真田志郎

登録日:2021/10/25 (月曜日) 23:07:05
更新日:2024/04/03 Wed 06:14:07
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「科学は俺にとって、屈伏させるべき敵なんだ!」

真田志郎とは、宇宙戦艦ヤマトシリーズの登場人物。ファンからの愛称は真田さん。
無印から復活篇までの全シリーズに登場した数少ない人物の一人で、その存在感と活躍から高い人気を誇る。
声優業の黎明期から活躍していた今は亡き名優、青野武氏の演じた代表キャラクターのひとりである。


●目次

【人物】

ヤマトの技師長を勤め、青の隊員服を着ている。兵器の他にも天文、歴史、生物学などにも精通しており、ヤマトの頭脳。
年齢は無印の時点で28歳。10代の若者と50代の老人の両極端であった初期のヤマトのクルーたちの中では珍しい成熟した大人で、
特に人格的に未熟で不安定であった古代進にとっては良き兄貴分として導き手になることも多々あった。

角刈りで強面な容姿だが非常に温厚で誠実な好人物であり、科学者キャラとしてありがちな傲慢さや理屈っぽさは一切ない。
知識と技術に加えてその気さくな人柄ゆえに全クルーから絶大な信頼を寄せられており、若手からは「真田さん」、年配組からは「真田くん」と呼ばれて慕われている。
呼び捨てにするのは艦長クラスか、同期の古代守くらいである。
ほかにも、レーダー手としてはポカばかりだった新米も技術班に移ってからはバリバリ働くようになり、
なにより(異星人との混血で成長が早いとはいえ)赤子に一年でヤマト乗組員に恥ずかしくない教育をするという指導力の高さを見せている。

しかし、そんな彼も幼い頃は奔放な少年であり、月の遊園地に姉と遊びに行ったときに、本来年齢的に禁止されているロケットカーの運転をどうしてもやらせろと姉にわがままを言った。
結果、ロケットカーは大事故を起こして同乗していた姉は死亡、彼自身も四肢を失う重傷を負った。作品中に映る彼の両手足は義手義足である。
この事故の影響で科学に対して憎悪に近い執念を抱いており、
「月の事故は、姉の命と同時に俺の手足を奪った。俺は、科学というやつの傲慢さが憎い」
と語り、自分の過ちを悔いると同時に、人を幸せにするためにあるはずの科学で作られた遊園地の乗り物が人を殺したという矛盾を痛感する。
「科学は人の幸せのためにあるものであり、人は科学を超えたものだ」
という考えを確かめるために、自らの大切な物を奪った科学にという概念に挑戦するように科学者の道を志すようになる。

ヤマトの後に作られた新造戦艦アンドロメダに対し、その自動化技術を駆使した設計に「血の一滴も通わないメカニズムの結晶」と吐き捨てるなど、
優れた科学技術者でありながら、シリーズを通して「科学」を誇ったことは一度もない。
一方で堕落した地球人や非道をおこなう敵へは怒りをあらわにする熱血な一面も持つ。
科学万能主義への警鐘を鳴らし続け、平和の大切さとともに人間の精神の劣化は表裏一体と告げる松本零士の思想の体現者だといえる。
なお、義手義足は自ら語るまで誰にも気づかれたことはなく、仕事に支障をきたしたこともない優れもの。
そうして宇宙戦士訓練学校を経て、若くして艦船の修理ドックの責任者に任命されるほど才覚を表した彼はヤマトに配属され、信念を貫くために得た技術や知識の数々でヤマトを幾度も救うことになる。

【技術力】

誰もが認めるチート。真田さんがいなければヤマトは沈んでいた事例は数知れず。

技師長としてヤマトの修理・改修にあたるのはもちろんのこと、その時々に応じた発明品でヤマトの窮地を救っている。
発明品はあらかじめ開発しておいて、必要に応じて出してくるものと、その場で急造する二通りに別れる。
ちなみに発明品が役に立たなかったりテストに失敗したケースはシリーズ中に一回もない。
なお、発明品を出してきたときの有名な台詞として知られる「こんなこともあろうかと」は本編中では一度も言っていない。
が、後年のゲーム作品等では使われているので言っていない台詞とも言い切れないのが難しいところ。
ちなみに漫画やアニメ内で使われた台詞としては「多分こんなこともあろうと思って~」というものがある。

分析力にも優れており、未知の現象や惑星の調査には、ほぼ真田さんの解説がつく。
その延長で作戦を立案することもあり、これも戦闘班そこのけで成功率が高い。

さらに技術力と分析力は白兵戦でも遺憾なく発揮され、トラップの発見から破壊工作までこなす。
白兵戦技能も高く、コスモガンの腕前は古代たちにひけをとらない。

コスモタイガーの操縦も可能で、没カットでは空戦でもかなりの腕前を持つと、まさに万能選手。

【発明品】


  • 反重力感応機(初代、2)
副砲から発射される小型メカを周囲のアステロイドに吸着させて動かし、ヤマトに張り付かせて偽装と増加装甲として使ったり、ヤマトの周囲に回転させることで敵の攻撃を一切遮断する鉄壁のアステロイドリングとして使用することもできる。
シュルツ艦隊を全滅に追い込んだ。
後にヤマト2でも改良型が登場。
この時はバキューム鉱石からエネルギーを汲み上げる機能が追加されており、
ヤマトは出力低下から一気に波動砲を使用してゴーランド艦隊を打ち破っている。

  • シームレス戦闘機(初代)
機械を継ぎ目からバラバラに分解してしまうマグネトロンウェーブ要塞に対抗するために急造した、継ぎ目のない戦闘機。

  • 空間磁力メッキ(初代)
反射衛星砲にヒントを得て開発した、ヤマトの船体をすっぽり覆ってあらゆる攻撃を弾き返す防御幕。
デスラー砲をさえ完璧に跳ね返すことができる。

  • 波動カートリッジ弾(永遠に、Ⅲ、完結編)
主砲の実弾カートリッジの中に波動エネルギーを込めたもの。
波動砲の1/100以下のエネルギーしか込められていないが、それでも通常のショックカノンの威力をしのぐ。
波動砲と比較した場合でも艦首方向以外に自由に使え、エネルギー充填の時間も必要ない。
ただし排莢の必要性があるため連射速度で劣り、射程距離も短めであるため波動砲が使えないときの奥の手といえる。
「永遠に」で登場して以来、シリーズ後半において波動砲に次ぐ「もう一つの切り札」として度々使用された。

  • 亜空間ソナー(Ⅲ)
異次元に隠れた次元潜航艇を発見するため開発した。
ただし現実のパッシブソナーと同じく、目標がじっとしていると探知できず、騒音にも弱いという弱点を持つ。

  • 対ハイパー放射ミサイル艦首ビーム砲(完結編)
ヤマトを一度は沈めたチート兵器であるハイパー放射ミサイルに対抗すべく研究開発した新兵器。
アクエリアス上で敵襲を受けたギリギリで完成。テストもなしにぶっつけ本番で使用された。
ヤマトの艦首下部からせりだしてきて、艦橋からの指示でビームを飛ばす。発射されたビームは網の目のように広がって対象物に絡みつき、無数のハイパー放射ミサイルを一発残らず粉砕した。

  • トランジッション波動砲収束発射システム(復活編)
六つある新ヤマトの波動炉心のエネルギーをひとつにまとめて波動砲を撃つためのプログラム。
しかし巨大すぎるパワーにヤマトもただではすまないことが予想されたため、どうしても必要となるときまでは隠されていた。


【活躍】


◆宇宙戦艦ヤマト

「古代守は生きている。何よりも、君の胸の内に。」
技師長として冥王星での白兵戦やデスラー機雷の解除など、節々で活躍。
それまでは頼りになる先輩といったくらいの立ち位置だったが、古代進とともにマグネトロンウェーブ要塞の解体に向かった際に、彼という人物が明らかになる。
かつて進の兄の守と同期で親友であった自分は、ドック入りした守の船ゆきかぜを完璧に整備しきることができなかった。
だから守が戦死したのは自分のせいかもしれない。そう謝罪する真田に、進は「あなたのせいじゃない」と答える。
古代と打ち解けあった真田は、自分が科学者を志した事故のこと、自分の科学に対する信念を語る。
そして要塞のコンピュータの防衛システムに捕まると、義手義足の中に仕込んだ爆弾で要塞を破壊。
この件で真田の科学に対する「人間」としての強さや優しさを感じた古代は、もう一人の兄のように真田を慕っていくようになる。
古代守が生きていたと知った時には親友同士、おおいに喜び合った。

さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち

「斎藤、ありがとう」
ヤマトの反乱に当然のように同行。
多弾頭砲でザバイバル戦車隊を粉砕する活躍を見せた。
都市帝国潜入では斎藤とともに動力炉に残って爆破作業を担当。斎藤の立ち往生を見届けた後、爆弾を起爆させて戦死した。

◆宇宙戦艦ヤマト2

「古代、我々はデスラーを見習うべきだよ」
さらばと大筋は同じだが、平和ボケが際立つ地球連邦政府への懸念を強めていた。
ヤマト発進後は後輩として新入りの新米俵太をかわいがっている。
また、ヤマトの主砲の改良もおこなっていたが、「こんなものが役に立つ日が来てはほしくなかった」と、彼の人柄がにじみ出る言葉も残している。
都市帝国潜入では義足に被弾して動けなくなり、古代とともにヤマトに生還。
巨大戦艦の前に手の打ちようがないなかでも、古代に未来をあきらめてはいけないと諭した。

◆新たなる旅立ち

「古代、なぜ脱出しないんだ!」
前作で大破したヤマトを完璧に修理しきっていた。
イスカンダルの危機を知り、同期であり親友である古代守を救うために立ち上がる。
本作では全体的に出番が少ないが、カットされた没シーンではコスモタイガーを操って古代守の乗る水雷艇を援護に行く活躍があった。
古代進のコスモゼロの帰還後に古代と真田が向かい合っている唐突なシーンがあるのはこの名残。

◆ヤマトよ永遠に

小惑星イカルスの秘密ドックでヤマトを改修していた。
この際に強化型スーパーチャージャーによる連続ワープ機関、全天文レーダー室、新波動砲などを完備し波動カートリッジ弾や波動爆雷も新開発している。
また、地球に打ちこまれた重核子爆弾を見てハイペロン爆弾だと一目で見抜く眼力も発揮している。
古代守の娘サーシャを預かり、自分の姪という名義で真田澪として養育していた。
終盤では地球のために犠牲になろうとしている澪に、養父として苦悩を見せる。

【ゲーム版】

PSのシリーズでは、科学的考証が増えたこともあって解説のために出番が大幅に増加。
オリジナルの発明品も見られるが、「こんなこともあろうかと」をしたいがために発明品を出し渋ったり、ヤマト自爆装置とか第三艦橋特攻爆弾とかろくでもない発明をしれっと隠していたりと、若干マッドな一面も垣間見せたりもする。

暗黒星団帝国三部作では、ルート次第では古代守とサーシアが生存するという真田さん感涙の光景にたどり着くこともできる。
もっとも、制作当時の科学考証をしっかり取り入れた結果、後に用語の変更・修正が起きたことで未來に生きるはずの真田さんが間違った知識を披露しているという残念な形になってしまったりも。*1

【リメイク版】

演じるのは大塚芳忠
『2199』から始まったリメイクシリーズでは科学者にしてヤマトの頭脳という立ち位置はそのままに、人物像を含め設定が大幅に見直された。
2199年時点で29歳。マサチューセッツ工科大学の首席卒業生。階級は三等宙佐。
旧作の技師長に相当する技術科長であり、天文現象や鹵獲した敵兵器などの分析を担当する。
また技術科長に加えて副長を兼任しており*2、沖田艦長の病状悪化後は旧作のように古代が艦長代理に就任せず真田が指揮を執ることが多い。
ただし生粋の軍人ではないためか戦闘中の作戦判断などはやや不得手。
その点は本人も自覚があり、後には航海中の成長も踏まえて戦闘指揮を古代に委ねる場面も。

旧作より論理的・理知的な面が目立ち、よほどのことでなければ感情を見せることはなく常に正論だが温かみに欠ける発言も多い。
このため古代からは当初「コンピューター人間」と呼ばれていたほどだが、内面はむしろ感情豊かな方であり話が進むにつれ人間臭さを見せるようになっていった。
姉や義肢に関する設定はなくなり、むしろ科学のこととなると周りが見えなくなる様子
岬百合亜(に憑依したユリーシャ)に波動エネルギーの話を振られた時などは、
  • 百合亜の髪型や雰囲気が普段と違う
  • 百合亜どころかほとんどのクルーが知らないであろうことをさらさらと話す
  • 上官である真田に臆面もなくタメ口
という違和感しかない状態でありながらまるで気づかずに「よく調べたねぇ」とものすごく嬉しそうに話し始め、後で周りの者が髪型について触れると「髪型変わってた?」と素で驚いていた。

古代守との関係もより掘り下げられ言及や回想が度々入る他、結果的に守の形見となった中原中也の詩集を常に持ち歩き、口ずさむことも多い。
また、「メ号作戦」の本当の目的を知りながらも命令にただ従って親友であった守に伝えられなかったことを悔いている。

なお、リメイクシリーズにおいては航海中の新兵器発明はしておらず、
考証も踏まえてヤマトクルーが増員されたことで、旧作における活躍の一部が彼の後輩であり右腕の新見薫情報長に変更されており、旧作ほどの万能超人ではなくなった。
…のだが、その代わりというべきか、イスカンダルからもたらされた次元波動理論の解読から波動エンジンの開発設計、波動防壁に波動砲といった応用に至るまで波動エネルギーに関わるほぼ全てが真田の手によるものとされている

『2202』では波動砲艦隊構想とそれに基くヤマトの改装を巡って古代と対立していたが、テレサからのメッセージを受けて出撃する際はその古代を艦長代理に推した。本作では都市帝国潜入作戦自体が行われない。最終回では地球の未来に関わる、ある重要な選択を巡って演説を行う。

総集編『「宇宙戦艦ヤマト」という時代』では、ヤマト世界で作られたドキュメンタリー番組に真田さんが出演したという体裁で火星植民からガトランティス戦役までの人類史を解説する。

『2205』ではヤマトと共に第65護衛隊を構成する戦闘空母ヒュウガの艦長に就任。ガミラスを破壊してそのエネルギーでイスカンダルをワープさせる敵の作戦を見抜き「天文規模のビリヤード」と表現した。


こんなこともあろうかと、追記と修正を用意していたのさ。


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最終更新:2024年04月03日 06:14

*1 厳密な用語説明としては違うものの、補足説明で理論の応用として変更後の概念にも触れており、結果的にストーリー進行としては特に違和感はない。

*2 『ヤマトⅢ』の設定を先取り・併合したものか