青春パンク

登録日:2011/06/25(土) 02:14:31
更新日:2022/12/03 Sat 15:04:58
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〇概要

青春パンクとは、2001年~2003年上半期にかけて流行ったジャンルである。

パンクサウンドをベースに、恋愛や友情といった青春に纏わる歌詞を日本語で歌うパターンが基本。

中高生を中心にブームを巻き起こした一方、それより上の年代や、Hi-STANDARDやGREEN DAYのようなメロコア、セックス・ピストルズのような最初期のロンドンパンクといったロックを好む者の中には、否定的な意見も少なくなかった。

ストレートな歌詞の表現や盛り上がりの良さは若者を中心に支持を受けたが、
その反面、単純すぎる曲調や歌詞、更に歌唱力も演奏力もレベルが低いという致命的な欠点を持つバンドも多かった。
この頃の時代にバンドを組んだりライブハウスに行ったりして、右も左もあまりにグダグダでトラウマになったという経験を持つ人も少なからずいるのではないだろうか。


〇ブームの発端

2001年にGOING STEADYが発売したアルバム『さくらの唄』が大ヒットを記録。
続けて夏に、モンパチことMONGOL800が発売した『MESSAGE』がメガヒットを記録し、日本語パンクに注目が集まる。
(当時ヒットしていた邦楽のパンクは、Hi-STANDARDがそうであるように英詞が大半だった。もっとも、英詞でヒットを飛ばしたハイスタも異例であったが)


〇僅かな間の黄金期

日本語パンクに注目が集まりつつある中、2002年香取慎吾主演ドラマ『人にやさしく』でTHE BLUE HEARTSが主題歌に起用された事で人気が再燃。
その後THE BLUE HEARTSの影響を受けたバンドがプッシュされた事によりブームが起こった。
さらに、モンパチのヒットによりインディーズバンド業界自体が活気付き、インディーズでメジャー級のヒットが起こる事例も珍しくなくなっていった。
(もっとも、この時点でこれらのブームに違和感をもつバンドもいたが…)


◆当時の主なバンド


  • GOING STEADY
青春パンクの発端にして象徴だが、本人はあまりそう言われたくない。
『さくらの唄』のヒットにより一躍シーンで有名になり、翌年リリースしたシングル『童貞ソーヤング』が大ヒットを記録し人気バンドになった。
その後告知なしの発売でも大ヒットを記録したが、絶頂期に突如解散と銀杏BOYZの始動を発表した。
銀杏BOYZになっても人気は衰えず、今は日本のロックシーンを代表するバンドである。


  • ガガガSP
2002年に『卒業』がスマッシュヒットし、『晩秋』がTOP10を記録した、ブームを語る上で欠かせないバンド。
フォークに影響を受けたが、「自分達はパンクを続ける」と語る。
自動車のCMに使われた『にんげんっていいな』のパンクカバーや、ケロロ軍曹のOP『全国無責任時代』を耳にしたことがある人は多いだろう。


ガガガSPのヒットの直後に注目され始めた。
2003年にインディーズで発売した『僕らは…』が大ヒットを記録しメジャーデビューしたが、ブームの終焉以降は人気も下火に。
それでもあくまで自分達のやりたい音楽を貫き続ける、ファンからは愛されるバンド。


  • ロードオブメジャー
ASAYANの後番組だったハマラジャからデビュー。
見ず知らずの四人が曲を作りオリコンTOP50に入らなければ解散というルールの中発売した『大切なもの』が大ヒットを記録し、一躍人気バンドに。
ブームの終焉と共に路線変更し、ある程度の人気は維持したが2007年に解散した。
『心絵』『PLAY THE GAME』などアニメMAJORの主題歌を担当。
「メジャーの主題歌といえばロードオブメジャー」という印象をアニメファンに植え付けた。


  • FLOW
2003年初頭に『贈る言葉』を大胆にカバーし大ヒットを記録。すぐさまメジャーデビューし、一躍中高生の人気バンドになった。
その後、試行錯誤を重ね『DAYS』から現在の方向になった。
『GO!!!』以降『COLORS』や『WORLD END』などアニメタイアップが増えたため、アニメソング歌手のような扱いを受けることも。


  • 175R
「イナゴライダー」と読む。インディーズながらアルバムとSHAKALABBITSとのコラボが成功し、満を持して2003年メジャーデビュー。
『ハッピーライフ』がアイドル以外の男性アーティストでは12年振りとなるデビュー曲でオリコン1位の快挙を達成し、
続く『空に歌えば』で紅白出場と大人気バンドとなった。
だが、ブームの終焉による路線変更に遅れてしまい、徐々に売上が低迷。
さらにボーカルSHOGOの不倫・離婚など私生活のゴタゴタもあり、2010年のCOUNT DOWN JAPAN FESを持って活動休止した。


  • THE STAND UP
こちらも上記のバンド同様、インディーズ時代のアルバムが大ヒットしメジャーデビュー。
メジャー1年目の2003年はまずまずの売上を残したが、後が続かず。
アニメ今日からマ王!の主題歌を歌っていたのはアニメファン的には有名であろう。


  • THE イナズマ戦隊
セールスは上記のバンドほどではなかったが、当時陣内智則達とコント番組で共演していた。
代表曲『応援歌』は青春パンクに分類されるが、本来彼らが影響を受けたバンドはエレファントカシマシであり、現在はそちらの路線にシフトしている。


  • 3B LAB
2002年に解散した19の岡平健二が結成したバンド。
2003年に『プレゼント』が大ヒットしてからも一定の人気を保ったが、メンバー増加による路線変更を経て活動休止。

  • ジャパハリネット
インディーズで大ヒットを記録し、2004年にメジャーデビューシングル『哀愁交差点』が大ヒットした。
アニメエアマスターのOP『烈の瞬』で彼らを知った人もいるだろう。


  • 藍坊主
当時は音楽雑誌をチェックするコアな層にしか知られていなかったが、メジャーデビューと同時にギターロックへの路線変更を行い見事成功。
現在はシーンを中心に絶大な人気を誇る。
TIGER&BUNNYのEDで初めてアニソンを歌った。


  • マニ☆ラバ
当時HYを発掘し注目を浴びた深夜番組、ストファイが発掘したバンド。
ボボボーボ・ボーボボの初代ED曲『幸せ』がスマッシュヒットを記録した。


  • STANCE PUNKS
パンクであるがロックンロールの影響を色濃く受けており、バトル・ロワイヤル2の主題歌や、
NARUTO‐ナルト‐』のOP『ノーボーイ・ノークライ』やソウルイーターのED『アイワナビー』を歌った。
現在は毎年6月9日に川崎CLUB'CITTAでフリーライブをしている。
特に初期はTHE BLUE HEARTSの影響が濃い。


  • オナニーマシーン
名前の時点で当時最大の問題児。ライブでは全裸。
オナニーで使用したティッシュを投げるティッシュタイム等を行い、多くの会場で出禁を食らった。ある意味最もパンクらしいとも言える?
ボーカルのイノマーは元オリコン編集長ということもあり、多くのアーティストから支持された。
サンボマスターやSEAMOとのコラボでも知られる。
イノマーが編集長を務めた『STREET ROCK FILE』は当時のファンのバイブルである。


〇ブームの終焉

インディーズバンドのバブル期は青春パンク以外のバンドにも訪れた。
2001年にBUMP OF CHICKENがブレイクしたことにより、下北系と呼ばれるギターロックが徐々に台頭。
2003年にACIDMAN、ASIAN KUNG-FU GENRATION、レミオロメン、GO!GO!7188といったギターロックや、
MONGOL800、SHAKALABBITS、HAWAIAN6らのパンク、HY、ORANGE RANGE、10-FEETといったミクスチャーロックが大ヒットしたため、
流行が完全にそちらに移ってしまった。
また、青春パンクブームを終焉に向かわせた上記のバンドは現在も一定のファンを保っており、セールスも安定している。
かたや青春パンクは藍坊主やFLOWみたいに別方向に開花したバンドはいくつかあるが、
現在でも同じ路線でセールスが安定しているのは銀杏BOYZだけと言ってもよい。

こうして、青春のように短いブームは幕を閉じたのであった。


――ただ、青春は終わってから懐かしむものでもある。
歌唱力が低くとも歌詞が青臭くとも、当時の若者達の心を歌ってくれた、メッセージをくれた彼らへのときめきを恥じる事はない。
まだ聞いたことがないバンドがあるなら、この機会に是非手に取ってみるのも良いのではなかろうか。
忘れかけていた青かった頃の懐かしい感情が、蘇るかもしれない。

青春パンクには、確かにそういう魔力がある。



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最終更新:2022年12月03日 15:04