SCP-3001

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&font(#6495ED){登録日}:2017/05/09 Tue 11:26:47 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 20 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- #center(){&font(b,i,red){小さな光が映し出すのは、救いようのない&ruby(Red Reality){真っ赤な現実}}} SCP-3001とは、シェアード・ワールドである「[[SCP Foundation]]」において取り扱われている[[オブジェクト>オブジェクト(SCP Foundation)]]の一つである。 項目名は「レッド・リアリティ」、[[オブジェクトクラス>オブジェクトクラス(SCP Foundation)]]はEuclidである。 このオブジェクトはSCP-3000コンテストの優秀賞を受賞した作品であり、「[[アナンタシェーシャ>SCP-3000]]」と最後まで接戦を繰り広げ、最終的に2位となったことで3001のナンバーを得た。 最優秀賞と同じく、SCP財団が保有するとある超科学機器の生い立ちに関する物語でもあるのだが、当該コンテストのテーマはずばり''「ホラー」''であり、このSCPも最優秀賞に負けず劣らずの恐怖を………''ぶっちゃけると&color(crimson){かなりエグい内容}なので、充分に精神力のある時以外は閲覧をオススメしない。'' *まずは大雑把な概要 SCP-3001は2000年1月2日に財団がサイト-120で行なっていた現実歪曲試験中に初めて発見された『異常空間』である。 サイト-120の主任、ロバート・スクラントン博士と妻のアナ・ラング博士は共同で現実操作に関する実験を行い、『ラング-スクラントン安定機』、略称LSSの開発を手がけていた。 >※ここで「スクラントン!?」とビビッときた貴方はなかなかのSCPファン(あるいは財団職員)に違いない。そう、[[現実改変>現実改変(SCP Foundation)]]オブジェクトへの対策として今や財団には必要不可欠となっている、あの''「スクラントン現実錨」''の原型の開発者、その人だ。 しかし、予期せぬ地震により現実性研究室AのLSSが破損し、ロバート・スクラントン博士はLSSのコントロールパネルとともに異空間であるSCP-3001へと吸い込まれてしまう。 スクラントン博士は公式には死亡と扱われたが、実際には博士とLSSパネルはSCP-3001内部でも少なくとも5年11ヶ月21日は生存・機能を続けていた。 果たして異空間で博士はどうなってしまったのか? ---- *博士の音声ログ要約 報告書の大半は、SCP-3001内部にいるスクラントン博士がLSSパネルの録音機能を用いて記録した音声ログの文書化によって構成されている。 **〜0年2ヶ月8日 SCP-3001に飛ばされてしまったスクラントン博士は、必死になって出口を探し求めてパニック状態で騒ぎ回っており、LSSパネルが一緒に飛んできたことに気づくまで11日かかった。 最初にLSSパネルが拾った時の言葉がこれ。 >名前、ロバート・スクラントン、39歳、誕生日、1961年9月19日。 > >好きな色。青。
 >好きな曲、 "リヴィング・オン・ア・プレイヤー"
 >妻…アナ… > >アナ… この時点では録音中であることを知らないが、その後数時間してスクラントン博士は本来なら故障して機能しないはずのLSSパネルが録音をしていることを知る。&s(){何かがおかしい。} すでに非常な空腹と脱水を経験し、苦しんでいたが、この場所では空腹によって死ぬことがないということにも気づいた。つまり、時間は十分にある。 そして博士は、この空間には自分とLSSパネルの他に誰もいないことを把握した。 世界は完全に暗闇で、唯一見えているのはLSSパネルの録音機能を示す、&color(#F54738){点滅する赤い光}。それがこの空間の全てだった。 博士は自らのいる空間をSCPとして分類し、この空間の研究を宣言した。 >…OK、それでは&font(i){[深く息を吸い、吐き出す。]} > >私の名前は…ロバート・スクラントン。サイト…120の主任研究員だった。さらに発達した対抗手段の開発のために、様々な現実歪曲型SCPの研究を行う財団施設だ。 > >最後に…赤いライト、私に話してくれ。 > >&color(red){&font(i){2ヶ月、8日、16時間。}} > >赤いライトの言うには、私は、空のポケット次元と私が考えている空間にとらわれているようだ。1人で。…そう、1人で。全く1人で。 > >私はこの場所をSCPと呼ぶ…わからない。我々がどこにいるのか私は忘れてしまった。混乱してる。私は過去に何が起こったのか覚えていない。赤いライト、もう一度繰り返してくれ。 > >&color(red){&font(i){2ヶ月、8日、16時間。}} > >だが…周囲にはこの点に関して議論する相手もいない。私自身をつなぎとめるために、このコントロールパネルへ話しかけている。わ…私は記録し続けなければならない。将来、私のように終わる不幸な人間が出るかもしれない。そして…もしこれが外に出ることが出来たなら、それを発生することを防ぐ助けになるかもしれない。これが今私にできる唯一のことだ。そして私には何かすることが必要なのだ、ハハハハ… > >…だから、ロバート…スクラントンは…新しいSCPを、将来の研究目的で記録する。それがやるべきことだ。始めるぞ! **〜0年2ヶ月24日 スクラントン博士は、まず1週間ほどをかけて空間についての分析を行ない、仮の報告書のような体裁で記録する。 ・オブジェクトクラスは多分Euclid ・ここは地球上ではない空間で、よほど酷い現実歪曲事故でもないとまず入れない場所である ・出口はあるかどうか分からないが、探し続けなければならない ・頭や顔がヒリヒリする感覚がある ・ライトのある平面状を歩くように行動していたが、やや思い違いをしていた ・空間は虚無で、地面はなく、自分は黒い濃いゲルの中にいるような状態になっている ・強く念じれば、「ゲル」の中を泳ぐようにして移動できる ・ここは一種の現実性ギャップであるが、完全ではない(完全なら全く動けないはず) ・時間の流れが極めて遅く、それゆえに空腹や脱水で死なない >&color(red){&font(i){2ヶ月、22日、3時間。}} >アップデートのために戻ってきたぞ、レッド、サー!ハハハ、来いよレッド、気楽に構えてくれよ(lighten up)。ハ!駄洒落のつもりじゃなかった…レッド、ちょっとは笑えよ、面白いだろう! 博士は空想上でも話し相手が欲しかったのか、LSSパネルの赤い光に&color(red){「レッド」}と名前をつけ、色々な言葉を投げかけた。 …むろん相手は機械なので返答はないが、この交流は音声ログの最後まで続くことになる。 続いてスクラントン博士は、自分がいる空間のヒューム値がものすごく低いものであることを知った。 標準のヒュームスケール((普通の世界のヒュームスケールは1として、博士が今までの実験で試した最低値が0.8。))にしてなんと''0.04くらい''。 現在の財団が持つ最先端の機器を用いても、0.4まで下げるのが限界だった((博士は基本的にヒュームフィールドを高める実験の方を多く行なっていた))ところに、その1/10以下である。((この低いヒューム値のせいで、この空間は時間も空間も極めて小さなスケールで存在していた)) 対するスクラントン博士側の突入時のヒューム値は、2.6〜3.2と予定よりやや高いレベル((LSSが事故を起こしたことによる))になっていた。 博士は「kejelの現実性の法則」(第4まである模様)を使い、このヒューム差が自分に与える影響を計算した結果、''恐ろしい結論が導き出される。'' >アナ、こんな時はどうしたら良い?君の助けが必要なんだ。この…このヒリヒリした感じ…僕のヒュームフィールドが散逸している…僕の…僕の現実性が薄れていく…3年、僕は3年以内に自分自身を安定化させる必要がある。 スクラントン博士の持つ高いヒューム値がSCP-3001によって希釈され、''スクラントン博士の身体そのものが現実性を失い、「拡散」してしまう''ことが分かったのだ。 スクラントン博士はこの危機的状況を何とかして打開できないか思考を巡らせた。 自分のヒュームフィールドを集め、拡散を防ぐ手段は理論上の存在にすぎず、とてもこの場で試せる状態ではなかった。 そこで、この空間は現実性ギャップ、要は「谷」のような存在だと考え、その「壁」を探してたどり着くことを目指す第2の手段を講じた。 幸いにして、あまりにもヒューム値が低い空間なので時間の流れが遅く、「その時」までに3年程度の猶予があった。 博士は「レッド」から一時的に離れ、「壁」を求めて虚無の空間へと泳ぎ出ていった。 **〜2年9ヶ月28日 スクラントン博士は特定の方向へと2ヶ月も移動し続けたが、そこに求めるような「壁」は存在せず、どこまでも、虚無の空間で満たされていた。結果は、完全な徒労に終わった。 もう2ヶ月かけて「レッド」の位置まで戻った博士は、今度は谷の「底」を目指して沈下。しかしこれも成果はなかった。 >&color(red){&font(i){10ヶ月、28日、15時間。}}
 >底なんて無い。そしてお前もクソ野郎だ。 >ごめん、レッド、行かないでくれ。消したりしてすまない。戻ってきてくれ、頼む- >…僕は40になった。誕生日おめでとう、ロバート。 スクラントン博士は、自らの過去を回想し、「レッド」に語って聞かせた。 自分は本当は中国人であるが、箱に入れられて親に捨てられ、アメリカ人の夫婦に拾われて養子として育ったこと。 子供の頃はコミックストアでバイトをしていたこと。スパイダーマンが好きだったこと。 アナとは1988年にサイトで出会ったこと。彼女の緑の目は、自分の灰色の目よりずっと美しかったこと。 1991年に結婚し、1週間のハネムーンを満喫したこと。 >レッド、君はいい聞き手だ。でも君自身について話してるのを聞いたことはないな。言ってみろよ、恥ずかしがるなよ。ここには他に誰もいない。そうだろう?ハハハ…ハハハハハ… 博士はレッドにとにかく聞き手になっていて欲しかったのだ。 なぜなら、頭が痛く、「足が永遠に眠ってしまうような感覚」を感じ始めていたから。 >"申し訳ありません、ロバート。それは出来かねます" ハハハ、レッド、君は面白いな。 原文において二人が発言する際は必ず改行があり、またパネルの音声は斜体で表記されているため、恐らく&bold(){これは博士の一人劇なのだろう。} しかし、そのような話をしていく中で、博士は「レッド」ことLSSパネルから自分とアナの写真が失われていたことに気づき、大いに錯乱したような言動を発した。 LSSパネルも博士と同じく、ヒュームフィールドの拡散を起こしているのだろうか。 …話が全て終わった頃には、LSSパネルの計時は1年2ヶ月27日を読み上げていた。 その後は、コントロールパネルが時間を告げる自動音声のみが、1〜3日おき、時として数カ月のギャップを挟んで記録されている。ときどきスクラントン博士のすすり泣き、叫び、不明瞭な発話も聞こえる。 このような録音は2年7ヶ月28日に達するまで続き、その後は全く音を拾うことなく2ヶ月が過ぎた。 **〜5年9ヶ月3日 ついに、博士にとってのデッドラインである3年が過ぎ去ってしまった。 録音されるスクラントン博士の声は、明らかに歪み始めていた。 >ロバート…寒い。私は…私はもはや足を感じられない。私は…私は以前話した…地点に到達したのだと…思う。低ヒュームフィールド…拡散…平衡…馬鹿な…ゴミの…山… >私にはもはやここにおける現実とは何かわからない。私が現実なのかはっきりしない。あるいは…それに近い…もし…もし私が本当にこうして消えるなら…わ…私はまだ死にたくない。死にたくない。おお神よ、私は死にたくない… 博士と「レッド」は、ついに現実性の崩壊を起こし始めてしまったのである。 >僕はタップダンスが本当に苦手なんだ。もう足が感じられない。オーケー、じゃあ君がやってみてくれ、レッド。 >Kejelの法則ではヒュームフィールドは拡散し続けると規定される。Kejelの法則によるとこのまま続けば私の睾丸もそのうち脱落する。 >ハハハ、外に出たら科学の話をたくさんしないとならないぞ。この場所は法則がメチャクチャで、今まさに僕の手も崩れていってるんだ。 >僕…僕の手。手がお互いにすり抜け…レッド、レッド、レッド!レッド、助けて、助けてくれ、僕の手、僕の手を感じないんだ。お互いにすり抜けてまるで…まるで氷水みたいに、レッド、僕は、ああ神様、神様… >ハア…ハァ…ハア…レッド、知って、知ってるだろう、伯父さんがよくやるいたずら…親指が取れたように見せかけるやつで、実は挟んで隠してるやつ。 >それをやってみたんだ。親指で。痛みも感じない、ただ外れただけ。思うんだけど…ああ神よ、私は病気なのでしょうか。わたーわたー[嘔吐する音]指は浮かんでいるけど・・・拾えない、手がすり抜ける。ああ、ああ神様、私、私はー >眠っていると…手が頭に入ってくる。仰向けに寝ている。 上記は抜粋だが、これだけでも何が起こっているのか知るには十分すぎる。 克明に綴られた、博士の身体の変異。 ヒューム値が高い物体がヒューム値の低い空間へと溶け出し、平衡を保つ働き。自然法則に則った異常性のない移動。 さながら、角砂糖を水に溶かすようなものである。 &color(crimson){''その角砂糖が博士の身体の部位だということを除けば。''} 博士の身体は先端から引き延ばされたように変形し、互いにすり抜けてしまうようになった。 そして、やがて身体から「外れて」いきつつあったのだ。 手の小指、親指、左手は蜘蛛の巣のように延び(結婚指輪は右手に移せた)、片方の腎臓、そして片方の足…。 博士はそれでも諦めずに、がむしゃらに移動を繰り返していた。 斜め上に6ヶ月、次に斜め下…いや真下に8ヶ月。 1日に10〜15km、2ヶ月間繰り返して600kmの距離を潜行。帰るにはもっとかかった。 それでも空間の端は見つからないし、時間は更に過ぎていく。 >ルーシー、もし子供が生まれたらそう名付けようと思ってた。ルーシー・スクラントン、ルーシー・ラング、アナと僕は語呂がいいと思ったんだ。いや、レッド…男だったらなんて名前にしようとしてたか、思い出せないんだ… >レッド、デイビッドってどう思う?デイビッド。覚えてるだろう?男の子だったらなんて名前…そう、それ。ごめん、起こしてし… >ルーシー、デイビッド、ずるいぞ。来いよ、ヘイ、走り回らないで、こういうことを言う時は冗談だよ。冗談だよ、来いよ、困ったな。冗談だよ もはや、スクラントン博士は自分の子供を夢想することを含めないと生きていられなくなってきていた。 もう絶対に得ることはできないだろう、自分の子供を。 博士が空間に囚われてからいつしか4年が過ぎ、5年が過ぎた。 先述したようにここの時間の流れは極めて遅い。博士の現実性崩壊が始まってからも、その進行は遅かった。 >&color(red){&font(i){5年、15日。}} >&color(red){&font(i){5年、15日。}} >&color(red){&font(i){5年、15日。}} >&color(red){&font(i){5年、15日。}} >&color(red){&font(i){5年、15日。}} >&color(red){&font(i){5年、15日。}} >&color(red){&font(i){5年、15日。}} >やめろ、それは痛いんだ。 ここまで博士は自らの身体が失われていっているにもかかわらず、「痛い」という感想は挙げていなかった。 博士が「レッド」に触れることが痛みを誘発している? >調子はどうだい、レッド?まとまってるか?素直になれよ、助けが必要なんだ…僕には助けが… …まとまってるか?って、絶対皮肉だよなあ。パネルの方が人体よりは丈夫なようだけど…。 >レッド、来いよ、それをやめろ、行くな。キツいのはわかってるよ。暗いのも。だけど-だけど-ここは暗くて、僕らはまだ一緒にいる。来いよレッド、ダメ、ダメだ、それはダメだ、レッド!こっちへ来い。一緒にいてくれ、レッド!僕はまだ触れるぞ!触れるんだ僕を見てまだ死なないでレッドダメだレッド! この録音を最後に、続く9ヶ月は無音であった。おそらく、博士が「レッド」から引き離されてしまったのだろう。 **〜5年11ヶ月21日 >&color(red){&font(i){5年、9ヶ月、3日。}}
 >&color(red){&font(i){5年、9ヶ月、3日。}}
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 >&color(red){&font(i){5年、9ヶ月、3日。}} >&color(red){&font(i){5年、9ヶ月、3日。}}
 >&color(red){&font(i){5年、9ヶ月、3日。}} >&color(red){&font(i){5年、9ヶ月、3日。}} >&color(red){&font(i){5年、9ヶ月、3日。}} >&color(red){&font(i){[自動メッセージが97回繰り返す。]}} >やあ、おチビちゃん、僕を置いて行ってしまったのかと思った…[スクラントン博士の声は激しく歪んで、小さい音声のため、判別できる限界に近い。] 何かの理由で「レッド」と離れ離れになっていたスクラントン博士が、9ヶ月たって再び「レッド」のもとにたどり着いていた。 >僕は死んだ。僕は死んだ、何回も。窒息しようとした、首を締めようとした。自分を噛みちぎろうとした、そして…そしてこの場所、現実ではない。僕は自分が地面にいるのを見て、そして-、そして-どこへも行けなかった。僕は逃げられない、逃げ道はない。ただ仰向けに寝ている。そして見る度に、自分が消えていっている。おお、神よ、これだけ自分がなくなっても、私は生きているのですか? すでに彼は自分の身体がどれだけ残っているのかわからなくなっていた。 少なくとも片足(移動は辛うじて可能)、心臓と肺。それくらいだった。 ''なんでこんな状態でまだ生きてるんだこの人。''それこそが極限ヒューム空間の恐ろしさなわけだが…。 スクラントン博士はこの絶望的な状況に耐えられなくなっており、累計で245回も自殺を試みた。 そしてそのいずれも失敗した。 この空間では死ぬことは許されない。生きたまま身体が分解されるのを、ただ感じ続けるしかないのだ。 ところが。 ここに来て、永遠とも思える生き地獄の空間に、明らかに異変が生じた。 >この場所は狭くなってきてる。レッド、どうやったんだ?僕は…この場所には今は確実に終りがある。神のみぞ知る…ベールみたいなものが遠くへ伸びていて、それに触れると凄く痛む。レッド、何が起きているんだ? >&color(red){&font(i){5年、10ヶ月、10日。}} >レッド、きみは硬い。まるで…違う、きみはとても硬い。君は…君は現実だ。そして…そして僕も君に触れていると現実になる。だけど…だけどそうするととても痛いんだ。君に触れていると自分がバラバラになりそうで… そう、無限に続いていたはずのSCP-3001空間が、急速に縮小し始めたのである。 いつしかその直径は3km、そして2kmまで圧縮されていた。 そして新たに形成された「壁」は光を発していた。これまで暗闇に満たされていた空間に生まれた光である。 しかし、壁へと伸びるベールのような光に触れると、痛い。さらに、「レッド」に触れても、また痛い。 …スクラントン博士が感じている痛みは、「自分より強い現実」に触れることで発生している痛みである。 通常の空間ならとうてい耐えられないようなレベルで崩壊している博士の身体がこれまで痛みを感じていなかった理由は、周囲のヒューム値の低さにあった。その崩壊には「現実味」がないのだ。 だが、よりヒューム値が高いものに触れると、それを通して博士の身体も「現実味」を帯びる。 現実味があり、その上で崩壊している体を抱えているから、痛いのである。 そしてスクラントン博士は、自分に迫っている壁から「波」が発生しており、実際には「窓」が開いていることを発見した。 ''…そうだ!この窓こそ、元の世界と繋がる通路なのだ!'' スクラントン博士はここに至り、ついにこの空間、SCP-3001が何たるかを看破したのだ。 >&color(red){&font(i){5年、10ヶ月、24日。}} > >アナ、アナ、聞こえるかい?この波…この場所…オーケー、想像してみてくれ、2つの現実は重ねられた2枚の紙みたいなものだ。この場所は間で潰されたような空間だ。並行に、2つの現実性しか存在できないはずだが、この場所は小さい、でも無限の第3の…第3の…間の領域なんだ。まるでポイントAからポイントBへの橋を横切る穴に落ちた時のように。クラス-Cワームホールを思い出してくれ。その理論はたくさんの穴があるワームホールについてのものだ。ここは…ここはそういうワームホールが導く場所の一つだ。それは別の世界へと導くのではなく、無へと導くのだ。行き止まりだ。この場所は行き止まりだ。クラス-C"ブロークン・エントリー"。 > >この波は、いずれにせよ、この場所と相互作用している並行現実から来ているんだ。つまりこの場所が極めて微小な隙間に存在していることを示している。そして…私とレッドを押している…なぜなら我々にはある程度の現実性が残っているからだ。そこへ向かって押して…あるいは吸い出している。次第に新しいワームホール…ホームへと向かう…ワームホールを作りながら。 > >… > >窓が閉じて、私が帰った時何が起こるんだ? SCP-3001とは、2つの平行次元をワームホールで繋いだ時にその重なった部分に発生する、次元の隙間なのだ。 2枚の紙の間にある隙間。2つの空間を繋ぐ橋の下にある穴。それがSCP-3001だ。 そしてスクラントン博士は、多数の出口を持つタイプのクラス-Cワームホール「ブロークン・エントリー」を実験で生成してしまい、それに飲まれることでここに放り込まれたのだ。 一方で、壁から発せられている波は、本来繋がるはずだった2つの平行次元からやって来ている。 そのうちの片方は、ここに来る前の次元ーーーすなわち、スクラントン博士が本来いたはずの財団世界だ。 …だがしかし、手放しで窓に飛び込めるほど、状況は甘くはなかった。 現在のボロボロの博士が、かつての正常な現実性のある空間に飛び出したらどうなるか? 当たり前だが、即死以外の運命はちょっと考えられない。 ただでさえ、現実性が少しでも高いものに触れただけでも、それまで流れなかった血を流し、胃も残ってないのに激しい吐血をするようになってしまっていたというのに。 >ああ、ごめん、責めてごめん、レッド、違うんだ、来てくれ。そんなつもりじゃなかった。見てくれ、君は僕の友達だ。わかった?君は、僕の最高の友達だ。でも…これに向き合おう、君のほうがここを出られる可能性は高いんだ-…僕をひとりにしてくれ、頼むよ、レッド?少しだけ…オーケー?僕は本当に… >[鳴き声と呻き]あと5年、あと5年、これが続いたら、あと5年自分を再安定化できたら、僕はどうすると思うレッド?! …スクラントン博士は、ここに来て''苦渋の、そして本当に勇気のある決断を下した。'' 「レッド」ことLSSパネルだけを自らの故郷の世界へと送り返し、自分はこの空間に居残って、自らの再安定化の方法をたった一人で考え直すことにしたのである。 そして、いよいよ「レッド」との別れの時が来た。 レッドを失ってしまえば、スクラントン博士は本当に孤独になる。もしかしたら永遠にそうなるかもしれない。 この時点でLSSパネルにはバチャバチャという大きなノイズが記録されていた。おそらく博士の身体から出た液状物質がパネルに当たって立てている音なのだろう。''…想像したくない。'' スクラントンがLSSパネルに残した最後の願い。そこには、自分に足りないものをレッドと、最愛の妻・アナに求める彼の姿があった。 レッドに、足を、肝臓を、腕を、そして手を。 アナに、片方の目を、キスするための唇を、食べるための舌を、そして───''脳の半分を。'' 逆に言うと、今の博士には''最早これらのいずれも存在していない''ということでもある。 いったいどんな姿になってるのか想像もつかない…というか、&color(crimson){''たぶん想像しちゃいけないと思う、うん。''} >[囁き。]オーケー、大丈夫だ…もう1つの出口を見つけた…まだ僕の体は十分残ってる…[音声の乱れとともに、震える笑い声。]あともう5年…何かを…思いつくまで…5年 [笑い声は泣き声に変わり、続く1時間で次第に静かになる。] ようやく博士は落ち着き、今度こそ「レッド」と永遠の別れを迎えたのだった。 >愛してるよレッド、愛してるよアナ。 > >&color(red){&font(i){5年、11ヶ月、20日。}} >[静かに泣く。]ア…ナ…[スクラントン博士の話し方はほぼ通常通りである。] [大きな金属音が聞こえ、続いてコントロールパネルを何かが叩くような音がもう一度聞こえる]
 >&color(red){&font(i){5年、11ヶ月、21日。}} これが、ロバート・スクラントン博士が記録した最後の言葉であった。 最初から最後まで、彼は最愛の妻を心の支えとして、艱難辛苦を堪え続けたのである。 **帰還 「レッド」ことLSSコントロールパネルは、スクラントン博士の期待通りにワームホールを通り抜けた。 そして2005年12月23日に、かつて実験が行われたサイト-120の現実性研究室Aに自発的に出現し、回収されたのである。 まだ録音機能は生きていたので、この時の財団世界側のやり取りもログとして残されている。 この時、サイト-120の現実性研究室Aでは、スクラントン博士の妻だったアナ・ラング博士が、夫の遺志を継ぎ、部下のマシュー・スキナー博士とともにヒュームフィールドに関する実験を行っていた。 そんな中に突然現れた物体。 その表面は、&color(crimson){血と吐瀉物と死の臭い、そしてそれらよりおぞましい「何か」によって覆われていた。} ラング博士は即座にスキナー博士にヒュームフィールドを維持するよう指示し、自らが実験室内に入った。 そして現れた物体を一目見るなり、半狂乱になって叫んだ。 >(ラング博士):ああ、神様、これは何-一体何?これは…これは…これはその…ああ神様。ロバート?ロバート?!、あなたなの?ああ神様、あなたじゃないと言って。あなたじゃない、ロバート?!私は、私は-どうやってこんなことに-?[濡れた靴音が再度聞こえる。] > >[電子的なビープ音。] > >(スキナー博士):マム。マム?何をしてるんです、触れてはいけませ- > >&color(red){&font(i){こちらはラング・スクラントン安定機のインターフェースです。おかえりなさいませラング博士、ご用命は-}} > >(ラング博士):音声ログにアクセスして。2000年1月2日から再生![潰れたような雑音が聞こえる。]ああ神様、神様、どうしてこんなことが起きたんです?誰かがこの上で破裂したみたい。これはまるで-[絶句。]これは…ああ神様これは…神様、神様、お願い、嘘、こんな- [喘ぎ、泣く。]灰色の 彼の灰色、ああ、神様、もう1つは、どこ…? もうお分かりだろう。 LSSパネルを覆っていたのは、あの空間で「現実性の拡散」によって引き裂かれ、バラバラになった人体の一部だったのだ。 そしてそこには、灰色の目が1個と、結婚指輪のはまった右手。 そしてLSSパネルは、スクラントン博士の最初の録音、2000年1月13日のオーディオファイルを再生した。 >名前、ロバート・スクラントン、39歳、誕生日、1961年9月19日。 > >好きな色。青。
 >好きな曲、 "リヴィング・オン・ア・プレイヤー"
 >妻…アナ… > >アナ… …ラング博士の最愛の夫、ロバート・スクラントン博士の半身は、''変わり果てた姿で彼女の前に再び現れたのであった。'' 最悪の現実を目の当たりにした上、スクラントン博士の「残り」のことに思い至ってしまったラング博士は、夥しい血がこぼれた床の上に卒倒。 慌ててスキナー博士が医療チームの出動要請を出すシーンで、報告書のログは締めくくられている。 夫が行方不明になってからおよそ6年。 公的には死亡扱いにされつつも、ラング博士はきっと彼の無事を祈り続け、いつか再び会える日を夢見続けていたであろうことは想像に難くない。 そこにこの届け物である。 ''…エグすぎる。というかあまりにも救いが無さすぎる。'' これを「ホラー」と呼ばずして、何と呼べばよいのか。 #center(){ &color(red){現実を指し示すのは、赤い光か、それとも赤い血か?} &sizex(7){&color(red){SCP-3001 - &ruby(レッド・リアリティ){Red Reality}}} } …さらに恐ろしいことに、&color(red){&bold(){スクラントン博士のもう半分はまだSCP-3001内で、赤い光さえ消えた空間で自らの「再安定化」を試みているのだろう。}} ---- ともあれ、スクラントン博士が身を挺して遺した記録により、SCP-3001の存在は財団の知るところとなった。 これにより、詳細な報告書を作成することができたのである。 *改めて、概要 SCP-3001は、瞬間的なクラス-C"ブロークン・エントリー"ワームホールの生成を通じてアクセス可能な逆説的な並行/ポケット"非次元"である。 SCP-3001は他の並行宇宙と同様に無限に拡大すると考えられているが、 ヒュームと時空の関係についてのKejelの現実性の法則に反して、SCP-3001はほぼ真空であり、0.032という極端に低いヒューム値を有している。 このあまりにも低いヒュームフィールドの存在により、内部の物体の劣化は極めて遅くなる。 通常ならとても生きられないようなダメージを受けていても、生体や電子機器の機能は奪われず、通常通り動作する。 シミュレーションによると、生物は''肉体から70%以上の組織が失われても、脳の40%が残存している限りは活動が可能''だという。 しかし、長い期間をこの空間で過ごした場合、中の物体がどうなるのかは、スクラントン博士が図らずも実証してくれた通りである。 物体はSCP-3001自体のヒュームレベルに近づき、物体自身のヒュームフィールドが崩壊するに従って重篤な組織や構造の損傷を引き起こしてしまうのだ。 すなわち、ヒューム値が高いものが低いものへと溶け出す、「拡散」現象である。 スクラントン博士は2000年1月2日、LSSの事故によってSCP-3001に飛ばされたが、LSSコントロールパネルの音声記録機能を使って内部の様子を克明に記した。 後の2005年12月23日に、より発達した現実歪曲技術の試験の予期しない副作用により、パネルが突然出現したことでこの記録も回収され、SCP-3001の研究の基礎となったのだ。 しかしながら、新たな技術が開発されているにもかかわらず、スクラントン博士の回収と再統合(そんなことできるの!?)は未だに成功していない。 というか、現在の博士の肉体や精神の状態がどんなことになっているのかは、(博士がまだ生存していればだが)全く不明である。 ……と、財団倫理委員会は考えている。要するに''お察しください。'' 特別収容プロトコルも策定はされているが、いかんせん相手は異空間。普通に収容できる代物ではない。 なので財団は封じ込めに重点を置き、さらなるSCP-3001への進入事故を起こすことのないよう、財団の現実歪曲技術をアップグレードし、SCP-3001に繋がる可能性のあるクラス-C"ブロークン・エントリー"ワームホールの発生を防ぐことを定めている。 SCP-3001自体の情報は学ぶべきであれば全レベルの職員が参照できるが、SCP-3001およびその関連技術の研究と実験は、サイト120、121、124、133から特別なクリアランス指定を受けたレベル3以上の職員に厳格に限定されている。 さて、生前のスクラントン博士がラング博士と共同で開発していたLSS。 実はこれは、ある機器のプロトタイプである、と報告書の脚注に記されている。 >LSSはプロトタイプであり、その設計は現在の"現実錨"プロジェクトの基礎となりました。 …もうお分かりだろう。 LSSの設計が、''あの「スクラントン現実錨」の基礎となっていたのである。'' 世界にはびこる様々なオブジェクトの収容においてチョイチョイ姿を見せる、不思議な財団の小道具。 しかし、実はその誕生の背景には、壮絶な過去が隠されていたのであった。 もし貴方がヒュームと現実世界、およびスクラントン現実錨についてもっと知りたいと考えるなら、報告書の脚注に従って、文書JEK-WT01とJEK-EB02を読むと良いだろう。 この2枚の文書はヒュームに関する様々な疑問と回答で構成されており、我々も実際に読める。 「[[FAQ;〜ヒュームって一体全体なんだ?>http://ja.scp-wiki.net/and-this-one-explains-humes]]」「[[同Part2>http://ja.scp-wiki.net/an-faq-part-two-or-your-hume-questions-answered]]」として日本語訳もされているので、せっかくなので目を通しておくことをお勧めする。 #region(蛇足) ……さて、この報告書には、一点気になる問題がある。 何が問題なのかというと、他でもない脚注である。 >LSSはプロトタイプであり、その設計は現在の"現実錨"プロジェクトの基礎となりました。 ここで思い返してみよう。''この報告書が書かれたのはいつだったか?'' LSSパネルの回収が行われたのは2005年末。そしてそもそものLSSを用いた実験が行われたのは、2000年初頭である。 であれば、SCP-3001の報告書の執筆は必然的にこれより後になる。 これを踏まえて、同じく脚注で紹介されている「[[FAQ;〜ヒュームって一体全体なんだ?>http://ja.scp-wiki.net/and-this-one-explains-humes]]」を読んでみる。 >最後に、[[SCP-2000>SCP-1422/SCP-2000]]の例を取り上げますか。このSCPを収容するために、スクラントン現実錨は建造され、配備されました。しかしながら、カント計数機が実働する以前は、現実錨がどう作動しているのか、何故動くのか不明でした。 ご存知の方も多いかもしれないが、SCP-2000とは財団の最終兵器たるThaumielオブジェクトの中でも筆頭に位置づけられる、「機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)」のことである。 スクラントン博士が作ったはずなのに作動している原理が不明、というのはおかしなことだ。 これはどういうことだ、とSCP-2000の報告書を見てみると…… >スクラントン現実錨(SRA)の開発はSCP-2000の初起動に先行するようで、&font(u){ロバート・スクラントン博士によって1889年に成されました。} 1889年。 LSSが開発され、実験が行われるよりずっと昔。というか当のスクラントン博士の誕生よりも前のことなのだ。 この2つの記述は、どこからどう見ても矛盾している。 そして、そのどちらにもロバート・スクラントン博士が関わっている。 あくまでSCP-2000もカノン(絶対的)ではない以上、SCP-2000とSCP-3001は別の世界線での記事であるのか。 それとも、SCP-2000による"再起動"が行われた影響で、記録が混乱しているのか。 あるいは。 ''SCP-3001に残されたスクラントン博士が何らかの形で過去へと移動し、そこで蘇生あるいは復活を遂げてスクラントン現実錨を作成した''のか。 真実は闇の中である。 ちなみに、[[SCP-1422>SCP-1422/SCP-2000]]や[[Di Molte Voci>Di Molte Voci(SCP Foundation)]]にもスクラントンを名乗る人物が登場する。 だがこちらは次席研究員であり博士では無いので、おそらくロバート・スクラントン博士とは別人。 これらのオブジェクトの発見は2007年以降で、SCP-3001の一件より後の話である。また微妙に専門分野も異なっている模様。 孤児だったロバートを拾ったアメリカ人夫妻の親族だったりするのだろうか? #endregion **余談 ロバート・スクラントン博士のもう一つの結末として、tale「Until Death」が書かれている。 ぶっちゃけると、ここでの主役はラング博士で、彼女が[[SCP-106]]「オールドマン」に殺される話である……のだが、問題はここで現れたオールドマン。 何とこのTaleでは、こいつの正体が&bold(){25年かけて自らを再構築したスクラントン博士である。} さすがにこれでは……と思ってしまうが、財団世界では割とよくあることなのがなんとも。 追記・編集はロバート・スクラントン博士の遺志を継ぐ気概のある方にお願いします。 ---- #right(){SCP-3001 - Red Reality by OZ Ouroboros http://www.scp-wiki.net/scp-3001 http://ja.scp-wiki.net/scp-3001 (和訳) この項目の内容は『[[クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス>https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/deed.ja]]』に従います。 } #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,95) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - リアリティのある描写が描かれたホラー、だと思ったらたった1行の注釈だけで感動的な内容すら想像させられる文章力に脱帽。さすが3000作品だわ -- 名無しさん (2017-05-09 12:28:41) - 1位と2位を争ったのが記憶処理と現実錨の根源に関わるものというあたりやはりX000は特別。ただ内輪ネタは衰退への第一歩なのであまり乱用はして欲しくない・・・。 -- 名無しさん (2017-05-09 13:13:25) - ロバート・スクラントン博士が勇気ある決断をし、更に甦ってなお現実錨を完成させたとすれば……財団にとっての英雄であると言っても過言じゃないな -- 名無しさん (2017-05-09 14:06:45) - ↑1 内容的にその辺はオマケも良いところじゃない? -- 名無しさん (2017-05-10 18:12:42) - 流石に独自考察に過ぎない? と思ったので後半を編集。「そもそも『 FAQ;〜ヒュームって一体全体なんだ?』とSCP-2000の記述も矛盾がある」という話も聞いたがよくわからんので引用個所はそのままに。 -- 名無しさん (2017-05-10 22:46:03) - 高すぎるヒューム値に押しつぶされたのが1000-JP、低すぎるヒューム値に落ちて行ったのが3001 -- 名無しさん (2017-05-11 13:37:00) - ホラー感味わいたいならこっち先に読んじゃ駄目だなw 解説が合間合間に入ると全く怖くなくなる -- 名無しさん (2017-05-15 10:39:52) - 言われなきゃ一生考察部分分からなかったわ -- 名無しさん (2017-05-16 15:54:29) - ああ、飛び散ってしまったであろうスクラントン博士の睾丸は回収できなかったのか?精子さえあれば子供はどうにか作れたのに -- 名無しさん (2017-07-21 00:59:38) - ↑ 色々と台無しにする反応やめーや -- 名無しさん (2017-07-22 15:41:36) - アナンタよりもこっちの方が3000に相応しい気が… -- 名無しさん (2017-07-24 08:00:48) - 現実錨より記憶処理薬の方が使い易い設定だしまぁ多少はね? -- 名無しさん (2017-08-11 22:41:23) - 俺はアナンタの方が3000に相応しいって思う -- 名無しさん (2017-08-13 05:59:48) - え?もう一回投票やり直そうって話? どれが相応しいと思うかは人それぞれで、それじゃあ永遠に決まらないから投票で多数決したわけで -- 名無しさん (2017-09-12 23:47:22) - そんな煽るようなコメントするほどじゃないだろ -- 名無しさん (2017-09-13 05:40:02) - これに唯一の救いを発見できたは -- 名無しさん (2017-10-22 14:56:46) - ヒューム値が高い状態の人間がヒューム値の低い空間にいると体が消えるのなら、現実改変者はどうなってるんだ? -- 名無しさん (2018-01-13 11:10:31) - >あくまで機械の範疇を出ない応答なら可能だったらしい。←これ違うでしょ?ロバートが自分でスマホのあれっぽい事言って自分で虚しくウケてみてるだけでしょ。原文で斜体になってないし。 -- 名無しさん (2018-02-24 04:10:00) - ↑5 SCP-1000「やりなおすだって?」 -- 名無しさん (2018-02-28 20:04:49) - 「スクラントン博士が身体を再構成した結果がSCP-106(オールドマン)で妻を腐らせて殺してしまう」内容のtaleが存在するらしい 救いなどなかった -- 名無しさん (2018-04-30 18:11:51) - ↑4 -- 名無しさん (2018-08-20 14:53:27) - ミスった、↑4一般人は自然状態でヒューム値1なだけで、現実改変者は自分のヒューム値をそれより高い値で固定する能力が元々備わってるんじゃないかな、そうじゃなきゃ現実にいたとしても周囲の低いヒューム値に希釈されて1に近づく(=異常性を失う)と思う -- 名無しさん (2018-08-20 15:01:03) - ブロークンエントリーはいずれ消滅して、並行世界と基底世界は融合するようだな。ヒューム値1の世界にいきなり飛び出したらレッドを放り出したときのようにロバートがバラけて死ぬみたいだが、ブロークンエントリーの自然消滅を待ったらどうなる?二つの世界が融合するんだろ。もしそうなら、領域が消滅した際にはロバートも融合しても不思議ではあるまい。もし融合に失敗してたら何もない空間からロバートのバラバラ遺体が出てくるはずだから、未来の話になるがね。 -- 名無しさん (2018-08-28 18:56:29) - ロバートが並行世界の自分と融合なりして生還したのち、時間遡行して現実錨を開発した。くらいしか矛盾しない話が無いんだよな。taleも他のSCPも並行世界のことだから記述が矛盾することはあるが。 -- 名無しさん (2018-08-28 19:20:19) - 財団職員同士で夫婦って珍しい 他にもいたりする? -- 名無しさん (2018-09-02 20:01:42) - えっぐいなあ…… -- 名無しさん (2018-11-12 23:18:42) - ↑2探せば結構夫婦もカップルもいる。有名所だとブライト三兄妹の両親やJ含めればアイスヴァインちゃんも親が職員同士 -- 名無しさん (2018-11-12 23:41:28) - 最近twitterで死んでバラバラになるゾウリムシの映像が流行ったけど、博士もこんな感じになったんだろうか…おそろしい -- 名無しさん (2019-01-27 21:18:58) - これ5年間コンソールに身体スリスリし続けてたらそこそこ無傷で帰ってこれたとかそういうのはないのか -- 名無しさん (2019-05-09 09:55:12) - これを読んだ後にSCP-976-JP(スクラントン現実猫)もお勧めしたい。一見トマト案件な項目名だが、3001を知ってると心にくるものがある -- 名無しさん (2019-07-15 23:09:10) - ↑4 ↑6 tale設定になるけど、財団職員夫婦の子供または片親かつ財団職員の子供を通わせる財団直属学校を作れる程度には夫婦も結構いるんだと思う。「孤独な放送室」から救出された女の子は財団の運営する学校で育ったあと、財団に就職するか記憶処理を受けて一般社会で生きるかを選択する事になり、一般人の彼氏に事情を全部打ち明けて夫婦で財団で働く道を選んだ -- 名無しさん (2019-12-08 12:58:01) - 2000で文明をリセットするたびに西暦もそれに応じて巻き戻されているなら最後の矛盾についても理解できる・・・かなぁ? -- 名無しさん (2020-01-11 08:33:52) - 極端にヒューム値に差があるなら中で現実改変起こして脱出できなかったのかって意見があったんだけどどうなんだろう -- 名無しさん (2020-02-28 21:04:41) - ⬆同感。 -- 名無しさん (2020-03-15 17:42:48) - 途中で送信してしまった。少なくとも自分より回りの空間の現実性が低いなら、スクラントン博士は相当強力な現実改編者として振る舞えそうだけど -- 名無しさん (2020-03-15 17:44:44) - キャストアウェイかな? -- 名無しさん (2020-03-30 16:48:26) - ↑↑現実改変するにもこの場所にはその改変する現実自体が存在しないんじゃない?知らんけど -- 名無しさん (2020-05-11 00:22:40) - 上の方にもあるけど、どのような形かはともかく「自分」を固定する能力が、本能的に(もしくは幼少期に)身につけてるんじゃないかな、現実改変能力者は。 -- 名無しさん (2020-10-21 17:09:18) - ヒューム値が”1”より高いか低いかなんじゃない? -- 名無しさん (2020-11-05 16:09:25) - 普通に2000とはカノンが違うだけじゃないの 他のSCP引き合いに出したら元から矛盾だらけだし  -- 名無しさん (2020-12-13 04:36:29) - 念じるだけで空間を移動できるなら、そして3001が非次元空間だと言うのなら、念じれば時間を戻す(四次元方向の移動)ことも可能なのでは?それで再構成してまた窓が開くまで過去へと移動を続けて脱出した…という仮説 -- 名無しさん (2021-01-05 18:23:56) - そもそもその主体が周囲の現実より高い現実性を持つ=現実改変能力者ではない。現実改変能力者はそういった能力を持つ人間であってその能力強度にヒューム値が用いられてるだけ。現実改変能力者の複数は周りのヒューム値と自分のヒューム値を能動的に変更可能だし一部のオブジェクトはそもそもヒューム値に干渉しないで現実改変を行ってる -- 名無しさん (2021-04-16 08:32:42) - ↑まあヘッドカノン次第ではあるが少なくともその説明はFAQヒュームって〜PART2の説明に反するな -- 名無しさん (2021-04-23 05:45:00) - 面白いけどあまりホラー感は無いな -- 名無しさん (2022-01-09 23:24:03) - これコズミックホラー風味にしただけでプロットもアイデアを映画キャストアウェイのほぼ丸パクリなのになんでこんな評価されてるの? -- 名無しさん (2022-01-15 07:10:44) - そう思って低評価してる人が貴方くらいしかいないからじゃないですかね -- 名無しさん (2022-01-15 15:21:03) - ホラーではないな ただ、ただ胸糞 -- 名無しさん (2022-04-18 09:53:48) - ドクターマンハッタンだな -- 名無しさん (2022-10-14 01:51:13) - 筐体作りハブを適応すれば矛盾が解決されるし、2000も扱いやすくなるぞ -- 名無しさん (2022-12-04 11:45:19) - ロバートの唯一の心の支えだった赤色の現実(LSSパネルのレッド)、拡散した彼を両側から蝕む危険な(=赤い)現実、そしてアナに突きつけられた真っ赤な現実 か -- 名無しさん (2023-01-27 22:21:51) - フレーバーテキストが本当に好き 口に出して言いたい -- 名無しさん (2023-05-27 03:37:05) #comment #areaedit(end) }
&font(#6495ED){登録日}:2017/05/09 Tue 11:26:47 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 20 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- #center(){&font(b,i,red){小さな光が映し出すのは、救いようのない&ruby(Red Reality){真っ赤な現実}}} SCP-3001とは、シェアード・ワールドである「[[SCP Foundation]]」において取り扱われている[[オブジェクト>オブジェクト(SCP Foundation)]]の一つである。 項目名は「レッド・リアリティ」、[[オブジェクトクラス>オブジェクトクラス(SCP Foundation)]]はEuclidである。 このオブジェクトはSCP-3000コンテストの優秀賞を受賞した作品であり、「[[アナンタシェーシャ>SCP-3000]]」と最後まで接戦を繰り広げ、最終的に2位となったことで3001のナンバーを得た。 最優秀賞と同じく、SCP財団が保有するとある超科学機器の生い立ちに関する物語でもあるのだが、当該コンテストのテーマはずばり''「ホラー」''であり、このSCPも最優秀賞に負けず劣らずの恐怖を………''ぶっちゃけると&color(crimson){かなりエグい内容}なので、充分に精神力のある時以外は閲覧をオススメしない。'' *まずは大雑把な概要 SCP-3001は2000年1月2日に財団がサイト-120で行なっていた現実歪曲試験中に初めて発見された『異常空間』である。 サイト-120の主任、ロバート・スクラントン博士と妻のアナ・ラング博士は共同で現実操作に関する実験を行い、『ラング-スクラントン安定機』、略称LSSの開発を手がけていた。 >※ここで「スクラントン!?」とビビッときた貴方はなかなかのSCPファン(あるいは財団職員)に違いない。そう、[[現実改変>現実改変(SCP Foundation)]]オブジェクトへの対策として今や財団には必要不可欠となっている、あの''「スクラントン現実錨」''の原型の開発者、その人だ。 しかし、予期せぬ地震により現実性研究室AのLSSが破損し、ロバート・スクラントン博士はLSSのコントロールパネルとともに異空間であるSCP-3001へと吸い込まれてしまう。 スクラントン博士は公式には死亡と扱われたが、実際には博士とLSSパネルはSCP-3001内部でも少なくとも5年11ヶ月21日は生存・機能を続けていた。 果たして異空間で博士はどうなってしまったのか? ---- *博士の音声ログ要約 報告書の大半は、SCP-3001内部にいるスクラントン博士がLSSパネルの録音機能を用いて記録した音声ログの文書化によって構成されている。 **〜0年2ヶ月8日 SCP-3001に飛ばされてしまったスクラントン博士は、必死になって出口を探し求めてパニック状態で騒ぎ回っており、LSSパネルが一緒に飛んできたことに気づくまで11日かかった。 最初にLSSパネルが拾った時の言葉がこれ。 >名前、ロバート・スクラントン、39歳、誕生日、1961年9月19日。 > >好きな色。青。
 >好きな曲、 "リヴィング・オン・ア・プレイヤー"
 >妻…アナ… > >アナ… この時点では録音中であることを知らないが、その後数時間してスクラントン博士は本来なら故障して機能しないはずのLSSパネルが録音をしていることを知る。&s(){何かがおかしい。} すでに非常な空腹と脱水を経験し、苦しんでいたが、この場所では空腹によって死ぬことがないということにも気づいた。つまり、時間は十分にある。 そして博士は、この空間には自分とLSSパネルの他に誰もいないことを把握した。 世界は完全に暗闇で、唯一見えているのはLSSパネルの録音機能を示す、&color(#F54738){点滅する赤い光}。それがこの空間の全てだった。 博士は自らのいる空間をSCPとして分類し、この空間の研究を宣言した。 >…OK、それでは&font(i){[深く息を吸い、吐き出す。]} > >私の名前は…ロバート・スクラントン。サイト…120の主任研究員だった。さらに発達した対抗手段の開発のために、様々な現実歪曲型SCPの研究を行う財団施設だ。 > >最後に…赤いライト、私に話してくれ。 > >&color(red){&font(i){2ヶ月、8日、16時間。}} > >赤いライトの言うには、私は、空のポケット次元と私が考えている空間にとらわれているようだ。1人で。…そう、1人で。全く1人で。 > >私はこの場所をSCPと呼ぶ…わからない。我々がどこにいるのか私は忘れてしまった。混乱してる。私は過去に何が起こったのか覚えていない。赤いライト、もう一度繰り返してくれ。 > >&color(red){&font(i){2ヶ月、8日、16時間。}} > >だが…周囲にはこの点に関して議論する相手もいない。私自身をつなぎとめるために、このコントロールパネルへ話しかけている。わ…私は記録し続けなければならない。将来、私のように終わる不幸な人間が出るかもしれない。そして…もしこれが外に出ることが出来たなら、それを発生することを防ぐ助けになるかもしれない。これが今私にできる唯一のことだ。そして私には何かすることが必要なのだ、ハハハハ… > >…だから、ロバート…スクラントンは…新しいSCPを、将来の研究目的で記録する。それがやるべきことだ。始めるぞ! **〜0年2ヶ月24日 スクラントン博士は、まず1週間ほどをかけて空間についての分析を行ない、仮の報告書のような体裁で記録する。 ・オブジェクトクラスは多分Euclid ・ここは地球上ではない空間で、よほど酷い現実歪曲事故でもないとまず入れない場所である ・出口はあるかどうか分からないが、探し続けなければならない ・頭や顔がヒリヒリする感覚がある ・ライトのある平面状を歩くように行動していたが、やや思い違いをしていた ・空間は虚無で、地面はなく、自分は黒い濃いゲルの中にいるような状態になっている ・強く念じれば、「ゲル」の中を泳ぐようにして移動できる ・ここは一種の現実性ギャップであるが、完全ではない(完全なら全く動けないはず) ・時間の流れが極めて遅く、それゆえに空腹や脱水で死なない >&color(red){&font(i){2ヶ月、22日、3時間。}} >アップデートのために戻ってきたぞ、レッド、サー!ハハハ、来いよレッド、気楽に構えてくれよ(lighten up)。ハ!駄洒落のつもりじゃなかった…レッド、ちょっとは笑えよ、面白いだろう! 博士は空想上でも話し相手が欲しかったのか、LSSパネルの赤い光に&color(red){「レッド」}と名前をつけ、色々な言葉を投げかけた。 …むろん相手は機械なので返答はないが、この交流は音声ログの最後まで続くことになる。 続いてスクラントン博士は、自分がいる空間のヒューム値がものすごく低いものであることを知った。 標準のヒュームスケール((普通の世界のヒュームスケールは1として、博士が今までの実験で試した最低値が0.8。))にしてなんと''0.04くらい''。 現在の財団が持つ最先端の機器を用いても、0.4まで下げるのが限界だった((博士は基本的にヒュームフィールドを高める実験の方を多く行なっていた))ところに、その1/10以下である。((この低いヒューム値のせいで、この空間は時間も空間も極めて小さなスケールで存在していた)) 対するスクラントン博士側の突入時のヒューム値は、2.6〜3.2と予定よりやや高いレベル((LSSが事故を起こしたことによる))になっていた。 博士は「kejelの現実性の法則」(第4まである模様)を使い、このヒューム差が自分に与える影響を計算した結果、''恐ろしい結論が導き出される。'' >アナ、こんな時はどうしたら良い?君の助けが必要なんだ。この…このヒリヒリした感じ…僕のヒュームフィールドが散逸している…僕の…僕の現実性が薄れていく…3年、僕は3年以内に自分自身を安定化させる必要がある。 スクラントン博士の持つ高いヒューム値がSCP-3001によって希釈され、''スクラントン博士の身体そのものが現実性を失い、「拡散」してしまう''ことが分かったのだ。 スクラントン博士はこの危機的状況を何とかして打開できないか思考を巡らせた。 自分のヒュームフィールドを集め、拡散を防ぐ手段は理論上の存在にすぎず、とてもこの場で試せる状態ではなかった。 そこで、この空間は現実性ギャップ、要は「谷」のような存在だと考え、その「壁」を探してたどり着くことを目指す第2の手段を講じた。 幸いにして、あまりにもヒューム値が低い空間なので時間の流れが遅く、「その時」までに3年程度の猶予があった。 博士は「レッド」から一時的に離れ、「壁」を求めて虚無の空間へと泳ぎ出ていった。 **〜2年9ヶ月28日 スクラントン博士は特定の方向へと2ヶ月も移動し続けたが、そこに求めるような「壁」は存在せず、どこまでも、虚無の空間で満たされていた。結果は、完全な徒労に終わった。 もう2ヶ月かけて「レッド」の位置まで戻った博士は、今度は谷の「底」を目指して沈下。しかしこれも成果はなかった。 >&color(red){&font(i){10ヶ月、28日、15時間。}}
 >底なんて無い。そしてお前もクソ野郎だ。 >ごめん、レッド、行かないでくれ。消したりしてすまない。戻ってきてくれ、頼む- >…僕は40になった。誕生日おめでとう、ロバート。 スクラントン博士は、自らの過去を回想し、「レッド」に語って聞かせた。 自分は本当は中国人であるが、箱に入れられて親に捨てられ、アメリカ人の夫婦に拾われて養子として育ったこと。 子供の頃はコミックストアでバイトをしていたこと。スパイダーマンが好きだったこと。 アナとは1988年にサイトで出会ったこと。彼女の緑の目は、自分の灰色の目よりずっと美しかったこと。 1991年に結婚し、1週間のハネムーンを満喫したこと。 >レッド、君はいい聞き手だ。でも君自身について話してるのを聞いたことはないな。言ってみろよ、恥ずかしがるなよ。ここには他に誰もいない。そうだろう?ハハハ…ハハハハハ… 博士はレッドにとにかく聞き手になっていて欲しかったのだ。 なぜなら、頭が痛く、「足が永遠に眠ってしまうような感覚」を感じ始めていたから。 >"申し訳ありません、ロバート。それは出来かねます" ハハハ、レッド、君は面白いな。 原文において二人が発言する際は必ず改行があり、またパネルの音声は斜体で表記されているため、恐らく&bold(){これは博士の一人劇なのだろう。} しかし、そのような話をしていく中で、博士は「レッド」ことLSSパネルから自分とアナの写真が失われていたことに気づき、大いに錯乱したような言動を発した。 LSSパネルも博士と同じく、ヒュームフィールドの拡散を起こしているのだろうか。 …話が全て終わった頃には、LSSパネルの計時は1年2ヶ月27日を読み上げていた。 その後は、コントロールパネルが時間を告げる自動音声のみが、1〜3日おき、時として数カ月のギャップを挟んで記録されている。ときどきスクラントン博士のすすり泣き、叫び、不明瞭な発話も聞こえる。 このような録音は2年7ヶ月28日に達するまで続き、その後は全く音を拾うことなく2ヶ月が過ぎた。 **〜5年9ヶ月3日 ついに、博士にとってのデッドラインである3年が過ぎ去ってしまった。 録音されるスクラントン博士の声は、明らかに歪み始めていた。 >ロバート…寒い。私は…私はもはや足を感じられない。私は…私は以前話した…地点に到達したのだと…思う。低ヒュームフィールド…拡散…平衡…馬鹿な…ゴミの…山… >私にはもはやここにおける現実とは何かわからない。私が現実なのかはっきりしない。あるいは…それに近い…もし…もし私が本当にこうして消えるなら…わ…私はまだ死にたくない。死にたくない。おお神よ、私は死にたくない… 博士と「レッド」は、ついに現実性の崩壊を起こし始めてしまったのである。 >僕はタップダンスが本当に苦手なんだ。もう足が感じられない。オーケー、じゃあ君がやってみてくれ、レッド。 >Kejelの法則ではヒュームフィールドは拡散し続けると規定される。Kejelの法則によるとこのまま続けば私の睾丸もそのうち脱落する。 >ハハハ、外に出たら科学の話をたくさんしないとならないぞ。この場所は法則がメチャクチャで、今まさに僕の手も崩れていってるんだ。 >僕…僕の手。手がお互いにすり抜け…レッド、レッド、レッド!レッド、助けて、助けてくれ、僕の手、僕の手を感じないんだ。お互いにすり抜けてまるで…まるで氷水みたいに、レッド、僕は、ああ神様、神様… >ハア…ハァ…ハア…レッド、知って、知ってるだろう、伯父さんがよくやるいたずら…親指が取れたように見せかけるやつで、実は挟んで隠してるやつ。 >それをやってみたんだ。親指で。痛みも感じない、ただ外れただけ。思うんだけど…ああ神よ、私は病気なのでしょうか。わたーわたー[嘔吐する音]指は浮かんでいるけど・・・拾えない、手がすり抜ける。ああ、ああ神様、私、私はー >眠っていると…手が頭に入ってくる。仰向けに寝ている。 上記は抜粋だが、これだけでも何が起こっているのか知るには十分すぎる。 克明に綴られた、博士の身体の変異。 ヒューム値が高い物体がヒューム値の低い空間へと溶け出し、平衡を保つ働き。自然法則に則った異常性のない移動。 さながら、角砂糖を水に溶かすようなものである。 &color(crimson){''その角砂糖が博士の身体の部位だということを除けば。''} 博士の身体は先端から引き延ばされたように変形し、互いにすり抜けてしまうようになった。 そして、やがて身体から「外れて」いきつつあったのだ。 手の小指、親指、左手は蜘蛛の巣のように延び(結婚指輪は右手に移せた)、片方の腎臓、そして片方の足…。 博士はそれでも諦めずに、がむしゃらに移動を繰り返していた。 斜め上に6ヶ月、次に斜め下…いや真下に8ヶ月。 1日に10〜15km、2ヶ月間繰り返して600kmの距離を潜行。帰るにはもっとかかった。 それでも空間の端は見つからないし、時間は更に過ぎていく。 >ルーシー、もし子供が生まれたらそう名付けようと思ってた。ルーシー・スクラントン、ルーシー・ラング、アナと僕は語呂がいいと思ったんだ。いや、レッド…男だったらなんて名前にしようとしてたか、思い出せないんだ… >レッド、デイビッドってどう思う?デイビッド。覚えてるだろう?男の子だったらなんて名前…そう、それ。ごめん、起こしてし… >ルーシー、デイビッド、ずるいぞ。来いよ、ヘイ、走り回らないで、こういうことを言う時は冗談だよ。冗談だよ、来いよ、困ったな。冗談だよ もはや、スクラントン博士は自分の子供を夢想することを含めないと生きていられなくなってきていた。 もう絶対に得ることはできないだろう、自分の子供を。 博士が空間に囚われてからいつしか4年が過ぎ、5年が過ぎた。 先述したようにここの時間の流れは極めて遅い。博士の現実性崩壊が始まってからも、その進行は遅かった。 >&color(red){&font(i){5年、15日。}} >&color(red){&font(i){5年、15日。}} >&color(red){&font(i){5年、15日。}} >&color(red){&font(i){5年、15日。}} >&color(red){&font(i){5年、15日。}} >&color(red){&font(i){5年、15日。}} >&color(red){&font(i){5年、15日。}} >やめろ、それは痛いんだ。 ここまで博士は自らの身体が失われていっているにもかかわらず、「痛い」という感想は挙げていなかった。 博士が「レッド」に触れることが痛みを誘発している? >調子はどうだい、レッド?まとまってるか?素直になれよ、助けが必要なんだ…僕には助けが… …まとまってるか?って、絶対皮肉だよなあ。パネルの方が人体よりは丈夫なようだけど…。 >レッド、来いよ、それをやめろ、行くな。キツいのはわかってるよ。暗いのも。だけど-だけど-ここは暗くて、僕らはまだ一緒にいる。来いよレッド、ダメ、ダメだ、それはダメだ、レッド!こっちへ来い。一緒にいてくれ、レッド!僕はまだ触れるぞ!触れるんだ僕を見てまだ死なないでレッドダメだレッド! この録音を最後に、続く9ヶ月は無音であった。おそらく、博士が「レッド」から引き離されてしまったのだろう。 **〜5年11ヶ月21日 >&color(red){&font(i){5年、9ヶ月、3日。}}
 >&color(red){&font(i){5年、9ヶ月、3日。}}
 >&color(red){&font(i){5年、9ヶ月、3日。}}
 >&color(red){&font(i){5年、9ヶ月、3日。}} >&color(red){&font(i){5年、9ヶ月、3日。}}
 >&color(red){&font(i){5年、9ヶ月、3日。}} >&color(red){&font(i){5年、9ヶ月、3日。}} >&color(red){&font(i){5年、9ヶ月、3日。}} >&color(red){&font(i){[自動メッセージが97回繰り返す。]}} >やあ、おチビちゃん、僕を置いて行ってしまったのかと思った…[スクラントン博士の声は激しく歪んで、小さい音声のため、判別できる限界に近い。] 何かの理由で「レッド」と離れ離れになっていたスクラントン博士が、9ヶ月たって再び「レッド」のもとにたどり着いていた。 >僕は死んだ。僕は死んだ、何回も。窒息しようとした、首を締めようとした。自分を噛みちぎろうとした、そして…そしてこの場所、現実ではない。僕は自分が地面にいるのを見て、そして-、そして-どこへも行けなかった。僕は逃げられない、逃げ道はない。ただ仰向けに寝ている。そして見る度に、自分が消えていっている。おお、神よ、これだけ自分がなくなっても、私は生きているのですか? すでに彼は自分の身体がどれだけ残っているのかわからなくなっていた。 少なくとも片足(移動は辛うじて可能)、心臓と肺。それくらいだった。 ''なんでこんな状態でまだ生きてるんだこの人。''それこそが極限ヒューム空間の恐ろしさなわけだが…。 スクラントン博士はこの絶望的な状況に耐えられなくなっており、累計で245回も自殺を試みた。 そしてそのいずれも失敗した。 この空間では死ぬことは許されない。生きたまま身体が分解されるのを、ただ感じ続けるしかないのだ。 ところが。 ここに来て、永遠とも思える生き地獄の空間に、明らかに異変が生じた。 >この場所は狭くなってきてる。レッド、どうやったんだ?僕は…この場所には今は確実に終りがある。神のみぞ知る…ベールみたいなものが遠くへ伸びていて、それに触れると凄く痛む。レッド、何が起きているんだ? >&color(red){&font(i){5年、10ヶ月、10日。}} >レッド、きみは硬い。まるで…違う、きみはとても硬い。君は…君は現実だ。そして…そして僕も君に触れていると現実になる。だけど…だけどそうするととても痛いんだ。君に触れていると自分がバラバラになりそうで… そう、無限に続いていたはずのSCP-3001空間が、急速に縮小し始めたのである。 いつしかその直径は3km、そして2kmまで圧縮されていた。 そして新たに形成された「壁」は光を発していた。これまで暗闇に満たされていた空間に生まれた光である。 しかし、壁へと伸びるベールのような光に触れると、痛い。さらに、「レッド」に触れても、また痛い。 …スクラントン博士が感じている痛みは、「自分より強い現実」に触れることで発生している痛みである。 通常の空間ならとうてい耐えられないようなレベルで崩壊している博士の身体がこれまで痛みを感じていなかった理由は、周囲のヒューム値の低さにあった。その崩壊には「現実味」がないのだ。 だが、よりヒューム値が高いものに触れると、それを通して博士の身体も「現実味」を帯びる。 現実味があり、その上で崩壊している体を抱えているから、痛いのである。 そしてスクラントン博士は、自分に迫っている壁から「波」が発生しており、実際には「窓」が開いていることを発見した。 ''…そうだ!この窓こそ、元の世界と繋がる通路なのだ!'' スクラントン博士はここに至り、ついにこの空間、SCP-3001が何たるかを看破したのだ。 >&color(red){&font(i){5年、10ヶ月、24日。}} > >アナ、アナ、聞こえるかい?この波…この場所…オーケー、想像してみてくれ、2つの現実は重ねられた2枚の紙みたいなものだ。この場所は間で潰されたような空間だ。並行に、2つの現実性しか存在できないはずだが、この場所は小さい、でも無限の第3の…第3の…間の領域なんだ。まるでポイントAからポイントBへの橋を横切る穴に落ちた時のように。クラス-Cワームホールを思い出してくれ。その理論はたくさんの穴があるワームホールについてのものだ。ここは…ここはそういうワームホールが導く場所の一つだ。それは別の世界へと導くのではなく、無へと導くのだ。行き止まりだ。この場所は行き止まりだ。クラス-C"ブロークン・エントリー"。 > >この波は、いずれにせよ、この場所と相互作用している並行現実から来ているんだ。つまりこの場所が極めて微小な隙間に存在していることを示している。そして…私とレッドを押している…なぜなら我々にはある程度の現実性が残っているからだ。そこへ向かって押して…あるいは吸い出している。次第に新しいワームホール…ホームへと向かう…ワームホールを作りながら。 > >… > >窓が閉じて、私が帰った時何が起こるんだ? SCP-3001とは、2つの平行次元をワームホールで繋いだ時にその重なった部分に発生する、次元の隙間なのだ。 2枚の紙の間にある隙間。2つの空間を繋ぐ橋の下にある穴。それがSCP-3001だ。 そしてスクラントン博士は、多数の出口を持つタイプのクラス-Cワームホール「ブロークン・エントリー」を実験で生成してしまい、それに飲まれることでここに放り込まれたのだ。 一方で、壁から発せられている波は、本来繋がるはずだった2つの平行次元からやって来ている。 そのうちの片方は、ここに来る前の次元ーーーすなわち、スクラントン博士が本来いたはずの財団世界だ。 …だがしかし、手放しで窓に飛び込めるほど、状況は甘くはなかった。 現在のボロボロの博士が、かつての正常な現実性のある空間に飛び出したらどうなるか? 当たり前だが、即死以外の運命はちょっと考えられない。 ただでさえ、現実性が少しでも高いものに触れただけでも、それまで流れなかった血を流し、胃も残ってないのに激しい吐血をするようになってしまっていたというのに。 >ああ、ごめん、責めてごめん、レッド、違うんだ、来てくれ。そんなつもりじゃなかった。見てくれ、君は僕の友達だ。わかった?君は、僕の最高の友達だ。でも…これに向き合おう、君のほうがここを出られる可能性は高いんだ-…僕をひとりにしてくれ、頼むよ、レッド?少しだけ…オーケー?僕は本当に… >[鳴き声と呻き]あと5年、あと5年、これが続いたら、あと5年自分を再安定化できたら、僕はどうすると思うレッド?! …スクラントン博士は、ここに来て''苦渋の、そして本当に勇気のある決断を下した。'' 「レッド」ことLSSパネルだけを自らの故郷の世界へと送り返し、自分はこの空間に居残って、自らの再安定化の方法をたった一人で考え直すことにしたのである。 そして、いよいよ「レッド」との別れの時が来た。 レッドを失ってしまえば、スクラントン博士は本当に孤独になる。もしかしたら永遠にそうなるかもしれない。 この時点でLSSパネルにはバチャバチャという大きなノイズが記録されていた。おそらく博士の身体から出た液状物質がパネルに当たって立てている音なのだろう。''…想像したくない。'' スクラントンがLSSパネルに残した最後の願い。そこには、自分に足りないものをレッドと、最愛の妻・アナに求める彼の姿があった。 レッドに、足を、肝臓を、腕を、そして手を。 アナに、片方の目を、キスするための唇を、食べるための舌を、そして───''脳の半分を。'' 逆に言うと、今の博士には''最早これらのいずれも存在していない''ということでもある。 いったいどんな姿になってるのか想像もつかない…というか、&color(crimson){''たぶん想像しちゃいけないと思う、うん。''} >[囁き。]オーケー、大丈夫だ…もう1つの出口を見つけた…まだ僕の体は十分残ってる…[音声の乱れとともに、震える笑い声。]あともう5年…何かを…思いつくまで…5年 [笑い声は泣き声に変わり、続く1時間で次第に静かになる。] ようやく博士は落ち着き、今度こそ「レッド」と永遠の別れを迎えたのだった。 >愛してるよレッド、愛してるよアナ。 > >&color(red){&font(i){5年、11ヶ月、20日。}} >[静かに泣く。]ア…ナ…[スクラントン博士の話し方はほぼ通常通りである。] [大きな金属音が聞こえ、続いてコントロールパネルを何かが叩くような音がもう一度聞こえる]
 >&color(red){&font(i){5年、11ヶ月、21日。}} これが、ロバート・スクラントン博士が記録した最後の言葉であった。 最初から最後まで、彼は最愛の妻を心の支えとして、艱難辛苦を堪え続けたのである。 **帰還 「レッド」ことLSSコントロールパネルは、スクラントン博士の期待通りにワームホールを通り抜けた。 そして2005年12月23日に、かつて実験が行われたサイト-120の現実性研究室Aに自発的に出現し、回収されたのである。 まだ録音機能は生きていたので、この時の財団世界側のやり取りもログとして残されている。 この時、サイト-120の現実性研究室Aでは、スクラントン博士の妻だったアナ・ラング博士が、夫の遺志を継ぎ、部下のマシュー・スキナー博士とともにヒュームフィールドに関する実験を行っていた。 そんな中に突然現れた物体。 その表面は、&color(crimson){血と吐瀉物と死の臭い、そしてそれらよりおぞましい「何か」によって覆われていた。} ラング博士は即座にスキナー博士にヒュームフィールドを維持するよう指示し、自らが実験室内に入った。 そして現れた物体を一目見るなり、半狂乱になって叫んだ。 >(ラング博士):ああ、神様、これは何-一体何?これは…これは…これはその…ああ神様。ロバート?ロバート?!、あなたなの?ああ神様、あなたじゃないと言って。あなたじゃない、ロバート?!私は、私は-どうやってこんなことに-?[濡れた靴音が再度聞こえる。] > >[電子的なビープ音。] > >(スキナー博士):マム。マム?何をしてるんです、触れてはいけませ- > >&color(red){&font(i){こちらはラング・スクラントン安定機のインターフェースです。おかえりなさいませラング博士、ご用命は-}} > >(ラング博士):音声ログにアクセスして。2000年1月2日から再生![潰れたような雑音が聞こえる。]ああ神様、神様、どうしてこんなことが起きたんです?誰かがこの上で破裂したみたい。これはまるで-[絶句。]これは…ああ神様これは…神様、神様、お願い、嘘、こんな- [喘ぎ、泣く。]灰色の 彼の灰色、ああ、神様、もう1つは、どこ…? もうお分かりだろう。 LSSパネルを覆っていたのは、あの空間で「現実性の拡散」によって引き裂かれ、バラバラになった人体の一部だったのだ。 そしてそこには、灰色の目が1個と、結婚指輪のはまった右手。 そしてLSSパネルは、スクラントン博士の最初の録音、2000年1月13日のオーディオファイルを再生した。 >名前、ロバート・スクラントン、39歳、誕生日、1961年9月19日。 > >好きな色。青。
 >好きな曲、 "リヴィング・オン・ア・プレイヤー"
 >妻…アナ… > >アナ… …ラング博士の最愛の夫、ロバート・スクラントン博士の半身は、''変わり果てた姿で彼女の前に再び現れたのであった。'' 最悪の現実を目の当たりにした上、スクラントン博士の「残り」のことに思い至ってしまったラング博士は、夥しい血がこぼれた床の上に卒倒。 慌ててスキナー博士が医療チームの出動要請を出すシーンで、報告書のログは締めくくられている。 夫が行方不明になってからおよそ6年。 公的には死亡扱いにされつつも、ラング博士はきっと彼の無事を祈り続け、いつか再び会える日を夢見続けていたであろうことは想像に難くない。 そこにこの届け物である。 ''…エグすぎる。というかあまりにも救いが無さすぎる。'' これを「ホラー」と呼ばずして、何と呼べばよいのか。 #center(){ &color(red){現実を指し示すのは、赤い光か、それとも赤い血か?} &sizex(7){&color(red){SCP-3001 - &ruby(レッド・リアリティ){Red Reality}}} } …さらに恐ろしいことに、&color(red){&bold(){スクラントン博士のもう半分はまだSCP-3001内で、赤い光さえ消えた空間で自らの「再安定化」を試みているのだろう。}} ---- ともあれ、スクラントン博士が身を挺して遺した記録により、SCP-3001の存在は財団の知るところとなった。 これにより、詳細な報告書を作成することができたのである。 *改めて、概要 SCP-3001は、瞬間的なクラス-C"ブロークン・エントリー"ワームホールの生成を通じてアクセス可能な逆説的な並行/ポケット"非次元"である。 SCP-3001は他の並行宇宙と同様に無限に拡大すると考えられているが、 ヒュームと時空の関係についてのKejelの現実性の法則に反して、SCP-3001はほぼ真空であり、0.032という極端に低いヒューム値を有している。 このあまりにも低いヒュームフィールドの存在により、内部の物体の劣化は極めて遅くなる。 通常ならとても生きられないようなダメージを受けていても、生体や電子機器の機能は奪われず、通常通り動作する。 シミュレーションによると、生物は''肉体から70%以上の組織が失われても、脳の40%が残存している限りは活動が可能''だという。 しかし、長い期間をこの空間で過ごした場合、中の物体がどうなるのかは、スクラントン博士が図らずも実証してくれた通りである。 物体はSCP-3001自体のヒュームレベルに近づき、物体自身のヒュームフィールドが崩壊するに従って重篤な組織や構造の損傷を引き起こしてしまうのだ。 すなわち、ヒューム値が高いものが低いものへと溶け出す、「拡散」現象である。 スクラントン博士は2000年1月2日、LSSの事故によってSCP-3001に飛ばされたが、LSSコントロールパネルの音声記録機能を使って内部の様子を克明に記した。 後の2005年12月23日に、より発達した現実歪曲技術の試験の予期しない副作用により、パネルが突然出現したことでこの記録も回収され、SCP-3001の研究の基礎となったのだ。 しかしながら、新たな技術が開発されているにもかかわらず、スクラントン博士の回収と再統合(そんなことできるの!?)は未だに成功していない。 というか、現在の博士の肉体や精神の状態がどんなことになっているのかは、(博士がまだ生存していればだが)全く不明である。 ……と、財団倫理委員会は考えている。要するに''お察しください。'' 特別収容プロトコルも策定はされているが、いかんせん相手は異空間。普通に収容できる代物ではない。 なので財団は封じ込めに重点を置き、さらなるSCP-3001への進入事故を起こすことのないよう、財団の現実歪曲技術をアップグレードし、SCP-3001に繋がる可能性のあるクラス-C"ブロークン・エントリー"ワームホールの発生を防ぐことを定めている。 SCP-3001自体の情報は学ぶべきであれば全レベルの職員が参照できるが、SCP-3001およびその関連技術の研究と実験は、サイト120、121、124、133から特別なクリアランス指定を受けたレベル3以上の職員に厳格に限定されている。 さて、生前のスクラントン博士がラング博士と共同で開発していたLSS。 実はこれは、ある機器のプロトタイプである、と報告書の脚注に記されている。 >LSSはプロトタイプであり、その設計は現在の"現実錨"プロジェクトの基礎となりました。 …もうお分かりだろう。 LSSの設計が、''あの「スクラントン現実錨」の基礎となっていたのである。'' 世界にはびこる様々なオブジェクトの収容においてチョイチョイ姿を見せる、不思議な財団の小道具。 しかし、実はその誕生の背景には、壮絶な過去が隠されていたのであった。 もし貴方がヒュームと現実世界、およびスクラントン現実錨についてもっと知りたいと考えるなら、報告書の脚注に従って、文書JEK-WT01とJEK-EB02を読むと良いだろう。 この2枚の文書はヒュームに関する様々な疑問と回答で構成されており、我々も実際に読める。 「[[FAQ;〜ヒュームって一体全体なんだ?>http://ja.scp-wiki.net/and-this-one-explains-humes]]」「[[同Part2>http://ja.scp-wiki.net/an-faq-part-two-or-your-hume-questions-answered]]」として日本語訳もされているので、せっかくなので目を通しておくことをお勧めする。 #region(蛇足) ……さて、この報告書には、一点気になる問題がある。 何が問題なのかというと、他でもない脚注である。 >LSSはプロトタイプであり、その設計は現在の"現実錨"プロジェクトの基礎となりました。 ここで思い返してみよう。''この報告書が書かれたのはいつだったか?'' LSSパネルの回収が行われたのは2005年末。そしてそもそものLSSを用いた実験が行われたのは、2000年初頭である。 であれば、SCP-3001の報告書の執筆は必然的にこれより後になる。 これを踏まえて、同じく脚注で紹介されている「[[FAQ;〜ヒュームって一体全体なんだ?>http://ja.scp-wiki.net/and-this-one-explains-humes]]」を読んでみる。 >最後に、[[SCP-2000>SCP-1422/SCP-2000]]の例を取り上げますか。このSCPを収容するために、スクラントン現実錨は建造され、配備されました。しかしながら、カント計数機が実働する以前は、現実錨がどう作動しているのか、何故動くのか不明でした。 ご存知の方も多いかもしれないが、SCP-2000とは財団の最終兵器たるThaumielオブジェクトの中でも筆頭に位置づけられる、「機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)」のことである。 スクラントン博士が作ったはずなのに作動している原理が不明、というのはおかしなことだ。 これはどういうことだ、とSCP-2000の報告書を見てみると…… >スクラントン現実錨(SRA)の開発はSCP-2000の初起動に先行するようで、&font(u){ロバート・スクラントン博士によって1889年に成されました。} 1889年。 LSSが開発され、実験が行われるよりずっと昔。というか当のスクラントン博士の誕生よりも前のことなのだ。 この2つの記述は、どこからどう見ても矛盾している。 そして、そのどちらにもロバート・スクラントン博士が関わっている。 あくまでSCP-2000もカノン(絶対的)ではない以上、SCP-2000とSCP-3001は別の世界線での記事であるのか。 それとも、SCP-2000による"再起動"が行われた影響で、記録が混乱しているのか。 あるいは。 ''SCP-3001に残されたスクラントン博士が何らかの形で過去へと移動し、そこで蘇生あるいは復活を遂げてスクラントン現実錨を作成した''のか。 真実は闇の中である。 ちなみに、[[SCP-1422>SCP-1422/SCP-2000]]や[[Di Molte Voci>Di Molte Voci(SCP Foundation)]]にもスクラントンを名乗る人物が登場する。 だがこちらは次席研究員であり博士では無いので、おそらくロバート・スクラントン博士とは別人。 これらのオブジェクトの発見は2007年以降で、SCP-3001の一件より後の話である。また微妙に専門分野も異なっている模様。 孤児だったロバートを拾ったアメリカ人夫妻の親族だったりするのだろうか? #endregion **余談 ロバート・スクラントン博士のもう一つの結末として、tale「Until Death」が書かれている。 ぶっちゃけると、ここでの主役はラング博士で、彼女が[[SCP-106]]「オールドマン」に殺される話である……のだが、問題はここで現れたオールドマン。 何とこのTaleでは、こいつの正体が&bold(){25年かけて自らを再構築したスクラントン博士である。} さすがにこれでは……と思ってしまうが、財団世界では割とよくあることなのがなんとも。 追記・編集はロバート・スクラントン博士の遺志を継ぐ気概のある方にお願いします。 ---- #right(){SCP-3001 - Red Reality by OZ Ouroboros http://www.scp-wiki.net/scp-3001 http://ja.scp-wiki.net/scp-3001 (和訳) この項目の内容は『[[クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス>https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/deed.ja]]』に従います。 } #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,96) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - リアリティのある描写が描かれたホラー、だと思ったらたった1行の注釈だけで感動的な内容すら想像させられる文章力に脱帽。さすが3000作品だわ -- 名無しさん (2017-05-09 12:28:41) - 1位と2位を争ったのが記憶処理と現実錨の根源に関わるものというあたりやはりX000は特別。ただ内輪ネタは衰退への第一歩なのであまり乱用はして欲しくない・・・。 -- 名無しさん (2017-05-09 13:13:25) - ロバート・スクラントン博士が勇気ある決断をし、更に甦ってなお現実錨を完成させたとすれば……財団にとっての英雄であると言っても過言じゃないな -- 名無しさん (2017-05-09 14:06:45) - ↑1 内容的にその辺はオマケも良いところじゃない? -- 名無しさん (2017-05-10 18:12:42) - 流石に独自考察に過ぎない? と思ったので後半を編集。「そもそも『 FAQ;〜ヒュームって一体全体なんだ?』とSCP-2000の記述も矛盾がある」という話も聞いたがよくわからんので引用個所はそのままに。 -- 名無しさん (2017-05-10 22:46:03) - 高すぎるヒューム値に押しつぶされたのが1000-JP、低すぎるヒューム値に落ちて行ったのが3001 -- 名無しさん (2017-05-11 13:37:00) - ホラー感味わいたいならこっち先に読んじゃ駄目だなw 解説が合間合間に入ると全く怖くなくなる -- 名無しさん (2017-05-15 10:39:52) - 言われなきゃ一生考察部分分からなかったわ -- 名無しさん (2017-05-16 15:54:29) - ああ、飛び散ってしまったであろうスクラントン博士の睾丸は回収できなかったのか?精子さえあれば子供はどうにか作れたのに -- 名無しさん (2017-07-21 00:59:38) - ↑ 色々と台無しにする反応やめーや -- 名無しさん (2017-07-22 15:41:36) - アナンタよりもこっちの方が3000に相応しい気が… -- 名無しさん (2017-07-24 08:00:48) - 現実錨より記憶処理薬の方が使い易い設定だしまぁ多少はね? -- 名無しさん (2017-08-11 22:41:23) - 俺はアナンタの方が3000に相応しいって思う -- 名無しさん (2017-08-13 05:59:48) - え?もう一回投票やり直そうって話? どれが相応しいと思うかは人それぞれで、それじゃあ永遠に決まらないから投票で多数決したわけで -- 名無しさん (2017-09-12 23:47:22) - そんな煽るようなコメントするほどじゃないだろ -- 名無しさん (2017-09-13 05:40:02) - これに唯一の救いを発見できたは -- 名無しさん (2017-10-22 14:56:46) - ヒューム値が高い状態の人間がヒューム値の低い空間にいると体が消えるのなら、現実改変者はどうなってるんだ? -- 名無しさん (2018-01-13 11:10:31) - >あくまで機械の範疇を出ない応答なら可能だったらしい。←これ違うでしょ?ロバートが自分でスマホのあれっぽい事言って自分で虚しくウケてみてるだけでしょ。原文で斜体になってないし。 -- 名無しさん (2018-02-24 04:10:00) - ↑5 SCP-1000「やりなおすだって?」 -- 名無しさん (2018-02-28 20:04:49) - 「スクラントン博士が身体を再構成した結果がSCP-106(オールドマン)で妻を腐らせて殺してしまう」内容のtaleが存在するらしい 救いなどなかった -- 名無しさん (2018-04-30 18:11:51) - ↑4 -- 名無しさん (2018-08-20 14:53:27) - ミスった、↑4一般人は自然状態でヒューム値1なだけで、現実改変者は自分のヒューム値をそれより高い値で固定する能力が元々備わってるんじゃないかな、そうじゃなきゃ現実にいたとしても周囲の低いヒューム値に希釈されて1に近づく(=異常性を失う)と思う -- 名無しさん (2018-08-20 15:01:03) - ブロークンエントリーはいずれ消滅して、並行世界と基底世界は融合するようだな。ヒューム値1の世界にいきなり飛び出したらレッドを放り出したときのようにロバートがバラけて死ぬみたいだが、ブロークンエントリーの自然消滅を待ったらどうなる?二つの世界が融合するんだろ。もしそうなら、領域が消滅した際にはロバートも融合しても不思議ではあるまい。もし融合に失敗してたら何もない空間からロバートのバラバラ遺体が出てくるはずだから、未来の話になるがね。 -- 名無しさん (2018-08-28 18:56:29) - ロバートが並行世界の自分と融合なりして生還したのち、時間遡行して現実錨を開発した。くらいしか矛盾しない話が無いんだよな。taleも他のSCPも並行世界のことだから記述が矛盾することはあるが。 -- 名無しさん (2018-08-28 19:20:19) - 財団職員同士で夫婦って珍しい 他にもいたりする? -- 名無しさん (2018-09-02 20:01:42) - えっぐいなあ…… -- 名無しさん (2018-11-12 23:18:42) - ↑2探せば結構夫婦もカップルもいる。有名所だとブライト三兄妹の両親やJ含めればアイスヴァインちゃんも親が職員同士 -- 名無しさん (2018-11-12 23:41:28) - 最近twitterで死んでバラバラになるゾウリムシの映像が流行ったけど、博士もこんな感じになったんだろうか…おそろしい -- 名無しさん (2019-01-27 21:18:58) - これ5年間コンソールに身体スリスリし続けてたらそこそこ無傷で帰ってこれたとかそういうのはないのか -- 名無しさん (2019-05-09 09:55:12) - これを読んだ後にSCP-976-JP(スクラントン現実猫)もお勧めしたい。一見トマト案件な項目名だが、3001を知ってると心にくるものがある -- 名無しさん (2019-07-15 23:09:10) - ↑4 ↑6 tale設定になるけど、財団職員夫婦の子供または片親かつ財団職員の子供を通わせる財団直属学校を作れる程度には夫婦も結構いるんだと思う。「孤独な放送室」から救出された女の子は財団の運営する学校で育ったあと、財団に就職するか記憶処理を受けて一般社会で生きるかを選択する事になり、一般人の彼氏に事情を全部打ち明けて夫婦で財団で働く道を選んだ -- 名無しさん (2019-12-08 12:58:01) - 2000で文明をリセットするたびに西暦もそれに応じて巻き戻されているなら最後の矛盾についても理解できる・・・かなぁ? -- 名無しさん (2020-01-11 08:33:52) - 極端にヒューム値に差があるなら中で現実改変起こして脱出できなかったのかって意見があったんだけどどうなんだろう -- 名無しさん (2020-02-28 21:04:41) - ⬆同感。 -- 名無しさん (2020-03-15 17:42:48) - 途中で送信してしまった。少なくとも自分より回りの空間の現実性が低いなら、スクラントン博士は相当強力な現実改編者として振る舞えそうだけど -- 名無しさん (2020-03-15 17:44:44) - キャストアウェイかな? -- 名無しさん (2020-03-30 16:48:26) - ↑↑現実改変するにもこの場所にはその改変する現実自体が存在しないんじゃない?知らんけど -- 名無しさん (2020-05-11 00:22:40) - 上の方にもあるけど、どのような形かはともかく「自分」を固定する能力が、本能的に(もしくは幼少期に)身につけてるんじゃないかな、現実改変能力者は。 -- 名無しさん (2020-10-21 17:09:18) - ヒューム値が”1”より高いか低いかなんじゃない? -- 名無しさん (2020-11-05 16:09:25) - 普通に2000とはカノンが違うだけじゃないの 他のSCP引き合いに出したら元から矛盾だらけだし  -- 名無しさん (2020-12-13 04:36:29) - 念じるだけで空間を移動できるなら、そして3001が非次元空間だと言うのなら、念じれば時間を戻す(四次元方向の移動)ことも可能なのでは?それで再構成してまた窓が開くまで過去へと移動を続けて脱出した…という仮説 -- 名無しさん (2021-01-05 18:23:56) - そもそもその主体が周囲の現実より高い現実性を持つ=現実改変能力者ではない。現実改変能力者はそういった能力を持つ人間であってその能力強度にヒューム値が用いられてるだけ。現実改変能力者の複数は周りのヒューム値と自分のヒューム値を能動的に変更可能だし一部のオブジェクトはそもそもヒューム値に干渉しないで現実改変を行ってる -- 名無しさん (2021-04-16 08:32:42) - ↑まあヘッドカノン次第ではあるが少なくともその説明はFAQヒュームって〜PART2の説明に反するな -- 名無しさん (2021-04-23 05:45:00) - 面白いけどあまりホラー感は無いな -- 名無しさん (2022-01-09 23:24:03) - これコズミックホラー風味にしただけでプロットもアイデアを映画キャストアウェイのほぼ丸パクリなのになんでこんな評価されてるの? -- 名無しさん (2022-01-15 07:10:44) - そう思って低評価してる人が貴方くらいしかいないからじゃないですかね -- 名無しさん (2022-01-15 15:21:03) - ホラーではないな ただ、ただ胸糞 -- 名無しさん (2022-04-18 09:53:48) - ドクターマンハッタンだな -- 名無しさん (2022-10-14 01:51:13) - 筐体作りハブを適応すれば矛盾が解決されるし、2000も扱いやすくなるぞ -- 名無しさん (2022-12-04 11:45:19) - ロバートの唯一の心の支えだった赤色の現実(LSSパネルのレッド)、拡散した彼を両側から蝕む危険な(=赤い)現実、そしてアナに突きつけられた真っ赤な現実 か -- 名無しさん (2023-01-27 22:21:51) - フレーバーテキストが本当に好き 口に出して言いたい -- 名無しさん (2023-05-27 03:37:05) #comment #areaedit(end) }

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