レオーネ・アバッキオ

登録日:2012/06/27(水) 18:28:57
更新日:2024/04/29 Mon 21:10:11
所要時間:約 17 分で読めます






オレの落ちつける所は…
ブチャラティ あんたと一緒の時だけだ


レオーネ・アバッキオは、ジョジョの奇妙な冒険第5部の登場人物。

CV:稲田徹(黄金の旋風)/楠大典(ASB)/諏訪部順一(TVアニメ版黄金の風)
因みに諏訪部氏は第3部にてテレンス・T・ダービーを演じたことがある。


●目次


【概要】

パッショーネのブチャラティチームの一員。年齢は20→21歳。
(物語終盤で紹介されたプロフィールでは21歳となっており、誕生日は3月25日なので、第5部の物語中に誕生日を迎えたと思われる)
銀色の長髪を持つが、頭頂部にタマゴの殻のような被り物をしている。作者の回答によると、これは『ヘアバンド兼帽子』とのこと。
唇に引いたルージュに長い髪と女性的な記号が目を引く人物だが、実はメンバー中で最も背が高くガタイも良い。
下記の経歴もあってスタンドを抜きにした素手喧嘩(ステゴロ)ではチームで最強とのこと。

元々年功序列のタテ社会に順応して生きてきたこともあって、才気に溢れ、控えめながら決定的な一線では絶対に道を譲らないジョルノとは反りが合わず、
ジョルノが入団してきた時は、彼を試すために「アバ茶」を提供しており、仲間となってからも敵意をむき出しにしていた。
結局最後の最後までジョルノに心を許さなかったのは、ブチャラティチーム内で彼だけである。
しかし…(後述)

もっとも、これは詳しい説明も無く唐突にカタギのジョルノを仲間に入れることを強行した*1ブチャラティの態度に対する不満の表れでもあり、
間接的にはジョルノに対する既存メンバーらの意地悪はブチャラティのせいといえなくもない。
(なお、彼の嫌いなもののひとつは『生意気なガキ』である)

また、仲間との絆よりも任務の遂行を優先する人物で、決断を迫られれば非情に徹し、自分を含めて命と引き換えにしても目的を達成するという覚悟を持っている。
これは「任務を遂行し仲間も守る」ポリシーを持つブチャラティに比べれば、劣っているかのように映るが、
「パッショーネ」のギャングたちの大半はアバッキオと同じ理念を持ち合わせている。

このように他人と馴れ合うことがあまりない孤高の人物だが、自分が信頼に足ると思った人物には心を開き、忠実に従う。
ブチャラティがボスを裏切った時も、彼のような合理主義者であれば裏切りに加担するわけはなかったはずだが、
それでもブチャラティについていくことを選んだ事から見ても、ブチャラティには相当な信頼感を持っていたことがうかがえる。

口も態度も悪いが、フーゴがジョルノのナビのミスで運転の道を間違えてキレた際には遠回しに場を諌めてフォローしたり、パープル・ヘイズに対して不用意に近づくジョルノに聞き分けが悪すぎて最終的にキレながら逃げるように忠告したりと、なんやかんやで面倒見が良いことがうかがえる。
しかしその面倒見の良さが仇となり……


【過去】

ギャングになる前は警察官だったという経歴を持つ異色のギャング。*2
この職業は幼少期からのアバッキオの憧れであったが、高校を卒業してすぐにいざその世界に飛び込んでみると、
賄賂が横行し市民を守るはずの警察がマフィアと繋がっているなど、どす黒い世界がそこには広がっていた。

また、守るはずの市民も見方を変えれば犯罪者の予備軍に過ぎず、命懸けで逮捕した悪人が保釈金を払って無罪放免を買い取る…
など、報われぬ現実を目の当たりにしていくにつれ、やがてアバッキオ自身も理想や正義を見失って賄賂に手を出すようになってしまう。

アニメではそれらの描写がより掘り下げられており、
  • アバッキオが乗っていたパトカーに石を投げて逃げるゴロツキ
  • ひったくりに襲われた女性を心配して駆け寄ったアバッキオに対して一方的に責任追及して彼を突き飛ばす老人
  • 反省の色もなく保釈された事を喜ぶ犯罪者の様子を目の当たりにするアバッキオ
……と、これでもかと言わんばかりにアバッキオの、『警察官』の理想が裏切られて行く様子が描かれている。

しかしある強盗殺人事件で、彼は相棒の警官と共に犯人を追い詰めたが、そいつは以前から賄賂を受け取っていたチンピラだった。
「見逃してくれよ」とせがむチンピラ*3に動揺していた所、相棒がチンピラが拳銃を持っていた事に気付き、アバッキオを庇って射殺されてしまう。*4


…アバッキオの未来は、そこで終わった…

チンピラは逮捕されたが、それがきっかけで賄賂のやり取りが明るみに出てしまい、警察社会から追放される。
そして何より、自分の軽率さが原因で相棒を死なせてしまうという背負いきれない「罪」の十字架を一生背負う事になってしまった。*5
以後は身も心も荒みきり、酒と女におぼれた堕落の生活を送っていたところを、ブチャラティに拾われた。
なお、このチンピラは外伝小説『恥知らずのパープルヘイズ』によると真夏なのに獄中で凍死するという変死を遂げたとの事。*6

因みに、原作ではアバッキオの「過去」はイルーゾォ戦で語られたがアニメではズッケェロ戦に前倒しされより詳細が描かれており、彼が警察から追放された後、最後の事件現場に足しげく通って酒浸りになり、そこでブチャラティと出会った事が描かれた。
(何故ブチャラティがアバッキオを知っていたかについては、『恥知らずのパープルヘイズ』ではフーゴがブチャラティに紹介した事になっている。)
この際、目の下に隈が出来ていたり、酔った勢いでケンカでもしたのか、顔が傷だらけになっていたりと、彼の荒んだ生活っぷりが描かれた。
そして、その時飲んでいた酒の瓶は…

本来は強い正義感や使命感を持った青年であったが、こうした経緯から基本的に人をあまり信用しないニヒルでぶっきらぼうな性格である。
当然ながら警官上がりのギャングなど、生涯使いっ走りのような仕事ばかり任され、決して出世など望めないのだが、
それでもパッショーネに入ることを決意したのは強大な力を持つ者の命令にシステムの一部として従っている時には不安を感じずに済むから。
ある意味死に場所を求めているだけの思考停止ともいえるが、この考えが彼が行動する上での強い原動力になっていたのもまた事実である。
後の顛末を見るに自分の命はどうでもいいが仲間の為に生きていたいという切実な欲求はあったようだが、罪の意識からその自覚を持つことはなかった。


【劇中での活躍】

初登場話は「5プラス1」で、他のチームメンバーと一緒に登場する。
上述の通り「アバ茶」をジョルノに提供し、彼を試した。
…が、ジョルノが(能力でイカサマをして)堂々と飲んでみせた際は、流石にちょっと引いていた。*7
アニメではオリジナルシーンでイチゴのショートケーキが「4つ」な事にケチを付けるミスタに、「しょうがねぇな」とでも言いたげにこっそりとケーキを取って「3つ」にしてやると言うさり気ない優しさを見せた。

カプリ島に向かう船の中ではズッケェロと交戦。
生意気にもスタンド能力の謎を解く課題をジョルノに押し付けられたアバッキオは、自身のスタンド能力を使いズッケェロを追跡する。
彼自身は惜しくも敗れたものの、手がかりをブチャラティに残しており、勝利に導いた。

ボスの指令でポンペイに向かい、イルーゾォと交戦。
ジョルノの進言を無視して鍵を取りに行ったところ、一対一でイルーゾォと戦うこととなる。
一時的にスタンドで欺くことには成功したが、鍵を手に入れるために自分の手を切り離すという荒技をやってのけることになる。
切断した手は闘いの後、ブチャラティにジッパーでくっつけてもらった。*8

その後は、組織に見切りをつけて裏切ったブチャラティに最初に賛同。彼に付いていく事を決意する。
彼が直接戦闘に参加する描写はほとんどないが、スタンドの追跡能力で戦闘を補佐することはあり、「縁の下の力持ち」的な活躍が多かった。

闘いの数こそ少ないものの、実はアバッキオは敵スタンド使いとの戦いにおいて、チームの中で唯一一度も直接勝利をおさめたことがない。
だが、逆に言うと、劇中ではチーム内で敵を誰一人として殺したことが無い事にもなる。*9

【スタンド】

『ムーディー・ブルース』の「再生(リプレイ)」を続行するぜッ!

スタンド名:『ムーディー・ブルース』
破壊力-C
スピード-C
射程距離-A(再生中に限る)
持続力-A
精密動作性-C
成長性-C

◆容姿

目がスピーカーのようになっていて、額にビデオタイマーがついた人型のスタンド。
素体の上から半透明の伸ばしたゴム状の皮膜を被っている。
体は時折電影のように歪む。
アニメではテレビやラジオのノイズのような「ピー ガー」と言う音が鳴る演出がなされて、更に機械的な印象となっている。

小説『ゴールデンハート/ゴールデンリング』によればナランチャが本スタンドがリプレイ時に他者に変身する瞬間を見た時いつも内心では『うげぇ…だぜ』と思っていて慣れないとのこと。


◆能力

特定の場所や人物を指定し、そこで過去に起こった出来事を「再生(リプレイ)」する能力を持つ。
その人物やそこにいた動物及びスタンドになり切ることができ、その行動を正確に再生する。
指定する時間が現時点と離れていればいるほど、「再生(リプレイ)」を行うのには時間がかかる
(十数年前の出来事を「再生(リプレイ)」するには8分程の時間を要する。ブチャラティには「5分でやれ」と要求されているのでアバッキオの気合で変動があるのかもしれない)
再生(リプレイ)」中の行動は、ビデオの巻き戻しや早送りのように自由に調節ができる。
ただ、再生(リプレイ)」中は攻撃も防御もできない無防備状態となってしまうのが、最大の弱点である。
また、「一時停止(ポーズ)」も可能。

他の生物に化けることができるので、短時間ではあるが相手を欺くことも可能。
(ただし、スタンド使いにしかスタンドは見えないので『ムーディー・ブルース』のリプレイや偽装はスタンド使いにしか確認できないが)
また、巻き戻す能力を使って自分の体を元の場所に戻すといった応用もできる。

スタンドのパワーそのものは本当に人間並で、鉄パイプを破壊できない。そして戦闘向きの固有能力もない。
だが、警官時代の格闘術もあり、並のスタンドなら一方的にフルボッコにできる。
例を挙げると、『ソフト・マシーン』には条件が悪かったのも相まって正面から押し負けたが、『マン・イン・ザ・ミラー』は一方的にボコボコにしている。

作中では主に探索や追跡を目的として使用されることが多く、ズッケェロをはじめとした敵勢力の正体を暴いたりと多くの局面でチームをサポートした。
その能力が故か敵にとっては厄介なものなのでたびたび襲われたりしてる。

『過去をやり直したい』というアバッキオの隠れた願望がうかがえるスタンド。
『警官時代に発現していたなら捜査に役立っていただろうに…』とファンによく評される。

◆由来

イギリスのバンド、『The Moody Blues』が名前の由来。



「アバ茶」の作り方】

序盤でジョルノに提供した、アバッキオのお手製ドリンク。
作り方はとっても簡単

1.キュウスを用意します。

2.チ●コを出します。

3.キュウスにチン●を入れ、こぼれないように「アバ茶」を注ぎます。

4.客人のカップに紳士的に注いであげましょう。


  • 飲み方
香りを堪能した後、一気に飲み干しましょう。
歯の一つをクラゲに変え、吸いとらせるようなマネをしてはいけません。



我々の業界ではご褒美です


【余談】

インタビューに答えた荒木先生曰く、アバッキオは生身の身体能力で言えばチーム随一との事である。
実際に警察官には一定以上の身体能力が要求されるし、その上で彼程のガタイとなれば納得できるだろう。

しかし……この生身での強さというのが、PS2の5部ゲーム『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の旋風』において、プレイヤーの斜め上を行く方向で再現(?)されていたりする。
このゲームでは、プレイヤーキャラは『本体モード』と『スタンドモード』の二種類のモードを切り替えて戦うのだが、基本的にどのキャラもスタンドモードの方が攻撃面において優れている傾向がある。
だが、アバッキオは本体モードのほうが強い
勿論スタンドモードにも利点や長所はあるものの、戦闘向きではないスタンドである事を再現した為か攻撃力が低く、本体であるアバッキオが相手をどつきまわすほうが強いのである。
その為に、原作で苦戦を強いられたイルーゾォだろうと、対面せずに終わった強敵のチョコラータであろうと、挙句の果てにはボスのディアボロであろうとも、スタンドを使うよりも拳を叩き込みヤクザキックをぶちかまして倒す実にアグレッシブなアバッキオが多発した。
おかげで一部ファンの間では、後述したボスのデスマスクを『ムーディー・ブルース』の後頭部を掴みとんでもない怪力で叩きつけたのではないかという疑惑がある。
実際には、スタンドパワーを振り絞って『ムーディー・ブルース』が頭突きに近い形で顔面を叩きつけたのであろうが、明言もされていないので間違っているとも言い切れなかったりする……

「オールスターバトル」、「アイズオブヘブン」ではブチャラティチームで唯一非プレイアブルキャラクターである(トリッシュはEoHで参戦した)。
「アイズオブヘブン」では実際プレイアブルキャラに決まりかけてはいたのだが、能力をアクションに上手く落とし込めず、泣く泣く没になったという切ない逸話も存在する。
「オールスターバトルR」のDLCで満を持して参戦。「必殺技を繰り出すとそのひとつ前に繰り出した必殺技をスタンドがリプレイし追撃する」という形でムーディー・ブルースの能力を再現。いわゆる超必殺にあたるGHAではどこからともなくナランチャとミスタを呼び出し、ティッツァーノ&スクアーロ戦前に一般人に喰らわせた踏みつけ攻撃を行い、そのシュールさから笑いを呼んだ。










以下、ネタバレ










一行がボスの正体を探るためにボスの故郷と思われるサルディニア島へ渡り、そこでボスの事を「再生(リプレイ)」しようとするが、ボール遊びをする子供たちが木に引っかけたボールを取ってあげた際に、子供の姿に化け近づいたボスにより、パンチ一発で胸に風穴を空けられてしまう。

一瞬、確かにボスの「正体」を見たアバッキオ。
乾いた土塊のようにボロボロと崩れていく『ムーディー・ブルース』…

しかし、次の回ではピンピンした姿でオープンカフェでひとり食事をする姿が描かれた。
ジョルノの治療が間に合っていたのだろうか…?




【今にも落ちてきそうな空の下で】



ガチャリン ガチャリ!
パリーン!
ガチャガチャ
ドチャ! ガチャン!
「(……?)」


オープンカフェでアバッキオがひとりパスタを食べていると、テーブルの下でガラスのガチャガチャ鳴る音がするので、ふと覗き込んでみる。
そこでは、一人の警官が何やら作業をしていた。

「あぁ……そんなところで、…何してんだい?
おまわりさん」

「食事中すまないね……。
今……、捜査中でね…。『指紋』を探している。


昨夜、向かい側の歩道で強盗があってね。
被害者はビンで殴られたんだ。
割れて飛び散ってね…。でも歩道には破片が全部そろってない。
とくに、こう握る部分がね…。
犯人がここに何か捨てたっていうんで、このビン捨て場にあると思ってね…
『指紋』がとれるはずなんだよ。……その部分を探しているんだ」

だが、そのビンの破片は無数にある。探すだけでもとてつもない労力である。

「………
そんな中から 探す気かい?」

「仕事だからな…」


「ああ…
その……、なんだ……」

「なにか?」


「いや……、その 参考までに聞きたいんだが。
ちょっとした個人的な好奇心なんだが、もし見つからなかったらどうするんだい?
「指紋」なんてとれないかも…
いや…
それよりも見つけたとして、犯人がずる賢い弁護士とかつけて無罪になったとしたら、
あんたはどう思って…
そんな苦労をしょいこんでいるんだ?」

悪いとは思いながらも、自身の経験から、ついついネガティブな質問をしてしまう。
一瞬の沈黙。だが、警官は「誇り」を持って答える。


「そうだな…。わたしは『結果』だけを求めてはいない。
『結果』だけを求めていると、人は近道をしたがるものだ…
近道した時『真実』を見失うかもしれない。やる気もしだいに失せていく。」


「大切なのは、
『真実に向かおうとする意志』だと思っている。


向かおうとする意思さえあれば、例え今回は犯人が逃げたとしても、いつかはたどり着くだろう?
向かっているわけだからな。
………違うかい?」


“アバッキオ…”
“大切なのは結果ではなく、それに至る道筋だ…!!“



あの時の、ブチャラティと同じ事を言う警官。
そう聞いて、かつての自分を思い出すアバッキオ。
そして、今の惨めな自分も…


「……。
うらやましいな……。
以前オレは…、警官になりたいと思っていた…

子供のころから……
…ずっと、
立派な警官に……、なりたかったんだ。


かつてあんたのような『意志』をいだいていた事もあった……。

でも、だめにしちまった……

オレって人間はな……。


くだらない男さ。

なんだって途中で終っちまう。

いつだって途中でだめになっちまう……」

そんな彼に、警官は笑顔で言う。


「そんな事はないよ……。アバッキオ

「え?……」


「おまえはりっぱにやってるじゃあないか………。

『意志』は同じだ……。


お前が警官になったばかりの時いだいていた、その『意志』は……

今…おまえのその心の中に再び戻っているのだよ……アバッキオ



「!!

なんでオレの名を……、知っているんだ?


……?

そういや……

あんた…

前にどこかで会ったことが………ある」

「何か」を思い出したアバッキオ。
その視線の先にはバスがある。
慌てて乗ろうとする…が、体が動かない。


「……。
どこに行くんだアバッキオ?」

「あのバスに乗るんだ……。


思い出してきた……。

そうだ!!
もう行かなくては………」

オレは仲間のところに戻らなくては…!!!

アバッキオの言葉とは裏腹に、足が前に進まない…。
否、進めないのだ。


「忘れたのかアバッキオ!?
おまえはあれに乗ってここに来たのだ。

ここは終点なんだ……。


もう…

戻ることはできない」

…残酷な真実。
だがそれ以上に、衝撃的な真実に、アバッキオは気付く。*10



あ…あんたは…!! そうだ!! あんたはッ!!

あんたはオレがワイロを受け取ったせいで撃たれて殉職した……!!



思わぬ人物との再会に、思わず、涙を零すアバッキオ。
恨まれていたと思っていた。恨まれて当然だと思っていた。それが自分の「罪」だと。

だが、相棒はアバッキオの事を、これっぽっちも恨んではいなかった。
それどころか、ずっと彼の事を見守ってくれていたのである。

再会した相棒は、優しい微笑みを浮かべながら言う。
あの、「いけ好かないガキ」にも少し似た、太陽のごとき優しさの顔で。




アバッキオ…お前は立派にやったのだよ…

そう…わたしが誇りに思うくらい立派にね…




所変わって、サルディニア島。



バカな……バカな!チクショウそんなバカな!!

早く治せよジョルノ!早く治せって言ってんだぜ!ケリ入れるぜこの野郎!!


一瞬だ!至近距離であっという間に起こっている…!

遅かった……、遅かった!アバッキオともあろうものがなぜこれほど近づけてしまったのか……。



力なく横たわるアバッキオと、それを見て絶望するブチャラティ達の姿。

…そう。アバッキオがいた所は、「あの世」だったのだ。
ジョルノの治療も間に合わず、既に絶命していたのである。

ボスと戦う事になった以上、仲間の中に「犠牲者」が出ることは「覚悟」していた筈だった。
だが、自分達の中から遂に出てしまった『初めての「犠牲者」』に、全員動揺と悲しみ、怒りを隠せなかった…。

普段はおちゃらけたミスタも、この時ばかりは何も言えず、青い顔で立ち尽くすだけだった。
気合い入れて蘇らせろ、とジョルノに涙ながらにせがむナランチャ。
ジョルノは、何も答えられなかった。
かつて、入団試験の際に無関係のおじいさんを救えなかった時と同じ、どす黒い悲しみと怒りが彼を支配していた。*11

再生(リプレイ)」できるアバッキオを喪った以上、もう打つ手は完全に断たれた。
絶望に打ちひしがれたブチャラティは、必死に怒りを堪え、遺体を置いてその場を去る事を決断する。
アバッキオの死を受け入れられないナランチャは泣きながらブチャラティに訴えるが……。



ここにおいていくのかよオオオオブチャラティ 〜〜〜〜〜〜〜〜

アバッキオをひとりぼっちでおいていくのかよオオオオォーーーー

おいてくなんてオレはヤダよオオオオオオオオ


大切な「仲間」を失い泣き叫ぶナランチャ。しかし……



これは命令だナランチャ!

アバッキオも覚悟の上ここに来たのだッ!出発するぞッ!


ブチャラティは唇を強く噛み締め過ぎた結果(とある理由で出血が殆ど無いはずの身体から)血をダラダラと流していた。
再生(リプレイ)」中戦闘のできないアバッキオを1人にする選択をした事で、結果的に彼を死なせてしまったブチャラティが、責任と悔しさを感じていないはずなどなかったのだ。

しかしアバッキオが殺されたという事はこの島の中にまだ追手がいる可能性が極めて高いという事。
つまりここに長居する事はできない。
溜まりに溜まったものを必死で押し込んで一行は足を進めようとする。

…が、アバッキオの亡骸の側にいたジョルノがふとあることに気付いた。
アバッキオが、小石を不自然に握っていたのである。



これには何か、"意味"がある…!何か…!

どこかの岩の破片みたいだ、"意味"を感じる!


アバッキオの『遺志』を感じ、『ゴールド・エクスペリエンス』で小石をてんとう虫に変え、元の場所に戻してみる。

すると…


…「再生(リプレイ)」は、完了していた。

石碑に、人間の顔と手形がクッキリとめり込まれていた。

アバッキオの『ムーディー・ブルース』は、最期の力を振り絞り、石碑にボス…ディアボロの姿になった自分を押し当て、「デス・マスク」というダイイング・メッセージを遺していたのである。
*12


チーム内では表向きはジョルノに心を開かなかったアバッキオだったが、彼の最期の手がかりを託したのは、他ならぬジョルノであった。
つまり彼は、心の奥底では、とっくにジョルノを認めていたのである。
かつて警官だった自分のように、純粋に「夢」に進むジョルノが、彼には眩しかった。眩しくて憧れた
だが、同時に過去に縛られ続ける、自分の心の狭さも、惨めさも見せつけられた。
憧れと嫉妬。…だから、不器用な彼は、悪いと思いながらも辛い言い方・接し方しかできなかったのである。

彼の名前の由来はレオーネはイタリア語で「ライオン(Leone)」、アバッキオは「子羊(Abbacchio)」という意味。
両極端な名前だが、これは彼が「ライオン」のように見栄を張っていながらも、内心は過去の罪に「子羊」のように怯えている、という何とも皮肉な名前となっている。

しかし、この旅で命を落としながらも、彼は変われた。

ブチャラティという「ジッパー」のように心を繋ぎ止めてくれる存在、ジョルノという黄金の如き希望の「太陽」に出会ったことで本当の意味で「魂」が救われた彼は、
ただの迷える『子羊』から、誇り高き『獅子』に生まれ変わったのである。

なお、『恥知らずのパープルヘイズ』によれば、彼の遺体はその後戦死したナランチャ・ブチャラティらと共に「組織とイタリアの為に殉死した英雄」としてディアボロに成り代わったジョルノによって盛大に葬儀が執り行われたとの事である。*13
アニメでは更に、後の展開同様に、アバッキオの遺体の周りに弔いの花を咲かせるシーンが追加された。


その花の名は「イエローサルタン」

花言葉は、『強い意志』…!!

自分がかつて死なせた友と真の意味で和解を遂げ、共に「行くべきところ」へ旅立ったアバッキオ。
そして、その出会った場所はテーブルの下。スラングで「Under the table」は賄賂の意味…

その遺体の顔には、不器用ながらも自身の使命を全うした、微かな微笑みが浮かんでいた…






アバッキオ… おまえは立派にやったのだよ

おまえの真実に「向かおうとする意志」はあとの者たちが感じとってくれているさ

大切なのはそこなんだからな…




許可するだって? 修正する事を?
グラッツェ! 追記もしてやるぜ!

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最終更新:2024年04月29日 21:10

*1 「涙目のルカを殺した犯人は見つからなかったことにする」と約束してしまったのもあり、彼をスカウトするきっかけを話しづらくなったのもあると思われる。

*2 警官時代は角刈りのような短髪であった。

*3 アニメではチンピラに射殺された被害者の死体が描写されており、強盗だけでなく殺人をも犯したにも関わらず悪びれることなく黙秘を要求する等、ゲスな一面が強調されている。

*4 アニメでは相棒が倒れた直後にその場で絶叫していた。

*5 アニメ版におけるイルーゾォ戦のモノローグで「俺の心はあの時あいつ(相棒)と一緒に死んだ」と独白していたあたり、相棒の死が現在も長きに渡ってアバッキオの心を苦しめている事が窺える。

*6 何故なのかは不明だが、恐らくはシマの中で勝手に強盗殺人をした事への組織からの「制裁」だったのかもしれない。

*7 恐らくギブアップすれば飲むのは許すつもりだったのだろう。

*8 その後ジッパーは消えているので、完全に繋がったか、メローネ戦後の『ゴールド・エクスペリエンス』に再生してもらったと思われる

*9 スクアーロ&ティッツァーノ戦前の幕間で食事中にボスの刺客と勘違いした一般市民をミスタとナランチャがボコボコにしているのをワインを飲みながら傍観していた……と思いきや次の瞬間には2人に混ざって一番容赦なく蹴りをくれた後に料理の毒見をさせるというえげつない事はしていたが。

*10 アニメでは今までモノクロだった画面に少しずつ色が戻っていく演出がなされている。

*11 亀の中に避難していてこの場にいなかったトリッシュも、後にアバッキオの死を知った際に「許してはいけないわ」とかつて『父』だった『男』に激しい怒りを顕にしている。

*12 ダイイング・メッセージを託されたブチャラティ達はその場から去る前にデス・マスクの型を取っていた。ちなみに石碑は既にブチャラティの手で粉々に破壊されていたが、当のボスは本能的に自身の手がかりを掴まれた事を悟って危機感を抱いていた。

*13 時間的には、ボスとの最終決戦までは一日弱しか経過していない