世界終末時計

登録日:2012/01/13(金) 21:08:51
更新日:2018/03/08 Thu 20:17:17
所要時間:約 4 分で読めます




サ・ヨ・ナ・ラ地球.jpg
世 界 変 革 の 時

概要

1947年、広島長崎の原爆投下から2年後の冷戦直下のアメリカで発行された雑誌「原子力科学者会報」(Bulletin of the Atomic Scientists)で発案された時計。
単に「終末時計」とも呼ばれる。英語では「ドゥームズデイ・クロック」(Doomsday Clock)。なんとも不穏当な名前である。
現実に「終末時計」が存在するわけではないが、シカゴ大学には終末時計のオブジェが設置されている。

ご覧のように時計の左上4分の1の部分を切り取った形をしており、時刻は9時から0時までしか存在しない。
時計の秒針が0時ちょうどを差した時、即ち『深夜(Midnight)』がめでたく人類滅亡、すなわち世界の終わりとなるわけである。

秒針が進むのは、この時計が作られるきっかけとなった「核戦争」の脅威が迫った時や、
地球温暖化などの異常気象が起こった時に、同雑誌が設立した委員会の役員が自らの手で進める。


身も蓋も無い言い方をすればよーするにメリケンのさじ加減次第である。なんでやねん。

しかし、核も地球温暖化も全ては人間のエゴが生み出した問題である。
にも関わらず終末の時を人類自らの手で刻んでいくとは、なんとも傲慢というか皮肉というのか…

2分前の時点まで進んだのが今までで最高記録。1953年のアメリカ&ソ連の水爆実験成功時、そして2018年の北朝鮮の核実験時の計二回到達した。


終末時計の推移

1947年に7分前で始まったが、二年後の1949年にはソ連の核実験成功により3分前となり、
朝鮮戦争最中の1953年にはアメリカとソ連の水爆実験成功により2分前とと並ぶ終末まで差し迫った時間帯となる。
(ちなみにこの頃は「午前0時=全面核戦争勃発」ということになっていた)

…だがどういう訳かあわや全面核戦争一歩手前という情勢だった1962年キューバ危機時点では針は7分前を示していた
その上ケネディ大統領暗殺まで起きた1963年には針が12分前まで戻っているどういうことなの…

その後核軍縮や米ソ間の雪解けもあり、1972年には12分前とかなり時計の針は戻るものの、'74年の米ソ間SALT I(第一次戦略兵器制限交渉)の難航や両国のMIRV(多弾頭弾道核ミサイル)配備により9分前まで進み、
'80年にはテロリズムの増大やイラン・イラク戦争などもあり7分前まで、'81-'84年には世界の軍拡競争激化が原因となり3分前まで進んだ。
しかしその後は米ソの中距離核戦力全廃条約の締結、それに伴う冷戦終結、そしてソ連・ユーゴスラビア連邦の崩壊もあり'91年には17分前まで戻った(ただし4年後の'95年には「ソ連は終わったけど後継のロシアが核持ったままなんだから結局やべーじゃん」と言う理由で14分前まで進んだ)。

しかし1998年、インドとパキスタンの核保有宣言が行われ、時計の針は14分前から9分前へと進む。
そして2002年のアメリカの弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM条約)脱退(事実上の無効)やアメリカ同時多発テロ事件に端を発するテロリストによる大量破壊兵器使用の懸念などで7分前まで、5年後の'07年には北朝鮮やイランの核実験、地球温暖化の進行によって針は5分前まで迫ってしまう。
2010年にはアメリカ合衆国バラク・オバマ大統領の核廃絶運動宣言で6分前まで戻されたが、それも空しく2012年には前年の福島第一原子力発電所事故を初めとする原子力の安全性低下などを理由に再び5分前に進められた。
…が、実際には原発事故よりもイランの核実験の方が原因で針が戻っていたらしい。
(実際に1986年にチェルノブイリ原子力発電所事故が起こり、その影響が懸念されていた80年代後半から90年頃にかけては、1984年→3分前、1988年→6分前、1990年→10分前、1991年→17分前と終末時計の針は戻っている。)

'15年には気候変動や核軍備増大により3分前へ、そして2017年2月、アメリカ合衆国大統領にドナルド・トランプが就任し、その『世界の警察』のトップにそぐわぬ過激な発言、核廃絶や気候変動対策に消極的な姿勢で時計が2分半前まで進んだ。
さらに2018年、北朝鮮の連続核実験など不穏な情勢が続く中、時計は過去最高の2分前にまで進む。




…お分かりいただけただろうか。
この終末時計、ことの壮大さの割になかなか胡散臭い代物なのである。
第一、「人類への警告」を謳っている割には事が動いてから針の動きを審議する本末転倒っぷりであり、その針の動かし方もかなり恣意的なものとなっている。
それ以前に読者も承知のとおり2017年後半には北朝鮮から中距離弾道ミサイルが実験と称して日本へ向けてワンサと飛んでくる異常事態であったにも関わらず、原子力科学者会報はなんの反応も示していない。
(「やっぱりアメリカに被害がなけりゃいいのか」と言いたくなるが、日本は在日米軍や日米安全保障条約などアメリカにとっても割と無視できない領域(のはず)であり、さらには前述したキューバ危機も、当時はまさしく一歩間違えれば米ソの全面戦争で世界が終わる一触即発状態であった。にも関わらず終末時計はけっこう呑気してたのか微塵も針が動いていない。ますます胡散臭さが加速する)


結局のところ、終末時計も人類のエゴが生み出した皮肉のひとつに過ぎないのである。
だが、実際には15分でも、1分でも無く、世界は、我々は、


終焉に向かっているのではないだろうか?







  • 広島県広島市、原爆ドームにも似たような意味合いを持つオブジェが存在する。その名も『地球平和監視時計』。
同市出身の彫刻家岡本敦生氏による作品であり、高さ3.1mの花崗岩(御影石)の上部に現在の時刻を示すアナログ時計、そしてその下の2段の日数カウンターで構成される。
一段目は広島への原爆投下からの日数、二段目は最後の核実験からの日数を表しており、最後の核実験からの日数は新たな核実験が行われる度にリセットされる。
最新のリセットは2017年9月3日。同日行われた北朝鮮の核実験によるもの。
  • 世界最高峰のアメリカンコミックと名高い『ウォッチメン』では、この終末時計が一貫して作品の象徴として扱われていた。

追記・修正は世界の終焉を見届けてからお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/