SF

登録日:2020/1/12 (日曜日) 04:57:00
更新日:2023/09/09 Sat 15:33:24
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SFとは、広義のファンタジーの一分野である。空想科学。


●もくじ

概要

ある仮定を想像し、そこから何が起こるかを想像するジャンルと言ってよい。広い意味ではファンタジーとほぼ同義である。中でも、一見不可解に見える現象を実在の科学現象や技術を引き合いに出して説明する/説得力を持たせることで「実際にそうかもしれない/そうなるかもしれない」と思わせる(センス・オブ・ワンダー)作品はSFの特徴を持っていると言える。

基本的にはある空想をもとに論理的に(またはそう見えるように)作られた設定やストーリーを全般的にSFと呼称していることが多い。
硬派あるいは古風な印象を持たれがちだが、後述の定義のような「狭義のSF」「ジャンルとしてのSF」と呼ぶべきものもでも映画やアニメ, web小説等の影響を受けたりして作られたものも多く、『ニンジャスレイヤー』のように「バカSF」と称されるものもある。

SFという名前の歴史は古く、アメリカのSF専門誌アメージング・ストーリーズの創始者ヒューゴー・ガーンズバックの1926年の定義にまで遡る。
現代でもロボットモノや異世界モノを始めとする様々なアニメやライトノベル等に影響を与えておりSNS上でもたびたび議論の的となっている。

ジャンルとしては論理的・科学的に正確なことやご都合主義のないことなどが特に求められ、時に批判の材料とされる傾向にはあるものの「どんなモノでも9割はガラクタ」(byスタージョン)の信念のもと現在では悪く言えば玉石混交, 良く言えば懐の広いジャンルとなっている。

一方で日本では単行本に未収録の小説作品が膨大な数に上るのもまたこのジャンルの特徴である。「S-Fマガジン」を始めとする専門誌・非専門誌に連載された短編でも、その多くは単行本化されていないことも多い。
また当然ながら同人誌として出版されたものは漫画同様即売会等に出向く以外での入手は難しい。

SFファンのことを「SF者」と呼ぶことがあるが、読み方は決まっていない。

定義

その定義は曖昧で、SFといえば普通「サイエンス・フィクション」の略であるが、「スペキュレイティブ・フィクション」の略である場合は哲学的・学問的な意味合いが強くなり、「サイファイ(Sci-Fi)」と書くと娯楽性が高くなる。「スペース・ファンタジー」の略である場合は言わずもがな宇宙が関係してくる。「S(少し)F(不思議)」と藤子不二雄読みDAI語読みすると、なんだか分かったような、そうでもないような、なんとも言えない気分になる。ファンダムではいずれの場合も「プロ作家が書いたもの」という考えが先にあるらしく、アマチュアの書いたものとは区別されるようだ。

「サイエンス」については、西洋では自然科学(物理学や化学、数学など)といったハードウェア的な科学を「ハードサイエンス」、
人文科学(経済学や心理学、歴史学民俗学哲学など)といったソフトウェア的な科学を「ソフトサイエンス」と呼び、
どちらに基づいたフィクションかによって「ハードSF」と「ソフトSF」に分類されることがあるが、
日本では経済学や心理学などはサイエンスと呼ばない場合が多いためか、「ハードSF」の語は「ハードボイルドなSF」を指して使われることがある。
具体的にはこの項目とか。
そして西洋で言う「ソフトSF」的な作品が星雲賞を受賞したりすると首を傾げられることも多い。

書かれた当時から考えて未来の話であったり、宇宙から超文明が出てくる類の話だと思われがちだが、実際はよしながふみの『大奥』のような歴史改変モノも一応SFの一ジャンルである(ティプトリー賞を受賞している)。

SFになる基準

一応基準を挙げるなら、下のどれかといった感じか。

①書かれた時点での未来や宇宙人などの未知の領域について想像を膨らませていたり、真新しい世界観を構築している。もしくは、それまでSFジャンルで扱われてきた道具を用いている。
②実現したい設定を本当らしく見せるために科学に基づいた説明を加えている。

文学作品はしばしば(1)一見矛盾する出来事や意外な出来事を描くことで好奇心を刺激し(2)それがあり得る理由や余地の存在を説明することで読者や視聴者の常識に新たな視点を与えるものであるが、SFの場合は(1)の範囲が不可解な現象や超自然的な技術に広がり、かつ(2)の説明が科学的だったり、科学的な表現を混ぜることで本当らしく見せようとしたりするものであるといえるだろう。
 このためSFは第一に設定に新規性がなければ剽窃であるとして(コアなファンからは)評価が得られず、第二に設定がフェアかつ論理的でなければ完成度が低いものとして見られるものと思われる。

科学技術の要素はあるものの科学的な考証をあまり行っていないものは「サイエンス・ファンタジー」だとか「スペース・ファンタジー」とか言われるようだ(これらもSFと略される)。

度々ファンタジーとの違いに焦点が当てられるが、上述の通り魔法が出てきたり異世界の話だったりしてもSFにされることがあるので、ファンタジーの中にSFがあると考えた方がいいのかもしれない。

大森望は、「科学的論理を基盤にしている。また、たとえ異星や異世界や超未来が舞台であっても、どこかで「現実」と繋がっている(ホラー、ファンタジーとの区別)」
「現実の日常ではぜったいに起きないようなことが起きる(ミステリーとの区別)」
「読者の常識を覆す独自の発想がある(センス・オブ・ワンダーまたは認識的異化作用)」
「既存の(擬似)科学的なガジェットまたはアイデア(宇宙人、宇宙船、ロボット超能力タイムトラベルなど)が作中に登場する(ジャンル的なお約束)」(以上、Wikipediaより引用)としている。

他ジャンルとの区別としては他に、「お化けが出たら怖がるのがホラー、仲良くなるのがファンタジー、分析するのがSF」という言説もあるが、当然これらの枠に当てはまらないSFもある。
その他の定義についてはWikipediaの英語版の記事に詳しく書かれているので割愛。英語が読めない人はDeepL翻訳を使って読んでください。


アニメ作品ではしばしば対比や比喩表現のためにキャラクターや展開が用意されるため、科学的に正確でない場合がある。
例えばアニメ映画『君の名は。』では感情表現のために彗星の軌道が現実と違っているし、離れた二人が大都市のすれ違う列車で目を合わせるという途方もなく低い確率の出来事も起こしている。
この様な場合はSF要素が低く、「ファンタジー」要素が高い作品と言えるかもしれない。

SF的な要素

例えば銃を扱うアニメ作品があるとして、ミリタリー的な考証であればその正しい持ち方や重さによる姿勢の変化などに焦点が行くのに対し、SF的な考証ではどちらかと言えば持っている人が軍人かどうか等を考え、正しい持ち方をする人物なのかを考える。

また、大半のアニメ作品などは作品のエンタメ性や分かりやすさのため、最初に説明された設定などは途中で変わることがないが、例えば『神さまのいない日曜日』などのように、これに途中から新しい解釈が加わったりするとSF的な作品と呼ばれることがある。

レーベル

一応、企業がSFだと認識しているものは「S-Fマガジン」のような専門誌の表紙を飾ったりしている。
以下、日本の主要なSFレーベル。

  • ハヤカワSF文庫(通称・青背)
  • ハヤカワ文庫JA
  • ハヤカワSFシリーズJコレクション
  • 創元SF文庫(91年までは創元推理文庫の一部)
  • サンリオSF文庫(廃刊、通称・白背)
  • ソノラマ文庫
  • 河出書房の一部の本(奇想コレクションなど)
  • 国書刊行会の一部の本(未来の文学、ク・リトル・リトル神話大系など)
  • ガガガ文庫の一部の本
  • 竹書房文庫の一部の本
  • 秋元文庫SFシリーズ


早川書房にはハヤカワFTというファンタジー専門のレーベルがあるが、ハヤカワSFシリーズからはファンタジードラマ『ゲームオブスローンズ』の原作である『氷と炎の歌』の翻訳版が出ているので、ここでもやはり両者の違いは曖昧である。


主な文学賞


日本

  • 星雲賞
  • 日本SF大賞
  • センス・オブ・ジェンダー賞
  • ハヤカワ・SFコンテスト
  • 福島正実記念SF童話賞
  • 日本SF新人賞(終了)
  • 日本SF評論賞(終了)
  • 小松左京賞(終了)

など

英米

  • ヒューゴー賞
  • ネビュラ賞
  • ローカス賞
  • ジョン・W・キャンベル記念賞
  • ジョン・W・キャンベル新人賞→アスタウンディング新人賞(2020~)
  • フィリップ・K・ディック賞
  • シオドア・スタージョン記念賞
  • ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞→アザーワイズ賞(2020~)
  • アーサー・C・クラーク賞
  • 英国SF協会賞
  • サイドワイズ賞
  • キッチーズ賞
  • 世界幻想文学大賞
  • アンドレ・ノートン賞
  • 国際幻想文学賞(終了)

など

オーストラリア

  • ディトマー賞
  • チャンドラー賞
  • オーリアリス賞

など

フランス

  • アポロ賞(終了)
  • イマジネール大賞

など

イタリア

  • イタリア賞
  • カシオペア賞

など

ドイツ

  • クルト・ラスヴィッツ賞
  • ドイツSF大賞

など

その分類

SFひいてはファンタジーは「1%の嘘を99%の本当で補う」という通念を持っている(もちろんライトノベルなど非現実的な世界観と非現実的なキャラが同時に出るような作品も珍しくはないが)。SFがどの点にフォーカスしているのかというのは、1%の嘘をどの要素に当てはめるのか、ということなのかもしれない。

魅力別

  • 思考実験
ある設定が社会や文化などの思想にどのような影響を与え、どのような学問などを生むか、といったアプローチ。SFの中では最もポピュラーかつ万人受けしやすいタイプで、説得力を与える演出やテーマ設定などでもよく使われる。時には社会風刺のために使われることも。

  • 特撮, ロボット, 異世界, ロマンス, ホラー, サスペンス
いわゆる萌えやフェティシズム, もしくはシチュエーションを実現するために現実と異なる設定を導入するタイプ。思考実験と相性がいい。アニメやライトノベル, 少女小説, ジュブナイルなどのポップカルチャーに寄っているため、最初から飽きさせない文体のものが多い(気がする)。

  • ミリタリー, ミステリー, 歴史
与えられた条件の中で何をするべきか, 何が起こるのか, はたまた、その一見秀逸に見える条件にはどんな落とし穴があるのか、といったことを想像するタイプ。現実と異なる前提が与えられる点は「思考実験」と同じだが、社会の思想の変化を夢想するというよりはテーマ性を廃したより論理的な思考を行うシーンが多い。時には軍事学や経済学, 物理学といった専門分野を用いた堅実なシミュレーションをも行うため書く側の難易度は高い。
特にミリタリーものは書き手・読み手の政治的思想がモロに反映されやすい、「文学性のない単なる娯楽小説」と同じSF読者からも見下されがち、現実世界がヤバくなりだすと「こんなん書いてる場合か!」と思われがちといった理由からかなり扱いが難しい。

  • 異化作用
現実と大きく異なる世界、あるいは今までの物語の定石に捻りを加えた世界で人を驚かせ、更にはそれまでの価値観を覆して人間の倫理が容易に変化しうることを示しさえする。前提となるギミックの説明をする機会が比較的多いが、ミリタリー等のような本格的な知識よりは広く浅い素養が求められるかもしれない。

  • 実験, 現代美術
なんだかよく分からない単語を羅列することで読者の活字に対する飢えを満たすタイプの小説などが該当する。読書の瞬間に発生する現前性をもって各種考証の代わりとしているのか、あるいは新世紀エヴァンゲリオンの台詞のような未知の単語への欲望を餌として読書意欲を育てているのか。答えは誰も知る由がない。

  • 未来予想
未来を予想した設定が出てくる作品は、何十年も後になってそれが的中すると読者や視聴者から思わぬ形で評価されることになる。「どのような道具が便利なのか」ということを考えるのもまた、SF作家の仕事なのかもしれない。外れた場合もレトロフューチャーに代表されるような一種の萌えを産むことがあり、それはそれで人気が出る。


舞台道具別

ガジェット・科学技術・現象

  • AI・コンピュータ
  • VR
  • FTL(超光速移動)・宇宙物理
  • 時間移動
  • 並行世界
  • コールドスリープ(冷凍睡眠)
  • ナノマシン
  • バイオテクノロジー
  • 余剰次元・異空間
  • 言語・ミーム
  • ゼンマイ仕掛け
  • 蒸気機関
  • ディーゼルエンジン
  • レトロフューチャー
  • 現代の道具
  • 宇宙人・ミュータント・進化
  • 超能力・異能力・幽霊
  • スーパーロボット・怪獣・特撮

場所

  • 現実世界
  • 過去・未来
  • 仮想現実空間
  • サイバースペース
  • 宇宙・外惑星
  • 秘境
  • 地底
  • ファンタジー世界

問題・テーマ

  • ファーストコンタクト
  • 監視社会・管理社会
  • クォリア
  • テセウスの船
  • シンギュラリティ(技術的特異点)
  • 冷たい方程式
  • 終末・破滅
  • 応用倫理
  • 環境問題・公害
  • パンデミック
  • テロリズム
  • 差別・貧困

方向性・ターゲット層

  • パンク
  • センスオブワンダー
  • 架空世界・ファンタジー
  • 歴史改変・架空戦記
  • 年代記・大河
  • ホラー
  • 推理・ミステリー
  • サスペンス・ピカレスクロマン・ハードボイルド
  • サバイバル
  • ミリタリー・戦争
  • 冒険
  • 風刺・社会批評
  • ギャグ・ナンセンス
  • 芸術・純文学
  • キャラ物
  • 恋愛・関係性
  • ジュブナイル
  • ライトノベル
  • 萌え・エログロ

表現方法

  • 翻訳調
  • ニューウェーブ
  • 架空論文

歴史別のジャンル

何をもってSFとするかは上述の通り曖昧である。見方によっては聖書や竹取物語もSFに入る。

ここで扱うものは主に「ある設定を論理的な説明を交えて本当の様に語ることを主軸に据えた作品」である。但し、その設定や語り方の形式(例えば、使われる技術等)の元になったものやその派生に関しても同様に扱うことがある。

分かりやすさの都合上有名なもののみ記述。興味があれば自分で調べることをお勧めする。



前史

  • 概略
ウェルズやヴェルヌらのいわゆる「SF作家」達が登場する以前にも、人々は社会秩序の維持、あるいは単に面白さをもとめて民話や再話といった物語を作っていた。もちろんそこには架空の技術や道具(≒ガジェット)なども多分に存在することになるが、そうした技術はまだ科学的な動作原理が説明されたものではなく、専ら魔法や通力などの民間伝承、異国の技術といった曖昧なものであるに過ぎなかった。

しかしながらこうした作家たちはまた社会風刺や夢のためにたびたびユートピア(=理想郷)を描き、SFの土台を作っている。

  • 詳細
ギリシャ語で書かれた短編『本当の話』(サモサタのルキアノス、167年頃)や日本の古典『竹取物語』(作者不詳、9~10世紀頃?)には月人や太陽人などの異星人が登場するほか、説話集『千夜一夜物語』(~9世紀頃)でもSFを連想させる様々な道具等が存在している。『神曲』(ダンテ・アリギエリ、1472)では、宗教的な世界観に基づいて地球の内部の様相が語られている。

また『ユートピア』(トマス・モア、1516)では架空の島の政治体制と対比する形で当時のヨーロッパへの批判が描かれており、本書に登場する島の名前を転用して、「理想郷」という意味の用語「ユートピア」(本来は「どこにもない場所」という意味のモアの造語)が生まれた。

ルネッサンスの時代に入ると、ガリレオやコペルニクスといった科学者が宇宙の構造を明らかにし、レオナルド・ダ・ヴィンチがヘリコプターの設計図を書き始め、キリスト教の厳格さからの解放を求めて、人々は人間を主体とした科学技術の未来に思いを馳せることとなる。

楕円軌道の法則を発見したことでも有名な天文学者ヨハネス・ケプラーの著書『夢』(1634)では、精霊による語りの形式で、月や月から見た地球の様子が描かれている。
また、『月の男』(フランシス・ゴドウィン、1638)では、鳥を使った方法で月への旅行が描かれている。

加えて新大陸の開拓・植民地化の影響もあり、『ブレイジング・ワールド』(マーガレット・キャベンディッシュ、1666)や『ピエール・ド・メザンジュの生涯と冒険とグリーンランド旅行』(シモン・ティソ・ド・パト、1720)といった冒険小説も増えていく。

これらの小説はエーテルなど現代の科学からすれば古い概念もあり、また時代的な制約から倫理的に不十分な描写もあるものの、当時の人々の思い描いていたユートピアに対する憧れを窺い知ることができる。

『ガリバー旅行記』(ジョナサン・スウィフト、1726)では宙に浮き磁石で航行する城「ラピュータ」が登場しているなど、一部に(当時の)科学的な技術から想像を膨らませて書いた表現も存在していたが、魔術が登場するなど完全に科学的な想像のもとに作られた訳ではなかった。

19世紀

『フランケンシュタイン』(メアリー・シェリー、1818)は、科学が引き起こす悲劇などを描いている点でSFの一つの原点と見る人は多い。それまでユートピア的だった科学の未来予想が覆され、SFはここで、それまでの冒険を描いたものと、科学の負の側面を描いたものの二種類に分かれることとなる。


『種の起源』(チャールズ・ダーウィン、1859)の革新的な進化論が当時の社会科学に影響を与える一方、その十五年前に出版された『創造の自然史の痕跡』(ロバート・チェンバーズ、1844)もまた、宗教的な要素はあるものの進化論から人間の歴史を推測しており、人々の科学的なロマンスを掻き立てていた。

SF以外では、『クリスマス・キャロル』(チャールズ・ディケンズ、1843)が未来へのタイムスリップを描いている。


ジュール・ヴェルヌ

『地底旅行』(1864)をはじめとする冒険小説を多く手掛けている。
『月世界旅行』(1869)の中で月に発射された宇宙船の計算はのちのアポロ11号の打ち上げと比較してほぼ正確であることが分かっており、単に科学的な用語だけを述べたものではないことを窺い知ることができる。
『海底二万里』(1869)では当時はまだ原始的なものだった潜水艦を使用した海洋冒険ものであり、ここから既存の技術を科学的な可能性を使用して高度なものにするというパターンを確立することとなる。
シェリーがガジェットの原理の一部に錬金術を用いていたのに対し、こうした科学技術を用いた説明をし、冒険小説の模倣作品も多く出すことになったヴェルヌは「SFの父」と呼ばれている。

H.G.ウェルズ

ヴェルヌが現代世界での冒険やロマンを科学的な考証を交えて描いたのに対し、ウェルズはあくまで主人公を受動的に観察する人物に据え、生物が終焉を迎える未来の世界や、アンチ・ユートピア的な作品も描き、作品内でタコ型宇宙人や最終戦争といった多くのガジェットやモチーフを発明している。
『タイムマシン』(1895)で初めて機械を使った時間移動を描くと同時に、文明批判的な思想を織り交ぜている。
また『宇宙戦争』(1898)では、宇宙人と人間の抗争を通して、混乱するロンドンを描くとともにイギリスの帝国主義を批判している。

  • 『モロー博士の島』(1896)
生体実験を行うマッドサイエンティストによって生み出された獣人の住む島に降ろされた男を描く。

  • 『透明人間』(1897)
薬と特殊な照明で透明化する技術を得た主人公が、次第に研究にとりつかれ変容していく。

ウェルズは多大なる功績からヴェルヌと共に「SFの父」の称号を得ている。

ヘンリー・ライダー・ハガード

当時未開だったアフリカを舞台にした『洞窟の女王』(1887)などの秘境探検小説を書く。

19世紀のその他の作品

怪奇小説作家として知られるエドガー・アラン・ポーも『大渦に呑まれて』(1841)をはじめとするSF小説を書いている。

ウェルズ以前にはシェリーやヴェルヌらの手法を組み合わせることで生まれた小説が多く生まれ、『The Steam Man of the Prairies』(エドワード・S・エリス、1868)で蒸気機関を使った冒険小説が書かれるなどしている。
『The Case of Summerfield』(ウィリアム・ヘンリー・ローズ、1870)もこのころの作品であり、マッドサイエンティストが設計した殺人光線を止める内容である。

また、エドワード・ペイジ・ミッチェルは当時の大衆雑誌「The Sun」に多くの短編小説を発表している。『The Clock that Went Backward』(1881)や『The Crystal Man』(同)などの小説で、タイムスリップ、透明人間といった発想を描き、電気ヒーターやFAX、コールドスリープ、国際放送といったものの登場を予言しているほか、心霊現象や超常現象を扱った作品も多く書いている。

  • 『ジキル博士とハイド氏』(ロバート・ルイス・スティーブンソン、1886年)
薬を使用して別人になって犯罪を犯し、最終的に新たな人格に呑まれてしまうという内容。

  • 『アーサー王宮廷のコネチカット・ヤンキー』(マーク・トウェイン、1889年)
古代にタイムスリップした主人公が現代の科学知識で活躍する。初期の異世界モノと呼ばれている。

  • 『The Mummy!: A Tale of the Twenty-Second Century』(ジェーン・ルードン、1827)
『フランケンシュタイン』の影響を受けて執筆された。未来世界の高度な科学技術でよみがえったミイラが道徳的に破綻したイギリスの秩序を回復させる。

  • 『Edison's Conquest of Mars』(ギャレット・P・サービス、1898)
  • 『Through the Earth』(Clement Fezandié, 1898)

英語圏以外ではインドでファンタジー小説『Chandrakanta』(Devaki Nandan Khatri、1888年)が執筆されている。


1900年代~1920年代

  • 概略
20世紀に入り、映画とパルプマガジン(粗悪なパルプ紙で作られた安価な雑誌)の普及によってSFは大きな転換期を迎えることとなる。ウェルズに続く作品群の描いた光景はこの二つの娯楽形態により、当時の科学的ロマンスとは異なる方向へと向かう。冒険や怪奇、あるいは単に科学へのあこがれを描いたスペースオペラなどの作品群である。

また1926年、科学啓蒙記事を手掛け、自らも発表していたヒューゴー・ガーンズバックによりSF専門雑誌「アメージング・ストーリーズ」が発行される。これ以降、今日SFと呼ばれるものは一つのジャンルとして確立することとなる。

  • 詳細
連載小説を特集した新聞の普及に伴って、作られたパルプ雑誌ではこの間に宇宙を舞台にした冒険活劇が次々と生まれたが、後年になってからこうした宇宙冒険作品はスペースオペラ(スペオペ)と呼ばれるようになる。特に1920年代からは有象無象の異世界モノ(所謂俺TUEE)が飛び交う。
そのほかユートピアモノやディストピアモノが流行し、性差別などの社会問題を風刺した作品も出始め、以降何度かブームとなるようになる。

最初のSF映画『月世界旅行』(1902)はウェルズの『宇宙戦争』のわずか四年後に公開されたサイレント映画であり、この映画により、小説に書かれた空想に命を吹き込むことができるということが世界中に証明された。

その後様々な映画作品作品が公開されたが、特に後述するコナン・ドイルの同名の小説の映画化『ロスト・ワールド』(1925, 6月)と、フリッツ・ラング監督のドイツ映画『メトロポリス』(1927)が有名である。ちなみに映像表現におけるモンタージュ技法を完成させたと名高いセルゲイ・エイゼンシュタインの『戦艦ポチョムキン』(1925, 12月)もこの辺り。

アーサー・コナン・ドイル

推理小説『シャーロック・ホームズ』シリーズ(1887~1927)で有名だったドイルもこの間にSF小説を書き始める。
主人公のチャレンジャー教授が古生物が生き残っている密林の奥地へ足を踏み込む『失われた世界』(1912)をはじめとする作品を発表していた。

エドガー・ライス・バロウズ

代表作はスペースオペラ『火星のプリンセス』(1917)、『類猿人ターザン』(1914)など。

1912年までの間、多くの作家は冒険を主題とした西部劇を執筆していたが、エドガー・ライス・バロウズがのちに『火星のプリンセス』に改題される『火星の月の下で』(1912)を連載すると、これにインスピレーションを受けた多くの作家が異星を舞台にした作品を書き始めた。
これらの作品はヴェルヌが生きていたころの科学的なロマンスに大きく影響されて、「惑星ロマンス」として知られるようになる。
異世界を行き来する人々の物語は、SFが始まって以来何百年も前から存在しており、当時としても新しいものではなかったが、ここからある種の特徴や原型が生まれてくる。

バロウズの書いた小説は有色人種や女性の活躍も取り入れ、できるだけステレオタイプにならないよう配慮していたが、しかしながらこうした後続の多くの小説では宇宙人に人種的なステレオタイプが反映され、ヒロインも単なるトロフィーのようなものでしかなかった。

バロウズの後の人物には『ムーン・プール』(1919)などの秘境冒険小説で知られるA・メリットがおり、後述のラヴクラフトにも影響を与えている。

ハワード・フィリップス・ラヴクラフト

クトゥルフ神話で知られるハワード・フィリップス・ラヴクラフトはウェルズやヴェルヌではなく、ポーの小説を読んで育っていた。
宇宙については科学の教科書でしか読まず、他の少年たちのように星々の間での冒険の可能性を見て育ったわけではなかった彼は宇宙に対して恐怖を感じていた。
冷たく広大な宇宙で人間の存在意義はどこにあるのだろうかと問うた彼は、1917年から1935年までの間に『狂気の山で』(1931)をはじめとするいくつかの短編小説を書き、「人類の創造主が神ではなく、ただの高度なエイリアン種族だったら?」といったテーマによって、SFのジャンルを変えていくこととなる。このジャンルはコズミック・ホラーと呼ばれている。
ラヴクラフトはロバート・E・ハワードやクラーク・アシュトン・スミスらと「クトゥルフ神話」と呼ばれる自身の世界観を共有し、『英雄コナン』(ハワード、1932)などの作品を生み出している。

ヒューゴー・ガーンズバック

自身もSF冒険小説『ラルフ124C41+』(1911)を書いていたガーンズバックだったが、1926年に世界初のSF専門雑誌『アメージング・ストーリーズ』を創刊し、「アメリカSFの父」、「現代SFの父」と呼ばれるようになった。
ガーンズバックは当時の「科学的事実と予言的ビジョンを織り交ぜた魅力的なロマンス」のことを「サイエンティフィクション(scientifiction, stf)」と呼び、これが後にSFと呼ばれるようになる。

E・E・スミス

『宇宙のスカイラーク』(1928)や『レンズマン』(1937)シリーズといった古典的なスペオペを生み出し、「スペースオペラの父」と呼ばれる。もと化学者で、レンズマンの中で軍事におけるステルス性やAWACS、戦略防衛思想、OODAループなどのアイディアを先取りしていた。

押川春浪

『海底軍艦』(1900)や『月世界競争探検』(1907)などの冒険小説を書き、「日本SFの祖」と呼ばれている。

1900年代~1920年代のSF映画

『月世界旅行』の後、高額な映画への投資も増え、メアリー・シェリーの小説の映画化『フランケンシュタイン』(1910)や殺人ロボットを描いた『The Mechanical Man』(1921)といった後続作品が生まれてくる。

『ロスト・ワールド』(1925)はストップモーション・アニメーションを使用することで、初めて動いている恐竜を動かすことに成功している。特殊効果を担当したウィリス・オブライエンはのちに怪獣映画『キングコング』(1933)の効果を担当することになる。

『メトロポリス』(1927)はフリッツ・ラング監督のドイツ映画で、超富裕層と労働者階級が分断された未来的な都市を通して、第一次大戦後のドイツ経済を比喩している。
当時の観客はそうしたウェルズのような社会批判よりも『月世界旅行』や『ロスト・ワールド』のようなエンター・テインメントに興味があったため、すぐにヒットしたわけではなかったが、後年になって、ジョージ・ルーカスからリドリー・スコットといった映画監督が参考にするようになっていく。ちなみにニコニコ動画等では「VIP先生」として全く異なる形で知られている。

1900年代~1920年代のその他の作品

『Armageddon 2419 A.D.』 (フィリップ・フランシス・ノーラン、1928)はE.R.バロウズの影響を受けて書かれた小説であり、のちに『バック・ロジャーズ』(1929~1967)の名前で漫画化され、同じ影響を受けた『フラッシュ・ゴードン』(アレックス・レイモンドら、1934~)とともにSFヒーロー漫画の原点として語られることとなる。

小説では、ほかにエドモンド・ハミルトンがこの頃から『星間パトロール』(1928)などのスペオペを書いている。

ディストピアモノでは、『われら』(エフゲーニイ・ザミャーチン、1920)が有名。人々が数字で呼ばれ、生活を管理された社会での革命を描く。

またカレル・チャペックの戯曲『P.U.R.』(1920)によって「ロボット」という単語が作られた。この作品以降、後述するアシモフの時代まではロボット=反乱を起こす存在と認識されるようになる。

1930年代

1930年代、当時の文学界ではF.スコット・フィッツジェラルドやアーネスト・ヘミングウェイといった文豪たちが社会的孤立などをテーマにした小説を著し、モダニズムと呼ばれる文学運動を起こしていた。
SF作家は上述のような惑星ロマンス(スペオペ)やコズミック・ホラー、そしてモダニズムの影響を受けてSF小説を変容させていった。
1937年、SF雑誌「アスタウンディング」(Astounding Stories of Super-Science, ASF)の編集長となったジョン・W・キャンベルは、単なる冒険ではなく、人間の心理を扱い、より現代的な視点で科学の意味を探求した質の高い作品のみを発表しはじめた。これにより後述のアシモフをはじめとする人材が育っていくことになる。
SF以外に目を向けると、映像業界では斬新な映像表現でサスペンス映画の神様と呼ばれるようになったアルフレッド・ヒッチコックが『バルカン超特急』(1939)でデビューしている。

オラフ・ステープルドン

人類の歴史の最初から最後までを描く『最後にして最初の人類』(1930)や『スターメイカー』(1937)など、億単位の歴史を扱ったスケールの大きな作品が後のSF作品に影響を与えている。
その他、ミュータントを描いた『オッド・ジョン』(1935)や『シリウス』(1944)などが有名。

ジャック・ウィリアムスン

火星を住みやすい環境に変える「テラフォーミング」の名付け親であり、最年長でヒューゴー賞・ネビュラ賞の双方を受賞したジャック・ウィリアムスンはこのときスペオペ作品『宇宙軍団』(1934)を書いている。
また『航時軍団』(1938)ではパラレルワールドを発展させ、時間の分岐の概念(ジョンバール分岐点)を導入している。

ジョン・W・キャンベル

のちに『遊星よりの物体X』(クリスティアン・ナイビイら、1951)として映画化される、南極探検隊が異星人の宇宙船の残骸を発見する『影が行く』(キャンベル、1938)などの小説を書いているが、編集長としても活躍し、「SF黄金期」と呼ばれる時代の作家を育てていく。

1939年から'43年にかけてASFの姉妹雑誌としてファンタジー雑誌「アンノウン」も発行している。

1930年代のその他の作品

後にファンタジー小説『ナルニア国ものがたり』が三大ファンタジーのひとつに数えられることとなるC・Sルイスもまた、この頃SF小説『マラカンドラ 沈黙の惑星を離れて』(1938)を執筆している。

ディストピアSF『素晴らしい新世界』(オルダス・ハクスリー、1932)では資本主義や効率化がいきすぎた社会が描かれている。H.G.ウェルズが『タイムマシン』で瀕死の世界を描いたのに対し、ハクスリーは機械化された文明を描いた。

終末テーマの社会派作品『山椒魚戦争』(チャペック、1936年)は「文明批評モノ」とも呼ばれている。

近未来を舞台にしたチャップリン主演の映画『モダンタイムス』(1936)もこの頃公開されている。

  • 『ロボット市民』(I・バインダー、1939)
人間に協力的なロボットが犯罪者にされ、報復するさまが描かれる。原題(I, Robot)が『われはロボット』のそれの元ネタになっている。

1940年代

1930年代後半のキャンベルの活躍により多くのSF作家が育ち、この年代から50年代の終わりにかけて「SF黄金期」と呼ばれている時代を形成している。
また『武器製造業者』(ヴァン・ヴォークト、1947)が惑星ロマンのような冒険活劇ではないが宇宙を行き来する壮大なスケールの物語を描き、のちに「ワイドスクリーン・バロック」と呼ばれるジャンルを作り出す。

ジョージ・オーウェル

『1984年』(オーウェル、1949)はディストピアモノとして高い完成度を誇っていたため、今も代表格として語られることが多い。前述の『素晴らしい新世界』が薬物やセックスなどによる支配の様子を描いていたのに対し、オーウェルは暴力や言語による支配を描いた。

海野十三

日本では冒険モノである『火星兵団』(1941)や、幽霊の登場する推理モノ『火葬国風景』(1935)などが海野十三により執筆され、彼は「日本SFの父」と呼ばれる。著作権が切れた現在では原文を青空文庫などで読むことができる。

1940年代のその他の作品

『発狂した宇宙』(フレドリック・ブラウン、1949)により、後の並行世界モノの多くのテンプレが出揃うことになる。『火星人ゴーホーム』(1954)と並ぶブラウンの代表作だが、全体の雰囲気は彼の作品の中では異例なものと捉えられている。パロディを得意とする。

  • ASFの小説
    • 『闇よ、つどえ!』(フリッツ・ライバー、1943)—ファンタジー作家でもあり、「剣と魔法」という言い回しを作った人物でもあるフリッツ・ライバーの風刺的ディストピアSF小説。

  • アンノウン誌の小説
    • 『超生命ヴァイトン』(エリック・フランク・ラッセル、1943)—人類は高次の存在のために繁殖された家畜だったという「人類家畜」テーマを扱った古典作品。

英語圏以外ではフィリピンでマテオ・クルズ・コルネリオ(Mateo Cruz Cornelio)が『悪魔博士』(1945)をタガログ語で執筆。

1950年代

1900年代後半に入ると、アシモフ、クラーク、ハインラインの所謂「SF御三家」が台頭してくる。
日本でも雑誌「星雲」や同人誌「宇宙塵」が刊行。「S-Fマガジン」も末期に誕生。
さらには手塚治虫の「鉄腕アトム」が大ヒット、少年向けジャンルの主流として定着。また特撮映画『ゴジラ』も放映。核の恐怖の具現化とも取れる。
戦後日本の作家はこの辺で薫陶を受けて60年代に至る。

アイザック・アシモフ

『われはロボット』(1950)や『鋼鉄都市』(1953)で「ロボット工学三原則」と呼ばれる法則を作り、それまで人類へ牙をむきかねない存在という先入観があったロボットの行動を制限し、しかもその法則の抜け穴によって倫理的な限界があることまでを描いた。

『銀河帝国興亡史』(1951)から始まる「ファウンデーション」シリーズでは、未来の帝国の滅亡を前に頭脳を用いて戦う主人公が描かれる。

アーサー・C・クラーク

AIや宇宙物理などを扱った映画『2001年宇宙の旅』(1968)の原作小説や、異星人との出会いを描いた「ファーストコンタクトSF」である『幼年期の終わり』を執筆している。

豊富な科学知識に裏付けられた「ハードSF」を描く作家であり、SF作家の代表格として扱われることも多い。
特に『幼年期の終わり』では人間を超越した存在を描き、その後の映画『未来惑星ザルドス』や『マトリックス』等に影響を与えている。

アルフレッド・ベスター

ある意味ライトノベルの漫画的表現の先駆けともいえる超能力SFでワイドスクリーン・バロックの『虎よ!虎よ!』を執筆している。

トム・ゴドウィン

『冷たい方程式』(1954)を執筆。燃料などを計算すれば人を見捨てざるを得ないという状況を描いた「方程式モノ」と呼ばれるジャンルが確立する。

レイ・ブラッドベリ

『華氏451度』(1953)本の所持や読書が禁じられた世界を描いている。

  • 『火星年代記』(1950)—火星を舞台にした連作短編集。

星新一

『ボッコちゃん』(1958)を始めとする多くの短編を手がける。分かりやすさ重視で固有名詞や情景描写を排除した作風が特徴。

安部公房

『第四間氷期』(1958)で主人公の発明した「予言機械」によって人々のふるまいの意味が消えていくプロセスを描いている。

1950年代のSF映画

『禁断の惑星』(1956)がその後のSF映画に大きな影響を与えている。当時はまだ荒唐無稽なものとして知られていたSFの舞台を用いて心理学的なテーマを扱っている。
シェイクスピア劇「テンペスト」を脚色したこの作品は、レスリー・ニールセン主演の宇宙探検家と科学者のクルーが奇妙な新世界を発見し、その道中で新しい生命と文明を探し出す。

小説がモダニズムの影響を受けていたのに対し、SF映画は冷戦時のパラノイアと原爆の恐怖を、宇宙的なホラーと組み合わせて描いていた。SF映画の大部分は必ず、宇宙人の侵略か巨大な怪物という2つの形で描かれていた。通常、核兵器は何らかの形でどちらか一方に結びついていた。

『ロスト・ワールド』で特殊効果を担当したオブライエンの弟子、レイ・ハリーハウゼンは『原子怪獣現わる』(1953)や『水爆と深海の怪物』(1955)、『世紀の謎 空飛ぶ円盤地球を襲撃す』(1956)でストップモーション・アニメーションを用いてこの年代の特徴であるモンスターを次々と生み出していった。

この時代の映画はカルト的な人気を誇りながらも最低の映画と呼ばれているものも多く、『ロボット・モンスター』(1953)や『人類危機一髪!巨大怪鳥の爪』(1957)、『プラン9・フロム・アウタースペース』(1959)などは悪名高い失敗作として知られている。

また社会風刺を行った作品もあり、『ゴジラ』(1954)では、自分の環境を破壊されたことにより現れた怪獣・ゴジラが東京の各所を次々と破壊する。広島・長崎の原爆投下後、日本人は原爆に対する恐怖心を抑えきれない怪物へと変えていったのだった。
『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』(1956)では地球外生命体からの侵略を通して、冷戦時代のパラノイアに対する非常に明確な風刺を行っている。
『地球が静止する日』(1957)では地球に降り立った宇宙人が人類に核兵器の使用を止めるよう警告している。

1950年代のその他の作品

  • 『人間以上』(スタージョン、1953)
超能力モノ。

  • 『蝿の王』(ゴールディング、1954)
子供達のえぐ過ぎる泥沼模様を描いたサバイバルモノ。SFっぽくないが一応未来の戦争で疎開して遭難した後を描いている。

  • 『タイタンの妖女』(カート・ヴォネガット・ジュニア、1959)
ワイドスクリーン・バロック。

  • 『デューン/砂の惑星』(フランク・ハーバート、1965〜1985)
映画化で知られる宇宙を舞台にした大河小説。

ファンタジージャンルでJ・R・R・トールキンが『指輪物語』(1954)を執筆している。『ホビットの冒険』(1934)の続編として描かれた本作は、学術的な考証を基にした本格的な人工言語が作品内に登場している。
1959年には金珊瑚が韓国の代表的なSF漫画「ライパイ」を描いている。

1960年代

オールディス、J.G.バラード、エリスンらによってニューウェーブ運動が起こる。ニューウェーブSFは文章面を重視した作品群であり、これによってそれまで設定や思想が重視される傾向にあったSF小説に一石を投じた運動だった。
1961年、スペオペであり現在まで続く大長編リレー小説『宇宙英雄ペリー・ローダン』が刊行開始。
1963年には世界最長のSFテレビドラマシリーズ『ドクター・フー』が放送開始。
1966年にはSF特撮ドラマ『スタートレック』が放送開始。ハーラン・エリスンらが活躍する。同年には日本でも特撮ドラマ『ウルトラQ』が放送され、第一次怪獣ブーム、そして後のウルトラシリーズに繋がっていく。
撮影手法を指す言葉であった「特撮」はこれらの作品により、後にある種のSFを指す言葉へと変化していくことになる。
小松左京、筒井康隆、星新一の「日本SF御三家」を始めとする戦後第一世代の作家たちもここでおおむね開花した。
SF以外ではレイチェル・カーソンが『沈黙の春』(1962)を発表、環境問題などに注目が集まっていく。

ロバート・A・ハインライン

機動戦士ガンダムの元ネタのひとつとなったとされる『宇宙の戦士』(1960年)を執筆。日本ではタイムトラベルSF『夏への扉』(1957年)が有名。これはいわゆるなろうファンタジー的な趣があるだろう。その他に、『月は無慈悲な夜の女王』(1966年)など。

ブライアン・W・オールディス

見る物に驚きを与え、その後の生活にも影響させるような小説群である「センスオブワンダー」であり、終末以降の世界を描いた「ポストアポカリプス」モノである『地球の長い午後』(1961年)を執筆。

フィリップ・K・ディック

太平洋戦争で枢軸側が勝利した設定の歴史改変SF『高い城の男』(1962年)や、ロボットを殺す人間の葛藤を描いた戦争の寓意とも取れる、映画『ブレードランナー』の原作『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(1969年)など。ハヤカワ文庫では黒い背表紙で翻訳されている。

アーシュラ・K・ル=グヴィン

異星人との文化人類学的な不理解を描いた『闇の左手』(1969)や、ユートピアSF『所有せざる人々』(1974)など。本人は『ゲド戦記』(1968〜2001)等のファンタジー小説でも有名であり、J.R.R.トールキン『指輪物語』、C.S.ルイス『ナルニア国ものがたり』とともに三大ファンタジーのひとつに数えられる。

ハーラン・エリスン

訳の分からない言葉の洪水のような文章であるニューウェーブ作家の筆頭。短編小説集『世界の中心で愛を叫んだけもの』(1969)など。

筒井康隆

時をかける少女』(1965)等のジュブナイルSFやエグいブラックユーモアSF、『パプリカ』(1993)等の虚実入り混じるメタフィクション的SFで有名。
70年代以降は『富豪刑事』等広義の「奇妙な世界」を綴った作品が多くなるのだが、小松左京、星新一と共に日本三大SF作家の一人に数えられる。


1960年代のSF映画

『ミクロの決死圏』(1966)は人体の内部を冒険するファンタジー映画。
猿に人間が支配された世界に不時着した宇宙飛行士たちを描く『猿の惑星』(1968)もこの年代に公開されている。

1960年代のその他の作品

ハードSF『ソラリスの陽のもとに』(スタニワフ・レム、1961年)、タイムトラベル・社会派SF『スローターハウス5』(ヴォネガット、1969年)、ディストピア小説『時計仕掛けのオレンジ』(バージェス、1962年)、知能指数の操作に焦点を当てた『アルジャーノンに花束を』(1966年)など。
漫画では石ノ森章太郎が『サイボーグ009』(1964)などを連載。また、藤子・F・不二雄が1969年から青年誌でSF作品を執筆し始める。
また同氏により小学館の学年別学習雑誌にSF的な幼年向け作品『ドラえもん(作品)』の連載が始まり、後に国民的作品へ成長していく。
1962年に安部公房が「SFの流行について」と題した評論でSFを「仮説の文学」であると説明した。

1970年代

海外でのニューウェーブ運動が下火になり、かわりに日本に流入してくる。
日本のNW運動を引っ張った山野浩一の『季刊NW-SF』を始めとして、「S-Fマガジン」以外の雑誌も次々と生まれる。
その中で戦後の「第二・第三世代」たちがデビューを飾っていった。
アクション映画『激突!』(1971)などでデビューし、SF映画では『E.T.』(1982)や『レディ・プレイヤー1』(2018)なとで知られるハリウッド映画の巨匠の一人、スティーヴン・スピルバーグ監督もこの頃『未知との遭遇』(1977)を発表している。
『スーパーマン』(1978)が映画化される。1979年に『機動戦士ガンダム』が放送開始。
日本では第二次怪獣ブーム(変身ブーム)からロボットアニメ宇宙戦艦ブームを経て、70年代末には所謂リアルロボットの萌芽も見られる。
S-Fマガジン1973年六月号の読者投稿欄でTVアニメ『海のトリトン』(1972)をSFとして評価する意見が載り、それへの反応で投書欄が盛り上がったことを機に、この作品へのファンクラブが生まれ、同人サークル活動をする人が増えた。
SF以外ではスティーブン・キングらモダンホラー小説作家が活躍している。

小松左京

活躍自体は60年代からだが、終末ものに近いハードSF『日本沈没』(1973)を執筆。
70年代から星が広義の「SF(少し不思議)」なショートショート、筒井がメタフィクショナル系や一般小説へと手を広げる中、生涯狭義のSFを書き続けた。

半村良

『産霊山秘録』(1973)・『戦国自衛隊』(1974)等歴史とSFを融合させた作品群や、『石の血脈』(1971年)等現代舞台の伝奇系作品を執筆し、伝奇SF作品の嚆矢に。一般作品の『雨やどり』(1975年)で直木賞も受賞している。

山田正紀

『神狩り』(1975)・『チョウたちの時間』(1979)等超越存在への抵抗を描いた作品群を執筆。
他に巨大ロボSFの『機神兵団』(1990~1994)等の冒険伝奇作品、『バジリスク~甲賀忍法帖~』の続編『桜花忍法帖 バジリスク新章』(2015)、クトゥルフ田題材の『クトゥルフ少女戦隊』(2014)等様々なジャンルを手掛けている。
なおミステリーでも『おとり捜査官』シリーズ等で知られている。

栗本薫(中島梓)

クトゥルフを題材にした『魔界水滸伝』(1981)や異星を舞台にしたファンタジー『グイン・サーガ』(1979)等を執筆している。
ミステリーやホラー等様々なジャンルで活躍しており、またBL的な表現の創始者としても語られる。

新井素子

『星へ行く船』(1980)や『チグリスとユーフラテス』(1999)などのライトノベル寄りの作品を執筆している。

谷甲州

ハードSF『航空宇宙軍史』シリーズ(1979〜)は超光速技術を用いないスペースオペラ作品として有名である。

ジェイムズ・P・ホーガン

『星を継ぐもの』(1977)をはじめとするSFミステリーを描く。

1970年代のその他の作品

『宇宙ヒッチハイク・ガイド』(ダグラス・アダムス、1979)は「馬鹿SF」のひとつに数えられる。その他、ウラシマ効果を扱ったSF『タウ・ゼロ』(ポール・アンダースン、1970)や『終わりなき戦い』(ジョー・ホールドマン、1972〜1974)など。
日本では眉村卓が『消滅の光輪』(1979)で星雲賞を受賞。
漫画では萩尾望都が『ポーの一族』(1972)を連載した他、ブラッドベリ作品のコミカライズも行う。また、1977年には松本零士『銀河鉄道999』も連載開始。

非英語圏では、ハンガリーでペーテル・ソルドス(Péter Szoldos)が人工知能をモチーフにした『対位法』(1973)を執筆。
ブラジルでアウグスト・エミリオ・ザウラル(Augusto Emílio Zaluar)が『Or Doutor Benignus』(1975)を執筆する。
タイで「タイSFの父」と呼ばれるチャントリー・シリ・ブンロート(จันตรี ศิริบุญรอด)が短編集『太陽を消した男』(ผู้ดับดวงอาทิตย์, 1978)を出版。

1980年代

心臓ペースメーカーなど体に機械を埋め込む技術が大きく進歩したこともあってか、ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』により文明によって変容していく倫理観を描く「サイバーパンク」が流行する。
日本では80年代半ばまで所謂リアルロボットが70年代のブームをもしのぐ大流行。

田中芳樹

SF・ファンタジー・伝奇と幅広く手掛けているが、スペースオペラ『銀河英雄伝説』(1982)を執筆。現在までシリーズが続いている。

士郎正宗

サイバーパンク漫画『攻殻機動隊』(1989)を執筆。

ダン・シモンズ

AIから宇宙、生物などあらゆるジャンルを取り入れた壮大な作品『ハイペリオン』(1989)をはじめとするシリーズが有名。

1980年代のその他の作品

VRやSNS等を予言した『エンダーのゲーム』(オースン・スコット・カード、1985)や、短編集『たったひとつの冴えたやり方』(ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア、1986)など。
漫画では大友克洋が『童夢』『AKIRA』(共に1983年)等で超能力に破壊される物体の演出に注目した他、それまでカブラペンで描かれていたSF漫画のイメージを更新し、「大友以降」という用語を作る。
アニメ映画では1986年に『天空の城ラピュタ』が放映。ガリバー旅行記をベースに、スチームパンク的な世界観を描いている。

上述の指輪物語のようないわゆる「剣と魔法の世界」の影響が増し、徐々にフィクションの主流派ではなくなっていくが、作品は質・量ともに極めて充実しており、ファンの絶対数の多さから科学的考証という名のツッコミが増え、過激派(いわゆるSF警察)が多かった時代でもある。

1990年代

人造人間で巨大な敵と戦うセカイ系アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(1995)が放映され、後の作品に影響を与えた。同じ庵野秀明監督作品としては海洋冒険モノの『ふしぎの海のナディア』も1990年に放送されている。

グレッグ・イーガン

『順列都市』(1994)、『万物理論』(1995)、『ディアスポラ』(1997)のように広範な知識と難解な文章が特徴的。

1990年代のその他の作品

言語SF『あなたの人生の物語』(テッド・チャン、1999)など。アニヲタ的にはBL作品である『青の軌跡』シリーズ(久能千明、1995〜2001)、スペースオペラ『星界の紋章』シリーズ(森岡浩之、1996~)なども有名か。
ゲームでは1994年に『FINAL FANTASY Ⅵ』、1997年に『FINAL FANTASY Ⅶ』が発売され、当時の中高生や同人漫画界隈に影響を与えている。

2000年代

ライトノベルで谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』(2003)やヤマグチノボル『ゼロの使い魔』(2004)、川原礫『ソードアート・オンライン』(2009、但し初出は2002)などが執筆された他、秋山瑞人『イリヤの空、UFOの夏』(2001)などセカイ系の流れを汲む有名作品も登場。国外でもアニメやゲームを取り入れた作品が増えていく。
エルフェンリートをはじめとするキャラクターを酷い目に遭わせる描写のある作品や、深いテーマをもったアダルトゲームが黄金期を迎えた時代であり、2010年代の日本のアニメ文化に深い影響を与えていることも忘れてはならない。

9.11テロの影響からか『虐殺器官』などテロやその周辺の社会現象を題材にした作品も多くなる。映画では『A.I.』(2001)や『マイノリティ・リポート』(2002)といったテロ以降の物質主義や監視社会を批判した映画も出る。
科学技術の発展がいよいよSF染みたものになっていく時代でもあり、現実の延長線上的なSF作品も目立ってきた。
インターネットの台頭が読者や作者の知識を増やし、あるいは減らしていった時代でもあり、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)などの電子掲示板では現行の世界をSFに見立てたシミュレーションなどの議論がされたり、ジェフ・ライマンらにより現行の技術を用いた「マンデーンSF」と呼ばれるジャンルが作られたりした。

ハードSFやエンタメなど広いジャンルを取り入れた「ニュースペースオペラ」と呼ばれるジャンルが生まれ、AIが自我を持ち人間を超える「特異点(singularity)」を扱った作品が増えていく。
また90年代に引き続き、異世界ファンタジーにSFやホラーのジャンルを加えた「ニューウィアード」と呼ばれる作品も台頭してくる。

伊藤計劃

ミームや生物兵器等を描くミリタリーSF『虐殺器官』が有名。その他、女性同士の関係性を描いた百合を扱ったディストピアSF『ハーモニー』や、円城塔との共作でスチームパンクの『屍者の帝国』など。「伊藤計劃以降」という言葉も生まれた。

円城塔

前衛的・純文学的な表現が特徴。代表作は『Self-Reference ENGINE』(2007)など。詳しくは当該項目を参照。

2000年代のその他の作品

ミリタリーSF『老人と宇宙』(ジョン・スコルジー、2005)、冒険SF『アンドロイドの夢の羊』(同、2006)ほかにパオロ・バチガルピの短編集『第六ポンプ』(2008)など。
2005年からややレトロ寄りのSF特撮ドラマとして『ドクター・フー』の新シリーズが放送開始。スティーブン・モファットなどの監督が活躍する。
ゴミに覆われた未来の地球て働いていた掃除用ロボットの宇宙への冒険を描くディズニー・ピクサーの前編3DCGの映画『ウォーリー』(2008)も公開されている。
ライトノベルでは他に、化学を扱った野尻抱介『ふわふわの泉』(2002)など。
セカイ系では他に、漫画『最終兵器彼女』(高橋しん、2000〜2001)、短編アニメ『ほしのこえ』(新海誠監督、2002)など。

日本での人工言語の創作に関しては、セレン・アルバザードの『紫苑の書』(2006)などに描かれる人工言語「アルカ」がライトノベル等に大きな影響を与えている。
アルカは単語が一から作られている点で、自然言語からの借用を主とした『指輪物語』と異なっている。
後にセレン本人がウェブ上で人工言語の具体的な作成方法について記述したサイトを公開したことで、2012年〜2016年にかけてにわかに人工言語を主とした作品が出ることになる。

2010年代

TwitterをはじめとするSNSによる宣伝や感想の交換が行われた時代でもある。
日本の小説分野では宮沢伊織『裏世界ピクニック』(2017)や草野原々『最後にして最初のアイドル』(2018)などのいわゆる百合SFが地味に台頭してきたのをうけ、S-Fマガジンで特集が組まれる、アンソロジーが出るなどしている。
海外産のものでは劉慈欣『三体』(2019)をはじめとする中国産のSFが台頭してくる。

ケン・リュウ

科学を超越した現象を扱った「サイエンス・ファンタジー」である『紙の動物園』(2013年)などを執筆する。スター・ウォーズのノベライズを担当したことでも話題となった。

スーザン・コリンズ

『ハンガー・ゲーム』(2008)を執筆。これによりポストアポカリプスやヤングアダルトが若干流行する。

伴名練

短編集『なめらかな世界と、その敵』(2019)など。主に同人界隈で活躍。

宮沢伊織

『ストーカー』(ストルガツキー兄弟, 1971)を下敷きに、ネットロアの妖怪が跋扈する異空間「裏世界」を旅する少女たちを描いた『裏世界ピクニック』(2017〜)を執筆している。2回に渡ってハヤカワ文庫で百合SF特集を企画した。

2010年代のその他の作品

ポスト・サイバーパンク小説『量子怪盗』(ハンヌ・ライアニエミ、2010)、サイバーパンクディストピア小説『ニンジャスレイヤー』(ブラッドレー・ボンド/フィリップ・ニンジャ・モーゼズ、2013)、『トランスヒューマンガンマ線バースト童話集』(三方行成、2018)など。
2019年には上記の他短編集『嘘と正典』(小川哲)『息吹』(チャン)などの良作に恵まれたとされている。
2013年にホラーファンタジーを扱ったサイト「SCP Foundation」の非公式日本語訳wikiが開設された。

その他の用語

  • レトロ・フューチャー
昔の人が考えたような未来のこと。

  • 黒人SF(Black science fiction)
読むにあたって黒人の価値観や精神性を理解している必要があるSF作品。その歴史は19世紀まで遡るとされるが、当時の黒人作家が匿名だったこともあり、正確な起源は分かっていない。

その他SF作品

SF要素のあるアニメ・漫画の例

『ママは小学4年生』(同第24回)
電脳コイル』(同第39回)
ガールズ&パンツァー』(同第47回、劇場版)
魔法少女まどか☆マギカ』(同第43回)
けものフレンズ』(同第49回)
SSSS.GRIDMAN』(同第50回)
『少女終末旅行』(第50回同漫画部門)


SFの衰退?

1970年代〜80年代の日本でのニューウェーブ 運動の代償は大きく、ジャンルとしてのSF小説の読者層は大きく入れ替わる。
銀河英雄伝説などのジャンルの枠に囚われない長編が幅をきかせてきたこと、またライトノベルやアニメ等の台頭もあり、SFにしか分類されない小説群は大きく減少することとなる。
今や科学(または疑似科学)的な説明を全くせずに「現実の日常ではぜったいに起きないようなこと」を起こす作品の方が稀少というものであり、 SFが付加価値にならなくなってきたと言える。
これをジャンルの衰退と見るか、繁栄と見るかは意見が分かれるところである。

所謂SF警察のせいでジャンルが衰退しているという指摘もあるが、スペオペ漫画『彼方のアストラ』(2016)の作者で漫画家の篠原健太はこの意見には否定的である。単にSFオタクが何でもかんでもパクり認定するせいだと思うんですけど

創作クラスタ的には

SF作品の作者にはSFそのものに対する知識が必要ない場合もあるが、伴名練のような例外も少なからず存在する。
「ロボットが主人公と過ごすうちに人の心を手に入れた」などとして感動を煽るような話が現在ではただそれだけでは陳腐な話であるように、車輪の再発明を避けるため既存の作品を知っておく必要があるのは、ミステリーもなろう小説も同じようなものであるが、SFに関して言えば社会科学という時代によって変容し続ける学問を扱うため、若干ながら例外である。

科学考証はSFについて重要な要素となるが、ライトノベル『とある魔術の禁書目録』(鎌池和馬、2004〜)がそうであるように、もっともらしく語れば多少矛盾が生じても問題はないらしい。ただ、これは読者層の問題というものもあるので、一概には言えない。
またインスピレーションを得るために科学雑誌などを読む場合もある。


追記・修正はSFを宇宙の星の数ほど読んでからお願いします。


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最終更新:2023年09月09日 15:33