ムルチ

登録日:2023/02/26 Sun 16:44:47
更新日:2024/04/18 Thu 09:28:22
所要時間:約 13 分で読めます




巨大魚怪獣 ムルチは、『帰ってきたウルトラマン』で初登場した怪獣。
シリーズでの活躍及び関連キャラクターの宇宙調査員 メイツ星人もこの項目で紹介する。


データ

巨大魚怪獣 ムルチ

身長:48m
体重:1万t
(初代・ニ代目・ゾアムルチいずれも共通)

四肢を持ち二足歩行する、魚の様な姿をした怪獣。
口吻はサケの成魚の様に湾曲しており、火を吐く事も出来る。
長い尻尾と両手の先のヒレを武器に、ビルをも叩き壊す怪力で暴れ回る。


宇宙調査員 メイツ星人

身長:2.1m
体重:68kg
(初代・ビオどちらも共通)


『帰ってきたウルトラマン』での活躍


シリーズ屈指の問題作とも名高い第33話「怪獣使いと少年」に登場。
河原で暴れていた所を、地球の気候風土調査の為に来訪したメイツ星人に発見され。その念力によって地中に封じられていた。

宇宙船が故障して帰れなくなり、已む無く地球人の姿に変身し「金山」と名乗って地球で暮らしていたそのメイツ星人が、
自らを慕う余り、昨今の怪獣・宇宙人による侵略行為への恐れから宇宙人を恐れる民衆に宇宙人だと疑われ、暴行されそうになった少年の良を庇うべく自ら名乗り出て、
それを受けた民衆が彼に矛先を変え、郷秀樹の制止や良の「おじさんに酷いことすると大変なことが起きる」という忠告も無視した警察官が彼を射殺した直後、
自らを封印していた念力がなくなったムルチが、封じられていた地中から姿を現し、暴れ始めた。

直前まで「宇宙人と仲良くしてるなんて呆れたもんだ」と自分とMATを嘲っていた民衆から「あんたMATなんだろ。早く怪獣を倒してくれよ。」と掌返しをされた郷は、
見せつけられた人間の醜さと惨状に、「勝手な事を言うな。怪獣を誘き出したのはあんたたちだ。まるで金山さんの怒りが乗り移ったようだ…。」と心の中で吐き捨て、
怪獣が暴れ回っているにもかかわらず、ウルトラマンジャックに変身しようとしなかった。
人間の業に失望したジャックが、今まさに怪獣に襲われている人間たちを見捨てようとするという衝撃的な展開を迎えたが、
托鉢僧姿で現れた伊吹隊長の「郷。街が大変なことになってるんだぞ。郷。分からんのか。」という言葉を受け、郷はムルチに向かっていき、ジャックに変身。

大雨の中、泣き叫ぶかのような鳴き声を上げながら火を吐き、街で暴れ回るムルチを迎え撃つジャック。
ムルチの怪力に苦戦を強いられるが、ウルトラリフターで火の海の中へ投げ込んでスペシウム光線で止めを刺したのだった。

決着がつき、雨が止んだ一応の事件解決後。

おじさんは死んだんじゃないんだ。
メイツ星へ帰ったんだ。
おじさん。僕が着いたら迎えてくれよ。きっとだよ。

涙を拭い、良少年はがむしゃらに穴を掘り続けるのであった…。


……とストーリーは非常に重苦しいものなのだが、よく見るとムルチそのものはこのストーリー(特に良少年やメイツ星人への差別問題)にあまり関わっていない。
郷はムルチを「まるで金山さんの怒りが乗り移ったようだ…」と発言したが、実のところムルチは単なる野良怪獣で、むしろ暴れていたところを金山に封印されていた事からしても対立関係にある。
タイトルこそ「怪獣使い」だが、別にメイツ星人がムルチを使役する描写もなく、主従関係などない。
郷(や視聴者)が人間社会への嫌悪や絶望をムルチに投影しただけ、というのが実情であろう。後述の二代目も、特に理由もなく現れている。


『ウルトラマンA』での活躍


第7話「怪獣対超獣対宇宙人」、第8話「太陽の命 エースの命」に登場。

初代とは体色の色が違い、やや銀色を帯びているムルチ(二代目)が登場。

エースドラゴリーメトロン星人jr.を相手に戦う中、突如出現。
先の2体と合流して即席のチームとは思えない見事な連携でエースを苦しめる。
続いてエースに突進を仕掛けた…のだが、かわされてドラゴリーに激突したのが運の尽きだった。

この攻撃に激昂したドラゴリーはエースそっちのけでムルチに襲い掛かり、ムルチも応戦しようとするが、
怪獣を超える生物兵器である超獣には歯が立たず、下顎と両足を引き裂かれてしまいあっさり絶命。
この描写が初代とは別ベクトルでトラウマになった視聴者は多く、後に『ウルトラマンZ』でエース本人も語るほど残虐な超獣の攻撃性がよく伝わっただろう。

なお、次回作の『ウルトラマンタロウ』では、第1話でアストロモンスが超獣のオイルドリンカーを丸呑みにし、むしろ超獣がかませ犬になっている。
一応このアストロモンスは「脅威さは超獣をも超える大怪獣」という設定で、そのことを視聴者に分かってもらうべくこのような扱いになったと思われるのだが、
結局『レオ』以降のシリーズでは「怪獣」が主な敵モンスターとなる一方で、「超獣は怪獣より強い」という設定が薄れていった影響で、
超獣の怪獣に対するアドバンテージが僅か1作のみとなったのは別の話。
オイルドリンカーが弱すぎただけという意見もあるが。クレーンに手こずるぐらいだし。

また、ドラゴリーがムルチを引き裂くシーンは『新ウルトラマン列伝』第8話「バルキー星人の怪獣教室!」*1でもダイジェストで映像が使用されていたが、
該当シーンでは進行役のバルキー星人をアップしたカットに差し替えられていた上に、本人はドン引きしていた。
「おいおい! 仲間割れは良くないぜぇ!? 短気なヤツらだなぁ…。な、何する気だ!? まさか…アーーーーッ! うわぁぁぁ…これはちょっとヤバイなぁ…。」


ウルトラマンメビウス』での活躍


第32話「怪獣使いの遺産」に登場。

ムルチを強化改造したとされるゾアムルチメイツ星人ビオが登場。

GUYSスペーシーより緊急連絡が入り、40分前に一機の未確認飛行物体の地球接近が確認された。
このまま降下すると午前9時47分にタクマ山中に到達する見込みであり、
そのタクマ山中には、コノミの勤めていたみやま保育園の子どもたちがピクニックランドへ遠足で向かっているという。
CREW GUYSは現場に向かう事となった。

テッペイの分析では、冬眠状態とはいえ宇宙船内部に大型生物の生体反応があるという
円盤の現れた理由が侵略目的だと決めつけ、攻撃を提案するリュウだが、サコミズの指示もあり攻撃の許可は降りない。
一方、ミライにはメイツ星人ビオのテレパシーが。
リュウとミライはガンフェニックスから着陸して二手に分かれるとミライは宇宙人を目撃、銃を向ける。

待ちたまえ。どうして君は私に銃を向ける必要があるんだ?私たちは敵同士なのかね?

メイツ星人…君が地球に来た目的はなんだ?

地球と友好を結ぶことだ。我々は地球人と仲良くしたい。

それならば、何故怪獣を連れてくるんだ?

君がいるからだよ、メビウス。宇宙警備隊員の強さを私も知っているつもりだよ。

その君が、地球人の味方をしてるんだ。我々も万一のために味方を連れて来たいと思うのはいけないかね?

けれど地球人は、その怪獣を武器だと考えている!

我々にとっては、君も地球人の武器なんだよ。

無論、我々も無益な争いをしようとは思っていない。君が介入しなければ、ゾアムルチを覚醒させることはない。

ゾアムルチ…。本当に友好が目的なんだな。

もちろんだ。ただし、地球人と握手をする前にどうしても解決しておかなければならない問題がある。私はその交渉のためにきた。

ビオはさらに30年前の事件…つまり『帰ってきたウルトラマン』の「怪獣使いと少年」の一件についても語り、
同胞を殺した地球人に対する憎しみもあるが、こちら側に非があることも理解しているという。
そして、メイツ星と地球との問題なため、本来部外者であるミライに介入しないことを望むビオだが、
「ミライが宇宙人に襲われている」と早合点したリュウが、ミライを護ろうとしてビオに発砲してしまう。

これによってビオは地球人に対する憎しみを再燃させて激昂し、地球人を野蛮な連中だと詰った上で、
「命を奪われた同胞の賠償として地球の大陸部の20%を割譲せよ。さもなければ攻撃する」と一方的な要求を突きつけ、
地球側の回答を待つことなく、宇宙船によって地球に攻撃を仕掛けてきた。
これに対してサコミズはジョージとマリナには宇宙船を食い止め、リュウとミライにはメイツ星人ビオの身柄を確保した上で話し合って説得するよう指示。

一方、人間に擬態したビオ(演:吉田智則)のリュウに撃たれた箇所からは緑色の血が流れており、
彼と遭遇した幼稚園の先生は宇宙人だと見破って警戒するが、園児たちは「宇宙人だって怪我したら痛い」と心配し、ハンカチを差し出した。
そこにリュウとミライが駆けつけ、ミライは説得を試みるも、ビオは依然円盤での攻撃を続ける。

(これは…地球とメイツ星との問題…僕はどうすれば良いんだ…)

躊躇うミライだが、街が大変なことになっているというリュウの言葉に奮起したのか、メビウスに変身。
邪魔が入ったと判断したビオはゾアムルチを覚醒させ、メビウスに差し向けた。
リュウはゾアムルチを止めるようビオに言うが、「撃てば良い。野蛮で暴力的な地球人め。」と挑発の姿勢を崩さず、
さらに、ゾアムルチはビオの脳波と同調しているといい、彼の怒りと憎しみがある限り戦いを止めないという。
また、リュウとの会話の中でビオはかつて殺されたメイツ星人が自身の父であることを打ち明けた。

直後、「あなた…メイツ星の人?30年前に地球にいたのはあなたのお父様?」と、話を聞いていたらしき女性が話しかけてきた。
女性はコノミの勤めていた幼稚園の園長であり、「ビオにお会いしたかった」「メイツ星の人は本当に心が優しい」と続けた。

園長は過去に身寄りを亡くしたという少年と出会い、楽しい時間を過ごしたことがあるという。
彼女はその少年の「メイツ星に行ってみたい」「おじさんの仲間たちと握手したい」という言葉に感銘を受け、
違う星の人間同士でも心を通わせることが出来るのだと教えられたのだと。
そしていつの頃からか、他の人にもその言葉を伝えたいと思うようになり、今では保育園の園長になったのだった。

その少年は間違いなく「怪獣使いと少年」に登場した良少年の成長した姿であり、
彼の語る「おじさん」とは、ビオの父である、金山と地球で名乗っていたメイツ星人であった。

そして、ビオの父が少年に残した愛情という遺産は園児たちがしっかり受け継ぎ、
園児たちが大きくなる頃にはこの星が今より優しくなっている、とも説いた。

父の死を悼んだ少年がいたことや、彼が父から受け継いだ『遺産』が地球の子どもたちに根付いていることを、
今まさに自分が宇宙人だと知りながらも怪我を心配してくれる園児たちの姿を以て実感し、混乱するビオ。
そんなビオに、リュウは自らの非を詫びた上で、こう告げた。

俺が言えた義理じゃないのは分かってる。けど、もういっぺんだけ地球人を信じてみてくれないか。

私の…父の遺産…

メビウスとゾアムルチの戦いは尚も続き、いつしかあの時のように激しい雨が降り出していた。
大雨が降りしきる中、ビオは自らの中の激しい葛藤を口にする。

ああ…駄目なんだ…!もう一度地球人を信じてみようという気持ちが起こっているのに…すぐに憎しみが止められないんだ!父のことを思うと…どうしても!

そして、ビオは大雨に濡れながら、自らの憎悪によって暴れる、自身の憎悪の象徴たるゾアムルチと戦うウルトラマンメビウスに叫んだ。

お願いだ!私の憎しみを消し去ってくれ、ウルトラマンメビウス!

その言葉を聞き届けたかのように、メビウスは必殺光線のメビュームシュートを放ち、ゾアムルチを撃破した。

戦いの後、ビオは雨の止んだ虹のかかった青空を見上げていた。
リュウはビオに握手の手を差し出すが、ビオはそれに対して首を横に振って見せると、
「握手は、父の遺した遺産の咲かせた花を見届けてからにしよう。」と返し、宇宙船に乗り込んで去っていくのだった。

その人の姿は、いつの間にか見えなくなっていました。

病気で亡くなったとも、長い旅に出たとも聞きましたが、はっきりしたことは分かりません。

けれど私の中には、燃え上がるような夕焼けの中で、どこか楽しそうに穴を掘り続けているあの人の姿が、今も、消えずに残っているのです。


『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』での活躍


第9話「ベンドラゴン浮上せず!」に登場。

アリゲラが大量に生息していた惑星ボリスの海中に出現し、スペースペンドラゴンを襲おうとした。
レイゴモラではなく水中戦が得意なエレキングをモンスロードして立ち向かう。
互角の格闘戦を繰り広げ、青白い光線を放って善戦するも、「エレキング!反撃を許すな!」というレイの指示を受けた後は劣勢となり、
最後は光線のぶつかり合いを経てかつてのミクラスのように尻尾を巻きつかれてからの放電攻撃で倒された。

また、『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』ではウルトラマンベリアルの手によって怪獣墓場から復活したが、またもやメビウスのメビュームシュートで撃破された。


ウルトラマンギンガ』での活躍


『ウルトラマンギンガ劇場スペシャル ウルトラ怪獣☆ヒーロー大乱戦!』に登場。

友也が開発した「ウルトライブシミュレーション」でヒカルがゾアムルチにウルトライブ。
同時に健太はドラゴリーに、友也はゼットンにライブし、
健太の「せっかくなんで、楽しいことやんない?こいつらの中で、どいつが最強の怪獣なのか試そうぜ!」という声かけのもと、
怪獣対超獣対宇宙恐竜の戦いになったが、ゼットンの攻撃でドラゴリーはあっさり敗退、間接的に二代目のリベンジを果たす
続いて千草がライブしたザムシャーを交えた戦いになるが、星斬丸の一閃には敵わずゼットン共々敗退した。


ウルトラマンギンガS』での活躍

第12話「君に会うために」に登場。

メトロン星人ジェイスの抹殺を目論むガッツ星人ボルストがゾアムルチにモンスライブ。
登場と同時に青白い光線でジェイスを圧倒し、駆けつけたギンガビクトリーを交えた3VS1の戦いでも劣勢にならない高い戦闘力を見せつける。
しかし千草の「ウルトラマンギンガの歌」を聞いたことによりジェイスは奮起。
宇宙ケミカルライトを用いたヲタ芸に気を取られた隙にギンガはギンガストリウムに変身、ウルトラショットとビクトリウムシュートの同時発射で撃破された。

その後、宇宙人であるジェイスは陣野隊長の計らいで見逃され、千草のステージも無事に開催されている。


その他の作品での活躍

『メビウス』のIFストーリーとして執筆された小説作品『ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント』でもゾアムルチが登場。
概ねの設定は映像作品と同じだが、本編とは異なる様々な要因が重なって作劇に影響した結果、本編とは異なり倒される事無くビオの手により封印される結末を迎えている。

漫画『ウルトラマンSTORY 0』では、半魚人達が繁栄しているとある星に棲息する普通の魚として登場。
捕まって焼かれて食べられていた。


余談

  • 初代ムルチのデザイナーは熊谷健。デザインモチーフは
    名前の由来については諸説あるが、雷魚カムルチーあるいは大蛇の魔物の伝承が残る沖縄の池「屋良ムルチ」と推測される(「怪獣使いと少年」の脚本を書いたのは沖縄出身の上原正三)。

  • ゾアムルチのデザイナーは酉澤安施。
    『メビウス』第32話の過去回想場面もゾアムルチの着ぐるみで撮影する事となっていたため、「ムルチを今の技術で作ったらこうなるだろう」というイメージで仕上げられており、
    オリジナルのムルチにもあった下半身の水玉模様を宇宙的なデティールとして強調してデザインされている。
    メイツ星人ビオのデザインも同じく酉澤によるもので、当初は若者らしくお洒落なデザインとしてモヒカンの髪形も検討されていたが、
    2000年代当時の技術ではマスクを造形する事が難しかったため結局無難な形に落ち着いた模様。

  • 『A』8第話でドラゴリーに倒されるのはシーゴラスの予定だった。それはそれで元の扱い的にダメだろうと
    ムルチの着ぐるみは『帰ってきたウルトラマン』終了後、イベントで使われていた現物を使用したが、引き裂いたせいで修復が出来ず、ダメにしたことでスタッフはイベント担当から大目玉を喰らったという。


  • 『A』放送当時にカードのおまけがついたスナック菓子が発売されていたのだが、その中には『さかれたムルチ』として、ドラゴリーに引き裂かれたムルチの下顎の肉片を映したものがある。
    当然こんなもの子供がほしがるハズもなく、ハズレとして捨てられまくった結果、今ではコレクター間でレアアイテム扱いされているらしい。




Wiki篭りは死んだんじゃないんだ。
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Wiki籠り。僕が着いたら追記・修正してくれよ。きっとだよ。

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最終更新:2024年04月18日 09:28

*1 『ウルトラマンギンガ』第1~6話に登場した怪獣をバルキー星人が紹介するという形式。