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&font(#6495ED){登録日}:2011/11/20(日) 21:51:38
&font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red)
&font(#6495ED){所要時間}:約 5 分で読めます
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&tags()
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#center(){「門野、御存知でいらっしゃいましょう。」}
#center(){■人でなしの恋■}
大正15年に探偵小説家・江戸川乱歩が発表した小説作品。
古風に怪談と呼ぶのが相応しい名編であり、発表当時は編集者にも読者にも賛同は得られなかったと云うが、
自作に厳しい事で知られる乱歩も、この作品はお気に入りだったと云う。
当時としても、決して珍しい着想の作品では無いと解説されているが、
女性の一人語りによる美しい文体と、鮮烈な結末の一文により、現在では乱歩作品の中でも高い人気を誇っている。
【物語】
「門野、御存知でいらっしゃいましょう。十年以前になくなった先の夫なのでごさいます。」……。
ある女性により語られる、十年以上前の「夫殺し」の告白の物語。
19の娘の時分……。
美しい夫の許に嫁ぎ夢見心地に居た彼女が覗き見た夫の「秘密」とは……?
そして、夢から醒めた彼女が嫉妬にかられて行った「罪」とは……?
……「人ならざる道」にしか生きられぬ者の悲哀を、染み入る様に描いた「人でなしの恋(人外)」の物語。
【登場人物】
・私
名前は京子。
物語は彼女の一人語りによる、告白と云う形で紡がれる。
19の折に、仲人から母親を通じて「門野」家に嫁ぐ。
美しい夫に迎え入れられ有頂天に居たが、やがては夫が別の女を愛している事に気付き……。
・門野
門野家の跡取りで、気難し屋で人付き合いが少なく病気がちだが、恐ろしい程に美しい人であると云う意外は、年齢、名前、共に不明。
妻として迎え入れた京子に精一杯の愛情を注ぐが、その心は夜毎に土蔵の中で逢瀬を重ねる「愛人」に捉われていた。
#center(){&font(#ff0000){※以下はネタバレ注意。}}
【真相】
語り部である「私」の夫である門野が真に愛していたのは、
旧家である門野家の倉に眠っていた「立木」と云う名人が作り、当時の領主から門野家に拝領された「美しい京人形(浮世人形)」であった。
乱歩一級の筆致により描写された艶めかしい姿には、思わず生唾が込み上げて来る程((「真ッ赤に充血して何かを求めている様な、厚味のある唇、唇の両脇で二段になった豊頬、物いいたげにパッチリ開いた二重瞼、その上に大様に頬笑んでいる……以下略」))。
美しい夫は、この世の物ならざる人形の心を自ら演じ、人ならざる恋に溺れていたのだ。
ギリシャのピグマリオンとガラティアの神話((自らが作った女神の彫像に恋し、彫像と婚姻した男の物語))から名付けられた「ピグマリオンコンプレックス」を描いた物語であり(八十数年前!)、
云わば近代に於ける本邦初の&font(#f09199){&bold(){元祖フィギュア萌え}}小説である。
&font(#808080){「いつもいって聞かせる通り私はもう出来るだけのことをして、あの京子を愛しようと努めたのだけれど、悲しいことには、それがやっぱり駄目なのだ。&br()若い時から馴染を重ねたお前([[美少女フィギュア]])のことが、どう思い返しても、思い返しても、私にはあきらめ兼ねるのだ。&br()京子にはお詫のしようもないほど済まぬことだけれど、済まない済まないと思いながら、&br()やっぱり、私はこうして、夜毎にお前([[美少女フィギュア]])の顔を見ないではいられぬのだ。&br()どうか私の切ない心の内を察しておくれ」}
「&font(#ffb74c){嬉しうございます。あなたの様な美しい方に、あの御立派な奥様をさし置いて、それほどに思って頂くとは、私はまあ、何という果報者でしょう。&br()嬉しうございますわ}(自演乙)」
……自分の愛用の[[美少女フィギュア]]と、上記の様なやり取りを演じた記憶のある変態紳士の皆様のみ追記修正をお願い致します。
#include(テンプレ2)
#center(){&font(#0000ff){&u(){乱歩「うつし世は夢、よるの夢こそまこと」}}}
#center(){&font(#0000ff){&u(){??「女の怨みは深いので御座います」}}}
#include(テンプレ3)
【結末】
そう、この物語は人形への愛情のみを描いた物語では無い。
語り部である「私」の罪……。
それは、ヒロインによる人形の「殺人」なのである。
……物語の最期、門野は彼女によって[[バラバラ>バラバラ(状態)]]に破壊された愛しき「人形」の後を追い、その骸を抱いて自ら毎に[[日本刀]]で刺し貫き心中を遂げるのである。
その凄惨な場面を彩る乱歩の結末の一文がまた美しく、読者に強烈な印象を与えている。
……「見れば、私に叩きひしがれて、半(なかば)残った人形の唇から、
さも人形自身が血を吐いたかの様に、血潮の飛沫が一しずく、その首を抱いた夫の腕の上へタラリと垂れて、
そして人形は、[[断末魔>断末魔の叫び]]の不気味な笑いを笑っているのでございました。」……。
#include(テンプレ2)
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#vote3(time=600,3)
}
#include(テンプレ3)
#openclose(show=▷ コメント欄){
#areaedit()
- エコエコアザラクの作者がコミカライズしている作品で初めてこれを知った。笑っている人形も怖かったが主人公の奥さんも嫉妬の形相がすごかった。 -- 名無しさん (2013-09-07 22:23:40)
- ラブプラスを浮気認定されてしまった話も、あながち荒唐無稽でもないんだな。 -- 名無しさん (2013-11-28 19:11:09)
- ホント、この人はアブノーマルな性癖を描くのが得意だよな。二次元萌えの予言者といってもいい。感服する。 -- 名無しさん (2014-09-14 02:19:00)
- 一応生き物だが、昔話には、じーさまがカニに餌やってる姿見てばーさまがそれに嫉妬しカニ殺しちゃう話があったっけ。おぞましいのは人形を愛する事より、それに嫉妬する女の情念だよな。 -- 名無しさん (2014-09-14 05:52:45)
- これ考えたの男だけどね まあ妄想力の強さは諸刃の剣というか、ピグマリオンコンプレックスもその一つってことだね -- 名無しさん (2014-11-19 20:30:28)
- ↑「女は怖い」というの自体がある意味「そうあってほしい男の妄想」でもあるんだろうな。痴漢されたって愚痴を自慢だと思うのと同じで、女をそこまで恐ろしい物にさせる俺の魅力自慢的な。 -- 名無しさん (2016-11-11 22:04:35)
- 夫の台詞からしても、当時的には二次元(2.5次元か)は浮気じゃないという考えもなかったんだろう。本気で愛するというのはこういうことなんだろうけど -- 名無しさん (2019-01-25 13:53:56)
#comment
#areaedit(end)
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#center(){「門野、御存知でいらっしゃいましょう。」}
#center(){■人でなしの恋■}
大正15年に探偵小説家・江戸川乱歩が発表した小説作品。
古風に怪談と呼ぶのが相応しい名編であり、発表当時は編集者にも読者にも賛同は得られなかったと云うが、
自作に厳しい事で知られる乱歩も、この作品はお気に入りだったと云う。
当時としても、決して珍しい着想の作品では無いと解説されているが、
女性の一人語りによる美しい文体と、鮮烈な結末の一文により、現在では乱歩作品の中でも高い人気を誇っている。
【物語】
「門野、御存知でいらっしゃいましょう。十年以前になくなった先の夫なのでごさいます。」……。
ある女性により語られる、十年以上前の「夫殺し」の告白の物語。
19の娘の時分……。
美しい夫の許に嫁ぎ夢見心地に居た彼女が覗き見た夫の「秘密」とは……?
そして、夢から醒めた彼女が嫉妬にかられて行った「罪」とは……?
……「人ならざる道」にしか生きられぬ者の悲哀を、染み入る様に描いた「人でなしの恋(人外)」の物語。
【登場人物】
・私
名前は京子。
物語は彼女の一人語りによる、告白と云う形で紡がれる。
19の折に、仲人から母親を通じて「門野」家に嫁ぐ。
美しい夫に迎え入れられ有頂天に居たが、やがては夫が別の女を愛している事に気付き……。
・門野
門野家の跡取りで、気難し屋で人付き合いが少なく病気がちだが、恐ろしい程に美しい人であると云う意外は、年齢、名前、共に不明。
妻として迎え入れた京子に精一杯の愛情を注ぐが、その心は夜毎に土蔵の中で逢瀬を重ねる「愛人」に捉われていた。
#center(){&font(#ff0000){※以下はネタバレ注意。}}
【真相】
語り部である「私」の夫である門野が真に愛していたのは、
旧家である門野家の倉に眠っていた「立木」と云う名人が作り、当時の領主から門野家に拝領された「美しい京人形(浮世人形)」であった。
乱歩一級の筆致により描写された艶めかしい姿には、思わず生唾が込み上げて来る程((「真ッ赤に充血して何かを求めている様な、厚味のある唇、唇の両脇で二段になった豊頬、物いいたげにパッチリ開いた二重瞼、その上に大様に頬笑んでいる……以下略」))。
美しい夫は、この世の物ならざる人形の心を自ら演じ、人ならざる恋に溺れていたのだ。
ギリシャのピグマリオンとガラティアの神話((自らが作った女神の彫像に恋し、彫像と婚姻した男の物語))から名付けられた「ピグマリオンコンプレックス」を描いた物語であり(八十数年前!)、
云わば近代に於ける本邦初の&font(#f09199){&bold(){元祖フィギュア萌え}}小説である。
&font(#808080){「いつもいって聞かせる通り私はもう出来るだけのことをして、あの京子を愛しようと努めたのだけれど、悲しいことには、それがやっぱり駄目なのだ。&br()若い時から馴染を重ねたお前([[美少女フィギュア]])のことが、どう思い返しても、思い返しても、私にはあきらめ兼ねるのだ。&br()京子にはお詫のしようもないほど済まぬことだけれど、済まない済まないと思いながら、&br()やっぱり、私はこうして、夜毎にお前([[美少女フィギュア]])の顔を見ないではいられぬのだ。&br()どうか私の切ない心の内を察しておくれ」}
「&font(#ffb74c){嬉しうございます。あなたの様な美しい方に、あの御立派な奥様をさし置いて、それほどに思って頂くとは、私はまあ、何という果報者でしょう。&br()嬉しうございますわ}(自演乙)」
……自分の愛用の[[美少女フィギュア]]と、上記の様なやり取りを演じた記憶のある変態紳士の皆様のみ追記修正をお願い致します。
#include(テンプレ2)
#center(){&font(#0000ff){&u(){乱歩「うつし世は夢、よるの夢こそまこと」}}}
#center(){&font(#0000ff){&u(){??「女の怨みは深いので御座います」}}}
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【結末】
そう、この物語は人形への愛情のみを描いた物語では無い。
語り部である「私」の罪……。
それは、ヒロインによる人形の「殺人」なのである。
……物語の最期、門野は彼女によって[[バラバラ>バラバラ(状態)]]に破壊された愛しき「人形」の後を追い、その骸を抱いて自ら毎に[[日本刀]]で刺し貫き心中を遂げるのである。
その凄惨な場面を彩る乱歩の結末の一文がまた美しく、読者に強烈な印象を与えている。
……「見れば、私に叩きひしがれて、半(なかば)残った人形の唇から、
さも人形自身が血を吐いたかの様に、血潮の飛沫が一しずく、その首を抱いた夫の腕の上へタラリと垂れて、
そして人形は、[[断末魔>断末魔の叫び]]の不気味な笑いを笑っているのでございました。」……。
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}
#include(テンプレ3)
#openclose(show=▷ コメント欄){
#areaedit()
- エコエコアザラクの作者がコミカライズしている作品で初めてこれを知った。笑っている人形も怖かったが主人公の奥さんも嫉妬の形相がすごかった。 -- 名無しさん (2013-09-07 22:23:40)
- ラブプラスを浮気認定されてしまった話も、あながち荒唐無稽でもないんだな。 -- 名無しさん (2013-11-28 19:11:09)
- ホント、この人はアブノーマルな性癖を描くのが得意だよな。二次元萌えの予言者といってもいい。感服する。 -- 名無しさん (2014-09-14 02:19:00)
- 一応生き物だが、昔話には、じーさまがカニに餌やってる姿見てばーさまがそれに嫉妬しカニ殺しちゃう話があったっけ。おぞましいのは人形を愛する事より、それに嫉妬する女の情念だよな。 -- 名無しさん (2014-09-14 05:52:45)
- これ考えたの男だけどね まあ妄想力の強さは諸刃の剣というか、ピグマリオンコンプレックスもその一つってことだね -- 名無しさん (2014-11-19 20:30:28)
- ↑「女は怖い」というの自体がある意味「そうあってほしい男の妄想」でもあるんだろうな。痴漢されたって愚痴を自慢だと思うのと同じで、女をそこまで恐ろしい物にさせる俺の魅力自慢的な。 -- 名無しさん (2016-11-11 22:04:35)
- 夫の台詞からしても、当時的には二次元(2.5次元か)は浮気じゃないという考えもなかったんだろう。本気で愛するというのはこういうことなんだろうけど -- 名無しさん (2019-01-25 13:53:56)
- >珍しい着想の作品では無い ここ一番驚いた -- 名無しさん (2022-05-30 20:22:20)
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