フロム・ダスク・ティル・ドーン(映画)

「フロム・ダスク・ティル・ドーン(映画)」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

フロム・ダスク・ティル・ドーン(映画)」(2024/03/13 (水) 09:59:13) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

&font(#6495ED){登録日}:2012/02/14(火) 21:38:38 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 7 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- #center(){&sizex(7){&font(#ff0000,b){返り討ちにしてやるぜ!!}}} **概要 ---- &bold(){フロム・ダスク・ティル・ドーン(原題:FROM DUSK TILL DAWN)}は、1996年1月19日にアメリカで公開された映画。 日本では1996年6月15日に公開。 タイトルは直訳すると「夕暮れから夜明けまで」だが、夜の間はノンストップで上映しているドライブインシアターの看板のキャッチコピーが由来となっている。 監督は&bold(){&color(#dc143c){ロバート・ロドリゲス}}、脚本・製作総指揮は[[&bold(){&color(#e9bc00){クエンティン・タランティーノ}}>クエンティン・タランティーノ]]。 &bold(){お互いを「ブラザー」と呼び合うほど仲のいい、オタク監督二人が出会うきっかけになった作品である。} 元々本作の脚本は、特殊メイクデザイナーのロバート・カーツマンが書いたプロットを、タランティーノが肉付けしたもの。&footnote(この時カーツマンは報酬が1500ドルしか払えなかったため、『レザボア・ドッグス』撮影時に自社のスタッフを無償で提供した。血糊や切られた耳はここが作っていたのだ) カーツマンは監督を志望していたが、タランティーノが脚本を仕上げたというセールスポイントがあるにも関わらず、実績がないということでどこからも相手にされなかった。 この脚本がロドリゲスの元に渡ったのは、1992年9月のトロント映画祭でのこと。 パネルディスカッションの時に配られたタランティーノの資料を見て、ロドリゲスは衝撃を受けた。 そこには、&bold(){クライム映画からジャンルが根本から変わるほどのトンデモ展開と化す}という、あまりにも荒唐無稽な内容の脚本について書かれていたのだ。 タランティーノはカーツマンから脚本を買い戻して監督しないかという申し出を受けたが断っており、代わりにロドリゲスに監督をやらせるようプロデューサーに言ったという。 &bold(){&color(#dc143c){「脚本書き直してくれるなら引き受けるぜェ……」}} &bold(){&color(#e9bc00){「いいぜェ……(ついでにオイラの演じるキャラも掘り下げるぜェ……)」}} こんな具合に二人はすっかり意気投合し、以降はオムニバス映画『[[フォー・ルームス>フォー・ルームス(映画)]]』や『[[グラインドハウス>グラインドハウス(映画)]]』でそれぞれ監督したりするなど、とても微笑ましい仲を披露している。 そういう背景あって作られた本作は、そのメーターの振り切りっぷりから、好みが真っ二つに分かれる作風である。 前半の雰囲気に期待していた人からは最低のクソ映画の烙印を押されるが、バカ映画好きには拍手喝采という、かなり見る人を選ぶ怪作となっている。 例えるなら、まるで高級料亭で食事をしてたと思ったら、いきなりアマゾン奥地の土着民族の料理が出てきたような感じだろうか。 また、3まで続編が出ているが、本国では劇場公開されていないオリジナルビデオ作品である。 2014年にはTVドラマ化もされている。 他にも、本作のメイキング作品『フル・ティルト・ブギ』があるが、レンタルビデオ版は早々に廃盤。 シリーズ3作品DVD-BOXのおまけとして再販されただけで長らく単品発売がなかったりと、地味にレアな作品だった。 **あらすじ ---- 全米各地で悪行の限りを働き、犠牲者16名&footnote(その内訳は、テキサスレンジャーが5名、警察官8名、市民3名。さらにこの後人質の女性も殺害したので17名となった)を叩き出したゲッコー兄弟は、[[メキシコ]]を目指し逃走中。 同じころ、キャンピングカーで旅をしていたフラー一家は運悪く二人の泊まっていたモーテルで鉢合わせ。 国境越えのための隠れ蓑として人質にされてしまう。 なんやかんやあって、まんまと国境を越えたゲッコー兄弟。 仲間との待ち合わせのため、彼らは酒場&bold(){&color(hotpink){ティティー・ツイスター(TITTY TWISTER:おっぱいグルグル)}}で一晩過ごすことになるが、なんとそこには恐ろしい秘密が……! **登場人物 ---- ・&bold(){セス・ゲッコー} 演:ジョージ・クルーニー 吹替:[[野沢那智]] ゲッコー兄弟の兄。 カンザス州立ローリング刑務所で服役していたが、リチャードの助けにより脱走し、共に逃走を続けている。 言動のイカれた弟に悩まされるが兄弟仲も良く、頭もよく切れる。 「悪党だが人の心はある」と語る通り、彼自身は無駄な殺人はしない主義。もっとも、弟のせいで台無しになっているのだが…… クルーニーは当時テレビドラマ『ER』のダグラス・ロス医師役でブレイクしたところ、タランティーノが『ER』の脚本を担当したことがきっかけで、本作への出演が決まった。 彼にとってはこれが、初めてのハリウッドメジャー作品出演であった。 ・&bold(){リチャード・ゲッコー} 演:クエンティン・タランティーノ 吹替:広川太一郎 ゲッコー兄弟の弟。 頭が悪く現実と妄想の区別がついておらず、意味不明な理由でレンジャーを撃ち殺したり、大事な人質を兄が目を離した隙に殺してしまうなど短絡的でミスが多い。 おまけにサルマ・ハエック演じる美女「地獄のサンタニコ」の&bold(){&color(hotpink){足に酒を流しながら舐める変態である。}} 実際、演じたタランティーノ自身&bold(){&color(hotpink){足フェチ}}。&bold(){職権乱用もいいところである。} ・&bold(){ジェイコブ・フラー} 演:ハーヴェイ・カイテル 吹替::[[大塚周夫]] キャンピングカーで旅をする一家の大黒柱の元牧師。 ゲッコー兄弟には冷静な態度で接する。 過去に妻を亡くし信仰を棄てたが、最大の危機に立ち向かうため棄てた信仰を取り戻していく。 ・&bold(){ケイト・フラー} 演:ジュリエット・ルイス 吹替:[[松本梨香]] フラー一家の姉。 5人の中で唯一の女性。リチャードの異常な振る舞いにはほとほと困り果てている。 ティティー・ツイスターでの戦いには消極的だったが、後半はボウガンによる無双タイムを披露。 ・&bold(){スコット・フラー} 演:アーネスト・リュー 吹替:[[檜山修之]] フラー一家の弟で、中国系の養子。 育ち盛りの年頃で、後半は聖水が入ったコンドーム爆弾や水鉄砲で無双するが、非情な選択を迫られる。 ・&bold(){チェット・プッシー} 演:チーチ・マリン 吹替:辻親八 ティティー・ツイスターで客引きをやっているオッサン。 その口上は一度聞いたら忘れられないこと請け合い。 >&bold(){そーら、プッシー、プッシー、プッシーだぜぃ!プッシーの好きな奴はみんな来~い!} >&bold(){ここティティー・ツイスターじゃばっさりプッシーの価格をカット!お手頃価格のナイスなプッシーが勢揃い!} >&bold(){まさにドピュ~ンと大放出だ!よりどりみどりだ!} >&bold(){白いプッシー!黒いプッシー!スペインプッシー!黄色いプッシー!} >&bold(){それにホットプッシー!アイスプッシー!ヌレヌレプッシー!} >&bold(){そして、くせぇプッシー!毛深いプッシー!血まみれプッシー!そしてバァ~クバァクプッシー!} >&bold(){それからシルクプッシー!ビロードプッシー!形状記憶プッシー!} >&bold(){おまけに馬のプッシー!チキンのプッシー!名犬プッシーたらぁ~!} >&bold(){どーだチキショーもってけドロボー!ヤってけプッシー野郎!よ~待ったれプッシー、あっぱれプッシーマニア~!} ちなみに演じたチーチ・マリンは他にも国境警備員や待ち合わせ相手のカルロスと合わせて一人三役。 これは元々ロドリゲスがお笑いコンビ「チーチ&チョン」のファンで友人同士なので、「人を見たらチーチ・マリンと思え」というギャグから取られている。 ・&bold(){レザー・チャーリー} 演:ダニー・トレホ 吹替:宝亀克寿 ティティー・ツイスターの店員。 この店にはバイク乗りとトラック乗りしか入れないとゲッコー兄弟を追い出そうとするが、ジェイコブが仲裁に入り事なきを得る。 ・&bold(){フロスト} 演:フレッド・ウィリアムソン 吹替:糸博 ティティー・ツイスターにて酒を飲んでいた黒人の男。 その体躯から発せられる怪力で敵を倒す&bold(){&color(red){(素手で心臓をぶっこ抜く)}}が、油断して自分の過去話をつらつらと独りでに喋り始めるというホラー映画の[[お約束フラグ>死亡フラグ]]を立て…… ・&bold(){セックス・マシーン} 演:トム・サヴィーニ 吹替:笹岡繁蔵 ティティー・ツイスターで酒を飲んでいた一般人、のはずだが&bold(){&color(red){股間に装備したピストルや鞭で敵を滅する}}一番普通じゃない人。 本業は特殊メイクアーティストであり、[[ロメロゾンビ>ゾンビ(映画)]]や[[13日の金曜日>13日の金曜日(映画)]]にも携わったベテランである。 #openclose(show=本作の敵(ネタバレ注意!)){ ・&bold(){吸血鬼} 本作のホラー要員で、ティティー・ツイスターの店員たちの正体。 しかし多勢に無勢のはずが一般人に全滅させられたり、明らかに襲えるシチュエーションでショッカーの人々みたいに周りをぐるぐるしてるだけだったりとツッコミどころ満載。 こいつらに咬まれたら吸血鬼に変貌する。感染力が高く、少しでも咬まれたらアウト。 って[[ゾンビ]]じゃんそれ…… 太陽光や十字架など、吸血鬼特有の弱点に対する耐性はかなり低い。 国境添いのティティー・ツイスターに立ち寄るトラック野郎達を餌にしており、ラストではティティー・ツイスター自体が古代の遺跡の上に建造されていたことが明らかとなる。 この作風のあまりの変貌ぶりについて、ロドリゲスはこう語る。 >&bold(){&color(#dc143c){この映画の利点は、前半にホラー要素がないことだ。}} >&bold(){&color(#dc143c){そのため、登場人物たちのことをよく知ることができ、思い入れも深まっていく。}} >&bold(){&color(#dc143c){だから彼らと恐怖感を共有できるんだ。}} >&bold(){&color(#dc143c){多くのホラー映画は、ホラー展開を出すのが早すぎる。そのため、作品の中に入り込めない。}} >&bold(){&color(#dc143c){しかしこの映画では、ホラー要素が入ってくる前に、映像の一部になってもらうことを可能にしている。}} >&bold(){&color(#dc143c){ホラー小説の素晴らしい点は、ホラー展開になる前に登場人物たちと多くの時間を共有し、彼らに心を寄せることができるということだ。}} >&bold(){&color(#dc143c){そしてそれによって、君は登場人物の一部になり、作品の一部となるんだ。}} 続けてタランティーノ。 #blockquote(){&bold(){&color(#c1ab05){比較するつもりはないんだけど、スティーブン・キングの小説が本当に怖いのは、彼がキャラクター造形において優れた作家であるからだ。}} &bold(){&color(#c1ab05){登場人物たちは信じられないほどリアルで、愛着を持てるように描かれている。}} &bold(){&color(#c1ab05){彼らに完全に感情移入させた後、文字通り地獄に突き落とすんだ。}} &bold(){&color(#c1ab05){スティーブン・キングのことだから、彼らへの仕打ちにためらいがない。だからこそ、それが本当につらいんだ。}} &bold(){&color(#c1ab05){これらのキャラクターに中身があって、ただの架空の存在じゃないからこそだな。}} &bold(){&color(#c1ab05){でも一番面白いのは……開始から1時間後にいきなり!吸血鬼が出てくることだ。}} &bold(){&color(#c1ab05){そりゃもう、全くの前触れなしに!}} &bold(){&color(#c1ab05){登場人物たちはそいつらと対峙するハメになり、観客も「い、一体何が起こっているんだ?!」という状態になるのさ!}} } } **余談 ---- 〇ゲッコー兄弟の目的地、メキシコのエル・レイは、ジム・トンプソンの小説『ゲッタウェイ』に登場する町の名前。 &bold(){金さえ払えば一生捕まる心配のない暮らしが約束される犯罪者たちのユートピア}として描かれている。 実際、エンドロールのスペシャルサンクスで作者の名前がクレジットされている。 また、ロドリゲスが開設したケーブルテレビチャンネルの名前も「エル・レイ・ネットワーク」である。 〇物語序盤で射殺されたテキサスレンジャーのアール・マクグロウは、タランティーノとロドリゲス作品の常連キャラで、本作がデビュー作。 『[[キル・ビル>キル・ビル(映画)]]』や『デス・プルーフ』では親子揃って登場しているが、実際の演者も親子である。 〇ティティー・ツイスターにいたバンドの名前は「Tito & Tarantula」で実在のバンド。 リーダーのティト・ラリヴァは『[[デスペラード>デスペラード(映画)]]』にも出演している。 そこで自身が作ったヴァンパイアについての曲を演奏したところ、ちょうどロドリゲスの次回作も同じテーマだったので本作に参加することになった……という経緯がある。 〇セスが地獄のサンタニコに「奴隷にしてあげる」と言われた場面、字幕と吹き替えでは言っていることが正反対になっている。 字幕版では「俺は女房の奴隷だ」と言っているのに対し、吹き替えでは「嫌だね!せっかく離婚したのに」と言っている。 ……いずれにせよ、あの凶悪犯とよく結婚できたものである。 〇『[[ウマ娘>ウマ娘 プリティーダービー]]』を展開するサイバーエージェント(サイゲ親会社)社長で馬主になった藤田晋氏の持ち馬に、その名もズバリ「フロムダスク」と「ティルドーン」がいる。 ロドリゲス監督の次回作は、学生たちが密かに侵略してきた宇宙人と戦うSFホラー映画『[[パラサイト>パラサイト(映画)]]』である。 #center(){&sizex(7){&b(){アタシの&ruby(ページ){項目}はアタシが編集する!}}} 参考文献 クエンティン・タランティーノ 映画に魂を売った男(フィルムアート社) タランティーノ・バイ・タランティーノ(株式会社ロッキング・オン) フル・ティルト・ブギ #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,5) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - 聖水(意味深)入りのコンドーム爆弾だと…(困惑)。こんなんで倒された吸血鬼には、同情することしかできんな。 -- 名無しさん (2015-02-27 11:45:50) - 昔見てナンジャコリャと思った。でも意外と楽しめた記憶がある。 -- 名無しさん (2015-09-15 20:16:53) - あるゲームから来たけどめちゃ好き、でもこんな映画他にないのが辛い -- 名無しさん (2016-10-31 17:38:44) - 野沢那智吹き替えと聞いてレンタルしてみたけど、後半の超展開に唖然となったわ。バカ映画好きにはたまらないクソ映画だった。最高 -- 名無しさん (2016-12-23 01:17:35) - 一応、吸血鬼達の存在にオチ部分で説明付けてるのが製作者の性格出てると思う。 -- 名無しさん (2019-05-22 02:44:45) - 前情報無しでこの映画を観ることができたのは幸運だった。あれだけの衝撃はなかなか味わえない。てか、この記事読むのを含めどういう映画か知った後で観ても全く意味がないと断言できる。 -- 名無しさん (2019-12-24 23:30:42) - よくよく考えると秀逸なタイトルじゃないかな、と(ぐるぐる目) -- 名無しさん (2023-07-31 22:39:53) #comment #areaedit(end) }
&font(#6495ED){登録日}:2012/02/14(火) 21:38:38 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 7 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- #center(){&sizex(7){&font(#ff0000,b){返り討ちにしてやるぜ!!}}} **概要 ---- &bold(){フロム・ダスク・ティル・ドーン(原題:FROM DUSK TILL DAWN)}は、1996年1月19日にアメリカで公開された映画。 日本では1996年6月15日に公開。 タイトルは直訳すると「夕暮れから夜明けまで」だが、夜の間はノンストップで上映しているドライブインシアターの看板のキャッチコピーが由来となっている。 監督は&bold(){&color(#dc143c){ロバート・ロドリゲス}}、脚本・製作総指揮は[[&bold(){&color(#e9bc00){クエンティン・タランティーノ}}>クエンティン・タランティーノ]]。 &bold(){お互いを「ブラザー」と呼び合うほど仲のいい、オタク監督二人が出会うきっかけになった作品である。} 元々本作の脚本は、特殊メイクデザイナーのロバート・カーツマンが書いたプロットを、タランティーノが肉付けしたもの。&footnote(この時カーツマンは報酬が1500ドルしか払えなかったため、『レザボア・ドッグス』撮影時に自社のスタッフを無償で提供した。血糊や切られた耳はここが作っていたのだ) カーツマンは監督を志望していたが、タランティーノが脚本を仕上げたというセールスポイントがあるにもかかわらず、実績がないということでどこからも相手にされなかった。 この脚本がロドリゲスの元に渡ったのは、1992年9月のトロント映画祭でのこと。 パネルディスカッションの時に配られたタランティーノの資料を見て、ロドリゲスは衝撃を受けた。 そこには、&bold(){クライム映画からジャンルが根本から変わるほどのトンデモ展開と化す}という、あまりにも荒唐無稽な内容の脚本について書かれていたのだ。 タランティーノはカーツマンから脚本を買い戻して監督しないかという申し出を受けたが断っており、代わりにロドリゲスに監督をやらせるようプロデューサーに言ったという。 &bold(){&color(#dc143c){「脚本書き直してくれるなら引き受けるぜェ……」}} &bold(){&color(#e9bc00){「いいぜェ……(ついでにオイラの演じるキャラも掘り下げるぜェ……)」}} こんな具合に二人はすっかり意気投合し、以降はオムニバス映画『[[フォー・ルームス>フォー・ルームス(映画)]]』や『[[グラインドハウス>グラインドハウス(映画)]]』でそれぞれ監督したりするなど、とても微笑ましい仲を披露している。 そういう背景あって作られた本作は、そのメーターの振り切りっぷりから、好みが真っ二つに分かれる作風である。 前半の雰囲気に期待していた人からは最低のクソ映画の烙印を押されるが、バカ映画好きには拍手喝采という、かなり見る人を選ぶ怪作となっている。 例えるなら、まるで高級料亭で食事をしてたと思ったら、いきなりアマゾン奥地の土着民族の料理が出てきたような感じだろうか。 また、3まで続編が出ているが、本国では劇場公開されていないオリジナルビデオ作品である。 2014年にはTVドラマ化もされている。 他にも、本作のメイキング作品『フル・ティルト・ブギ』があるが、レンタルビデオ版は早々に廃盤。 シリーズ3作品DVD-BOXのおまけとして再販されただけで長らく単品発売がなかったりと、地味にレアな作品だった。 **あらすじ ---- 全米各地で悪行の限りを働き、犠牲者16名&footnote(その内訳は、テキサスレンジャーが5名、警察官8名、市民3名。さらにこの後人質の女性も殺害したので17名となった)を叩き出したゲッコー兄弟は、[[メキシコ]]を目指し逃走中。 同じころ、キャンピングカーで旅をしていたフラー一家は運悪く二人の泊まっていたモーテルで鉢合わせ。 国境越えのための隠れ蓑として人質にされてしまう。 なんやかんやあって、まんまと国境を越えたゲッコー兄弟。 仲間との待ち合わせのため、彼らは酒場&bold(){&color(hotpink){ティティー・ツイスター(TITTY TWISTER:おっぱいグルグル)}}で一晩過ごすことになるが、なんとそこには恐ろしい秘密が……! **登場人物 ---- ・&bold(){セス・ゲッコー} 演:ジョージ・クルーニー 吹替:[[野沢那智]] ゲッコー兄弟の兄。 カンザス州立ローリング刑務所で服役していたが、リチャードの助けにより脱走し、共に逃走を続けている。 言動のイカれた弟に悩まされるが兄弟仲も良く、頭もよく切れる。 「悪党だが人の心はある」と語る通り、彼自身は無駄な殺人はしない主義。もっとも、弟のせいで台無しになっているのだが…… クルーニーは当時テレビドラマ『ER』のダグラス・ロス医師役でブレイクしたところ、タランティーノが『ER』の脚本を担当したことがきっかけで、本作への出演が決まった。 彼にとってはこれが、初めてのハリウッドメジャー作品出演であった。 ・&bold(){リチャード・ゲッコー} 演:クエンティン・タランティーノ 吹替:広川太一郎 ゲッコー兄弟の弟。 頭が悪く現実と妄想の区別がついておらず、意味不明な理由でレンジャーを撃ち殺したり、大事な人質を兄が目を離した隙に殺してしまうなど短絡的でミスが多い。 おまけにサルマ・ハエック演じる美女「地獄のサンタニコ」の&bold(){&color(hotpink){足に酒を流しながら舐める変態である。}} 実際、演じたタランティーノ自身&bold(){&color(hotpink){足フェチ}}。&bold(){職権乱用もいいところである。} ・&bold(){ジェイコブ・フラー} 演:ハーヴェイ・カイテル 吹替::[[大塚周夫]] キャンピングカーで旅をする一家の大黒柱の元牧師。 ゲッコー兄弟には冷静な態度で接する。 過去に妻を亡くし信仰を棄てたが、最大の危機に立ち向かうため棄てた信仰を取り戻していく。 ・&bold(){ケイト・フラー} 演:ジュリエット・ルイス 吹替:[[松本梨香]] フラー一家の姉。 5人の中で唯一の女性。リチャードの異常な振る舞いにはほとほと困り果てている。 ティティー・ツイスターでの戦いには消極的だったが、後半はボウガンによる無双タイムを披露。 ・&bold(){スコット・フラー} 演:アーネスト・リュー 吹替:[[檜山修之]] フラー一家の弟で、中国系の養子。 育ち盛りの年頃で、後半は聖水が入ったコンドーム爆弾や水鉄砲で無双するが、非情な選択を迫られる。 ・&bold(){チェット・プッシー} 演:チーチ・マリン 吹替:辻親八 ティティー・ツイスターで客引きをやっているオッサン。 その口上は一度聞いたら忘れられないこと請け合い。 >&bold(){そーら、プッシー、プッシー、プッシーだぜぃ!プッシーの好きな奴はみんな来~い!} >&bold(){ここティティー・ツイスターじゃばっさりプッシーの価格をカット!お手頃価格のナイスなプッシーが勢揃い!} >&bold(){まさにドピュ~ンと大放出だ!よりどりみどりだ!} >&bold(){白いプッシー!黒いプッシー!スペインプッシー!黄色いプッシー!} >&bold(){それにホットプッシー!アイスプッシー!ヌレヌレプッシー!} >&bold(){そして、くせぇプッシー!毛深いプッシー!血まみれプッシー!そしてバァ~クバァクプッシー!} >&bold(){それからシルクプッシー!ビロードプッシー!形状記憶プッシー!} >&bold(){おまけに馬のプッシー!チキンのプッシー!名犬プッシーたらぁ~!} >&bold(){どーだチキショーもってけドロボー!ヤってけプッシー野郎!よ~待ったれプッシー、あっぱれプッシーマニア~!} ちなみに演じたチーチ・マリンは他にも国境警備員や待ち合わせ相手のカルロスと合わせて一人三役。 これは元々ロドリゲスがお笑いコンビ「チーチ&チョン」のファンで友人同士なので、「人を見たらチーチ・マリンと思え」というギャグから取られている。 ・&bold(){レザー・チャーリー} 演:ダニー・トレホ 吹替:宝亀克寿 ティティー・ツイスターの店員。 この店にはバイク乗りとトラック乗りしか入れないとゲッコー兄弟を追い出そうとするが、ジェイコブが仲裁に入り事なきを得る。 ・&bold(){フロスト} 演:フレッド・ウィリアムソン 吹替:糸博 ティティー・ツイスターにて酒を飲んでいた黒人の男。 その体躯から発せられる怪力で敵を倒す&bold(){&color(red){(素手で心臓をぶっこ抜く)}}が、油断して自分の過去話をつらつらと独りでに喋り始めるというホラー映画の[[お約束フラグ>死亡フラグ]]を立て…… ・&bold(){セックス・マシーン} 演:トム・サヴィーニ 吹替:笹岡繁蔵 ティティー・ツイスターで酒を飲んでいた一般人、のはずだが&bold(){&color(red){股間に装備したピストルや鞭で敵を滅する}}一番普通じゃない人。 本業は特殊メイクアーティストであり、[[ロメロゾンビ>ゾンビ(映画)]]や[[13日の金曜日>13日の金曜日(映画)]]にも携わったベテランである。 #openclose(show=本作の敵(ネタバレ注意!)){ ・&bold(){吸血鬼} 本作のホラー要員で、ティティー・ツイスターの店員たちの正体。 しかし多勢に無勢のはずが一般人に全滅させられたり、明らかに襲えるシチュエーションでショッカーの人々みたいに周りをぐるぐるしてるだけだったりとツッコミどころ満載。 こいつらに咬まれたら吸血鬼に変貌する。感染力が高く、少しでも咬まれたらアウト。 って[[ゾンビ]]じゃんそれ…… 太陽光や十字架など、吸血鬼特有の弱点に対する耐性はかなり低い。 国境添いのティティー・ツイスターに立ち寄るトラック野郎達を餌にしており、ラストではティティー・ツイスター自体が古代の遺跡の上に建造されていたことが明らかとなる。 この作風のあまりの変貌ぶりについて、ロドリゲスはこう語る。 >&bold(){&color(#dc143c){この映画の利点は、前半にホラー要素がないことだ。}} >&bold(){&color(#dc143c){そのため、登場人物たちのことをよく知ることができ、思い入れも深まっていく。}} >&bold(){&color(#dc143c){だから彼らと恐怖感を共有できるんだ。}} >&bold(){&color(#dc143c){多くのホラー映画は、ホラー展開を出すのが早すぎる。そのため、作品の中に入り込めない。}} >&bold(){&color(#dc143c){しかしこの映画では、ホラー要素が入ってくる前に、映像の一部になってもらうことを可能にしている。}} >&bold(){&color(#dc143c){ホラー小説の素晴らしい点は、ホラー展開になる前に登場人物たちと多くの時間を共有し、彼らに心を寄せることができるということだ。}} >&bold(){&color(#dc143c){そしてそれによって、君は登場人物の一部になり、作品の一部となるんだ。}} 続けてタランティーノ。 #blockquote(){&bold(){&color(#c1ab05){比較するつもりはないんだけど、スティーブン・キングの小説が本当に怖いのは、彼がキャラクター造形において優れた作家であるからだ。}} &bold(){&color(#c1ab05){登場人物たちは信じられないほどリアルで、愛着を持てるように描かれている。}} &bold(){&color(#c1ab05){彼らに完全に感情移入させた後、文字通り地獄に突き落とすんだ。}} &bold(){&color(#c1ab05){スティーブン・キングのことだから、彼らへの仕打ちにためらいがない。だからこそ、それが本当につらいんだ。}} &bold(){&color(#c1ab05){これらのキャラクターに中身があって、ただの架空の存在じゃないからこそだな。}} &bold(){&color(#c1ab05){でも一番面白いのは……開始から1時間後にいきなり!吸血鬼が出てくることだ。}} &bold(){&color(#c1ab05){そりゃもう、全くの前触れなしに!}} &bold(){&color(#c1ab05){登場人物たちはそいつらと対峙するハメになり、観客も「い、一体何が起こっているんだ?!」という状態になるのさ!}} } } **余談 ---- 〇ゲッコー兄弟の目的地、メキシコのエル・レイは、ジム・トンプソンの小説『ゲッタウェイ』に登場する町の名前。 &bold(){金さえ払えば一生捕まる心配のない暮らしが約束される犯罪者たちのユートピア}として描かれている。 実際、エンドロールのスペシャルサンクスで作者の名前がクレジットされている。 また、ロドリゲスが開設したケーブルテレビチャンネルの名前も「エル・レイ・ネットワーク」である。 〇物語序盤で射殺されたテキサスレンジャーのアール・マクグロウは、タランティーノとロドリゲス作品の常連キャラで、本作がデビュー作。 『[[キル・ビル>キル・ビル(映画)]]』や『デス・プルーフ』では親子揃って登場しているが、実際の演者も親子である。 〇ティティー・ツイスターにいたバンドの名前は「Tito & Tarantula」で実在のバンド。 リーダーのティト・ラリヴァは『[[デスペラード>デスペラード(映画)]]』にも出演している。 そこで自身が作ったヴァンパイアについての曲を演奏したところ、ちょうどロドリゲスの次回作も同じテーマだったので本作に参加することになった……という経緯がある。 〇セスが地獄のサンタニコに「奴隷にしてあげる」と言われた場面、字幕と吹き替えでは言っていることが正反対になっている。 字幕版では「俺は女房の奴隷だ」と言っているのに対し、吹き替えでは「嫌だね!せっかく離婚したのに」と言っている。 ……いずれにせよ、あの凶悪犯とよく結婚できたものである。 〇『[[ウマ娘>ウマ娘 プリティーダービー]]』を展開するサイバーエージェント(サイゲ親会社)社長で馬主になった藤田晋氏の持ち馬に、その名もズバリ「フロムダスク」と「ティルドーン」がいる。 ロドリゲス監督の次回作は、学生たちが密かに侵略してきた宇宙人と戦うSFホラー映画『[[パラサイト>パラサイト(映画)]]』である。 #center(){&sizex(7){&b(){アタシの&ruby(ページ){項目}はアタシが編集する!}}} 参考文献 クエンティン・タランティーノ 映画に魂を売った男(フィルムアート社) タランティーノ・バイ・タランティーノ(株式会社ロッキング・オン) フル・ティルト・ブギ #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,5) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - 聖水(意味深)入りのコンドーム爆弾だと…(困惑)。こんなんで倒された吸血鬼には、同情することしかできんな。 -- 名無しさん (2015-02-27 11:45:50) - 昔見てナンジャコリャと思った。でも意外と楽しめた記憶がある。 -- 名無しさん (2015-09-15 20:16:53) - あるゲームから来たけどめちゃ好き、でもこんな映画他にないのが辛い -- 名無しさん (2016-10-31 17:38:44) - 野沢那智吹き替えと聞いてレンタルしてみたけど、後半の超展開に唖然となったわ。バカ映画好きにはたまらないクソ映画だった。最高 -- 名無しさん (2016-12-23 01:17:35) - 一応、吸血鬼達の存在にオチ部分で説明付けてるのが製作者の性格出てると思う。 -- 名無しさん (2019-05-22 02:44:45) - 前情報無しでこの映画を観ることができたのは幸運だった。あれだけの衝撃はなかなか味わえない。てか、この記事読むのを含めどういう映画か知った後で観ても全く意味がないと断言できる。 -- 名無しさん (2019-12-24 23:30:42) - よくよく考えると秀逸なタイトルじゃないかな、と(ぐるぐる目) -- 名無しさん (2023-07-31 22:39:53) #comment #areaedit(end) }

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: