時そば(古典落語)

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&font(#6495ED){登録日}:2012/09/15(土) 13:10:51 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 3 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- #center(){いやあ寒い寒い、寒いなあ。こんなときは蕎麦に限るねえ大将。} #center(){おっ!こりゃ良い蕎麦だ。どんぶりも良いもの使ってるし割り箸も新品と来たもんだ!} 時そば(刻そば、時蕎麦とも)とは古典[[落語]]の1つ。 江戸落語を代表するポピュラーな噺であり、知っている人も多いと思われる。 上方にも時うどんという類似の噺があり、一説には上方の時うどんを移植したものと言われている。 大抵は最初に当時の[[蕎麦]]の知識等を教える事が多いので基礎知識が無くても――と言う人がいるが、 一番大切であるオチを正しく理解するには基礎知識が必要である。 噺家が蕎麦を手繰る描写が魅せ場という人もいれば、ひたすら褒めちぎる調子の良さこそ真骨頂と語る人もいる、単純なギャグながら奥深い演目。 【内容】 壱という男が深夜に屋台で煮込み蕎麦を注文した。壱は蕎麦の味だけでなく器や箸なども巧みに褒め称えて食べ終わり会計となる。 値段は16文というが生憎小銭しか無い上に夜である。相変わらず調子よく並び立てながら、銭が落ちないように1つずつ手渡しで勘定を始めた。 壱「1、2、3、4、5、6、7、8…今何時だい?」 親父「9つだね」((暁9つのこと、当時の夜中0時)) 壱「10、11、12――16、じゃあご馳走さん」 これを見た弐という男は、壱が1文をごまかした事に気付き感心。真似しようとする。 &s(){当時の法律を考えると、たった1文の為にスリリングな話((当時は勘定をごまかすと10文以下は体に刀で傷をつけられ墨を流し込む「入れ墨」というを課された。ちなみに10文以上ごまかすと死罪になった。))である。} だが弐はいささか世渡り下手らしく、時間が来るより早く蕎麦屋へ凸ってしまった。 壱を真似て煮込み蕎麦を頼み、食べながら誉めようとするが如何せん上手く行かない。しかも蕎麦は不味いし店も汚い。 だが最後の会計さえ成功させれば弐は勝ちなのだ、意を決して壱と同じように手渡しで1文ずつ勘定を始めた。 弐「1、2、3、4、5、6、7、8…今何時だい?」 親父「4つだね」 弐「5、6、7、8……」 【解説】 弐は勘定まで多く取られて踏んだり蹴ったりである。では何故こうなったか? 当時の時法では深夜に「夜4つ(午後10時頃)」の次が「暁9つ(午前0時頃)」だったのでこの話が成り立つ。 あと2時間待てば、弐も成功したかもしれないが、そもそも立派な詐欺行為であるので成功しない方が幸せなのかもしれない。 #openclose(show=江戸時代の時間について){ 江戸時代の時間 暁九つ……子の正刻(子三つ時・子四つ時)…00:00ー01:00 暁九つ半…丑の初刻(丑一つ時・丑二つ時)…01:00ー02:00 暁八つ……丑の正刻(丑三つ時・丑四つ時)…02:00ー03:00 暁八つ半…寅の初刻(寅一つ時・寅二つ時)…03:00ー04:00 暁七つ……寅の正刻(寅三つ時・寅四つ時)…04:00ー05:00 暁七つ半…卯の初刻(卯一つ時・卯二つ時)…05:00ー06:00 明六つ……卯の正刻(卯三つ時・卯四つ時)…06:00ー07:00 明六つ半…辰の初刻(辰一つ時・辰二つ時)…07:00ー08:00 朝五つ……辰の正刻(辰三つ時・辰四つ時)…08:00ー09:00 朝五つ半…巳の初刻(巳一つ時・巳二つ時)…09:00ー10:00 朝四つ……巳の正刻(巳三つ時・巳四つ時)…10:00ー11:00 朝四つ半…午の初刻(午一つ時・午二つ時)…11:00ー12:00 昼九つ……午の正刻(午三つ時・午四つ時)…12:00ー13:00 昼九つ半…未の初刻(未一つ時・未二つ時)…13:00ー14:00 昼八つ……未の正刻(未三つ時・未四つ時)…14:00ー15:00 昼八つ半…申の初刻(申一つ時・申二つ時)…15:00ー16:00 昼七つ……申の正刻(申三つ時・申四つ時)…16:00ー17:00 昼七つ半…酉の初刻(酉一つ時・酉二つ時)…17:00ー18:00 暮六つ……酉の正刻(酉三つ時・酉四つ時)…18:00ー19:00 暮六つ半…戌の初刻(戌一つ時・戌二つ時)…19:00ー20:00 夜五つ……戌の正刻(戌三つ時・戌四つ時)…20:00ー21:00 夜五つ半…亥の初刻(亥一つ時・亥二つ時)…21:00ー22:00 夜四つ……亥の正刻(亥三つ時・亥四つ時)…22:00ー23:00 夜四つ半…子の初刻(子一つ時・子二つ時)…23:00ー00:00 江戸時代に使われた時間は十二時辰(じゅうにじしん)と呼ばれる。 時刻を2時間ごと(一辰刻=いっしんこく)に分けて十二支で表した。 この2時間は刻(とき)とも呼ばれる(丑の刻なら深夜1時頃) 更に半分に分け、各1時間を初刻・正刻(しょこく・しょうこく)と呼ぶ(丑の初刻) 更に半分に分け、30分を時(とき)と呼ぶ(丑三つ時=深夜2時-2時半) つまり当時の時間は30分、1時間、2時間の三種類。 現在同様に深夜から数えるので真夜中は子の刻、真昼は午の刻となる。 一日を午前と午後に分けるのはこれが由来で、午の刻の前後からこう呼ばれた。 更に真昼を表す正午も「午の正刻」が由来。 当然真夜中を表す言葉もあり、「子の正刻」から正子(しょうし)と呼ばれる。 後は間食を表す「おやつ」も時間が由来だったり。 江戸中期までの食事は二食であり、八つ時(14:00ー15:00)にした間食からそう呼ばれる。 一日が暁九つから四まで減り、再び九から始まるヘンテコさだがこれには理由がある。 時間を知らせる鐘は各正刻(0時から2時間ごと)に鳴らされる。 回数は正子の9回から始まって1回ずつ減っていき、正午にはまた9回に戻り再び1回ずつ減っていく。 この「9」は陰陽で縁起がいい数だからとされ、鳴らす回数は 「9を◯つの時間で掛けた下一桁」となっている。 暁九つなら9×1で9回、暁八つなら9×2=18の下一桁8で8回って具合。 この計算をしないと夕方の暮六つで54回も鐘を叩くハメになるので鳴らす回数を減らすのが目的だったのだろう。 } 舞台は蕎麦が屋台で食えるというので、おそらく江戸時代後期。 実は麺状の蕎麦(蕎麦&bold(){切り})が登場したのは中期、小麦粉を蕎麦粉に混ぜる技術が伝わってからである。 それまでの蕎麦は串焼きにした蕎麦団子や蕎麦がきなどを指す。 蕎麦がきは蕎麦粉をお湯で混ぜたもので、醤油やそばつゆに入れたり 茹でてすいとん状にして食べる。おやつとして作られてたらしい。 江戸中期以前の話にズルズルと[[うどん>饂飩(うどん)]]を食べる話が多いのは、我々の知る蕎麦が無かったからなのだ。 作中には花巻、しっぽくと蕎麦に詳しくないと聞き慣れない蕎麦が出てきたりする。 花巻はかけそばにちぎった海苔や刻み海苔を載せたもの。 現在の海苔の生産量一位は佐賀だが、当時は浅草の「浅草海苔」が主流。紙のような海苔はこれが発端とされる。 自作する場合は海苔を支柱式のものにすると解けるように溶けていくのでオススメ。 しっぽく(卓袱)は、かまぼこ、卵焼き、しいたけなどが載った蕎麦のこと。 卓袱は中国語でテーブル掛けを意味し、中国料理のように円卓で大皿を囲う長崎の 「卓袱料理」から沢山の具材を載せた関西の「しっぽくうどん」を経たとされる。 上記のように麺の蕎麦はうどんより後なので伝わるなら西の影響を受けるということ。 作中で食べたのはしっぽくの方。 なお卓袱に台を付けると「卓袱台」となり、昭和でおなじみの「ちゃぶ台」となる。 中国語の卓袱(チャフ)や「飯を食べる」が意味の吃飯が変化したとされる。 //さて、もともとが非常にナンセンスな話だが、 //仮にあなたが江戸時代に住んでいたとしても&font(#ff0000){時そばは決して成功しない}といっても過言ではない。 //何故なら当時は、&font(#ff0000,b){料金前払い制}だからである。 //街道の茶屋で団子を食べ、「勘定置いとくよ」なんてのを暴れん坊将軍などで見たかもしれないが、それはおかしいのだ。 //もちろんツケなんて有り得ない。 //つまり時代的に時そばは成立しない。 //まあ「大衆娯楽でなに糞真面目な事言ってんの?」と言われるので、飲みの席での蘊蓄程度に止めておこう。 //一通り調べましたが、「料金は先払いなので成立しない」とする根拠となる史料が見つからず、同様の指摘をしている他のサイトも存在しませんでした。ひとまず「ソース不明」としてコメントアウトしておきます。復元させたい場合は、この説の根拠となるソースを提示してください。 現在においては落語芸術協会副会長、[[三遊亭小遊三]]師匠の十八番。 現代風にアレンジする場合は時間を「~つ」と数えるのがわかりづらいため、あらかじめ店主の子供の話を振っておき「ところで子供はいくつだっけ?」「9つだね」と繋ぐアレンジをされたりする。 ちなみに冒頭にもある上方落語の演目「&bold(){時うどん}」は、勘定のごまかし方とサゲは同じだがそれに至る過程が大分異なり、上方らしい笑いの多い滑稽話として演じられる。 こちらは「一人芝居をする人間の演技」が必要になるなど演者にとってやや難易度が高く、 江戸落語における&bold(){時そば}ほどメジャーな存在ではない。 上方でも桂吉朝が江戸落語の&bold(){時そば}のそばをうどんに置き換えた「うどん版時そば」を演じてから、吉朝一門を筆頭にこの形式で演じる落語家も増えた。 逆に東京の[[春風亭昇太]]は&bold(){時うどん}をそばに置き換えた「そば版時うどん」で演じている。 英語落語版の題はその名もズバリ「Time Noodle」。 追記・修正は銀杏の数を誤魔化さずにお願いします #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,7) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - 先払いってマジかよ -- 名無しさん (2017-01-28 14:11:10) - フィクションでの話だが、昭和元禄落語心中の中で二代目助六がアレンジしたのを演ってたな -- 名無しさん (2017-01-29 00:00:56) - 団子食ってお勘定を適当に椅子に置いて去るみたいなのはないのか…意外だ -- 名無しさん (2017-01-29 00:07:18) - よくよく考えりゃ今より治安悪いんだから当然だよな>料金前払い制 -- 名無しさん (2017-01-29 14:58:49) - 子の刻って23時からだけどなんで日を跨いでんの?普通に0時開始だと思ってたわ -- 名無しさん (2017-01-30 08:57:27) - ↑ようするに子の正刻(真ん中)をちょうど日の代わり目に置いてあるから。 -- 名無しさん (2017-01-30 09:45:53) - 二八そばもだが鐘をつく回数を減らすために掛け算使うって手が込んでんな -- 名無しさん (2017-01-31 13:27:21) - 「鐘を鳴らす回数が1〜3回だとそもそも聞き漏らす可能性があるから、初めから3回分足している」っていう実用的な理由もあるらしい -- 名無しさん (2017-11-07 19:47:19) - こないだ読んだ時代劇漫画(タイトル忘れた)で「そばの値段は16文と決められてるのにわざわざ値段尋ねるのは不自然」「地方者でもわかるように説明しておく。これがうちの流派だ」→具を足して天ぷらそばにすれば値段聞いてもおかしくない!展開になってたな -- 名無しさん (2020-05-25 12:11:57) - 先払い云々についての明確な資料が見つからなかったのでコメントアウト。突飛な説を載せるのはいいけれど、他に一切この説を唱えている人が見当たらないしソースも発見できなかったので、現状は「デマ」と判断せざるを得ません。復元させる場合はソースの提示をお願いします。 -- 名無しさん (2020-05-25 14:23:38) - 分かりやすさ重視とはいえ江戸時代の落語の人物名がA、Bというのは情緒がないから代わりの表記はないものか。壱、弐とか甲、乙とか? -- 名無しさん (2020-08-24 12:12:54) - 意外と何かに割り込まれてやらなければいけないことを忘れてしまうというメーデー用語化しているような気がする -- 名無しさん (2022-11-04 22:13:33) #comment #areaedit(end) }
&font(#6495ED){登録日}:2012/09/15(土) 13:10:51 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 3 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- #center(){いやあ寒い寒い、寒いなあ。こんなときは蕎麦に限るねえ大将。} #center(){おっ!こりゃ良い蕎麦だ。どんぶりも良いもの使ってるし割り箸も新品と来たもんだ!} 時そば(刻そば、時蕎麦とも)とは古典[[落語]]の1つ。 江戸落語を代表するポピュラーな噺であり、知っている人も多いと思われる。 上方にも時うどんという類似の噺があり、一説には上方の時うどんを移植したものと言われている。 大抵は最初に当時の[[蕎麦]]の知識等を教える事が多いので基礎知識が無くても――と言う人がいるが、 一番大切であるオチを正しく理解するには基礎知識が必要である。 噺家が蕎麦を手繰る描写が魅せ場という人もいれば、ひたすら褒めちぎる調子の良さこそ真骨頂と語る人もいる、単純なギャグながら奥深い演目。 【内容】 壱という男が深夜に屋台で煮込み蕎麦を注文した。壱は蕎麦の味だけでなく器や箸なども巧みに褒め称えて食べ終わり会計となる。 値段は16文というが生憎小銭しか無い上に夜である。相変わらず調子よく並び立てながら、銭が落ちないように1つずつ手渡しで勘定を始めた。 壱「1、2、3、4、5、6、7、8…今何時だい?」 親父「9つだね」((暁9つのこと、当時の夜中0時)) 壱「10、11、12――16、じゃあご馳走さん」 これを見た弐という男は、壱が1文をごまかした事に気付き感心。真似しようとする。 &s(){当時の法律を考えると、たった1文の為にスリリングな話((当時は勘定をごまかすと10文以下は体に刀で傷をつけられ墨を流し込む「入れ墨」という刑罰を課された。ちなみに10文以上ごまかすと死罪。))である。} だが弐はいささか世渡り下手らしく、時間が来るより早く蕎麦屋へ凸ってしまった。 壱を真似て煮込み蕎麦を頼み、食べながら誉めようとするが如何せん上手く行かない。しかも蕎麦は不味いし店も汚い。 だが最後の会計さえ成功させれば弐は勝ちなのだ、意を決して壱と同じように手渡しで1文ずつ勘定を始めた。 弐「1、2、3、4、5、6、7、8…今何時だい?」 親父「4つだね」 弐「5、6、7、8……」 【解説】 弐は勘定まで多く取られて踏んだり蹴ったりである。では何故こうなったか? 当時の時法では深夜に「夜4つ(午後10時頃)」の次が「暁9つ(午前0時頃)」だったのでこの話が成り立つ。 あと2時間待てば、弐も成功したかもしれないが、そもそも立派な詐欺行為であるので成功しない方が幸せなのかもしれない。 #openclose(show=江戸時代の時間について){ 江戸時代の時間 暁九つ……子の正刻(子三つ時・子四つ時)…00:00ー01:00 暁九つ半…丑の初刻(丑一つ時・丑二つ時)…01:00ー02:00 暁八つ……丑の正刻(丑三つ時・丑四つ時)…02:00ー03:00 暁八つ半…寅の初刻(寅一つ時・寅二つ時)…03:00ー04:00 暁七つ……寅の正刻(寅三つ時・寅四つ時)…04:00ー05:00 暁七つ半…卯の初刻(卯一つ時・卯二つ時)…05:00ー06:00 明六つ……卯の正刻(卯三つ時・卯四つ時)…06:00ー07:00 明六つ半…辰の初刻(辰一つ時・辰二つ時)…07:00ー08:00 朝五つ……辰の正刻(辰三つ時・辰四つ時)…08:00ー09:00 朝五つ半…巳の初刻(巳一つ時・巳二つ時)…09:00ー10:00 朝四つ……巳の正刻(巳三つ時・巳四つ時)…10:00ー11:00 朝四つ半…午の初刻(午一つ時・午二つ時)…11:00ー12:00 昼九つ……午の正刻(午三つ時・午四つ時)…12:00ー13:00 昼九つ半…未の初刻(未一つ時・未二つ時)…13:00ー14:00 昼八つ……未の正刻(未三つ時・未四つ時)…14:00ー15:00 昼八つ半…申の初刻(申一つ時・申二つ時)…15:00ー16:00 昼七つ……申の正刻(申三つ時・申四つ時)…16:00ー17:00 昼七つ半…酉の初刻(酉一つ時・酉二つ時)…17:00ー18:00 暮六つ……酉の正刻(酉三つ時・酉四つ時)…18:00ー19:00 暮六つ半…戌の初刻(戌一つ時・戌二つ時)…19:00ー20:00 夜五つ……戌の正刻(戌三つ時・戌四つ時)…20:00ー21:00 夜五つ半…亥の初刻(亥一つ時・亥二つ時)…21:00ー22:00 夜四つ……亥の正刻(亥三つ時・亥四つ時)…22:00ー23:00 夜四つ半…子の初刻(子一つ時・子二つ時)…23:00ー00:00 江戸時代に使われた時間は十二時辰(じゅうにじしん)と呼ばれる。 時刻を2時間ごと(一辰刻=いっしんこく)に分けて十二支で表した。 この2時間は刻(とき)とも呼ばれる(丑の刻なら深夜1時頃) 更に半分に分け、各1時間を初刻・正刻(しょこく・しょうこく)と呼ぶ(丑の初刻) 更に半分に分け、30分を時(とき)と呼ぶ(丑三つ時=深夜2時-2時半) つまり当時の時間は30分、1時間、2時間の三種類。 現在同様に深夜から数えるので真夜中は子の刻、真昼は午の刻となる。 一日を午前と午後に分けるのはこれが由来で、午の刻の前後からこう呼ばれた。 更に真昼を表す正午も「午の正刻」が由来。 当然真夜中を表す言葉もあり、「子の正刻」から正子(しょうし)と呼ばれる。 後は間食を表す「おやつ」も時間が由来だったり。 江戸中期までの食事は二食であり、八つ時(14:00ー15:00)にした間食からそう呼ばれる。 一日が暁九つから四まで減り、再び九から始まるヘンテコさだがこれには理由がある。 時間を知らせる鐘は各正刻(0時から2時間ごと)に鳴らされる。 回数は正子の9回から始まって1回ずつ減っていき、正午にはまた9回に戻り再び1回ずつ減っていく。 この「9」は陰陽で縁起がいい数だからとされ、鳴らす回数は 「9を◯つの時間で掛けた下一桁」となっている。 暁九つなら9×1で9回、暁八つなら9×2=18の下一桁8で8回って具合。 この計算をしないと夕方の暮六つで54回も鐘を叩くハメになるので鳴らす回数を減らすのが目的だったのだろう。 } 舞台は蕎麦が屋台で食えるというので、おそらく江戸時代後期。 実は麺状の蕎麦(蕎麦&bold(){切り})が登場したのは中期、小麦粉を蕎麦粉に混ぜる技術が伝わってからである。 それまでの蕎麦は串焼きにした蕎麦団子や蕎麦がきなどを指す。 蕎麦がきは蕎麦粉をお湯で混ぜたもので、醤油やそばつゆに入れたり 茹でてすいとん状にして食べる。おやつとして作られてたらしい。 江戸中期以前の話にズルズルと[[うどん>饂飩(うどん)]]を食べる話が多いのは、我々の知る蕎麦が無かったからなのだ。 作中には花巻、しっぽくと蕎麦に詳しくないと聞き慣れない蕎麦が出てきたりする。 花巻はかけそばにちぎった海苔や刻み海苔を載せたもの。 現在の海苔の生産量一位は佐賀だが、当時は浅草の「浅草海苔」が主流。紙のような海苔はこれが発端とされる。 自作する場合は海苔を支柱式のものにすると解けるように溶けていくのでオススメ。 しっぽく(卓袱)は、かまぼこ、卵焼き、しいたけなどが載った蕎麦のこと。 卓袱は中国語でテーブル掛けを意味し、中国料理のように円卓で大皿を囲う長崎の 「卓袱料理」から沢山の具材を載せた関西の「しっぽくうどん」を経たとされる。 上記のように麺の蕎麦はうどんより後なので伝わるなら西の影響を受けるということ。 作中で食べたのはしっぽくの方。 なお卓袱に台を付けると「卓袱台」となり、昭和でおなじみの「ちゃぶ台」となる。 中国語の卓袱(チャフ)や「飯を食べる」が意味の吃飯が変化したとされる。 //さて、もともとが非常にナンセンスな話だが、 //仮にあなたが江戸時代に住んでいたとしても&font(#ff0000){時そばは決して成功しない}といっても過言ではない。 //何故なら当時は、&font(#ff0000,b){料金前払い制}だからである。 //街道の茶屋で団子を食べ、「勘定置いとくよ」なんてのを暴れん坊将軍などで見たかもしれないが、それはおかしいのだ。 //もちろんツケなんて有り得ない。 //つまり時代的に時そばは成立しない。 //まあ「大衆娯楽でなに糞真面目な事言ってんの?」と言われるので、飲みの席での蘊蓄程度に止めておこう。 //一通り調べましたが、「料金は先払いなので成立しない」とする根拠となる史料が見つからず、同様の指摘をしている他のサイトも存在しませんでした。ひとまず「ソース不明」としてコメントアウトしておきます。復元させたい場合は、この説の根拠となるソースを提示してください。 現在においては落語芸術協会副会長、[[三遊亭小遊三]]師匠の十八番。 現代風にアレンジする場合は時間を「~つ」と数えるのがわかりづらいため、あらかじめ店主の子供の話を振っておき「ところで子供はいくつだっけ?」「9つだね」と繋ぐアレンジをされたりする。 ちなみに冒頭にもある上方落語の演目「&bold(){時うどん}」は、勘定のごまかし方とサゲは同じだがそれに至る過程が大分異なり、上方らしい笑いの多い滑稽話として演じられる。 こちらは「一人芝居をする人間の演技」が必要になるなど演者にとってやや難易度が高く、 江戸落語における&bold(){時そば}ほどメジャーな存在ではない。 上方でも桂吉朝が江戸落語の&bold(){時そば}のそばをうどんに置き換えた「うどん版時そば」を演じてから、吉朝一門を筆頭にこの形式で演じる落語家も増えた。 逆に東京の[[春風亭昇太]]は&bold(){時うどん}をそばに置き換えた「そば版時うどん」で演じている。 英語落語版の題はその名もズバリ「Time Noodle」。 追記・修正は銀杏の数を誤魔化さずにお願いします #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,7) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - 先払いってマジかよ -- 名無しさん (2017-01-28 14:11:10) - フィクションでの話だが、昭和元禄落語心中の中で二代目助六がアレンジしたのを演ってたな -- 名無しさん (2017-01-29 00:00:56) - 団子食ってお勘定を適当に椅子に置いて去るみたいなのはないのか…意外だ -- 名無しさん (2017-01-29 00:07:18) - よくよく考えりゃ今より治安悪いんだから当然だよな>料金前払い制 -- 名無しさん (2017-01-29 14:58:49) - 子の刻って23時からだけどなんで日を跨いでんの?普通に0時開始だと思ってたわ -- 名無しさん (2017-01-30 08:57:27) - ↑ようするに子の正刻(真ん中)をちょうど日の代わり目に置いてあるから。 -- 名無しさん (2017-01-30 09:45:53) - 二八そばもだが鐘をつく回数を減らすために掛け算使うって手が込んでんな -- 名無しさん (2017-01-31 13:27:21) - 「鐘を鳴らす回数が1〜3回だとそもそも聞き漏らす可能性があるから、初めから3回分足している」っていう実用的な理由もあるらしい -- 名無しさん (2017-11-07 19:47:19) - こないだ読んだ時代劇漫画(タイトル忘れた)で「そばの値段は16文と決められてるのにわざわざ値段尋ねるのは不自然」「地方者でもわかるように説明しておく。これがうちの流派だ」→具を足して天ぷらそばにすれば値段聞いてもおかしくない!展開になってたな -- 名無しさん (2020-05-25 12:11:57) - 先払い云々についての明確な資料が見つからなかったのでコメントアウト。突飛な説を載せるのはいいけれど、他に一切この説を唱えている人が見当たらないしソースも発見できなかったので、現状は「デマ」と判断せざるを得ません。復元させる場合はソースの提示をお願いします。 -- 名無しさん (2020-05-25 14:23:38) - 分かりやすさ重視とはいえ江戸時代の落語の人物名がA、Bというのは情緒がないから代わりの表記はないものか。壱、弐とか甲、乙とか? -- 名無しさん (2020-08-24 12:12:54) - 意外と何かに割り込まれてやらなければいけないことを忘れてしまうというメーデー用語化しているような気がする -- 名無しさん (2022-11-04 22:13:33) #comment #areaedit(end) }

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