マ・クベ

登録日:2022/06/08 Wed 02:30:46
更新日:2024/04/24 Wed 12:20:09
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戦いとは駆け引きなのだよ。


マ・クベ(M'qube)宇宙世紀ガンダムシリーズの登場人物の一人。
初代『機動戦士ガンダム』にて登場したジオン公国軍の上級士官で、ザビ家長女キシリア・ザビの側近。
ちなみに、ファーストからの重要キャラとしては珍しく未だに年齢などは不明である。

ファーストネームは“マ”で、劇場版ではTV版と違ってキャラ名がファーストネームのみになっていたので、他のキャラクターに合わせて“マ”とのみ表示されてしまって笑いを誘っていた*1

そして、マ・クベと云えば一番には壺の人として認識されている。
どれ程の認識かというと、ガンダム好きを自称していてもファーストにあんまり詳しくなかったり本編を見たことがなかったり、という層にも壺ネタだけは知られている位に。
ちなみにもうちょっと詳しい人にはギャンが実質的なマ・クベ専用機だったということ位までは知られているかも。

自分の手は汚さない知略家、策謀家、卑怯者というイメージを持たれていることが多いが、最後には汚名を返上するべく数々の策も弄したとはいえ自らMSを駆っての散り様を評価する声もある。それに、バロムの進言があったことが大きいが、マ大佐が居なければミネバ様は生き残れなかったのだ。

安彦良和による『THE ORIGIN』では、本編以上に役割が多く持たされており階級も中将にまで上がっている。
独特の価値観ながらもファーストよりも高潔な印象を受ける人物として描かれており、TV以上に色々と活躍も多い。
『ククルス・ドアンの島』でも『THE ORIGIN』史観なのか“将軍”と呼ばれている。

CVは塩沢兼人。(特別版以降は田中正彦。ゲーム『サンライズ英雄譚R』では加瀬康之。『THE ORIGIN』と『ククルス・ドアンの島』では山崎たくみ。)


【概要】

シャア・アズナブルランバ・ラル黒い三連星等とも並び称される、ジオン公国軍を代表する将校、幹部軍人の一人。

…が、上記の面々が戦場で“二つ名”が付くような豪傑、武将タイプであるのに対して、マ・クベはエリート軍人の政治家、知将タイプである。つまりは本来は同列に並べて語られるべき人物では無い。
にもかかわらず、前述のように何となーく強敵というイメージも持たれることがあるのは、最後には数々の仕掛けを弄していたとはいえ自らMSギャンに乗り込みガンダムに挑んで散っていったという事実があるからだろうか?
詳細は後述とするが、後にこの辺は流石におかしいと認識されたのか、現在までに『マ・クベは別に腕利きのパイロットとかそういうのではない』という下方修正を図るフォローがされている*2
ちなみに、終盤にギャンで戦ったという印象の方が強く残っているかもしれないが、役割的には中盤までの大ボスポジであり、劇中では大物として扱われている。

先にも述べたように骨董趣味の中でも特に壺好きとして知られ、初登場時には北宋時代の白磁の壺を指で弾いて音を楽しんでいた他、後に登場した自室でも壁一面に壺を飾っていた。
自身が統括していたオデッサが現在の地理的に中央アジアに位置していたからこその実益序でにコレクション集めに励んでいたとも考えられている。

なお、現在では神経質で狡猾そうな雰囲気こそ忘れられていないものの、概ね美形のオッサンというデザインにされてることが多いのだが、
ファースト当時の作画では顔の特徴を捉えにくかったのか質の悪い作画をする外注に当たったせいか(特に)登場初期の人相が抜群に悪い。


【本編での活躍】

ジオン公国軍突撃機動軍司令キシリア・ザビ少将の側近中の側近であり、
第一次降下作戦後より同突撃起動軍の地球方面部隊の司令官を務める。オデッサ基地を本拠地として大規模な鉱山を統治下に置き、地球から宇宙への資源採掘と輸送を指揮していた。

前述のようにシャア達と並ぶ“てきのかんぶ”ポジであるものの、いきなり大佐なんて地位に就いている。そこからも解るように、戦場での功績で名を挙げたシャア達とは違い、寧ろ、彼等をも駒として動かしてきた側である文官タイプのエリート軍人である。

どれだけ偉いかというと、ザビ家の一員ではあるものの、まだ若かったガルマ・ザビ大佐も、取り敢えずはマ・クベの指揮下に入れられていた程。

ガルマの他、後のソロモン攻略戦にて副官的立場で付けられていた同じくキシリア配下で救援部隊司令のバロムも階級上は同じ“大佐”の筈なのに明確にマ・クベの方が上役として扱われているので、
実はジオン公国全体でもザビ家の面々に次ぐ位の地位にあったと推察出来る。
この辺の描写が後の『THE ORIGIN』での中将という地位に繋がっているのだろう。

前述のように基本的には自らは最前線には出ない策謀家というイメージが強いのだが、実はそういう訳でもない。
意外にも本格的な登場となった『機動戦士ガンダム』第18話*3では、督励に訪れたキシリアと共に新型MAアッザムの試験を兼ねて新設の鉱山基地(第102採掘基地)を視察している所を家出中のアムロとガンダムに見つけられた事から、戦闘に突入する。秘密保持&性能実験&噂の敵戦力の分析の為に同乗していたキシリアに半ば強引に命じられる形で自らアッザムを操ることになってしまう。

しかし、それにもかかわらず砲撃でガンダムを翻弄しアッザムリーダーを直撃、更には「ザクならもう動けなくなっているはず」等MSの性能に熟知した様子が垣間見える。そのため、前述の様に“ギャンに未熟なパイロットを補うシステムがあった”等と、後に逆補正をかけられてしまったりしているものの、元々パイロットとしての適正や前線で戦う能力が“無い”人物として描かれていた訳では無かった*4

ザビ家の一員とはいえ、女性であり軍人タイプでもないキシリアが結局は男社会であるジオン公国軍内部で強い影響力を持てたのも、彼女の軍が地球からの資源の調達を取り仕切っていたという部分が大きく、このことでマ大佐が果たしていた役割というのは表向きにも後ろ向きにも非常に大きい。

例えば、ジオンが地球連邦への反抗を決意したのには、宇宙移民がカツカツの生活を強いられてきたという部分が大きかった訳だが、
その圧倒的に資源が不足していたジオンが開戦から暫くの地球側への優位と後付けも含むとおかしいレベルの戦力の増強を支えていたのが単に地球方面部隊による大規模な資源採掘であった。

事実、連邦軍はオデッサ奪還を大規模反抗作戦の始まりと定めていた。
劇中でも視聴者に詳細な情報が明かされていない内から“オデッサ・デイ”の作戦名が登場しており、実際のシナリオ上でもオデッサ作戦を機に連邦軍の本格的な逆転劇が始まっている。

一方、この時点で既に地球での資源の採掘に絡む大っぴらには語れない裏の事情も明確にシナリオ上で匂わされていた。
主であるキシリアがジオン内部で地位を確立出来たのにはマ・クベ率いる資源採掘、補給部隊の働きが大きかったのは上述の通りである。
だが、これに更に政治的な思惑が絡み、キシリアが己の影響力拡大を目論んだ結果、
実の兄であるギレン・ザビ総帥やドズル・ザビ中将と牽制し合う中で、意図的に前線での地球資源の採掘状況をコントロールしていた模様*5
つまり、それを側近にして前線指揮官として実行していたのがマ・クベだったのだ*6

結果的にこの辺の事情が、“木馬”ことホワイトベース隊の追撃任務に就いたドズル配下のランバ・ラル*7に対して支援処か思いっきり足を引っ張る構図となった。
そして、ドズルから預けられていた新造戦艦ザンジバルを取り上げてしまったのに始まり、最終的にはドズルからの戦力の増強を握り潰している
補給もままならないランバ・ラル隊はグフ等のMS戦力を失っていき、約束されていたドムも受領出来ず、生身でのゲリラ作戦に出た末に壮絶な討ち死に。
残った部隊もクラウレ・ハモンに率いられて仇討ちに出るも、矢張り討ち死に……という悲惨な結果へと導いている。
そもそもの話、手強いことが既に分かっているホワイトベース隊を状況的にわざわざ正面から叩く必要性は薄いと認識していたこともあるのだが。
(ラル隊が交戦していた時のホワイトベース隊は敵地で孤立していたため、搦め手でどうにかなる可能性が高かった。実際その後のマ・クベは後付けではなく原作時点でも罠をしかけたり補給を潰そうとするなど、失敗したものの比較的自軍の損失の少ない形でかなり惜しいところまでいっていた)

この辺の流れは本編では案外とあっさり流されている部分なので、後から考察されたり補完されたりしている部分もある。
ラルを見捨てる形となった事についてもマ・クベの独断だったのか、キシリア直々の介入があったのかでも媒体や人によって解釈が分かれる所ではあるが、
何れにせよ敵ながら尊敬出来る武人としての評価が固まっているラルに対して、マ・クベに対するヘイトが溜まる案件である。
(この辺は上記の関連人物の項目も参照。ラルもザビ家が支配するジオンで手放しで支援を受けられるような出自では無かったのだ)
一応、マ・クベにも鉱山基地を駐屯兵諸共爆破するキシリアを諫めようとする場面も有り、自分の部下の生命を軽んずる人物ではない点は描かれているが。

22話では、ランバ・ラル隊が散った後は自ら支配地域へと侵攻してきたホワイトベースに対する作戦を指揮しており、優秀な知略家としての顔を見せている。さらには、そもそもとして地球方面部隊の司令官として常日頃から連邦軍相手に広範囲での戦いの指導をしている姿までが描かれた。
自らが指揮した作戦ではブライトが過労で倒れていた時期というのも重なってか、レーダーを囮とした作戦で混乱するミライさんを引っかけることに成功。
遠隔操作されたメガ粒子砲台によりホワイトベースに重大なダメージを与えることに成功したが、自分の作戦に自信を持ちすぎていたのか、マーカーとセイラが提案した、ありったけの発煙筒を利用して重大な損傷が出たことを演出するという苦し紛れの作戦に圧倒的優位に居ながら反対に引っかかって*8しまい、損傷を確認しきらない内にギリギリで見逃すことになる。

23話では、内通していた連邦軍No.2エルラン中将からの情報もあり、ホワイトベースへの補給に向かったマチルダのミディア輸送隊を阻もうとするもホワイトベース隊の活躍で失敗しGメカの受領を許している。

24話では新型MSドムと共にやって来た黒い三連星を迎え入れているのだが、同じキシリア旗下とはいえラル同様に叩き上げの武官である三連星とはウマが合わない様子が描かれていた。

25話では、いよいよ目前に迫ったオデッサ作戦を前にいきなりマッシュを欠いたガイアとオルテガの呑気にも見える行動に苛立つ様子から描かれた。
更にGファイターの操縦訓練に出ていたアムロセイラにエルランからの内通者であるジュダックの尻尾を掴まれ、エルランまでも逮捕、勾留されてしまったことで入念に進めていたはずのオデッサ作戦での優位が反対に揺らぐことになり、エルランの裏切りを見越して引いていた陣形を逆に利用されて大敗を喫した。

ここで南極条約にて禁止されている水爆を利用しての恫喝を行い連邦軍を引かせようとするも、レビル将軍はこれを無視。ホワイトベースとガンダムの戦力を見込んでの事である(彼らはガイアとオルテガの襲撃を受けて前線には間に合わなかったものの、位置的にジオンの監視から逃れられていた)。
マ・クベは水爆発射を実行するも、ガイアとオルテガを振り切ったガンダムに弾頭を破壊される。
その結果を見るまでもなくザンジバルで地球からの脱出を図っていたマ・クベは最後のあがきとなった水爆も阻止された事を途中で知るが、自らのこれまでの成果を振り返りつつ「ジオンはあと10年は戦える」とガンダム史に残る言葉を残した*9
しかしその後ジオンはあっという間に敗戦してしまい、しかも敗戦の原因は物的資源と言うより人的資源であったことから、ファースト時点では的外れなセリフという扱いのように見られがち。
だが宇宙世紀の作品で次々とジオン残党軍が生え続け10年どころじゃなく戦争し続けてるためマ・クベの評価が上がり続けている。
(※ジオン残党の運営資本がすべてマ・クベの遺産というわけではない。現にアナハイムやブッホなど企業の資金提供や、民間人からの寄付、ジャンク品などからの独自調達、そして略奪などでまかなう場面も広く見られ、「ジオン残党の活躍=マ・クベの手腕」とは限らないことには留意が必要。そもそも残党も一枚岩ではなく、とても「物資の融通」などしないぐらい対立している組織もあるし)

ちなみに林譲治氏の書く小説では、ここでマ・クベが逃げ出した事で地上に残された兵士たちの指揮系統が乱れに乱れ、やがてカリフォルニアベース陥落からのジオンの地球からの撤退にまで繋がった。
…と、つまりは彼が味方を見捨てたせいで負けた戦犯のような扱いがされている。
正直な話、マ・クベの役割の大きさから考えれば間違いではないものの、林氏はザビ家に対しかなり厳しいスタンスで書いている為その辺りは留意点と言える。

36話ではグワジンに乗り込み、連邦軍によるソロモン基地攻略作戦(チェンバロ作戦)に際して救援艦隊の総司令官を務める姿が描かれたが、それにもかかわらず積極的に救援を行っているという態度ではなかった。
その後、偶然にもドズルにより逃がされたゼナ夫人とミネバの乗った脱出艇を見つけ、当人は見過ごすすつもりでいたのだが補佐として同乗していた本来の救援艦隊の責任者であるバロム司令の「宇宙の兵士の気持ちがわかっていない」との諫言を受けて渋々と救援を許可するが、このことが後に唯一のザビ家の血統を遺す事に繋がった。

ただし、マ・クベの立場としては「ソロモンを攻撃している地球連邦軍に突撃する」事が任務なので、艦隊主力が救助艇を放置するのは別に間違った判断であるとは言えない。戦力外としてソロモンから逃げて来た人間を態々危険のド真ん中に突っ込ませては無駄な死人を増やす事に繋がりかねない
更に救援艦隊は可能な限り急いでソロモンへの最短ルートを直進していたはずであり、脱出艇回収のための進路変更、減速を行うと、ソロモンもまた公転しているため再計算、軌道変更、再加速が必要となり、脱出艇を護衛なしで送り出すしかないほど追い込まれている戦場への到着は、回収にかかる時間+それ以上に遅れることになる。
バロムがマ・クベの判断を待たず回収を指示した際、「ソロモンの戦いは深刻のようだな」と話を振ることで「お前それで救援めっちゃ遅れるけどわかってる?兵士の気持ちなんかわかってるよ?そのうえで捨ておくべきだと言っているんだが?我々の任務理解してるよな?考え直すなら今だぞ」と遠回しに撤回の機会を与えていた。
だが、バロムは理解せず説教を始める。その間ソロモンの戦いのための作戦参謀という立場にあるバロムが遅参を選んだことで責任の転嫁は可能であろうこと、説得には時間は足りず、ブリッジ(発言が記録される公的な場)で見捨てるべきと強硬に主張するのも外聞が悪いこと、士気の低下の懸念などを計算し、回収に文字通り舵を切ったものと考えられる。
結局救援は間に合わなかった。

ただ、これも過剰弁護な点もある。
脱出艇一つを救助するぐらいならわざわざ艦隊の足を止める必要もなく、ムサイ一隻からコムサイ一つを射出させて回収させる手や、たくさん随伴しているジッコ突撃艇に牽引させる手があった。
しかしそうせず艦隊を停止させて旗艦で回収したあたり、マ・クベはこれを奇貨としてソロモンへの援軍を取りやめたという可能性も高いだろう*10

が、無理のない範疇でもドズル派閥を救援出来れば素直に恩を売れてその後に繋がるため、マ・クベの発言から救援はジオン軍全体としても派閥争いの面から見ても本当にやりたかったものと思われる。

ただ、ソロモンで戦闘が始まってしばらくしてから出撃した増援艦隊なので、脱出艇を回収しなくてもどのみち間に合わなかった可能性のほうが高い。
映画版では「明らかに遅すぎる援軍」と呼ばれ、漫画「0079」では「今頃の出撃で…」「出遅れたが、キシリア様の命令なら行くしかないな」と愚痴も出ている。


この後、ソロモン陥落を見届けた後にバロムに泣き崩れるゼナを連れてグラナダに戻るように提言する一方で、自らはチベに移り今度は積極的にソロモンからの撤退兵力を回収。
これには、出自に気付いていなかったとはいえ左遷から解かれると共に同じくキシリア旗下に入り、急速に地位を挙げていたシャアへの対抗意識があったとも言われる。
と同時にバロムの「兵士の気持ち」という精神的な説得に耳を貸す辺り、マ・クベ本人も人間の情を蔑ろにするほど冷酷ではない事がわかる。
実際、最初に救出することになったゼナとミネバの乗った救出艇もミノフスキー粒子の撒かれている戦場故の事情なのか、捕虜にされるのを避けるためなのか、特別に救援を要請する発信が行われていた訳でもなかったので傍から見た場合には他の脱出艇と区別はなく、マ・クベ達からは誰が乗っているのかということまで解っていた訳ではなかった。 
そういう意味では、タイミングよくゼナとミネバを救ったことについて何か思惑があったのだろう等と思われてしまいがちだが、バロムの言葉に動かされて救出を許した時点では決して打算的な考えがあった訳ではなかったのだろう。
その後で今度は積極的に救出に動いたのもゼナの悲しむ姿に心を動かされていた可能性もあるし、そもそも功績を誇りたいのならゼナとミネバを送り届ける役目をバロムに任せてしまうだろうか?という疑問も残る。
ちなみに外部作品であるが『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』ではギャンに乗り、この妻子を救っている。
大量のジオンの仲間たちを見捨てた彼にしては意外な人情であるが、元よりキシリアの命令により一般兵ごと基地を爆破することを渋った一面もある為、彼なりに「必要でない犠牲」は好まないのであろう。

そして、37話にて地球で苦い経験を味わわされたホワイトベースをテキサスコロニーで発見。
これもシャアへの対抗意識だったのか、何と屈辱と汚名を晴らすべく、数々の仕掛けを施した上で自らMSギャンに乗り込んでガンダムを誘い込み迎え撃つというマ・クベらしくないと言われる作戦を決行。(ただし、先述までの通りでマ・クベはファンのイメージ程には卑怯者でも策略家ではあるが、それだけの男では無いのである。)
これを知った当のシャアは「物好きな……」「私への当てつけだよ。そうでなければ、彼がそんな軽率なことをするものか」と苦笑しつつも、自らゲルググの試験を兼ねてテキサスコロニーに降り立った後にガンダムと交戦。マ・クベに見つかった後には協力を申し出ているが、マ・クベは全力で断っている。
戦いではギャンの性能と的確な罠の布陣もあってかシャアの予想以上にガンダムを苦しめ、順当に武装を奪っていくことにも成功するも、ギャンの性能を以てしても丸裸にした筈のガンダム……というよりはララァと出会っていたことにより異常な覚醒を示し始めていたアムロを仕留められずに討ち死に。
またアムロからは「策に走りすぎでパワー負けしている」と、追い込むことはできても最後の一押しができないことも指摘されていた。
(負けは負けだが結果的に同時期のシャアよりもよほど苦戦させているという、展開上の都合もあるとはいえ制作陣も後から見返すと意外では?というものになっている*11。)
この時に通信越しに腹心ウラガンに託した、自らの特に気に入っていた壺をキシリアに渡すように頼んだ「あれは…いいものだ!」が今際の言葉となった。
でもその後すぐウラガンも戦死してしまったので渡せずじまいに……


劇場版

ファーストTVシリーズを再編した劇場版シリーズでは立場こそ同じものの、諸々の活躍が削られており全体的に出番が少ない。
「哀・戦士」では冒頭から現れ、壺の音色を楽しみながらランバ・ラルへの嫌悪感を示しつつ戦況を俯瞰する……と司令官らしい立場を見せていた。
しかしその後は出番が減っていく。目立った場面と言えば、三連星との会話やオデッサから脱出する際の負け惜しみ、ゼナの回収シーンぐらい。あとはキシリアの側に立つ背景のような感じだった。
特に戦闘シーン・軍事シーンは顕著で、オデッサ作戦はかなりダイジェスト化されてエルラン内通や核ミサイルなども省略、アッザムやギャンでの戦いは丸々カットされ、戦死すらしていない。仮にもロボットアニメでこれでは印象が薄くなるというもの。
ただし核ミサイルをガンダムに斬られる描写はカットされたが、ザンジバルで脱出するシーンの背後で 稲妻が走った巨大なキノコ雲 が描かれており
こちらでも水爆自体は利用した上にちゃんと起爆している可能性がある。どの世界線でもきっちりと南極条約は破っていく男
実はテキサス・ソロモン戦*12より後の、シャアとララァがグワジンに謁見に来た場面でもキシリアの横に立っていて、テレビ版よりも長生きしているのだが、生きていることを含めて気付かない人も多いと想われる。
劇場版の「その後」を描いた漫画『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』では、此方でギャンに搭乗する姿やシャアと共にミネバとゼナを守る姿が描かれたが、ア・バオア・クー脱出後に戦死。
シャアがキシリアを殺害した事には気付いておらず、対抗意識は持ちつつも敵対してはいなかった。


小説版

何故かシャアとのライバル関係が強調されており、シャアがイケメンなのにかこつけてか「男妾」「いい尻をしている」等と陰険な噂(アッー!な上官に取り入って出世した)を流していたらしい。
まあシャアもシャアで「マ・クベは女の尻を追いかけているのがお似合いだ」と漏らしていたらしいが。
後にテキサスコロニー周辺空域にて、重巡チベに乗り艦隊を指揮してワッケイン及びペガサス(ホワイトベース)の部隊と交戦するも、上記の行動が祟ったのかシャアへの都合のいい救援要請も無視され、ハヤトに討ち取られる。
出番は少ないが、激闘の中で「観音菩薩の像を持ってくればよかった、あっちのほうが心が落ち着くのに」と妙な感想を抱いたり、ザクのパイロットの名前を確認しながら「二人の奮闘をありがたいと思うのだ!」と怒鳴ったりと、インパクトは強い。
「策士ではあるが意外にも人情家」というのはこの辺りから想定されていたのかもしれない。

小説繋がりで、林譲治氏の執筆した機動戦士ガンダム戦記Lost War Chronicles等にも名前だけ登場する。
…が、こちらでは前述の通り「マ・クベが全てをほっぽりだしたせいで地上部隊が混乱した」という悪役扱いであり、良い扱いとは言えない。
林氏は「不遇軍人救済家」と言われる程に人物の再評価に定評のある作家なのだが、そんな彼でもザビ家の横暴は庇護不可能とみなされたのだろうか。

THE ORIGIN

前述のように、ファースト当時の設定を更に突き詰めた結果、かなりの大物として扱われている。
実際、同じ大佐とされつつも明らかに他の同格の人物よりも格上に描かれていたことから此方では階級も地球方面軍総司令、中将になっている。
性格的にも、人類の歴史、文化を本心から愛するが故にサイド3の博物館に展示されている美術品が贋作ばかりであるのが許せず、今後は文化の中心を宇宙に移すべく本物の文化財を獲得する為にも地球での戦争を継続させようと目論む策士として描かれる等、ただの壺好きと揶揄されていた人物とは思えないレベルに。
指揮の様子も策略一辺倒ではなく威厳で統率する描写がされ、黒い三連星がアムロの手で撃破され部下たちに動揺が走った時は「将兵に動揺を見せるな、こちらにも策はある」と物静かに一括することで鎮め後述のように殿を務めた時も配下のグフを率い共に奮戦するなど指揮官としての辣腕ぶりを示している。
そのため劇中のキャラクターたちもガルシア・ロメオのような愚物や「地球かぶれ」扱いして嫌ってたドズルを除いてはマ・クベに対し畏敬や尊敬の念をもって接している。
その分、原作でのヨゴレ役はオリキャラのガルシア・ロメオ少将に押し付けられた。

ルウム戦役後の南極条約の締結を結んだのもマ・クベ自身とされている他、その後の決裂することを目的とした地球連邦との和平交渉役をも担ったが、それを理由として自分と地球方面軍をジオン本国から切り捨て(●●●●)させない(●●●●)ためにキシリアにガルマを旗下に置くことを了承させる等*13、ファーストとはザビ家やキシリアとの関係も違っている。
さらに、オデッサ作戦にて核を使用したのもギレンによる「敗北した場合には地球の主要都市に大陸間弾道弾を打ち込み灰塵にせよ」という命令を「ジオニズムの理想など白磁の名品1つにも値しない」として握り潰したことへの言い訳としてレビルの乗った艦を狙ったものである。
それをガンダムに阻止された後は自らギャンに乗り込んでMS部隊を率いて連邦のMS部隊と交戦*14
ギャンの性能によりMS部隊を圧倒し、その戦闘能力の高さに満足するも量産はさせないように提言する。

マ・クベの名はギャンとともに記憶されるべきだ!

敗戦が決定的となると、自ら自爆装置を作動させて海に入り、連邦艦隊を巻き込んで壮絶な死を遂げる……という、これ従来のマ・クベ像とはかけ離れた人物として描かれて大きな衝撃を与えた。
こういう一面を知ってたらドズルにもちゃんと武人として認めてもらえたんじゃないかと思うくらいの武人っぷりである
なお、早期退場に伴いテキサスコロニーにおける本来の出番やシャアへの対抗意識はシャリア・ブルに押し付けられた。

ちなみに本作では壺を託したウラガンが生き延びており、一戦戦争終結後にマ・クベの仇討ちを目論むのだが、その結果は……。


SDガンダム外伝

ジークジオン編の「伝説の巨人」にて……なぜかガッチャマンシリーズに登場する「ベルク・カッツェ」と合体し「マクベ・カッツェ」として登場。CVは江原正士氏。
元々は伝説の巨人を信仰する神官だったが、ジークジオンにより邪心を掻き立てられジオン側につく。
多種の魔法を使い巨人や自然現象を操り騎士ガンダム達を苦しめる…ように見えて本人は指示ばかりであんま何もしてない。
更に名前はマ・クベであるが、目元以外を隠したマスクという出で立ちはキシリア、言動そのものはベルク・カッツェとゲルサドラの複合という「マ・クベ」要素はほぼ皆無という奇妙なキャラである。
またオカマ口調で喋ったり復活させた巨人の攻撃に巻き込まれる等のコミカルなシーンも多かった。

OVAでは生死不明だが、GB版ではなんとララァの部下で、断末魔の壺云々もララァに届けろというものであった。


冒険王版ガンダム

キャラが全体的におかしい冒険王版であるが、このマ・クベは元々がイメージしやすいためか余りキャラ崩壊を起こしていない。
それどころか実質的なラスボスである。
アムロ脱走編からちょくちょく登場するが、本格的に活躍するのは最終話。
なぜかカメラ目線のキシリアに「ゾック」を与えられ「部下にハジを背負った男などいらない」と発破を掛けられ出撃する。ちなみに戦場は宇宙である。
偶然近くにいたドズルもマ・クベに加勢、ズゴック部隊を出撃させ援護する。

だがなんやかんやでキシリア肝いりのゾックの性能は高く、その巨体と機動性でガンダムを圧倒する。
しかし今まで多数の強敵を屠ってきたガンダムを止めることは出来ず「死ね!」と言う言葉と共に必殺の一撃を仕掛けるも、ビームサーベル二刀流のカウンターで撃破され「ぎゃああ!!」という断末魔を挙げて真っ二つになった。
それだけでなくゾックの残骸がドズルの乗ったムサイに直撃し轟沈するという2コンボ達成。
そのまま漫画も打ち切りとなるのであった

しかしめぐりあい宇宙編では何の説明も無く復活(ドズルも復活)*15
更に劇場版ということでギャン戦がカットされて死なずに済むのであった。
…というわけでこの漫画では代名詞とも言えるギャンに全く乗っていなかったりする。


【機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島】

令和の世にも映画にもORIGIN設定で登場。
とはいえアムロやドアン達に絡むことはなく、彼の出番は主に連邦軍のゴップ元帥との駆け引き。
しかしこの映画のマ・クベは、連邦軍に対し「今すぐオデッサへの侵攻を止めなければ、地球上の主要都市に攻撃する」という、ORIGIN設定にしては冷酷…いや、野蛮な提案をしてくる。
一方で部下に対して「パリは燃えているか?」と、アドルフ・ヒトラーの命じた焦土作戦が現場の軍人たちによって阻止された史実を語り、本心ではそんな事はしたくないのを匂わせている。
それはゴップも同じである、彼としても地球上の都市が焼かれる事は避けたい。だが元帥は連邦の勝利の為に非情にもオデッサへ進んでいく。

二人共都市を焼く事をしたくないのに、連邦の勝利のため、ジオンの勝利のために、都市消滅に進んでいく…というのは、戦争というものはたとえ高官であろうと個人の思惑等通用しない事を思い知らせてくれる。



【ゲームでの活躍】

スーパーロボット大戦シリーズ

主に旧シリーズに登場しており、兜甲児を「下卑た男」と評すなど彼とは何かと因縁があった。『第2次』にて偽デューク・フリードを出してきたのが印象的。
『第2次』では割と目立つのだが、『第3次』では序盤のルート分岐限定で特に目立たないレアキャラ。しかもこのルートを選ぶと終盤のルート分岐を諦めざるを得なくなるため慣れたプレイヤーからはよく無視される。
地味にマ・クベ本人がギャンに搭乗したのは『第2次』『第3次』のみ。『F完結編』ではギャンの後継機のR・ジャジャに搭乗するが、以降の登場作ではいずれもザンジバルにしか乗っていない。『F完結編』では後述の『ヒーロー戦記』オマージュかラフレシアを率いてくる。
更に言うとギャン自体も旧シリーズとCOMPACTシリーズでちょこっと出ただけで、マ・クベが乗り込むどころか雑魚敵としての出番すら恵まれない……*16

ヒーロー戦記

マサキ・アンドーから前述したファーストネームの事を揶揄われて「人が気にしている事を!」と返すコミカルな一面も見せた。
最終的にラフレシアに乗るが、その末路はシュウ・シラカワの催眠術によって廃人にされるという悲惨なものである。

機動戦士ガンダム Extreme vs.シリーズ』

EXVSFBよりギャンに乗って参戦。
同じツィマッド社製のヅダに乗るデュバル少佐を強く信頼していたり*17、女王へ忠を誓うハリー・オードを見て好感を持つ。
一方でノリス・パッカードをランバ・ラルと同じ戦馬鹿とこき下ろしたり、シーマ・ガラハウをどこか軽んじているような姿勢を見せた。
シャアに対しては対抗意識を隠しきれておらず、クワトロ時代やCCA時代に至っても皮肉を飛ばしている。
EXVS2以降のキャラクターグラフィック絵の評判が高い事でも有名。

SDガンダムGジェネレーションシリーズ

初代より登場。
格闘と指揮能力のステータス値が高く、原作通りギャンに乗せるのもいいが『機動武闘伝Gガンダム』系列の機体に乗せるのもあり。覚醒値が0なので、MP消費系の武装との相性は悪い。

図鑑がはっちゃけてたことで有名な『アドバンス』では、
役回りは月並みだが、「壺」「ギャン」「遺言」の3点セットにより、ガンダム史上に不動の地位を獲得した。
とぶっちゃけ過ぎてる説明があったりする。

ギレンの野望シリーズ

パイロットとして使用できる人物の一人。原作再現でいくつかのイベントにも関与する。キシリアが独立するシナリオでは彼女に付いていく。
前述の通り彼がアムロ相手に善戦できたのはギャンに未熟さを補うシステムが搭載されていたから、とされているのだが、本作では格闘のステータスが各作品の主人公やライバルたちにも引けを取らない数値に設定されており、パイロットとしても優秀だったという解釈がされている。ただし射撃は水準以下。
参謀タイプらしく指揮は高いものの、ラルや黒い三連星との確執を反映してか魅力は低く、ついでに階級も中佐~大佐程度で司令官としては足りないので、ギャンに乗せて最前線に突撃させた方がいいかもしれない。作品によっては専用機扱いなので補正もかかることだし。

外伝作『蒼き星の覇者』ではガルマと共に主役に抜擢。他の司令官と地上侵攻の主導権争いをしつつ連邦軍と戦うことになる。そして連邦との戦いが終わると、今度はキシリア閥のマ・クベとドズル閥のガルマとで地上方面軍を2つに割っての内戦がはじまることに…

PS2版 機動戦士ガンダム

概ね原作通りだが、とあるアニメムービーでは多大な戦果を挙げた主人公に「貴様の活躍、認めてやらんこともない」と彼らしい激励を送った後後ろにいた黒い三連星に乱入され苦々しい表情を浮かべるというコミカルな姿が見られる。



ウラガン、キシリア様にあの追記修正を届けてくれよ……あれは…いいものだ!

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最終更新:2024年04月24日 12:20

*1 なお彼の骨董趣味な嗜好を基にルーツが中国系、若しくは蒙古系とする考察から“マ”=馬?は姓や家名なのではないかとも言われてたり。

*2 本編では“私専用”と言っているギャンが次期配備計画から漏れた機体とされたり、未熟なパイロットを補うシステムが組み込まれている等。

*3 『灼熱のアッザム・リーダー』

*4 実際の所、事実上の原作者である富野には“貴族主義”を物語に取り入れたがる、若しくは描きたがる傾向があるとも分析(後のガンダムシリーズでも幾度も繰り返されている。)されており、マ・クベの前述通りの妙な地位の高さからマ・クベが上流階級の出身であるとイメージしていた可能性は高いと思われる。そして、かつての貴族主義社会に於いて戦争は貴族が民に代わって行うものであり、剣の腕を磨くのはその為でもあり…と、マ・クベがある程度の武力に秀でた人間として描かれるのは富野の考えではおかしいことではなかった可能性もある。ここから考えると、終盤の“らしくない”とされた自らの汚名を晴らすために一騎討ちを挑むなんて行為も極めて貴族的で自然なものとなってしまう。

*5 成果が出ていることを馬鹿正直に報告していた場合にはギレン直々に本国の直轄に置かれるか、戦闘部隊の中枢であるドズルの管理下に置かれかねない。

*6 というか、匂わせるどころか「キシリア様がジオンを支配」というあからさまな発言まで飛び出している。

*7 ガルマの仇討ちの為に地球に降下してきた

*8 ただし、敢えて虫の息にした所で特にレビルの息のかかった部隊やレビル自身を引っ張り出す目論見があったとの分析も。

*9 ぶっちゃけ“負け惜しみ”なのだが、偉人の言葉なんてそんなものである。

*10 グラナダ勤務の士官マレット・サンギーヌは「ソロモンなど自分の身を守れないような連中に援軍を出すなんて、グラナダの戦力の浪費」と考えており、ジオンにそういう発想が存在しないわけではない。キシリアによるジオンの支配を考えるマ・クベならなおのことである。現にキシリアもア・バオア・クー戦で、ギレンへの疑念があったにせよ艦隊の一部をグラナダに引き返させた模様(ギレンの「出撃させた艦の数が合わんな」というセリフ)。

*11 一応、上記のゲルググでの初交戦の際にはシャアは互角の勝負をしているのだが、マ・クベを仕留めた辺りで互いに正体を掴めていないながらもアムロとララァは第六感レベルの交信を行っており、そのせいもあってかいざシャアがアムロを狙った段階にてアムロのNT能力が更に研ぎ澄まされてしまっていたのも原因。シャアが通常の五感を越えた世界の感応を実感出来るようになるのはまだ先のことである。

*12 テレビ版では「ソロモン戦後、テキサス戦」となるが、劇場版では逆に「テキサス戦後、ソロモン戦」となっている。

*13 前述の通りファーストではマ・クベは部下を見捨てることも平気で行っている。

*14 オデッサを舞台にした映画『戦艦ポチョムキン』に登場したことで有名な階段に立つギャンの姿が描かれている

*15 正確には冒険王版の「めぐりあい宇宙編」はTVシリーズ放送当時のコミカライズから数年経った映画公開当時に執筆されたものであり、話の流れ的にも漫画の最終話とは直接繋がってる訳ではないと思われる。

*16 なお、COMPACTシリーズはマ・クベは登場していない。

*17 しかし敵対していると、ヅダの正式採用見送りを「政争に負けたから」と冷酷に言い放つ