ムカデ

登録日:2023/06/27 Tue 19:02:00
更新日:2024/02/25 Sun 14:01:33
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ムカデとは多足類に属する節足動物の一種である。
漢字では「百足」、または「蜈蚣」と書く。
英語ではcentipede(センチピード)。ラテン語の「centi(百)」「ped(足)」に由来。


概要

蛇を思わせる長い体に沢山の足を持つ姿と、よく似ている種のヤスデ(後述)を除けば他に類を見ない姿をしているのが特徴の節足動物である。
目はあるがかなり小さく、視力も光を感じる程度とほとんどなきに等しい為代わりに頭部から生えている二本の触角や鋭い嗅覚で周囲を探りながら移動する生態である。
全ての種が肉食性であり、昆虫はもちろんだが大型種になるとなんとトカゲ、ヘビ、カエル、時にはネズミコウモリをも捕食してしまう
目の下に鋭い牙が生えているが実は一番前の脚が牙状に変化したものであり、この牙を突き刺して毒を注入し、動けなくしてからバリバリと食べる食事形態を持つ。
元々肉食の生物なのもあるが性格は全体的に凶暴で目があまり見えないのもあってか、人間含め動くものや近づくものに対しては手あたり次第に噛みつく習性がある。

夜行性で明るい場所を嫌い、乾燥に弱いことを除けば適応力・生命力共に高く、洞窟や森、果ては家の軒下等様々な環境に生息しており、
時に家の中に侵入してくることもあるが見た目はともかく基本的に人間に危害を加えない不快害虫であるクモと違い、
その攻撃性とによって危害を加えてくる為、駆除されてしまうことも少なくない。
毒も強く、アナフィラキシーショックを起こすリスクもある他、海外では死亡例もある。

寿命は種類にもよるが基本的に長生きな生物で10年生きることもあり、
大きさも小型種は6cm程度であるが大型種の場合日本にいる種が10cm~20cm程度であるのに対し海外のものになるとなんと30cmもの長大な体になる種もおり、
もはやちょっとした蛇のような迫力を誇る。
「同じ細長い有毒肉食生物として、蛇とニッチが被らないの?」と思われるかもしれないが、
蛇は新鮮な獲物を丸呑みするのを好むのに対し、ムカデはアゴで獲物を引き裂き、死体も食うなど悪食気味なので棲み分けしているらしい。

そんなムカデにも天敵がおり、鳥に捕食されてしまうことがある他、アリには毒牙が届かない上、数の暴力によってあれだけ多くても手も足も出ず捕食されてしまう。

ちなみにオオゲジを含むゲジの仲間とは近縁に当たる。


毒性

セロトニンとヒスタミン、ポリペプチド、酵素が主成分。
噛まれると強い痛みを伴い、患部が赤く腫れあがる。
よく熱いお湯で患部を洗えと言われるがこれには諸説ある。
何故なら血流が良くなることで患部以外にも毒が回ってしまうからであり、実際は冷たい水で洗い流した方がよいと言われる事もあれば逆に熱することで毒の分解を促すべきとも言われるからである。
どちらにせよ、抗ヒスタミン成分を含んだ軟膏などを塗り、安静にしておくことが大事である。
通常は数時間程度で落ち着くとされるがたまに2週間近く治らなかったり、アナフィラキシーショックを起こしてしまうこともある為、
症状が悪化するようであれば無理をせず病院に行くことをお勧めする。
また、ムカデ毒とハチ毒は構造が似ており、ハチに刺された経験があると、
ムカデに噛まれた際に交差反応によってアナフィラキシーショックを起こすこともある。
毒は強めとはいえ基本的に人が死ぬことはないようだが、海外においては死亡した事例もあるので油断ならない。


人間との関係

上でも書いた通り実際に人間にも害を与える生物ではあり、俵藤太伝説における三上山大百足等、妖怪や化け物のような扱いを受けることも多々あったが、
その一方で歴史を見ればその恐ろしい姿や戦闘力から畏怖の対象とされたこともあった。

特に我が国の戦国時代における扱いが有名でその攻撃性から絶対に後退しないとされ、
武勇を誇る武将達がこぞって縁起物として扱い、シンボルとしてきた。
これは攻撃性もそうだが仏教においてムカデは毘沙門天の使いであることも深く関係している。
その中でも有名なのが武田信玄であり、実際に彼の直属の伝令部隊が百足衆と呼ばれ、
本人もムカデを描いた旗を用いていた程にムカデを好んでいたことで知られているのだ。

神道の古事記においてはスサノオが根の国に逃げて来たオオナムチ(後のオオクニヌシ)を、ムカデと蜂の湧く部屋で一晩過ごさせるという危険極まりない試練を出す他、
スサノオの自室に入ることを許された際はオオナムチにスサノオは「自分の髪にいるシラミを取れ」と命令したものの、
髪に絡まっていたのは夥しい数のムカデだった記述がある。これが日本を代表する神の一柱の頭皮の強さである。

また、古くから捕獲したムカデを油に漬けてムカデ油という薬を作る文化も存在しており、傷薬やムカデに噛まれた際によく使っていた。

今日においてはペットとしても人気が高く、特に海外の大型種になると6桁の高値で取引される程。
その場合餌も昆虫では足りなくなるのでネズミを餌にする必要が出てくる上に、毒の強さや量も日本産より強い場合が多く、
噛む力自体も強いのでプラケースで飼おうものなら蓋の部分をバリバリと粉砕されて脱走される恐れがある。
なので爬虫類用の頑丈なケースが必須であり、蟲でありながらちょっとした爬虫類を飼う気で飼わなければいけないという意味では大変。
無論上で述べた習性の為ハンドリングは絶対にお勧めしない。でもやる奴が結構いる界隈


ヤスデとの違い

似た生物であり、実際に混同されることもあるムカデとヤスデ。
だが生物としては、多足類であることを除けば実はかなり異なる生物である。
以下にムカデとヤスデの異なる点を載せていく。

特徴等 ムカデ ヤスデ
食性 肉食性 草食性
足の生え方 一節につき1対 一節につき2対
性格 凶暴 大人しい
体型 扁平 筒状
毒性 有毒 無毒だがとても臭い匂いを出す

こう書けば両種がどれだけ違うかお分かりいただけただろうか?
なお、ヤスデは落ち葉等の植物体を主食にしているためか、肉食であるムカデと違い毒の牙は持っていない。代わりに体表から刺激物(匂い等)を発するものが多い。
飼育難易度については、全般的にムカデよりヤスデの方が大変な傾向にあるようだ。*1

ちなみにヤスデは英語ではmillipede(ミリピード)。こちらはラテン語の「milli(千)」「ped(足)」に由来。

オオムカデから見た類縁関係で言うと、見た目によらず
オオムカデ-ジムカデ-イシムカデ-ゲジ-ヤスデ-エダヒゲムシ-コムカデ
の順に近縁であるらしい。

主な種類

オオムカデ科

トビズムカデ
鳶頭百足。
日本に生息しているムカデの仲間。
日本のオオムカデの仲間ではよく知られた種類であり、沖縄含め日本各地に生息している。
より大型化する傾向にある沖縄産の個体はハブムカデと呼ばれ、区別されることもある。

リュウジンオオムカデ
琉神大百足。
沖縄県で発見されて、2021年に新種として記載された。
沖縄本島北部、久米島、石垣島、西表島、渡嘉敷島、台湾で生息が確認されている。
通常のムカデも泳ぐ程度ならできるのだが本種はなんと半水棲の水陸両用であり、
泳ぐだけでなく潜水することも可能で水中の甲殻類を好んで食べるという。
2021年7月より種の保存法に基づく緊急指定種に指定されていて、密猟による逮捕者も出ている。

ベトナムオオムカデ
東南アジアに生息しているムカデ。
最大30cm前後とアジア最大のムカデであり、ネズミや蛇をも捕食する獰猛さを持つ。
上で書いた通りムカデの毒は基本的に死亡例はないと言われるがこの種は例外のようで、小さい子供が首を噛まれてしまい死んでしまった事例があるという。
大きさに関しては諸説あり、一説には30cmを超えるとも言われ、後述のペルビアンジャイアントと並んでムカデの仲間で最大種とも。

ペルビアンジャイアント
南米の森林地帯に生息しているムカデ。
ムカデの中の最大種候補であり、なんと30cmを超える長さになる個体もいるとされるほど。
巨体故かベトナムオオムカデと同じくネズミやコウモリなどの哺乳類をも捕食し、あのゴライアスバードイーター(超でかいタランチュラ)の数少ない天敵としても知られている。
ペットとしても人気だがかなり高価で数万円は下らないほどでまた顎の力が強いのでプラケで飼うのは厳禁である。
こちらは項目もあるので詳しくは当項目参照。

ガラパゴスジャイアント
ペルビアンジャイアントと並ぶ最大級のムカデ。
60cmに達する個体がいたという、半ば伝説的な逸話がある。
さすがにこの記録は何かの間違いだろうということで最近は落ち着いているが、大きければ40cmに迫るのは事実。
値段もムカデというか奇蟲界最高峰で、サイズによっては6万~10万ほどで取引されている。
性質も狂暴・凶悪の一言であり、ペルビアンジャイアントと並んで最も飼育に勇気のいる動物と言える。
ムカデマニアにとっては一度は飼いたい夢の種であるが、それ以外には悪夢。
ちなみにこの名前でもガラパゴス原産ではなく南米原産。
そもそもガラパゴス原産の動植物は商業目的で流通することはまずない。
仮にガラパゴス固有のムカデが流通するとなれば、本種の価格に0が一つ増えても買えないだろう。


ムカデをモチーフにしたキャラクター等

ある意味クモ以上に好き嫌いが分かれる見た目であること、近づくものに見境なく噛みつく習性から仮面ライダーシリーズを筆頭に悪役になることが多い。
脚を描くのが面倒だからかアニメではあんまり見かけない気がする一方、妖怪大百足の存在がある為か和風ファンタジーや妖怪を題材とした作品にはよく出てくる傾向にある。
また体節構造から合体機のモチーフとなることも多い。


伝承
  • 大百足(日本の伝承)
  • 百眼魔王(西遊記
  • 使いに出ようと一生懸命に靴/草履を履く百足(日本の伝承)*2

漫画・アニメ

特撮



ゲーム

その他

余談

  • 脚の数について
    上で書いた通り「百足」とは書くが、実際のところよく目にするオオムカデ類には百本の脚があるわけではないようで、多くても94本程度である。惜しい
    より小型のジムカデ類であれば最多で382本にもなるものが確認されているが、正常に成長したムカデの節の数は必ず奇数になるため脚が百本ちょうどのムカデは存在し得ない。
    • ちなみに生物最多の脚を持つのはヤスデ。実はヤスデは脱皮する度に体節と脚の数が増えるという特徴を持っており、最大で1306本・次点で750本の個体が確認されているという(2021年時点)。こちらも惜しい

  • 社会性でない虫の中では珍しく、きちんと子育てを行う。
    卵の時からある程度大きくなるまで、母親が子供たちを世話して守り、狩りを教えるのだ。
    とはいえ上述のように攻撃性が高い…というか非常に敏感なので、卵を産んでも僅かな振動などで安全でないとわかると育児放棄し卵を食べてしまうこともある。
    このようにマタニティブルーがあるので、育児中のムカデは慎重に扱おう。
    ちなみに守り方というのは、子供たちをまとめて抱いて丸くなるというとても母性溢れるもの。
    …なのだが、絵面になると大分グロい。気になる方はムカデ子育てで画像検索してみよう。

  • ムカデ競走
    運動会の種目の1つ。生徒が縦に並んだ状態で足をロープで固定してグラウンドを走る。
    文字通り足並みを揃えないとうまく走れないばかりか、転倒して大怪我する(特に最前列の生徒)危険があるという意見が見られる。





追記・修正は手当たり次第に噛み付いてからお願いします

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最終更新:2024年02月25日 14:01

*1 ヤスデは偏食の種も多く、餌に気を使わないと長生きさせるのが難しい。

*2 一般的には「ムカデの使い」「ムカデの医者むかえ」等と呼ばれ、昔話や落語の小咄として伝わっているお話。『まんが日本昔ばなし』では「ムカデの使い」という題で放映。

*3 狼型キメラアントだが、念が「黒百足」を相手に寄生させる能力

*4 ムカデをエンブレムとしたのは先述の武田家に由来している

*5 劇中には登場せず、魔化魍ロクロクビの材料にされた。

*6 ただし、映像作品には登場せず、玩具オリジナル。後にゲーム作品に登場した。

*7 タウ・ザント率いる「宇宙忍者ジャカンジャ」の本拠地の名前も「寄生要塞センティピード」であり、またジャカンジャのシンボルマークも「忍」の字を象ったムカデである。

*8 ゼルダの伝説 神々のトライフォースではイモムシ風の外見。

*9 「Mega」は100万倍の意味。百足ならぬ「百万足」である

*10 2023年6月29日時点で《背骨ムカデ/Spinal Centipede 》《百節棍のムカデ/Chainflail Centipede》のふたつのみ