あまんじゃく(広島民話)

登録日:2012/04/08(日) 19:50:37
更新日:2024/01/24 Wed 21:52:45
所要時間:約 5 分で読めます





あまのじゃく(天の邪鬼・あまんじゃく)にまつわる話は日本各地に伝わっているが、ここでは広島県に残るあまんじゃくの話を紹介する。










昔々、安芸の国の五日市(現在の広島市佐伯区)に湯蓋道空(どうくう)という者がおりました。
道空は漁師として生計を立てており、蓄えた財産を厳島神社の修繕や町作りの為に役立てるなど努めていたので、村では名士として慕われておりました。

しかしそんな道空にも厄介な存在がいました。
それは一人息子の道裕(どうゆう)のことでした。
道裕はつむじ曲がりな性格で、特に父親の道空の言うことを聞くどころか、言われたことと反対のことばかりしていました。

「大人しく静かにしていろ」と道空が言えばギャーギャー騒ぎ、
「海で魚を捕ってこい」と言えば山へ狩猟に行き
「押すなよ! 絶対に押すなよ!」と言えばお構い無しに熱湯風呂に突き落とす

このように親不孝だった道裕を、村の人々は、昔から伝わる妖怪になぞらえ、あまんじゃくと呼び嫌っていました。
さて、月日は流れやがて道空は重い病にかかってしまいました。
刻一刻と死が近づく道空には、心配事がありました。

「わしが死んだら墓は……海に近い海老山(かいろうやま)に建ててほしい……。そうすれば住んできた村も愛した海も見下ろせる……」
「しかし墓を建てるとしたら……おそらくするのは息子道裕……」
「山に建ててほしいと言っても……聞いてはくれんだろう……」
「どうすればいい……」
「どうすればいいんだっ……!」



この時道空に電流走る……!

「そうか……」
「発想を逆転させるんだ……!」
「言われたことと反対のことをするのなら……」
「望んでいることと反対のことを言えばいい……!」

そして、いよいよ死の床についた道空。
彼は道裕に次のように言いました。

「墓を建てる場所だが……海に出てすぐの所に津久根島(つくねじま)という小島があるだろう……」
「墓はそこに建ててくれ……」
「頼んだぞ……!」
このような遺言を残し、道空は息を引き取りました。
こう言っておけば道裕は山に墓を建ててくれるだろう。
そんな安堵感に包まれながら……。






ところが、




大改心! 劇的ビフォーアフター


道裕「俺はあまんじゃくをやめるぞJIJIーー!!
道空「何……だと……?」


なんと道空のの直後、道裕はそれまで親の言うことを聞かず散々苦労させてきた事を恥じ、すっかり心を入れ替えてしまいました。
そしてせめて親の遺言は守ってあげようと考え、周囲の反対を押し切り遺言通り津久根島に墓を建ててしまったのです。

「へへ、オヤジ……。俺、親孝行できたよ……」



できていない。


全くできていないよ道裕。


それからしばらく経ったある嵐の日。
島にあるオヤジの墓を守るんだ! と道裕は周囲の反対を押し切り舟を出し、それから二度と村に戻ってくることはありませんでした。
しかし、道空の墓は守られ、今も遺言の通り津久根島の丘に残っているのです。



  • 補足
この民話が事実かは不明だが、海老山や津久根島、湯蓋という名字の人は広島に実在し、また五日市には湯蓋という名の踏み切りがいくつかある。
墓は現在も島に残されているが、なぜか道空の愛した五日市の街並みに背を向けている。
また、墓に刻まれた文を見るにどうやら何度か墓石が海に落ちた様である。
道空が本当に墓を建てて欲しかった海老山にはこの話の登場人物を祭る神社があり、「あまんじゃく祭」も行われる。


ちなみに現在の津久根島は害虫、台風、鳥のフンの三タテを食らい、木がほとんどないはげ山(というかハゲ島)となってしまっている。


あまんじゃくな方は追記、修正をしないでください。

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最終更新:2024年01月24日 21:52