現在までF91の続きは描かれていない。
この事には富野監督も忸怩たる思いを抱えていたようで、後々「物語として完成させられなかった事が非常に悔やまれる」と語り、
シーブック役の辻谷氏やセシリー役の冬馬氏に「売れるチャンスを自分のせいで不意にしてしまった」と謝罪している。

ただし、映像作品ではなく漫画作品であるが、事実上の続編として「機動戦士クロスボーン・ガンダム」シリーズがある。
「F91」から10年後の宇宙世紀133年を舞台とした、原作を富野監督自らが手掛けた作品で、登場人物やモビルスーツのいくつかも続投している。
こちらは「機動戦士クロスボーン・ガンダム外伝」以降は富野監督はノータッチで、第一作で作画を担当した長谷川裕一氏がシナリオ等も担当しているが、
それでも平成から令和にかけて続編が書かれる人気シリーズとなっている。


〈あらすじ〉

シャアの反乱から30年が過ぎ、ジオン公国の名も忘れ去られようとしているU.C.0123年。
多くの人々は地球を離れコロニーへ移り住んでいた。地球連邦政府も大規模な争乱もなく弱体化・腐敗して行った。
そんな中、企業集団ブッホコンツェルンの主導者マイッツァー・ロナは、『人々の上に立つ者は、人々の模範となるようなより良き精神を持つ者であるべき』という「コスモ貴族主義」を唱え、私設軍隊「クロスボーン・バンガード」を作り上げる。

そして理想実現のため、ラグランジュⅠのコロニー「フロンティアⅣ」に強襲をかけるのだった。



〈主な登場人物〉

本作の主人公で、工業科に通う高校生。17歳。
普通を絵に描いたようないいヤツで家族思い。名前からして見本みたいな好青年。
母親がF91の開発をしていたことから、なりゆきでパイロットをすることになり、徐々にニュータイプとして覚醒していき、バグがフロンティア・サイドを襲来する終盤では感応波により、セシリーとの無線会話まで行うようになる。
コミックボンボンの漫画版ではウッソくんもビックリな悪魔の様なド外道キャラになっている。


本作のヒロインでシーブックと同じ高校に通う。17歳。
学園祭の美人コンテストで優勝するほどの金髪美人。
実はロナ家直系の人物であり、次代のアイドルを担う者としてドレルに迎えに上がられたあとは、ベラ・ロナとして実家に帰還することになった。
ニュータイプとしての才能にも秀でており、乗ってから日が浅いビギナ・ギナですぐにモビルスーツ部隊の編隊を組めたことから、ザビーネにニュータイプの存在を確信させることとなった。


  • リィズ・アノー
シーブックの妹。10才。
あやとりでF91の回線のヒントを伝えた。
家庭を蔑ろにして仕事に没頭する母に複雑な感情を抱いている。
両親の呼び方は「お父ちゃん」「お母ちゃん」。
小学生とは思えないほどしっかりしているいい子。
(^ω^)リィズちゃんペロペロ←という風に美少女マニアのアイドルになる事を嫌がられシーブックと同じような顔になった。…それでも可愛い為余り意味を為していないが。


  • レズリー・アノー
シーブックの父親。47歳。
元々は金属工学の権威だったが、夫婦揃って家を留守にしがちな職業だったため「子どもたちと一緒にいたい」
との理由で科学者の仕事を辞め、コロニー外壁の溶接工になったなど、シーブックとリィズ双方にとって良い父親であった。
しかし、最後はシーブックを救うために体を張り、帰らぬ人となった。
漫画版では最初から死んでいるようで、全然登場しない。


  • モニカ・アノー
シーブックの母親。44歳。
かなりの仕事人間らしく、子供達を夫に任せてサナリィでF91のバイオ・コンピュータ開発に没頭していた。
とはいえ人格的に歪んでいる訳ではなく、シーブックとリィズに再会した際には謝罪している。
バイク走行中によそ見をしてコケるドジっ娘
開発者であったことからF91のシステムには詳しく、F91のサイコミュとレーダーの座標を重ね、戦闘後に行方不明になったセシリーを捜索に尽力した。


だってよ…アーサーなんだぜ?


  • ジョージ・アズマ
普通科の生徒でシーブックの友人。
何でもこなせる万能キャラ。


  • サム・エルグ
シーブックの友人。
工学科で、スペースボートの操舵手を担当した。
割と好戦的な性格で、初めは彼がF91に乗ろうとした。
ちなみに、レズリー父さんはジョージのことを「アズマ君」と呼び、サムに対しては「サム君」と呼んでいる事から、アノー家とは親しかった様だ。


  • ドワイト・カムリ
シーブックの通う学校の生徒会長で、シーブックから見ると先輩に当たる。
宇宙軍准将の息子だがヘタレ。
避難時には役立たずだったが徐々にリーダーシップを発揮し、スペースボートの長となる。セシリーのことが好きだった模様。
演じるのは後々ゼクス・マーキスギム・ギンガナムを演じる事になる子安武人


  • ドロシー・ムーア
普通科の生徒。
父親は政府高官で、結構イイ所のお嬢様おっぱい
派手な姿をしているが、保護した子供達の面倒を一手に引き受ける良い娘。
シーブックに恋心を抱いてたらしい。
演じた折笠愛女史は「新機動戦記ガンダムW」にて同名のキャラとデキる少年の役を演じる。


  • レアリー・エドベリ
練習艦「スペースアーク」の艦長代行。22歳。堕落しきった連邦軍の中で珍しい良い人。
F91にガンダムと命名した名付け親である。


  • コズモ・エーゲス
退役軍人で、レジスタンスを率いてCVに抵抗している。58歳。
誰に対しても高圧的で、所構わず威張り散らす嫌なオヤジ。シーブック達を無理矢理戦わせようとする。
バズーカを持って、フロンティアⅠに実験的に放たれたバグを迎撃するが、バグの回転アタックに巻き込まれ殉死した。
展開当時の漫画版ではスペースアークの艦長。幸い漫画版では割とマトモな好人物であり、シーブックのボケにツッコミを入れるコミカルなシーンが多い。


パイロット候補生。ヘビーガンを使う。22歳。
割と皮肉屋だが、実力を発揮し始めたシーブックに言葉をかけるなどいいヤツだった。フロンティアⅠ内に放たれた無数のバグに対しヘビーガンで抵抗するも捌き切れず戦死。


  • ロイ・ユング
フロンティアⅣにあるロイ戦争博物館の館長。武器マニア。60歳。
連邦軍の元軍人であり、フロンティアⅣ襲撃時は学芸員のローバーとクリス(CV法術師ニュー)を引き連れてガンタンクR-44を駆り議事堂奪還に向かうが、
周辺警戒していたデナン・ゲーに砲塔を斬られ、その際の爆発に巻き込まれ死亡する。
クリスは生存。ロイ本人も小説版では何とか生き残るがローバーはどちらでも死ぬ

なおガンタンクR-44のRは自分の名前の頭文字から、44はその年齢の時に入手したことから命名された名前であり、この通り自己顕示欲がめっちゃ強い。
漫画作品『機動戦士ガンダム デイアフタートゥモロー ―カイ・シデンのメモリーより―』では
ズム・シティで行われた一年戦争展にモビルスーツ関連の展示物、特にジオン系の機体を大量に貸し出している。
その他の展示物が「ガンキャノンのコクピットがコアブロックシステムではなくジェガンと同じ」等という、彼に言わせれば子供騙しに等しいお粗末な内容だった為、自ら兵器関連のオブザーバーを買って出ていた。
ちなみにロイ自身は地球にあるハヤトのMS博物館も訪れており、こちらはその辺もしっかりしていたとか。


  • シオ・フェアチャイルド
ナディアの再婚相手でセシリーの育ての親。40歳。
フロンティアⅣでパン屋を営んでいたがC.V.と内通しており、セシリーをロナ家に引き渡した。
後にナディアと共にロナ家を訪問するが暗殺されてしまう。
若い頃は小説家を目指していた。セシリーの趣味がパン作りなのは彼の影響である。
ナディアと付き合い、セシリーと暮らしていた当初は普通の庶民の娘として真っ当に育てようと考えており、最初から内通していたわけではない。


  • ナディア・ロナ
セシリーの母親でマイッツァーの娘。
カロッゾと結婚しセシリーを授かるも、マイッツァーやカロッゾの提唱する貴族主義についていけず、幼いセシリーを連れ、シオと駆け落ちする。
言及はほとんどないが実兄ハウゼリーとも仲が悪くなっていたであろうことは想像に難くない。
しかしその後、C.V.のフロンティアⅣ襲撃事件が起こる前にシオの元からも離れ、本編ではフロンティアIのレジスタンスに参加していた。
ロナ家に訪問した際に共にいたシオが暗殺され、自らは拘束されてしまう。その後の行方は不明。


CV軍の偵察小隊隊長。16歳で見習い士官なのに最新鋭MS「ダギ・イルス」を駆るエリートパイロット。
しかしザビーネとの確執により連邦軍に寝返ってしまう。
子供たちに慕われるなど私人としては穏やかで善良な女性なのだが、戦場にも感情を持ち込んでしまう悪癖がある。


カロッゾの実子の長男だがセシリーとの血縁の無い義理の兄(カロッゾの亡くなった先妻との子)。


「黒の部隊」隊長。24歳。
マイッツァーの思想に共感する騎士道精神の持ち主で、マイッツァーの意思に反して暴走しバグで虐殺を始めたカロッゾを不審に思い、ジレを粛正し彼の指揮していたザムス・ガルの動きを封じ、戦況を見守った。
また、カロッゾのラフレシアが倒されたものの、戦況的には自軍が勝利していた為、半壊したF91ともはや戦う力のないスペース・アークを見逃し帰投した。
小説版では、当時16歳のアンナマリーとセックスしている描写などキャラクターが深掘りされているが、他のキャラクター同様に漫画版では「ベラ様!こいつをぶっとばしてください!!」とチンピラ然な別人となっている。
漫画機動戦士クロスボーン・ガンダムにも登場。


  • ジレ・クリューガー
鉄仮面の片腕ともいえる腹心の部下。39歳。
バグやラフレシアの管理もしており、フロンティアⅠにバグを解き放った張本人。
貴族主義に反した行為と判断したザビーネに粛清される。
「SF91」では連邦軍と裏取引を行っており、ダークタイガー隊をダシにしていた。


  • マイッツァー・ロナ
ロナ家の家長。セシリーの祖父でナディアの父。69歳。
コスモ貴族主義の提唱者であり、理想の宇宙国家コスモ・バビロニア建設に燃える。
劇中は高潔で孫に優しく振舞う老人だが、家に招いた入り婿のカロッゾの暴走を止めることは出来なかった。
「過激な部下を暴走を抑え込めない敵対組織の最高指揮官」という役回りは、ギレン・ザビに対するデギン・ソド・ザビや、バスク・オムを制御出来なかったジャミトフに通じる所もあると言えよう。というかドン・サウザー以来富野作品じゃおなじみのタイプ。
また、カロッゾの「人類の10分の9を抹殺しろと命令されれば〜」というセリフや、拉致されたセシリーが「他にしようがないって思えたから!」とC.V.のアイドルとなりまた戦場へ赴いたように、その高潔さは「周囲を『そうせざるをえない』状況に追い込む」卑怯さや老獪さの裏返しであることが察せられる。
本編後の動向は不明。

小説版では大幅にクローズアップされ、増えすぎた人口を危惧していたこと、ブッホ・コンツェルンの財力と政治力を使い地球連邦政府に人口制限政策案を幾度も提出するも受け入れられなかったこと、実の息子であり本来の後継者と見込んでいた長男のハウゼリーをテロで暗殺されたことが語られるが、やはり実際に行動には移さないという温和な一面が覗ける。

ドレルとセシリーの実の父。通称「鉄仮面」。CV最高指揮官。推定45歳。
入り婿だったがセシリーの母親ナディアに娘諸共逃げられ、あまりの不甲斐なさで自ら仮面を被る。
先述の通り本来のロナ家及びC.Vの後継指導者は義兄であるハウゼリーであり彼が亡くなった事で
彼の代わりとして不得手な指導者の責務を務めようと躍起になっていたのも暴走の一因である。
最後には自分を強化人間として改造し人間として歪んでしまった。
バグとラフレシアを使い、人類の10分の9を抹殺しようとする。
生身で宇宙に飛び出す、コクピットを素手で引きちぎる、銃弾を受けても無傷等、もはや人間をやめている。
死に際に放った「化け物かっ!」という台詞は皮肉以外の何者でもないだろう。


  • ハウゼリー・ロナ
マイッツァー・ロナの長男である男性。故人。
地球連邦政府で議員を勤めており、「一年以内に退去しない地球の不法移住者には衛星軌道上からビーム攻撃をすべし」と後のカイラスギリーのようなものから、「過剰な延命治療をするものは厳罰に処すべし」「安楽死を推奨すべし」といくつもの法案を連邦議会に提出していた。しかし、これは却下されてしまった。
ハウゼリーはプロジェクト・チームを結成し、この時代、地球にいる不法居住者の実態は連邦政府の官僚、閣僚であると各所に宣伝し回った切れ者であり、前述の議会への提案も過激ながらも宇宙世紀120年代の問題を直視し、解決案をシンプルに提案しただけのことであった。
ハウゼリーの登場シーンで延命治療で無駄に寿命を延ばした老人いう問題が提起されたが、小説・漫画・アニメ『機動戦士ガンダムNT』で冷凍睡眠しているルオ・ウーミンはこの設定と結ぶ付くと思われる。
漫画「機動戦士ガンダムF90FF」では「世界中の闇の組織を糾合してギレン・ザビの理想を復活させる」という思想やクロボンのカラス先生やVのドゥガチといったガイキチヤバい人脈の後付け設定が追加された。


〈主な登場MS・MA〉



機動戦士ガンダムF91 プリクエル

F91の30周年を記念して連載が開始された漫画作品。作者はおおのじゅんじ。
小説版(後述)の要素を取り込みつつ、オリジナルキャラクターも交えてF91本編が始まる前の話を描くタイトル通りの前日譚(プリクエル)である。
フロンティアサイドの話をシーブック、クロスボーン・バンガードの話をザビーネ、そしてサナリィの話をモニカの視点から描いており、時系列も割とまちまち。
クロスボーン・ガンダムのような派手なアクションこそないものの、異様に似ている安彦エミュの絵柄や、濃いめながらもしっかりと「F91」で味付けされたストーリーはファン必見。


〈余談〉

漫画版もありますが、シーブックはあんな乱暴な言葉使いではありません……
小説版では上下巻構成でロナ家やクロスボーン・バンガードの成り立ちについて詳細に描かれており様々な事情が分かりやすい。
……のだがそのせいで上巻の大部分がロナ家やクロスボーン・バンガードの成り立ち、アノー家の家庭の事情などの解説で占められた後
ようやく学園祭のシーン(=劇場版の本編に当たる部分)が始まる構成になっているのはご愛敬。





大人の都合だけで追記・修正されてたまるか……!

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