ミナミの帝王

登録日:2012/03/02(金) 11:47:05
更新日:2024/04/01 Mon 23:40:43
所要時間:約 8 分で読めます




ミナミの帝王は、現在週刊漫画ゴラクで連載中の青年漫画。既刊は168巻。
正式なタイトルは『難波金融伝・ミナミの帝王』。

金貸しを主人公にした作品としては抜群の知名度を誇る作品で、アニメ版やVシネなど各種メディア展開もなされた。
本項では竹内力主演のVシネ版についても述べる。
テレビドラマ版は「新・ミナミの帝王」も参照。

ストーリー


大阪、ミナミ。
高利貸しを営む一人の男、萬田銀次郎は、貸した金を取り立てる為なら地獄の果てまで追いかける執念の持ち主。
それゆえ、周囲の人々からは「ミナミの鬼」と恐れられる。
しかし、一方で彼は義理人情に厚く、弱い者には救いの手を差し伸べるなど、優しい面もある男。
そんな彼は今日も金融業を営み、子分の竜一と共に取立てに向かうのであった。


登場人物


  • 萬田銀次郎
主人公。
ミナミの闇金融「萬田銀行」を営む通称「ミナミの鬼」
幼いころに父が会社の失敗を押し付けられ自殺。ショックで体を壊し入院した母も、その後銀次郎が当たり屋をして医療費を稼いでいる事実を知り自殺。
両親を亡くし、生きる希望を一度は無くしかけるが、偶然拾われた先で金融・法律などのイロハを学ぶ。
父の仇に復讐した後自身の行為が愛していた人を悲しませたことを知ると、
これまでの自分の行為へのケジメも込めて明るい表社会での栄光を捨て、暗い闇金融の道へ進むことになる。

利子は、いかなる場合においてもトイチ(10日毎に1割の利子)というのがモットー。
闇金というのはトサン(10日で3割)やトゴ(10日で5割)、ヒサン(1日で3割)という更なる高利子も珍しくない業界であり、同業者からそのことを指摘されたこともあるのだが、彼なりのポリシー(詳しくは後述)でトイチを貫いている。
踏み倒そうとする者は文字通り地の果てまでも追いかけ回し、たとえ結果的に損をすることになろうとも絶対に回収する。
彼から借金を踏み倒すことに成功した者はおらず、逆に、「どうやったら萬田の借金を踏み倒せるのか」というのは裏社会で定期的に話題にのぼり、
それを目的に萬田を騙したり出し抜こうとする輩も時折現れるが、もれなく凄惨な報復を受けて破滅している。
金に関しては容赦がない反面、詐欺にあって金が返せなくなったなど同情の余地がある債務者に対しては、犯人を罠に嵌めて取り立て、結果的に債務者を助けるなど情けを掛けるところもある。
悪辣な犯人が萬田に嵌められ、最後に怒り狂う萬田の顔を見て驚愕するところがある意味この作品のハイライトである。
ただしこれは、「犯人の騙し取った金は元々自分が貸した金である」「取れる奴から取り立てたほうが速い」という考えからであり、断じて単なるボランティアでやっているのではない。
実際、助けた後にはきっちり利子も合わせて取り立てるのもお約束。

過去の過酷な境遇から、暖かく平穏な一般家庭に対しては思い入れが強く感傷的になりがちなのも特徴。
情が移った親しい相手が悪党に騙され理不尽に食い物にされて自殺してしまった場合は、怒りのあまり採算度外視の利益ゼロであろうと悪党に報復を実行して破滅に追いやり、奪い取った10億の金を遺された家族に全額手渡すこともあった。
また自分の債務者が銀行に嵌められ軒並み倒産寸前になりかけた時は、「メンツを守るため」と称し、
利息なし上限なしで金を貸し出したり、資産を投げ売ってでも債務者の資産を守るために金を捻出しようとするなどして全面的に債務者達のバックアップを務めている。
全てが全て利益や打算だけという訳ではないヒロイックな部分も彼の魅力の一つだろう。
また、所謂には非常に甘い、と言うか助力を惜しまない面もあり、拳銃を向けられた見ず知らずの沢木を庇って拳銃の前に身を晒した堅気の危機にロハで手助けを行う
鉄パイプでブン殴られて手持ちの現金を強盗されかけた際に防いでくれた恩人の金銭トラブルも(金を貸さなくてよいと判断した事もあってか)恩返しとしてやはりロハで手助け、
作中で唯一存在している取り立てを行っていない債権者は「刺客に襲われた親分の敵討ちの為に刺客を放った対立組の組長切り殺して刑務所入ったヤクザ」であり、
彼に関しては出所まで利子凍結、所属の組への取り立ても行わない、出所後追加融資してでも返せる新事業を立ち上げられるように協力する事を約束までしている。
結構お茶目な所もあり、パチンコで大当たりが出たときは渦巻きほっぺで笑う、
バンコク編にて「此処では安くフカヒレが食えるんや」と、舌をペロペロ動かしながら笑顔を見せる等、多くの読者を笑わせた。

  • 竜一
銀次郎の子分。
金を貸した客のところへ向かう銀次郎と同行することが多い。
彼も結構コミカルなところがある。自称「ミナミの狼」。本当に自称だが。

  • 沢木大樹
銀次郎が懇意にしているヤクザ。沢木組組長。
銀次郎とは若い頃からの付き合いで、極道らしからぬ気さくな性格。敵が非合法なやり方に訴えた時に頼りになる。
が、銀次郎は「所詮ヤクザ」と定期的に儲け話を持って行って借りを作らないようにしている。
力の沢木と頭脳の萬田、二人揃えば無敵の強さを誇り、作中でも「最強コンビ」と呼ばれる。既婚者。息子を溺愛する一方、妻には尻に敷かれている。
趣味はテレビゲーム。ただし下手。特にFPSは実際に撃ったほうが命中率はいいと豪語する。

Vシネ・映画版

1992年から15年間に亘り、計60本も制作された。
Vシネというジャンルを確立させた作品の一つで、竹内力のイメージをいろんな意味で定着させた作品でもある。
制作には読売テレビが関与しており、同局の昼の関西ローカル枠や日本テレビ系の深夜枠でも放送されたことがある。現在もBS・CSで頻繁に再放送が実施されている。

吉本興業のタレントがゲスト出演することが多く、後にテレビドラマ版で主演を務める千原ジュニアも登場実績がある。

主なエピソード


  • 高級旅館
寂れた旅館を経営する旦那の悩みを聞いた銀次郎。
どんなに低価格化しても効果がないと悩む旦那に「超高級に生まれ変わらせるんや!」と述べ、様々なサービスのアイデアを授ける。
「給料を上げて従業員の意識を高める」「客の好みを理解し、それにあった料理を提供する」「客が体調不良を起こしたときは、ふもとの町まで医者を呼ぶ」
などのサービスを丁寧に行った結果、旅館は超高級旅館に生まれ変わり、かつての客足が戻って来たのであった。

  • クリーニングトラブル
幼稚園に通う娘がシンデレラをやることになった。
母親は早速、娘と同じ幼稚園に通う園児の母親からドレスを借り、着せる。
そして劇が終わった後、彼女はそのドレスをクリーニングに出すが、なんと、クリーニング屋はドレスを紛失。
しかもそのドレスは30万円もする高級品だった!
「どうしてくれるんですか!」
と彼女は訴えるも、クリーニング屋は開き直り、1万だけ出して冷たく追い返す。
そこで彼女は銀次郎から30万を借り、それでドレスを貸してくれた知り合いに支払いをすませる。
その話を聞いた銀次郎は、クリーニング屋を成敗するため、彼女にドレス代のレシートを知り合いから貸して貰う様助言。*1
材料は全て揃い、銀次郎はクリーニング屋を成敗する。
彼女は返済を済ませ、銀次郎は笑顔で去って行くのであった……。

  • 白い闇
とある総合病院。最新の設備と医者を備えたと公称するが、その実態は「姥捨て山」とまで言われる地獄絵図であった。
カルテを捏造し、看護師を水増しし、医者も使い物にならない人間ばかり。
さらに、死体は即座に火葬し、死因をわからなくする。
この病院のすべてが、院長の私利私欲のために動いていたのだ。

銀次郎は、この病院に入院していた債権者の変わり果てた姿に愕然とする。
そしてその債権者は病死。
銀次郎は、この借金を病院から取り立てることを決意し……。

最終局面における、院長から口止め料として十億もらい即座に手のひらを返す銀次郎と、裏切られた院長のリアクションは必見。
「ま……萬田のガキ、取るもん取って……あっさり裏切りよったぁぁぁー!」
「約束でっか……守る守らないは、相手次第でっせぇ……」

  • さよなら(アンニョン)ソウル
「日本で働けば簡単な接客で高い給料がもらえる」という甘い言葉に騙され、外国人キャバクラで働くことになってしまった韓国人の少女。
彼女と竜一が出会うところから物語は始まる。
彼女に会うため、竜一は銀次郎の金に手をつけてしまう。
その結果、竜一は銀次郎から死を覚悟するほどの暴行を受けてしまう。
さらに、キャバクラの客に騙されホテルに連れ込まれ、逃げ出した彼女とホテル前でばったり会ってしまい、勘違いした竜一は彼女を拒絶。
すべてを失った竜一だったが、銀次郎の暴行の裏に隠された舎弟愛を知り、銀次郎の一番弟子として生きる決意を固める。
一方、拒絶された彼女はショックのあまり帰国してしまう。

数日後、その事実を知った彼は銀次郎の「吹っ切ってこい」の言葉を受け、一路韓国へ。
最終的に竜一がどのような選択をするか……それは是非、本編を見ていただきたい。

  • 取り立てられない借金
逃げる債権者がいるなら、地の果てまで取り立てる銀次郎。
そんな彼だが、唯一取り立てを保留にしている男がいた。
彼は昔気質のヤクザで、弱いものから取り立てられず、組での地位を日々危ういものとしていた。
だが、そんな彼に銀次郎が助け船を出す。それは決して足の付かない仕組みのある賭博ゲーム喫茶であった。
ゲーム喫茶の運営は快調であり、設備投資のために貸した金も、すぐに返ってくると思われた。
そのとき、事件が起こる。敵対する組が、彼の所属する組に襲撃をかけたのだ。
彼は、組長の侠気に答えるべく、鉄砲玉となり……。

刑務所に入れられた彼に面会する銀次郎。
ここまで取り立てに来たかと絶望する彼だったが、そんな彼に、出てくるまで利子保留で待ち、さらに新しい仕事も斡旋すると告げる。
銀次郎の優しさに彼は涙する。
熱い男の生き様は、銀次郎の……ナニワの鬼の心をも動かしたのだ。

……これが、彼が唯一取り立てられていない、債権である。

  • バンコクラブジャンキー
タイへの出張から帰って来たシンサクは200万円を銀次郎から借り、再びタイへと旅立った。
そう、現地で共に甘いひと時を過ごした女性、マイに再び会う為に…。
最後は何とか200万円を銀次郎に返し、そのままシンサクはマイと共にいつまでも幸せに暮らしていくのであった…。

  • タイムリミット24
そんなシリアスで暖かなラブジャンキー編の直後に始まった中編。元ネタは海外ドラマ「24」か。
口ばかり上手いどうしようもないチンピラが、兄貴分から借りた1000万円を24時間以内に返すか腕時計型小型爆弾で木っ端微塵になるかの二択を迫られ、奔走するという凄まじくIQの低い話。
しかもそいつは、銀次郎からも350万もの借金を抱えており……。

  • 銀の神話
「ヤング編」と銘打たれた、銀次郎の過去が語られるストーリー。
心に傷を負った青年が、ある男への復讐のために壮絶な戦いを繰り広げていく。
そしてその青年は後に「ミナミの鬼」と呼ばれるようになる。

名台詞


  • 「利子はトイチでっせぇ!」
銀次郎といえばやっぱりコレである。
同業者がトゴやヒサンでも萬田はトイチ。
これは本人曰く「カモを生かさず殺さないギリギリの値だから」らしい。ちゃんと研究しているのだ。
たとえ10円貸せという依頼でも、利子トイチで貸す。そして地の果てまで追いかける。

10円を数万かけて取り立てる理由は、「ただの一度も取りはぐれたことがない」というメンツを保つため。
彼は恫喝や暴力で金貸しをやっていない。顔で金貸しをやっているのだ。

なお参考までに、1円をトイチで借りて10年ほっとくと1(元金)×1.1の365乗=1238兆円になる(複利の場合)
※単利の場合は1(元金)+0.1×365(利子)=37.5円 それでも年率は365%であり、合法内の20%と比べ鬼畜仕様。 


一方、とある孤独な老人は萬田から一万円を借り、10日ごとに1000円を回収しにくる萬田と世間話をするのを唯一の楽しみにしている。
萬田もまんざらではないらしく、これまでの仕事の話をしてあげているのである。*2
萬田の知られざる一面だが、後にこの老人は萬田からマジ借金をすることになり…。

  • 「ミナミの鬼は、怒らせたらちょっと怖い男でおま」
ちょっとどころではない。
ちなみにこの台詞が発せられた回、銀行の頭取だった相手は銀次郎によってすべてを失い、路頭に迷う羽目に。



「わかりましたわ……追記・修正しまひょ。そのかわり……利子はトイチでっせぇッ!

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最終更新:2024年04月01日 23:40

*1 実は知り合いも「クリーニング屋が全額弁償してくれた」と思い込んでおり支払いを渋る(と言うか金がない)母親に冷たい態度を取っていたが、真実(クリーニング屋がほぼ金を払わず別途借金して弁償した)を知ると真っ青になって謝罪し全面協力を約束してくれた

*2 考えてみたら孤独死等を警戒した見回りを月3000円でやってくれる、と考えたら割と真面目に安いもんである