ファイアーエムブレム 覇者の剣

登録日:2020/11/16 (月) 00:37:01
更新日:2023/08/10 Thu 17:52:56
所要時間:約 6 分で読めます






燃え上がれ、炎の冒険心!!





概要

『ファイアーエムブレム 覇者の剣』とは『月刊少年ジャンプ』にて2001年12月号から2005年8月号まで連載されていた作品。全11巻。
原作は井沢ひろし、作画は山田孝太郎。
シナリオは基本的に井沢氏が考えているようだが、山田氏もシナリオ作りに協力している事があとがきで述べられている。

ファイアーエムブレム 封印の剣』とはリンクした物語であり、当初はロイの冒険の裏側で起こっていた出来事を書く物語だった。
物語の途中でアルたちがロイたちに合流したため、作者曰くロイたちは『覇者の剣ルート』に進んでいくことになる。
序盤こそジャンプらしく少年漫画的な冒険譚の側面も強いが、徐々に大軍同士の衝突を描く戦記物としての側面も扱われるようになる。
それでいてどちらの要素も上手く両立されており、原作でのリキア同盟軍の戦績とアル達オリジナル勢の活躍が余す事なく描かれており、
FEの魅力である登場人物の心情の交錯に少年漫画ならではのアツい戦闘や成長シーンを盛り込んでいる。
幾つかオリジナルの設定や敵勢力も出てくるが、原作から見てもそれほど違和感が無いよう組み込まれている。
また連載が長引いたこともあり、連載中『烈火の剣』が発売した(それどころか『蒼炎の軌跡』まで発売されたが)ため、烈火の剣のキャラや設定などが一部登場する。
打ち切りエンドで終わりがちなFEコミカライズでは珍しく、(一応)原作ストーリーを完結させて大団円を迎えているのも高評価点である。

またゲームとリンクするというコンセプトの作品のため、
ゲームの方にも『アルの剣』『ガントの槍』『ティーナの杖』が登場し、アルたちの話も少し聞ける。

本作自体が封印の剣のメディアミックスの一つなので公式のグッズ展開等に取り上げられることがなかった(集英社も版権を持ってるし)。
しかし2017年になって『ファイアーエムブレム0』に参戦し、山田氏(本作の参戦前から参加していた)を始め各イラストレーターが描いたアルたちの名場面をカードで見られるように。
ヒーローズの方には今だ参戦してはいないが、同じく版権が複雑な『幻影異聞録♯FE』も参戦できたことだし……来たらいいな。

また本作の作画担当である山田氏の画力向上と絵柄の変化は未だに語り草。
それも簡略化の方向ではなく純粋に描きこみ量が増えたからであり、1巻の段階では「いかにも少年漫画」だった作画が話を進めるごとにどんどん美麗になっていき、
終盤になるとコマひとつとっても非常に美麗かつ深い描き込み量と女性キャラのセクシーショットで読者を魅了する。
今でも山田氏はFEの大ファンであり、サイファやヒーローズに数多くのイラストを提供している。


あらすじ

ベルン王国による大陸制覇の侵略がもたらした戦乱の世。
15歳の少年アルは、父から譲り受けた剣を手に、山を下りる。まだ見ぬ世界へと旅立つために……! 

戦乱の大地に、正義と勇気ある少年の冒険が始まった!!

(公式より引用)

主な登場人物

タニア軍

本作の主人公。世界を見るために旅立った。
原作の主人公・ロイが真面目で大人しい性格なのに対し、こちらは元気いっぱいで野生児熱血漢である。
人里離れた場所で父と二人暮らしという事もあって世間知らずであり、良くも悪くも相手の身分を気にしない。
父から託された『アルの剣』だが、実は『覇王軍の剣』と呼ばれるベルンの物で……。

本作のヒロイン。強気な美少女。
リキア同盟のタニア領のお姫様だったが、ベルンにタニアを滅ぼされ捕らわれてしまった。
自分の対極をゆくアルとは序盤は衝突していたが、徐々に仲良くなる。

  • ガント
ティーナ姫の幼なじみ兼護衛隊長。お馴染みアーマーナイト枠。
アルの良き相棒であり、アーマーらしく耐えて勝つ名勝負製造マシーンでもある。しかし船酔いするのがタマにキズ。
山田氏の絵柄変化の恩恵を一番に受けたキャラであり、当初はアーダンばりのケツアゴ男だったのに、いつしかイケメンへ……。
あとよくオリキャラであるマンセルを潰している。

  • キルマー
イケメン剣士。お馴染みナバール系。
元々西方三島のレジスタンスだったが恋人であるアイリーンを火竜に殺された事ですっかり消沈してエブラクム鉱山の奴隷へ。
完全に無気力状態と化してヒゲ面になっていたところに新たに奴隷としてやって来たアルに感化され、
再び剣を取り恋人の仇である火竜アインを打倒、そしてその大元であるベルン軍と戦う事になる。

作中だと剣士らしい剣士だが、公式で出されたステータスを見るとめちゃくちゃヘタれている……というかお前本当に剣士かと問いたくなる鈍足ぶり。
無気力時のステータスなのだろうか……。

  • ウォーレン
かつてはティーナに仕える騎士だったが、タニア城が堕ちてからは追手の目を欺く為部下たちと共に山賊に扮しつつ再起の機会を図っていた。
しかしティーナが囚われているグライゼル処刑場は難攻不落の立地と厳重な警備にあり、
攻めあぐねていたところを部下たちが偶然捕らえたアルと同僚であるガントと共に紆余曲折を経てティーナを救い、一度仲間を集める為に別れる。
後にロイ率いるエトルリア軍とベルン本軍の決戦で多数の仲間と共に援軍として現れアツい展開を盛大に盛り上げる。
そして最終話では、ティーナやガントさえ差し置いておいしいポジションをかっさらう。

リキア同盟軍

原作の主人公。中盤西方三島編でアルと合流した。
作中での活躍には恵まれているが、公開されたステータスはヘタレ気味。
当初はゲーム通りの衣装だったが、エトルリア編後はスマブラ風の衣装に変化した。

ロイの幼馴染の魔砲少女…なのだが、今作ではあまり出番は無い。
しかし終盤賢者時のものと思われる衣装になり、その輝かしい四肢で読者を魅了する。

アラフェンの孤児院育ちの盗賊で、なんと序盤で彼をメインに据えた話がある。
院長をベルン兵に殺され、ひとりで復讐する為動いていたところをアル達に出会い、彼らと共闘する中で仲間と手を取り合う事の大切さを学び一度別れる。
後にリキア同盟軍に入ってアル達と再会、孤児院仲間の兄弟らとも合流し精神的に成長した姿を見せる。

  • ランス
フェレ候エリウッドに仕える緑担当の騎士で、こちらも彼をメインに据えた話が展開される。
ベルンに寝返えらんとする一部の同盟の重鎮、良き相棒であり親友でもあった傭兵クルザード率いる賊軍との戦いが描かれる。

  • クルザード
リキア地方を拠点に活動する傭兵で、ランスとは立場を超えた親友であり、互いの弱点を補い合いつつ切磋琢磨しあう関係だった。
しかし突如として反乱軍を率いてリキア同盟軍に襲撃を仕掛けるが…?


ロイ以外の原作キャラは出番が少ないものの、要所要所で活躍している。
特に西方三島編だとエキドナ、ナバタ編ではソフィーヤファ、エトルリア編だとパーシバルなどが活躍している。

ベルン軍


ベルン王国の王。
人の世を竜に分け渡すために戦争を始めた、今回の戦争の元凶。
ギネヴィアが持つ炎の紋章を直接取りに行った際、アルと遭遇。ベルンに伝わる剣と竜の力を持つアルに興味を抱く。
原作では実際のステータスから強敵感はいささか薄いが、本作では原作通りに大ボスの立ち位置にあるうえに原作にない強化要素やアルとの深い因縁もあってしっかり格が高い。

ベルン三竜将の一人。本作の顔芸要因。
原作同様小物な策略家なのだが、その小物ぶりが強調されている。
原作キャラは顔が崩れないように気を付けられている中、ナーシェンだけは「ま、いいか」という理由で崩れまくる。
結果、原作キャラなのに覇者の剣を代表するキャラとして扱われており、サイファでもヒーローズでも担当イラストレーターは山田氏であった。

  • マードック
ベルン三竜将の筆頭。
地味にかなりの強者として描かれており、終盤のロイはアルと二人がかりでゼフィールに勝利できるのだが、
こちらは原作通りその直前でロイが仲間を率いて単騎で待ち構える彼に挑むも一時は圧倒されるほどであった。

  • ジード
ナーシェンの部下で『ジード飛竜隊』の隊長。
ラグナ城を襲撃した際にティーナを誘拐した事でアルたちとの間に縁が生じる。
貧民上がりで見るからに粗野な男だが、上司とは違い部下想いの性格で、
ナーシェンに失敗を押し付けられて10騎にも満たない竜騎士だけでナバタの里を攻略しろという、
事実上の「死刑宣告」を命じられブチ切れてしまい、命令を無視して部下を逃がした。
その後、争いとは縁を切るつもりだったが……。
シリーズで言うところの『仲間になりそうでならない』枠だが、心底その意味を痛感させてくれる男。

  • ジェミー
ジードの妹。ブラコン。ジードもシスコンであり仲睦まじい。
見た目は高飛車美少女という感じだが残忍な性格で、一個師団に匹敵する魔力を持つとされる。
火竜の実験のために一つの村を壊滅させたこともある。つまりキルマーの恋人の仇の一端でもあり、後にキルマーと対峙することに。
ジェシージェニーと間違えないように注意。

ゼフィールの傍に仕えている暗闇の巫女。その正体は魔竜。
竜形態は過去回想でのみ登場し、本作に登場するあらゆる竜の中で一番デカい。山並にある。
本来封印の剣におけるラスボスなのだが、本作では原作にもある「イドゥンの正体に辿りつけず、ゼフィール打倒後は消息不明」エンドとなるためクローズアップされない。
「神将器を全部揃える」という原作の真ルート条件が明確に潰されているため原作的にも筋は通っている。
なお山田氏の中でイドゥンは大人の女性というイメージなので、本作では大人びているが、
後年ヒーローズでイドゥンを描いた際にはISからの要望で幼めの容姿に変更されている。



用語

  • 骸黒(むくろ)の民
本作オリジナルの集団。ロイとゼフィールが争っている裏で暗躍し各地の神将器を盗んでいた。
黒い装束と仮面を付けた集団であり、人と竜を支配するために長年にわたり暗躍していたという。そのために身に付けた闇魔法は強大で武術にも長ける。
暗躍しているので神竜族もその存在は知らないが、人竜戦役で竜側に味方したためハルトムートが追放した集団とニイメは語る。
真相は人竜戦役で始祖竜の力を利用して人に勝利を齎そうとしたら、始祖竜の力の源は「絶望」なので不吉と八神将から嫌われ遠ざけられた。
その扱いに怒って竜側に寝返ろうとしたものの所詮は人間だった為竜側からも相手にされず、戦争後は裏切った罪で追放されたというのが真相だった。
人と竜を支配しようとするのも、かつての復讐のため。

  • 始祖竜
本作オリジナルの種族の竜。
エレブ大陸に人間が生まれていなかった頃に絶望の中から生まれた最初の竜。
誕生の経緯から力の源は「絶望」であり、竜族の中でも強大な能力を誇る。
それ故に始祖竜は自分の力が悪用される事を恐れ、自らの骨から『覇者の剣』を作ったという。




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最終更新:2023年08月10日 17:52