Missing

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&font(#6495ED){登録日}:2011/04/01(金) 22:49:44 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 6 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- &font(#ff0000){その出会いは偶然か必然か。} Missingとは、甲田学人著作の[[ライトノベル]]である。 電撃文庫より出版。全13巻。また2020年〜2022年には、メディアワークス文庫にて加筆修正が施された新装版が展開された。 メディアワークス文庫版は「全巻出し切れるかは売上次第」だったらしいが((実際かつて高野和の『七姫物語』1巻を加筆修正してメディアワークス文庫でも発売するも、2巻以降の新装版は行われていない事例があり、過去のメディアワークス文庫版完走例である久住四季の『トリックスターズ』は、加筆修正に伴いメインキャラの一人の性別と容姿が変更されていた。))非常に売れ行き好調で最終巻まで完走している。 なお、このヒットで「&bold(){旧作ライトノベルの復刊は売れる}」という確信が編集部に出来たようで、この後『タイム・リープ』や『[[嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん]]』、紅玉いづき作品など過去の電撃文庫がライト文芸化されている。 イラストは翠川しん(電撃文庫版、但し最終巻のみイラスト無し)、花邑まい(メディアワークス文庫版の表紙) 恐怖感や不安感を呼び寄せる描写や、痛々しい表現力等繊細な描写に定評がある。 神隠しを始めとした、様々な怪奇現象や都市伝説を元に話が進み、レギュラーキャラ以外の大抵の人物は助からない。 命は助かったキャラも狂ったりするなど、幸福な結末を迎えたものはほぼいない。 ライトノベルでよくある、冒頭のカラーページに様々な都市伝説等を説明するのが特徴。 また、本編冒頭にとある著作物による怪奇現象の考察と解説。 本編中の講義等、様々なところでオカルトに纏わる黒い知識を知ることができる。 ちなみに作者は本作を「ホラーではなくメルヘン」と主張している。 確かに「幻想奇憚」と表現すればまだ間違ってはいないが……。 また、本人は自分の作品の作風を「ファンタジーにスプーン1杯のホラーを足しただけ」と主張している。 &s(){それでこれな為読者からは&bold(){スプーン1杯のホラー(濃度:[[ブレアの午前6時]]((プールにスプーン1杯分垂らせばプールの水全部が辛くなるソース)))だのスプーン(大きさ:プール1杯分)だの好き放題言われている}} ちなみに、新装版完結後の作者公式Twitterによると実は電撃文庫版時に諸事情から初期構想より2巻分程短縮されたそうで、しかも13巻完結が決定したのが12巻直後なせいでラストの描写が慌ただしくなったため(終盤「機関」の出番が減ったのもそのせい)、&br()メディアワークス文庫版では尺こそ変わらないものの主にクライマックス部分が大幅に(出来るだけ初期構想によせる様に)変更されている。 登場人物 CVはラジオドラマでのもの ・近藤武巳 (追憶者) CV:[[保志総一朗]] 聖創学園二年、文芸部所属。 変わった奴が大好きで、変わった人間を無条件で尊敬しており、魔王陛下こと空目恭一を尊敬し彼のことを「陛下」と呼び慕っている。 しかしそれゆえに、後に平凡な自分と空目との違いに後に苦しむことになる。また終盤では稜子を助けるため「&bold(){だけに}」取った行動により、稜子以外の文芸部員と決別することに…。 社交性があり、文芸部外にも友人が多い。 1巻でひょんなことから異界を察知する「鈴」を手に入れており、その持ち主でもある。 わかりにくいが、一応主人公である。 &font(#ff0000){例え騙されても、おれにできるのはこんな取引しかないんだっ! できる事しかできないんだよ! 俺みたいな凡人には!} ・空目恭一 (魔王陛下 人界の魔王 影) CV:[[緑川光]] 「うつめきょういち」と読む。探偵役。主役と勘違いされがち。 聖創学園二年、文芸部。部内屈指の書き手でもある。 美貌だが、目つきの悪さが全てをぶち壊している。また「恋愛感情は麻薬と同じ」という持論があり、ゆえに「恋愛否定論者」と呼ばれている。 頭脳明晰ではあるが、オカルトや魔女裁判、異常心理といった東西問わずの様々な黒い知識に精通している反面、一般常識に欠けているところがあり(常識というよりも、「相手に会ったらまず名字を聞く」など普通思い至ることに全く頭が回らない)、漫画版ではその辺を気にしている描写がある。 作中、彼のオカルト講義がよく始まり、物語の予備知識となる。かつて神隠しにあったことがあり、弟とはその時生き別れた。その時嗅いだ、「枯れ草にわずかな鉄錆を混ぜたような」異界の臭いが分かり、怪奇現象の手がかりにしている。 なお、その一件で母の正気が失われる等家庭は崩壊しており、虐待を受けていた。 運動神経は鈍く、腕力は女性にも力負けする。 他人にまったく期待しておらず、なにがあっても感情が揺るがない。特に第1巻序盤で語られた彼の持論は極端を通り越したリアルで、要約すれば「環境保護は人類のためにするものであり、間違っても地球のためではない」「愛も道徳も宗教も、精神的価値があるというものは全て無意味」というもの。 &font(#ff0000){……で、そのまま続けてどうするつもりだ? 殴るか? 絞め殺すか?} 村神俊也 (シェーファーフント ルーガー・ルー) CV:野島健児 聖創学園二年、文芸部所属。 私服登校OKの学校で、制服のまま登校している。 性格はクールだが、過去のトラウマから仲間が危険だと焦る。 幼少の頃から叔父に、実戦形式の格闘技を学んでおり戦闘力は高い。 相手の言葉に耳さえ貸さなければ、対魔術師には強い。 空目とは、幼稚園からずっと一緒だった幼なじみ。 神隠し騒動の際には、「いつかこうなると思っていた」と幾つか宛てを作っていた。 終盤での変わりようが、最も激しい人物でもある。 &font(#ff0000){何も見なかった事にしてくれ。殺すつもりで蹴った。} 木戸野亜紀 (ガラスのケモノ) CV:[[田村ゆかり]] 聖創学園二年、文芸部所属。 育ちの間違った文芸少女。 美人だが、冷めた性格をしており口が悪い。 過去に壮絶な虐めを受け、負けない為に周囲を蔑むような性格になった。 その性格が災いし、空目恭一が好きという気持ちを封じている。 しかし、嫉妬心は人一倍強く、最後には役に立てないことを歯痒く思っている。 実は特別な血筋の一族であり、二巻と最終巻でそれを利用されてしまう。 &font(#ff0000){感情で感じる事と、理性で感じる事。それが裏腹だった時、どっちが正しいと思う?} 日下部稜子 (優しい鏡) CV:[[川上とも子]] 聖創学園二年、文芸部所属の影薄いヒロイン 空目恭一ファンクラブ二号(一号は武巳)ただし、恋愛感情はない。 社交性があり、文芸部外にも顔が広い。 近藤武巳とは、親友以上恋人未満の微妙な関係。 優しい性格であり、他人の問題を自分のことのように考え心配する。 なお、彼女の家系事情は複雑であり本人はそれを知らない。 作中、風呂場以外の場所で全裸になったことがある。 &font(#ff0000){一番大事なのは何か、とか、危険と天秤にかけるとか、そういうのはどうでもいいの。それがわたしにとっての友達。} あやめ (神隠しの少女) CV::水城レナ 空目に従う少女。 羽間市に伝わる、神隠し伝説の一部。 とある事件から、空目に&font(#ff0000){拾われ}た。 幻想的な歌を歌い、神隠しの能力を使い様々なことを引き起こす。 また、昔話に詳しくその知識は空目が誉める程。 自信がなく、おどおどした態度が特長。 ……なかなか可愛い。 &font(#ff0000){人は現 妖は夢 心は境界 血は結故。} 十叶詠子 (魔女) CV:大本眞基子 聖創学園三年。 変人、気違い、霊能力者と噂の不思議少女。 噂では、精神病院への通院歴があるらしい。 空目恭一が神隠しにあった際、村神俊也が頼った宛。 自称魔女であるが、その特異な能力は本物である。 魂の形が分かり、その形で人を呼んでいる。(村神→シェーファーフント君) そんな彼女の望みは、&bold(){全員}が友達になること。 …但し最終巻ではその過程で&bold(){壊れる者が多数現れても構わない}とある意味楽観的過ぎる価値観を見せており、今作における&bold(){正真正銘の黒幕}。 &font(#ff0000){魔法は使えないよ。} &font(#ff0000){箒で空も飛べないし、黒猫と話もできない。でもね、それでも……私は魔女なんだな。} 神野陰之 (受肉した神の片鱗) CV:[[稲田徹]] 霊能力者として、十叶詠子が紹介した謎の人物。 夜色のマントを羽織り、小さな丸眼鏡をしている。 サイドストーリーである、夜魔によくでる。 近藤武巳と村神俊也に異界の情報を話し、「鈴」を授けた。 人間離れした雰囲気を持つが、その正体は……。 &font(#ff0000){……それでは幻想と願望、そして宿命についての話をしようか。} 小崎摩津方 (世界樹に吊された魔道士) 人間としては既に故人。酷く歪んだ表情をしている魔術師。 ペンネームは大迫栄一郎。 彼の著作物は、小説冒頭で一部内容が抜粋されている。 聖創学園設立に関わった一人。図書館司書の水方は息子で、3巻に登場する歩由美は孫。 作中既に故人ではあるが、ある人物に憑依して復活。立ち位置自体は神野陰之と魔女に敵対する第三勢力なのだが、憑き物としての復活と憑依先の乗り換え時の事件は、文芸部に致命的な亀裂をもたらす事に……。 今作一の萌えキャラにして燃えキャラ。特にメディアワークス文庫版最終巻は必見。 読者からの愛称は「まっつん」 &font(#ff0000){それでも神に挑まずして、なんの為の人間か?} 沖本範幸 聖創学園二年、美術部所属。 武巳の寮のルームメイトで、漫画版では落ち込む彼を慰めたりする親友。 後輩を心配したり、先輩の死に心を痛めたりと優しい性格。 茶髪で、今風の若者のような髪の毛であるが硬派な美術部。 彼女がおり一途、ノロケ話はなかなか止まらない。 この作品中数少ない良心であったが……。 &font(#ff0000){なあ…………俺はただ、奈々美に逢いたいだけなんだよ……。} 芳賀幹比古 CV:[[田中秀幸>田中秀幸(声優)]] 異界に関係する事件を処理する、黒服のエージェント。 国家公務員であるが、表沙汰にはできない機関に所属している。 神隠し(あやめ)を連れた神隠しの帰還者、空目恭一を実験体と宣言し様子を見る。 物腰は丁寧ながら、シビアな価値観を持ち失敗時の処理には容赦ない。 (因みに処理とは、物語に感染し異界と関係を持った人物を殺すこと) 聖創学園でおこった怪奇現象の詳細を文芸部員に伝え、経過を観察し必要とあらば行動をおこす。 髪の毛は白髪頭。 &font(#ff0000){君が仙童、空目恭一君ですね。} ◆作中用語 ・聖創学院大付属高校 本作の主な舞台。房総半島に位置する小さな都市、羽間市にある。日本でかなり初期に完全単位制を導入している。 制服はブレザーだが、式典以外では着用の義務はない。 空目があやめを「拾って」来たのを皮切りに、どんどん異界化が進行している。 #region(以下、最終巻のネタバレに付き注意!) メディアワークス文庫版エンディングでは「&bold(){山崩れにより校舎が崩壊した}」と公式発表され、クライマックスでの生還者たちは気が付いたらそれぞれ別の病院へと知らぬ間に移送。 &bold(){実際に山崩れじみた破壊が発生したかは定かではないが}、しばらくしたら別の仮校舎で学校生活が再開され、事件被害者・関係者の殆どの生死と行方は闇に消えてしまう事に…。 #endregion ・異存在 神隠しや犬神などの、いわば超常の怪物や現象の元凶を指す。これは「機関」が使用している言葉。 通常人間の知覚出来る存在ではなく、それゆえに向こうから干渉することも出来ないが、怪談を媒介にして「感染」した人間を起点に「こちら側」へと現れる。怪談という形で彼らを認識した者がそのままゲートになりうる他、引きずり込んで異存在化してしまう「取り込み」という方法が使われている。 ちなみにあやめもこの一つで、「取り込み」のための「隠し神」となっている。 ・異界 異存在の属する赤い世界。ここの世界は徐々に「こちら側」へと侵食を進めている。なお、この世界の空気は猛烈な枯れ草のそれにわずかな鉄錆を混ぜたような独特の匂いがする。 ・「機関」 異存在を狩ることを目的とする国家組織。正式名称は存在せず、機関とのみ呼ばれる。 1巻に出てきた基条兄弟や、上述の芳賀はここに所属する実動員「ハンターエージェント」。実はメンバーは全て鬼籍に入った「存在しない人間」で固められている(彼らは「機関」以外に居場所がないとされる)。 作中では神隠しのあやめを筆頭に、次々と怪異に関わる文芸部に度々接触しているが、なぜか「魔女」関連や小崎摩津方と関わる事は無かった。 なお魔女狩りも同様の思想のもと行われていたらしい(ちなみに、当時「機関」はまだ存在しない)。 またメディアワークス文庫版2巻ラストではFAXを介する異存在への対応のため、電子化でFAXが廃れゆく時勢に置いても実機一個を永久保存する等、色々な意味で怪異狩りを徹底している。 ・憑き物筋 血統そのものに異存在を宿す一族。亜紀の出である木戸野の家は犬神を宿している。 ・“そうじさま” 聖創学院で4巻以降流行し出した「こっくりさん」の亜種。“魔女”が流した噂で、モデルは神隠しで消え去った空目の弟・想二。実際に現れる異存在は目かくしをした想二の姿をしている。 武巳に取り付いており、神野からもらった「鈴」に呼応して何度も姿を現すようになった。武巳にとっては不本意極まりない話だが、一応敵ではない。 &font(#ff0000,u){&font(#ffffff){最終巻では摩津方や空目が「“そうじさま”(及び摩津方は空目の母も)を山ノ神への贄にして事態解決&武巳の心配解消」案を練っていた事が判明したが、結局双方とも武巳自身の限界等でそれは叶わなかったため、最終的にどうなったのかは謎。}} ・山ノ神 羽間市に存在するという異存在。あやめはかつてこの存在に捧げられた生贄の最後の一人。 #region(以下、最終巻のネタバレに付き注意!) 詠子の最終目的はコレを「起こす」事で&bold(){世界中の人間すべてに「異界」を認識させること}。 最終巻で目覚めかけたが、電撃文庫版では詠子が斃れた後それを鎮める「贄」不足から空目があやめを案内人に「異界」に行くことを選び、メディアワークス文庫版ではあやめが再び山ノ神の傍に行きそれを補強するため空目もまた彼女と共に異界行きを選択、かつ起こす儀式の主導者詠子がギリギリで倒されたため再び眠りについた。 #endregion ・神野陰之 詠子に協力する「魔法」。元は「魔法」の研究者だったが、真理に踏み込みすぎて自らが「魔法」になってしまった。 魔津方曰く「心を喰う闇の顕現」。ゆえに空目は彼に対して「お前は&bold(){何だ}」と問うている。 ・“魔女” 詠子の異称にして自称、そして称号。幼少期から異存在を感知することが出来、彼らを「ともだち」に育った。そのため異存在の思考や思想を理解できる一方、感覚や倫理観が完全に「異界」を基準としたそれになっており、後半では自分の夢を叶えるため、「窓の向こうのともだち」こと山ノ神をこちら側に引き込もうとする事に。 電撃文庫版では最終巻にだけ絵がないが、これはイラストレーターが他所で漫画の執筆をしていたため、 またそれが原因なのか腱趙炎になったためであると言われている。 がしかし、何故か&font(#ff0000){恐怖のあまり逃げ出した}という噂が広まった。 ちなみに、同作者の[[断章のグリム]]のイラストレーターもホラーが苦手らしい。 ……ご愁傷様としか言いようがない。 また、中学生時代の詠子と神野を狂言回しとした番外編となる短編集『夜魔』も発売されている。 こちらも本編に負けず劣らずのメルヘン()っぷりで、後にツイッターで番外編「小さな魔女の散歩道」も連載された(但しシーズン2のみ別作品『時槻風乃と黒い童話の夜』のプレストーリー)。 それでも追記・修正せずしてなんのwiki籠もりか。 #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,6) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - この物語の怪異は物語を媒介して広まる。逆に言えば、知らなかったり記憶自体を封鎖してしまえば襲われない。 -- 名無しさん (2013-09-04 07:59:05) - それでも人は、ユメをミる。 -- 名無しさん (2015-08-05 12:01:51) - 怪異の解釈や機関など、随所に後のFATEやSCPに通じる魅力が詰まってる。もっと再評価されていい作品 -- (2020-09-04 03:59:44) - 数か月前に本屋で新装版見てびっくりした。嬉しいけどなぜ今になって。 -- 名無しさん (2022-02-17 18:53:46) #comment #areaedit(end) }
&font(#6495ED){登録日}:2011/04/01(金) 22:49:44 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 6 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- &font(#ff0000){その出会いは偶然か必然か。} Missingとは、甲田学人著作の[[ライトノベル]]である。 電撃文庫より出版。全13巻。また2020年〜2022年には、メディアワークス文庫にて加筆修正が施された新装版が展開された。 メディアワークス文庫版は「全巻出し切れるかは売上次第」だったらしいが((実際かつて高野和の『七姫物語』1巻を加筆修正してメディアワークス文庫でも発売するも、2巻以降の新装版は行われていない事例があり、過去のメディアワークス文庫版完走例である久住四季の『トリックスターズ』は、加筆修正に伴いメインキャラの一人の性別と容姿が変更されていた。))非常に売れ行き好調で最終巻まで完走している。 なお、このヒットで「&bold(){旧作ライトノベルの復刊は売れる}」という確信が編集部に出来たようで、この後『タイム・リープ』や『[[嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん]]』、紅玉いづき作品など過去の電撃文庫がライト文芸化されている。 イラストは翠川しん(電撃文庫版、但し最終巻のみイラスト無し)、花邑まい(メディアワークス文庫版の表紙) 恐怖感や不安感を呼び寄せる描写や、痛々しい表現力等繊細な描写に定評がある。 神隠しを始めとした、様々な怪奇現象や都市伝説を元に話が進み、レギュラーキャラ以外の大抵の人物は助からない。 命は助かったキャラも狂ったりするなど、幸福な結末を迎えたものはほぼいない。 ライトノベルでよくある、冒頭のカラーページに様々な都市伝説等を説明するのが特徴。 また、本編冒頭にとある著作物による怪奇現象の考察と解説。 本編中の講義等、様々なところでオカルトに纏わる黒い知識を知ることができる。 ちなみに作者は本作を「ホラーではなくメルヘン」と主張している。 確かに「幻想奇憚」と表現すればまだ間違ってはいないが……。 また、本人は自分の作品の作風を「ファンタジーにスプーン1杯のホラーを足しただけ」と主張している。 &s(){それでこれな為読者からは&bold(){スプーン1杯のホラー(濃度:[[ブレアの午前6時]]((プールにスプーン1杯分垂らせばプールの水全部が辛くなるソース)))だのスプーン(大きさ:プール1杯分)だの好き放題言われている}} ちなみに、新装版完結後の作者公式Twitterによると実は電撃文庫版時に諸事情から初期構想より2巻分程短縮されたそうで、しかも13巻完結が決定したのが12巻直後なせいでラストの描写が慌ただしくなったため(終盤「機関」の出番が減ったのもそのせい)、&br()メディアワークス文庫版では尺こそ変わらないものの主にクライマックス部分が大幅に(出来るだけ初期構想によせる様に)変更されている。 登場人物 CVはラジオドラマでのもの ・近藤武巳 (追憶者) CV:[[保志総一朗]] 聖創学園二年、文芸部所属。 変わった奴が大好きで、変わった人間を無条件で尊敬しており、魔王陛下こと空目恭一を尊敬し彼のことを「陛下」と呼び慕っている。 しかしそれゆえに、後に平凡な自分と空目との違いに後に苦しむことになる。また終盤では稜子を助けるため「&bold(){だけに}」取った行動により、稜子以外の文芸部員と決別することに…。 社交性があり、文芸部外にも友人が多い。 1巻でひょんなことから異界を察知する「鈴」を手に入れており、その持ち主でもある。 わかりにくいが、一応主人公である。 &font(#ff0000){例え騙されても、おれにできるのはこんな取引しかないんだっ! できる事しかできないんだよ! 俺みたいな凡人には!} ・空目恭一 (魔王陛下 人界の魔王 影) CV:[[緑川光]] 「うつめきょういち」と読む。探偵役。主役と勘違いされがち。 聖創学園二年、文芸部。部内屈指の書き手でもある。 美貌だが、目つきの悪さが全てをぶち壊している。また「恋愛感情は麻薬と同じ」という持論があり、ゆえに「恋愛否定論者」と呼ばれている。 頭脳明晰ではあるが、オカルトや魔女裁判、異常心理といった東西問わずの様々な黒い知識に精通している反面、一般常識に欠けているところがあり(常識というよりも、「相手に会ったらまず名字を聞く」など普通思い至ることに全く頭が回らない)、漫画版ではその辺を気にしている描写がある。 作中、彼のオカルト講義がよく始まり、物語の予備知識となる。かつて神隠しにあったことがあり、弟とはその時生き別れた。その時嗅いだ、「枯れ草にわずかな鉄錆を混ぜたような」異界の臭いが分かり、怪奇現象の手がかりにしている。 なお、その一件で母の正気が失われる等家庭は崩壊しており、虐待を受けていた。 運動神経は鈍く、腕力は女性にも力負けする。 他人にまったく期待しておらず、なにがあっても感情が揺るがない。特に第1巻序盤で語られた彼の持論は極端を通り越したリアルで、要約すれば「環境保護は人類のためにするものであり、間違っても地球のためではない」「愛も道徳も宗教も、精神的価値があるというものは全て無意味」というもの。 &font(#ff0000){……で、そのまま続けてどうするつもりだ? 殴るか? 絞め殺すか?} 村神俊也 (シェーファーフント ルーガー・ルー) CV:野島健児 聖創学園二年、文芸部所属。 私服登校OKの学校で、制服のまま登校している。 性格はクールだが、過去のトラウマから仲間が危険だと焦る。 幼少の頃から叔父に、実戦形式の格闘技を学んでおり戦闘力は高い。 相手の言葉に耳さえ貸さなければ、対魔術師には強い。 空目とは、幼稚園からずっと一緒だった幼なじみ。 神隠し騒動の際には、「いつかこうなると思っていた」と幾つか宛てを作っていた。 終盤での変わりようが、最も激しい人物でもある。 &font(#ff0000){何も見なかった事にしてくれ。殺すつもりで蹴った。} 木戸野亜紀 (ガラスのケモノ) CV:[[田村ゆかり]] 聖創学園二年、文芸部所属。 育ちの間違った文芸少女。 美人だが、冷めた性格をしており口が悪い。 過去に壮絶な虐めを受け、負けない為に周囲を蔑むような性格になった。 その性格が災いし、空目恭一が好きという気持ちを封じている。 しかし、嫉妬心は人一倍強く、最後には役に立てないことを歯痒く思っている。 実は特別な血筋の一族であり、二巻と最終巻でそれを利用されてしまう。 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近藤武巳と村神俊也に異界の情報を話し、「鈴」を授けた。 人間離れした雰囲気を持つが、その正体は……。 &font(#ff0000){……それでは幻想と願望、そして宿命についての話をしようか。} 小崎摩津方 (世界樹に吊された魔道士) 人間としては既に故人。酷く歪んだ表情をしている魔術師。 ペンネームは大迫栄一郎。 彼の著作物は、小説冒頭で一部内容が抜粋されている。 聖創学園設立に関わった一人。図書館司書の水方は息子で、3巻に登場する歩由美は孫。 作中既に故人ではあるが、ある人物に憑依して復活。立ち位置自体は神野陰之と魔女に敵対する第三勢力なのだが、憑き物としての復活と憑依先の乗り換え時の事件は、文芸部に致命的な亀裂をもたらす事に……。 今作一の萌えキャラにして燃えキャラ。特にメディアワークス文庫版最終巻は必見。 読者からの愛称は「まっつん」 &font(#ff0000){それでも神に挑まずして、なんの為の人間か?} 沖本範幸 聖創学園二年、美術部所属。 武巳の寮のルームメイトで、漫画版では落ち込む彼を慰めたりする親友。 後輩を心配したり、先輩の死に心を痛めたりと優しい性格。 茶髪で、今風の若者のような髪の毛であるが硬派な美術部。 彼女がおり一途、ノロケ話はなかなか止まらない。 この作品中数少ない良心であったが……。 &font(#ff0000){なあ…………俺はただ、奈々美に逢いたいだけなんだよ……。} 芳賀幹比古 CV:[[田中秀幸>田中秀幸(声優)]] 異界に関係する事件を処理する、黒服のエージェント。 国家公務員であるが、表沙汰にはできない機関に所属している。 神隠し(あやめ)を連れた神隠しの帰還者、空目恭一を実験体と宣言し様子を見る。 物腰は丁寧ながら、シビアな価値観を持ち失敗時の処理には容赦ない。 (因みに処理とは、物語に感染し異界と関係を持った人物を殺すこと) 聖創学園でおこった怪奇現象の詳細を文芸部員に伝え、経過を観察し必要とあらば行動をおこす。 髪の毛は白髪頭。 &font(#ff0000){君が仙童、空目恭一君ですね。} ◆作中用語 ・聖創学院大付属高校 本作の主な舞台。房総半島に位置する小さな都市、羽間市にある。日本でかなり初期に完全単位制を導入している。 制服はブレザーだが、式典以外では着用の義務はない。 空目があやめを「拾って」来たのを皮切りに、どんどん異界化が進行している。 #region(以下、最終巻のネタバレに付き注意!) メディアワークス文庫版エンディングでは「&bold(){山崩れにより校舎が崩壊した}」と公式発表され、クライマックスでの生還者たちは気が付いたらそれぞれ別の病院へと知らぬ間に移送。 &bold(){実際に山崩れじみた破壊が発生したかは定かではないが}、しばらくしたら別の仮校舎で学校生活が再開され、事件被害者・関係者の殆どの生死と行方は闇に消えてしまう事に…。 #endregion ・異存在 神隠しや犬神などの、いわば超常の怪物や現象の元凶を指す。これは「機関」が使用している言葉。 通常人間の知覚出来る存在ではなく、それゆえに向こうから干渉することも出来ないが、怪談を媒介にして「感染」した人間を起点に「こちら側」へと現れる。怪談という形で彼らを認識した者がそのままゲートになりうる他、引きずり込んで異存在化してしまう「取り込み」という方法が使われている。 ちなみにあやめもこの一つで、「取り込み」のための「隠し神」となっている。 ・異界 異存在の属する赤い世界。ここの世界は徐々に「こちら側」へと侵食を進めている。なお、この世界の空気は猛烈な枯れ草のそれにわずかな鉄錆を混ぜたような独特の匂いがする。 ・「機関」 異存在を狩ることを目的とする国家組織。正式名称は存在せず、機関とのみ呼ばれる。 1巻に出てきた基条兄弟や、上述の芳賀はここに所属する実動員「ハンターエージェント」。実はメンバーは全て鬼籍に入った「存在しない人間」で固められている(彼らは「機関」以外に居場所がないとされる)。 作中では神隠しのあやめを筆頭に、次々と怪異に関わる文芸部に度々接触しているが、なぜか「魔女」関連や小崎摩津方と関わる事は無かった。 なお魔女狩りも同様の思想のもと行われていたらしい(ちなみに、当時「機関」はまだ存在しない)。 またメディアワークス文庫版2巻ラストではFAXを介する異存在への対応のため、電子化でFAXが廃れゆく時勢に置いても実機一個を永久保存する等、色々な意味で怪異狩りを徹底している。 ・憑き物筋 血統そのものに異存在を宿す一族。亜紀の出である木戸野の家は犬神を宿している。 ・“そうじさま” 聖創学院で4巻以降流行し出した「こっくりさん」の亜種。“魔女”が流した噂で、モデルは神隠しで消え去った空目の弟・想二。実際に現れる異存在は目かくしをした想二の姿をしている。 武巳に取り付いており、神野からもらった「鈴」に呼応して何度も姿を現すようになった。武巳にとっては不本意極まりない話だが、一応敵ではない。 &font(#ff0000,u){&font(#ffffff){最終巻では摩津方や空目が「“そうじさま”(及び摩津方は空目の母も)を山ノ神への贄にして事態解決&武巳の心配解消」案を練っていた事が判明したが、結局双方とも武巳自身の限界等でそれは叶わなかったため、最終的にどうなったのかは謎。}} ・山ノ神 羽間市に存在するという異存在。あやめはかつてこの存在に捧げられた生贄の最後の一人。 #region(以下、最終巻のネタバレに付き注意!) 詠子の最終目的はコレを「起こす」事で&bold(){世界中の人間すべてに「異界」を認識させること}。 最終巻で目覚めかけたが、電撃文庫版では詠子が斃れた後それを鎮める「贄」不足から空目があやめを案内人に「異界」に行くことを選び、メディアワークス文庫版ではあやめが再び山ノ神の傍に行きそれを補強するため空目もまた彼女と共に異界行きを選択、かつ起こす儀式の主導者詠子がギリギリで倒されたため再び眠りについた。 #endregion ・神野陰之 詠子に協力する「魔法」。元は「魔法」の研究者だったが、真理に踏み込みすぎて自らが「魔法」になってしまった。 魔津方曰く「心を喰う闇の顕現」。ゆえに空目は彼に対して「お前は&bold(){何だ}」と問うている。 ・“魔女” 詠子の異称にして自称、そして称号。幼少期から異存在を感知することが出来、彼らを「ともだち」に育った。そのため異存在の思考や思想を理解できる一方、感覚や倫理観が完全に「異界」を基準としたそれになっており、後半では自分の夢を叶えるため、「窓の向こうのともだち」こと山ノ神をこちら側に引き込もうとする事に。 電撃文庫版では最終巻にだけ絵がないが、これはイラストレーターが他所で漫画の執筆をしていたため、 またそれが原因なのか腱趙炎になったためであると言われている。 がしかし、何故か&font(#ff0000){恐怖のあまり逃げ出した}という噂が広まった。 ちなみに、同作者の[[断章のグリム]]のイラストレーターもホラーが苦手らしい。 ……ご愁傷様としか言いようがない。 また、中学生時代の詠子と神野を狂言回しとした番外編となる短編集『夜魔』も発売されている。 こちらも本編に負けず劣らずのメルヘン()っぷりで、後にツイッターで番外編「小さな魔女の散歩道」も連載された(但しシーズン2のみ別作品『時槻風乃と黒い童話の夜』のプレストーリー)。 それでも追記・修正せずしてなんのwiki籠もりか。 #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,6) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - この物語の怪異は物語を媒介して広まる。逆に言えば、知らなかったり記憶自体を封鎖してしまえば襲われない。 -- 名無しさん (2013-09-04 07:59:05) - それでも人は、ユメをミる。 -- 名無しさん (2015-08-05 12:01:51) - 怪異の解釈や機関など、随所に後のFATEやSCPに通じる魅力が詰まってる。もっと再評価されていい作品 -- (2020-09-04 03:59:44) - 数か月前に本屋で新装版見てびっくりした。嬉しいけどなぜ今になって。 -- 名無しさん (2022-02-17 18:53:46) - 一回コミカライズされてた(序盤のみ)、そしてまた最近2回目のコミカライズが…今度は最後まで書いてくれるといいな… -- 名無しさん (2023-11-25 09:51:20) #comment #areaedit(end) }

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