285系特急型電車

登録日:2012/09/30(日) 17:53:42
更新日:2024/03/28 Thu 09:32:00
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285系特急型電車とはJR西日本JR東海が所有する特急型直流寝台電車である。
「サンライズエクスプレス」の愛称がある。

概要

寝台特急「サンライズ瀬戸」と「サンライズ出雲」に用いられる。
0番台と3000番台があり、0番台はJR西日本後藤車両センター所属、3000番台はJR東海大垣車両区に所属する。しかし外見・内装などは仕様は当時のJR西日本車両に準じており、検査もJR西日本の後藤総合車両所で実施している。

運用までの経緯

時は1990年代。
それまで長距離移動を担ってきたブルートレインを主流とする寝台列車は、新幹線や航空機、更には夜行高速バスの台頭によって衰退の一途を辿っていた。
観光客向けに特化した「北斗星」や「トワイライトエクスプレス」などの例外はあったが、基本的に用務客向けの旧来の寝台特急は乗車率が低下していったのである。

しかし、寝台列車は元来客単価が高い列車。そこで現代の需要に沿ったサービスを提供すれば、ビジネス客を取り込むことが可能な寝台列車には、新型車両を投入することが決まった。
選ばれた寝台列車は東京 - 高松間を結ぶ「瀬戸」と、東京 - 出雲市間を結ぶ「出雲2・3号」。
いずれもブルートレインながら平均乗車率が高く、航空機への対抗も十分可能であると見込まれた列車である。

かくしてスピードアップと最新設備を備えた新型寝台電車の開発が決まり、これらの列車の運行主体であるJR西日本の主導の元、収益改善や客車列車削減を見込んだJR東海も参加して開発が開始される。
車体製造は川崎重工・日本車両・近畿車輛が、内装は住宅メーカーのミサワホームが担当した。

こうして完成したのが、「サンライズエクスプレス」こと285系である。
詳しくは後述するが、夜明けを意味する「サンライズ」の名の通り、夜をイメージした青主体のブルートレインと違った斬新な塗装で登場したこの車両は、
1998年7月10日に先述した「瀬戸」「出雲2・3号」の車両を置き換え、リニューアルした「サンライズ瀬戸」「サンライズ出雲」において運行を開始した。

貨物列車以外の定期列車では唯一、本線を全線走破する列車である。

構造

一編成7両で、電動車/付随車比率は2M5T。車体は普通鋼製であり、電動車の重さは80トンぐらいある。
鉄道雑誌では285系電車を「オール2階建て車両」と書いているが、電動車ではモーターの配置の関係で2階建て車両ではなく、平屋車両である。(機械室と客室で2階建て構造という見方もできないことはないが。)
最高時速が130km/hで、日本の寝台列車では最速クラスである。
これは飛行機との競争において、「飛行機の最終便より遅く出発し、始発便より早く到着する」という目的を達成するためで、電車として作られたのもそのため。
ただし起動加速度はやや遅めでモーター音は若干うるさい。
寝台列車であるが、ブルートレインのような紺色ではなく、「夜明け」をイメージにしたベージュと赤と金色である。
ちなみに禁煙化が進んだ現在、JR在来線では唯一喫煙可能な客室を備えた車両である。

車内設備

  • A寝台一人用個室 シングルデラックス
285系で唯一のA寝台個室。一編成に6室しかない。ちなみに「シングルデラックス」という名称は、1976年に登場した個室A寝台オロネ25形に始まるもの*1
新造車に加えて改造車も制作され、全国の寝台特急に連結された歴史ある個室寝台である。

室内は広々としていて、洗面台がついていたり、ラジオがついていたりする。
夏休みなどの連休シーズンではかなり取りにくいので、みどりの窓口で10時打ちしてもらうか、事前に旅行代理店で予約しておこう。
シングルデラックスではシャワー券とアメニティグッズ(タオル、せっけんなど)がもらえる。

禁煙席・喫煙席はそれぞれ3席であるので注意。
寝台料金は13980円。すべての寝台に共通して乗車券と特急券*2も必要になる。まあ特急券と寝台券はセットになるのだが。

余談だが、かつてテレビがついていてwowowなどのBSが見れたが、2010年に撤去されている。

  • B寝台二人用個室 サンライズツイン
一編成に4室ある。二人用の個室寝台で、非常に取りにくい。雰囲気がラブホと言ってはいけない。
二人用なので一人で利用する場合でも二人分の寝台料金が必要なので注意。
禁煙席と喫煙席はそれぞれ2室ある。
寝台料金は7700円。

  • B寝台一人用個室 シングルツイン
一編成に8室ある。一人用ではあるが、追加料金(5500円)を払えば二人分のベッドが使用できる。 
寝台料金は9600円で下段ベッドのみ使用可能で、追加料金を払えば上段ベッドも使用できる。

下段ベットは分解して座席状にすることが可能で、座席状にすると折り畳みテーブルが使用できる。
車椅子対応の部屋が一編成に1室あり、車椅子対応個室は同じタイプの他の部屋より入口が広くなっている。

  • B寝台一人用個室 シングル
285系で一番多い個室である。階上室、階下室、平屋室の3タイプがある。階上室は車窓風景がいいが、揺れやすい。階下室は揺れにくいが、車窓風景がよくない。
平屋室はシングルでは一番広く、285系B寝台の中ではレアと言われている。シングルも禁煙席・喫煙席がある。
寝台料金は3タイプとも同じ7700円。

  • B寝台一人用個室 ソロ
狭い。それしか言えないぐらい狭い。カプセルホテルと考えたほうがいいだろう。コンセントはあるので充電はちゃんとできるのが救い。
ある鉄道ファンのサイトでは「ぼったくり」や「おすすめできない」と酷評されているが意外と年中満席になることが多い。
狭いので大きい荷物は収納できないことがあるので、大きい荷物を持って乗るならソロはやめよう。すべて禁煙席。
寝台特急は6600円。

  • 座席指定席 ノビノビ座席
普通乗車券と指定席特急券のみで乗車できる。座席と言ってもカーペット敷きなので寝る分には困らない。
このような座席は「夜行急行はまなす」の「のびのびカーペット」とほぼ同じである。毛布は提供されるが、枕とシーツは提供されないので注意。
こちらはソロと同じ年中満席になることがあるので、予約はお早めに。

  • ミニサロン・シャワーブース
自販機やゴミ箱が設置している。ここでご飯を食べるのよし、お酒を飲みながら談話するのもよし(ミニサロンの隣は寝台なので静かにすること)。
近くにはシャワーブースがあるがシャワー券が必要。シャワー券は車内に備えついている自販機にて販売している。販売枚数には限りがあり、始発駅の時点で売り切れることもしばしばある。
かつてはタオルセット、サンライズエクスプレス乗車記念にクッション、サンライズ出雲の下り列車のみであるが、ミニサロンで駅弁が売られていたが、今は販売中止になっている。
ちなみにA寝台利用者専用のシャワーブースがある。

■行先表示
LED表示器が本格普及する前の製造なので、行先と種別を印刷したフィルムを巻取り機で回転させる回転式を全車両装備している。リニューアル工事が行われた後もLEDへの換装はされていない。

収録されているコマの中には「あさかぜ」や絶対に使用しないであろう「快速」も存在する。計画段階ではあさかぜもサンライズ化する事も想定していたのだろうか。
順番の関係で普段はお目にかかることは出来ないが、車掌のサービスで見せてくれることもあったりなかったり。


備考

  • 営業開始前には機関車牽引を想定した試運転も行われ、大阪-岡山間で電気機関車が牽引する形で実施された。この時空調などの電源は機関車と285系の間に連結されたブルートレインの電源車であるカニ24から供給された。この試運転は将来の九州乗り入れを想定したとか言われているが詳細は不明で、機関車牽引による営業運行は1度たりとも行われていない。
  • 運転手・車掌の交代のために客扱いをしないで停車する駅はあれど時間調整・後続列車退避などの理由で長時間停車する駅はない。最長停車時間は連結・切り離しを行う岡山駅の4分間。
  • 2015年3月までは車掌だけ全区間JR西日本の人が通しで乗っていた。現在は会社ごとに車掌も交代するようになっているが、この関係でシャワーカードの手売りが無くなった。ちなみに車掌が会社ごとに交代するようになった理由は、大地震発生時に乗客をすばやく避難場所へ誘導できるようにするためだという。
  • 始発駅から3時間ぐらいの間はミニサロンが非常に混雑する。ミニサロンでゆっくりしたいなら午前1時~4時がベストである。
  • お盆や年末年始などの繁忙期には、臨時列車として「サンライズ出雲91号・92号」が運転される日がある。こちらは信号待ちや列車退避などによる運転停車が多い関係で、東京〜出雲市間を15時間近くかけて走破する。全区間7両での運転で、かつ混雑する時期に運転されるため予約が非常に取りにくい。また東京発のサンライズ瀬戸が高松から琴平まで延長運転される日もある。
  • かつては繁忙期にサンライズ瀬戸が高松から松山まで延長運転されたり、東京〜広島間(広島発が下関発のときもあった)を単独運転する「サンライズゆめ」が設定されたこともあった。



追記・修正はシャワーカードを買ってからお願いします。

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最終更新:2024年03月28日 09:32

*1 この名称はJR化後に登場した「北斗星」の改造車から命名されたもので、それまでは単にA寝台個室と呼ばれていた。

*2 寝台券で既に乗る場所を指定しているため、料金は自由席特急券相当になる。